眼科学

眼科学 · ML-13

強膜の炎症性疾患:上強膜炎と強膜炎

Inflammatory disease of the sclera

前提:正常
頭部:眼窩と眼感覚器:眼

🧠 全体像:の炎症は「浅いは良性で自然に治る、深い強膜炎は痛く・壊れ・全身病を背負う」と二分して掴む。見分ける鍵は3つで、痛みの強さ(は違和感程度、強膜炎は夜も眠れない深い痛み)、充血の色(か、紫がかった暗赤色か)、で赤みが引くか(引けば)。は強膜炎のではない。強膜炎、とくにを診たら、関節リウマチ・・などのを探し、内科と組んで全身治療する。

赤目の中での位置づけ(結膜炎・角膜炎・前部ぶどう膜炎・との対比)は赤目の鑑別で扱う。

強膜と上強膜の解剖

強膜

  • 眼球の外側を包む線維性の保護膜のうち、後方の不透明な5/6がで、前方の透明な1/6が角膜である。
  • と角膜の移行部がで、肉眼ではの外周を縁取る境目として見える。
  • の腱が付着する土台になる。
  • 後方では視神経線維が貫き()、ほかにも毛様動脈・渦静脈・毛様神経などの神経と血管が貫く。
  • 厚さは0.3〜1 mmと場所で異なる(付着部の直後が最も薄い)。
  • 知覚は三叉神経が担う。

💡 は三叉神経の枝に密に支配されているので、そのものの炎症は深く鈍い、眼窩や頭部に響く痛みになる。これがとの大きな違いである。

結膜・上強膜・強膜の層

眼球表面は外側から、上強膜、の順に重なる。

層 組織 血管 炎症したときの見え方
上皮をもつ粘膜 (可動性あり) 側で強いの充血
上強膜(表層・) 血管に富む疎性 表層との上強膜血管網 放射状に走る太い血管のの充血
太さ・形の異なるが不規則に走る。線維芽細胞は少ない ほぼ 上強膜血管の怒張で暗赤色〜紫色、の浮腫
  • のは不規則に配列し、ほぼであるため、不透明で丈夫になる。角膜は線維が規則正しく並ぶため透明である。
  • 上強膜には表層との血管網があり、では主に表層、強膜炎ではに接するの血管網が怒張する。

💡 はほぼで細胞も少ないので、いったん壊死すると修復されにくい。でが薄くなったまま戻らないのはこのためである。

上強膜炎

定義と分類

は、上強膜に起こる良性・自然軽快性・の炎症で、の範囲(開瞼時に露出する部分)に好発する。両眼に起こることもある。

病型 所見 頻度
(びまん性) 平坦で、上強膜血管がの範囲に広く充血する 最も多い
() 平坦な充血が一部の区域に限られる 多い
限局した、盛り上がった充血性の結節。結節はの上で動かせることが多い 少ない

では、太い上強膜血管が放射状に怒張したの充血を認め、では周囲に血管が集まる盛り上がった赤い結節を認める。StatPearls の整理ではが約7割、が約3割である1。

⭐ は強膜炎のではない。の肥厚はなく、から強膜炎へ進むこともない。別の病気として扱う。

症状と経過

項目 の特徴
発症 急性。80%は片眼
痛み ないか、軽い違和感程度
充血 上強膜血管の充血(怒張)。びまん性か限局性
視力 障害されない
ない
血管がする(強膜炎ではしない)
経過 は2〜3週、は数か月で自然軽快。再発しやすい
合併症 まれ。むしろステロイド治療による合併症(・)に注意

StatPearls もな経過(2〜21日)と約3割の再発を挙げている1。

原因

約70%は特発性(原因不明)である。残りはや局所の要因を背景にもつ。

群 疾患・要因(★は比較的多いもの)
・炎症性疾患 関節リウマチ★、★
血管炎 ★
皮膚疾患 ★
代謝疾患 痛風★
★
悪性腫瘍 —
局所の要因 異物、
感染症 帯状疱疹★()
薬剤 —

診断と鑑別

  • 病歴:に関連する(関節炎、腸疾患、皮膚疾患、痛風、)があるかを聞く。
  • 診察:で充血の深さを見極め、試験を行う。
  • 全身検索は、長引く例・頻回に再発する例に限る。・炎症性疾患・血管炎・・痛風を探す。初発で典型的な例に一律の全身検査は要らない。
  • 鑑別はあらゆる赤目(結膜炎、強膜炎、角膜炎、前部ぶどう膜炎、)である。

治療

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='episcleritis'>上強膜炎</span>と診断<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phenylephrine'>フェニレフリン</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blanching'>退色</span>、痛みは軽い)"] --> B["無治療で経過観察してよい<br>良性・自然軽快・強膜炎へ進まない"]
    A --> C["背景の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>があれば<br>その治療"]
    B --> D["症状があれば冷やした<span class='jp-term jp-term-diagram' title='artificial tears'>人工涙液</span><br>(多くはこれで足りる)"]
    D --> E{"症状が治まるか"}
    E -->|"治まる"| F["終了。再発はありうる"]
    E -->|"治まらない"| G["弱いステロイド点眼を短期間<br>(合併症に注意。NSAIDs点眼は効果が限られる)"]
    G --> H{"長引く・頻回に再発するか"}
    H -->|"する"| I["最後の手段としてNSAIDs内服<br>全身検索も行う"]
  • 冷やしたで大半の例は足りる1。
  • 従来の整理では、足りなければ NSAIDs 点眼(・など)かステロイド点眼を使う。現行の StatPearls の整理では、NSAIDs 点眼は有用性が限られ、病気の経過を変えないので利益が不利益を上回らないとされる。処方が要る場合は、0.1%などの弱いステロイド点眼を1日4回1〜2週使ってからする1。
  • ⚠️ ステロイド点眼は・・感染の誘発という合併症がある。自然に治る病気に長く使わず、使うならしながらを確認する1。
  • 長引く例・頻回に再発する例では、最後に NSAIDs 内服(など)を使う。StatPearls の整理では、NSAIDs 内服はステロイド点眼の代わり、またはステロイド点眼で治まらないときに使う1。

強膜炎

定義と原因

強膜炎はそのものに及ぶ重く、破壊的な、肉芽腫性の炎症である。程度は軽いものから失明に至るものまで幅がある。原因は大きく2群に分かれる。

flowchart TD
    A["強膜炎"] --> B["感染性"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-infectious'>非感染性</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>)"]
    B --> D["外因性<br>外傷後・手術後"]
    B --> E["内因性<br>結核・梅毒"]
    B --> F["最も多いのは角膜の感染が<br>隣接する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>へ広がるもの"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>に伴う<br>(30〜50%)"]
    C --> H["特発性"]
  • の起因病原体は細菌・ウイルス・真菌・寄生虫である。内因性では結核・梅毒が代表である。
  • ⚠️ に免疫抑制治療をすると悪化する。外傷・手術の既往、角膜潰瘍の隣接、膿や壊死の急速な進行があれば、まず感染を考えて検体を採る。
  • 手術後に創の近くに生じる()もある。原因術式はとが多い2。感染性か免疫性かの区別が要る。

免疫介在性強膜炎の疫学と病態

病態は、・環境因子・内因性物質によって免疫応答が乱れ、上強膜とに炎症性の(免疫複合体の沈着を伴う血管炎)が起こることである。血管が閉塞した部分のは栄養を失って壊死する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='genetic predisposition'>遺伝素因</span>・環境因子・内因性物質"] --> B["免疫応答の乱れ"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep'>深層</span>上強膜と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>の<br>炎症性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microangiopathy'>微小血管障害</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>の浮腫と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep'>深層</span>血管の怒張(紫色の充血)"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular occlusion'>血管閉塞</span>による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>の虚血"]
    E --> F["壊死・菲薄化<br>ぶどう膜が透見"]
    F --> G["ぶどう腫・穿孔"]

臨床分類(Watson の分類)

Watson と Hayreh の分類は、眼球の赤道で前部と後部を分け、前部をびまん性・結節性・壊死性に、壊死性をさらに炎症を伴うものと伴わないもの()に分ける2。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>強膜炎"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior scleritis'>前部強膜炎</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior scleritis'>後部強膜炎</span><br>(赤道より後方)"]
    B --> D["非壊死性"]
    B --> E["壊死性"]
    D --> F["びまん性"]
    D --> G["結節性"]
    E --> H["炎症を伴う"]
    E --> I["炎症を伴わない<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scleromalacia perforans'>穿孔性強膜軟化症</span>)"]

病型ごとの特徴

病型 重症度 痛み 所見 主な基礎疾患
びまん性(非壊死性) 最も多く、最も軽い 中等度 上強膜の充血の奥に深い青紫色の色調。でしない 関節リウマチ
結節性(非壊死性) 中等度 中等度〜強い 硬く、動かない結節。壊死性へ進むことはまれ 関節リウマチ
壊死性・炎症を伴う 最も重く、失明の危険 強い 周囲の強い炎症に囲まれたの領域。壊死部が薄くなりぶどう膜が透けて見える。急速に進行し、しばしば両眼性 、関節リウマチ、
壊死性・炎症を伴わない() 静かに進む ほぼない で薄い、炎症はない。半透明に膨隆した(ぶどう腫)からぶどう膜が透ける。しばしば両眼性 長年の血清反応陽性関節リウマチをもつ高齢女性
視力予後が悪い あり の所見が乏しいことがある(下記) 基礎疾患は30%

所見の見方を補うと次のようになる。

  • びまん性:眼球の広い範囲に、太い血管の網が暗赤色に怒張し、充血が眼球の奥から紫がかって見える。
  • 結節性:の上に盛り上がった暗赤色の結節があり、硬く、動かない。の細い光の帯をあてると、光の帯が結節の部分で外へ弓なりに盛り上がって見え、隆起がそのものにあることが分かる。の結節はの上で動かせることが多い点と対比して覚える。
  • 壊死性(炎症あり):充血した血管に囲まれた中に、血管が途絶えた白っぽい野がある。進行するとが薄くなり、下のぶどう膜が青黒く透ける。
  • :充血はほとんどないのに、の一部が青灰色に透け、薄く膨らんで見える。症状はのとくらいしかない()。

💡 は「穿孔性」と呼ばれるが、無治療でも実際に自然穿孔することはまれで、軽い外傷で破れやすいことが問題になる。無痛でも高度の菲薄化はやをもたらしうるので、軽く見ない2。

後部強膜炎

赤道より後方のの炎症で、を伴うことも伴わないこともある。

  • 従来の整理では、強膜炎全体の20%を占め、基礎疾患は30%にみられ、85%で永続的なを残すとされる。頻度も視力予後も報告によって大きく異なる数字で(頻度は下記)、「が静かでも視力を失いうる病型」と押さえる。
  • 症状は炎症の場所で決まる:痛み、、、、。
  • :腫脹、、、、、の肥厚と剥離。
  • が最も重要な検査である。B モード超音波で後部の肥厚(2 mm 超)を探す。の組織の肥厚と視神経周囲の液体が、視神経の影と組み合わさって T 字徴候をつくる3。で乳頭周囲や網膜下の異常を併せて評価する。

⚠️ はがほとんど正常なまま、・眼窩の腫瘍・・とされやすい。痛みを伴う眼底の異常では超音波を忘れない。StatPearls の整理ではは前部型より少ない(約2%)とされ、頻度の数字は集団によって異なる3。

上強膜炎と強膜炎の見分け方

項目 強膜炎
炎症の深さ 上強膜(表層血管網) そのもの(血管網)
痛み ないか軽い違和感 深く鈍い強い痛み。夜間や眼球運動で悪化し、眠りを妨げる
充血の色 〜サーモンピンク 暗赤色〜青紫色
圧痛 軽い 強い
結節 の上で動かせることが多い 硬く、動かない
充血が引く 引かない
視力 保たれる 壊死性・後部型で低下
約30%(多くは特発性) 30〜50%。壊死性で最も多い
経過 自然軽快、再発あり 放置で進行、壊死・穿孔
治療 冷やしたから NSAIDs 内服、ステロイド全身、

フェニレフリン点眼試験

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>付近の充血<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular discharge'>眼脂</span>なし)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phenylephrine eye drops'>フェニレフリン点眼</span><br>10〜15分後に再観察"]
    B --> C{"充血が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blanching'>退色</span>したか"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blanching'>退色</span>した"| D["表層上強膜血管の充血<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='episcleritis'>上強膜炎</span>"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blanching'>退色</span>しない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep'>深層</span>上強膜血管の充血<br>→ 強膜炎を疑う"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='avascular'>無血管</span>野・菲薄化・<br>眼底と超音波を確認し全身検索"]

💡 はα1刺激薬で血管を収縮させる。表層の上強膜血管は点眼がよく届いて縮むが、強膜炎で怒張するの血管網はに接する深い位置にあり、ほとんど縮まない。StatPearls は2.5%を1滴点眼し10〜15分後に判定する方法を挙げている1。

壊死性強膜炎と全身疾患

強膜炎はおよそ半数で関節リウマチやなどの自己免疫疾患を伴い、炎症を伴う壊死性型は激しい疼痛を伴い、との関連が最も強く、予後も最も悪い3。強膜炎は全身の血管炎が眼に現れた徴候でもある。

基礎疾患 強膜炎との関係 押さえどころ
関節リウマチ 強膜炎で最も多い基礎疾患。びまん性・結節性・壊死性のいずれも起こし、長年の血清反応陽性例ではを起こす 強膜炎の出現は・の活動性を示し、全身治療の強化が要る(関節リウマチ)
の代表的な原因。周辺部角膜潰瘍を伴うことがある 強膜炎が初発症状のことがある。ANCA 検査と、上気道・肺・腎の検索を急ぐ()
の原因として多い 耳介・鼻・気道の軟骨炎を探す
・ 強膜炎の基礎疾患として多い 腸症状・全身の血管炎症状
  • ANCA 関連強膜炎は、特発性強膜炎よりを起こしやすい2。
  • ANCA 関連血管炎がで始まるのは約6%とまれだが、強膜炎で発症し、数日後に関節痛、その後に致死的なへ進んだ例がある。強膜炎を診たら ANCA を含む全身検索を行う4。

⚠️ は眼の問題にとどまらず、命にかかわる全身の血管炎のでありうる。眼科医は内科(免疫内科・リウマチ科)とすぐに連携する。

検査

強膜炎の検査は、眼と全身状態の両方について行う。とくに血管炎とを狙って探す。

対象 検査 目的
眼 (自然光でも観察)、試験 炎症の深さ、野・菲薄化の有無
眼 、、 、・網膜・視神経の合併症
全身 関節・皮膚・耳鼻・呼吸器・腎の診察 関節リウマチ、、の手がかり
全身 血液検査(ANCA、、、、HLA-B27、ACE、、CRP、血算)、胸部X線2 血管炎・・の手がかり
全身 尿検査 血管炎を疑うときの腎病変の手がかり
全身 梅毒・結核の検査2 免疫抑制の前に感染性を除外

治療

最も重要なのは基礎疾患を厳密に抑えることであり、眼科医と免疫内科医の協力が欠かせない。

病型ごとの治療

病型 治療の組み立て
前部・非壊死性(びまん性・結節性) NSAIDs 内服 → 足りなければ短期間のステロイド内服。局所治療の効果は疑問
前部・壊死性(炎症を伴う) ステロイド内服、、その併用、生物学的製剤
後部 基礎疾患のある高齢者はと同じ強い治療。基礎疾患のない若年者は NSAIDs
菲薄化・穿孔の危険 眼球を補強する手術()が必要なことがある
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune-mediated'>免疫介在性</span>強膜炎<br>(感染性を除外)"] --> B{"壊死性か"}
    B -->|"壊死性でない"| C["NSAIDs内服"]
    C --> D{"効果は十分か"}
    D -->|"不十分"| E["短期間のステロイド内服"]
    E --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>・減量できないか"}
    F -->|"そうである"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunosuppressant'>免疫抑制薬</span>・生物学的製剤"]
    B -->|"壊死性である"| H["診断時点から<br>ステロイド全身投与+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunosuppressant'>免疫抑制薬</span><br>(生物学的製剤を併用)"]
    H --> I{"菲薄化が進むか"}
    I -->|"進む"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scleral patch graft'>強膜パッチグラフト</span>で<br>眼球を補強"]
  • 非壊死性では NSAIDs 内服(・など)から始め、足りなければ短期間の()内服を加える。
  • 局所治療の位置づけ(従来と現行):従来の整理では、非への局所治療(ステロイド点眼)の効果は疑問とされる。実際、1%点眼の単独治療は、専門施設では成功率が低く、全身治療が選ばれてきた2。現行の整理では、より強力なジフルプレドナート点眼の単独で83%の治療成功が報告され(が約4分の1)、軽症のでは局所ステロイドと NSAIDs 内服から始めるが示されている23。点眼を使うときはを確認し、効果が足りなければ全身治療へ進む。
  • ⚠️ は、を招くおそれから非に限る2。
  • は段階を踏まず、診断時点から積極的に治療する。全身ステロイドは経口1 mg/kg/日で始めることが多く、4〜6週以上かけてする。これに(メトトレキサート、、、血管炎では)を併用する2。は毒性が強いため、重症のや全身血管炎に伴う例に限る3。重症・難治例では生物学的製剤(リツキシマブ、、)を使う3。
  • は迅速で強い治療を要する。・・・高度のなど視力を脅かす所見があれば、速やかに全身ステロイドを使い、再発・・効果不十分なら早めにを加える3。
  • 補強の手術:内科的治療を尽くしても菲薄化が進む例では、提供者の・角膜・筋膜などでを行う。目的は眼球の構造を保つことで、炎症を抑える内科的治療は別に続ける2。
  • は病原体に応じた抗微生物薬(全身投与を含む)と、必要なら壊死組織の切除で治療する。

⚠️ と違い、強膜炎は点眼だけで様子を見てよい病気ではない。痛みが強い赤目ででしなければ、眼科で強膜炎を確かめ、を探す。

まとめ

  • は眼球外膜の後方5/6を占め、が不規則に並びほぼなので不透明で丈夫、壊死すると修復されにくい。厚さ0.3〜1 mm、知覚は三叉神経。
  • 表面から・上強膜(表層・の血管網をもつ疎性組織)・の順に重なる。は表層、強膜炎はの血管網が怒張する。
  • :良性・自然軽快・。80%片眼、痛みは軽く、視力正常、なし、で。(びまん性・)と。70%特発性。強膜炎のではなく、強膜炎へ進まない。治療は冷やした→弱いステロイド点眼を短期間(合併症に注意。NSAIDs点眼は効果が限られる)→NSAIDs 内服。
  • 強膜炎:重く破壊的な。感染性(外因性・内因性、角膜感染の波及が多い)と。40〜60歳、女性に多く、50%両眼性、30〜50%に。
  • Watson 分類:前部(非壊死性=びまん性・結節性、壊死性=炎症あり・なし)と後部。びまん性が最も多く軽い。壊死性(炎症あり)が最も重く、野と菲薄化でぶどう膜が透ける。は無症状のまま進み、長年の血清反応陽性関節リウマチの高齢女性に多い。
  • は従来の整理で強膜炎の20%・85%で永続的なとされる(StatPearls では約2%で、数字は報告により異なる)。が静かでも視力を失いうる。・・・・。超音波の T 字徴候が鍵。
  • は関節リウマチ・・と強く結びつき、命にかかわる血管炎のになりうる。ANCA を含む全身検索を行う。
  • 治療の最優先は基礎疾患の厳密な制御と免疫内科との連携。非壊死性は NSAIDs 内服(軽症では局所ステロイドも)→短期ステロイド内服、壊死性は診断時からステロイド全身投与+・生物学的製剤、菲薄化が進めば。は非壊死性に限る。

出典

  1. 1.Episcleritis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)上強膜炎は単純型(びまん性・区域性、約7割)と結節型(約3割)に分かれ、6〜7割が特発性で残りは関節リウマチ・炎症性腸疾患・SLE・強直性脊椎炎・血管炎などの全身性疾患や感染症が背景にあること、フェニレフリン2.5%を1滴点眼し10〜15分後に判定すると上強膜血管は退色するが強膜血管は退色しないこと、対症療法は冷却した人工涙液の頻回点眼を第一とし、症状が続く場合は局所ステロイド点眼(漸減しつつ眼圧をフォローする)または経口NSAIDsを選択肢とすること、自然軽快までの経過は2〜21日と自己限定的だが約3割で再発すること、処方が要る場合は弱い局所ステロイド(フルオロメトロン0.1%など)を1日4回1〜2週使ってから漸減すること、局所NSAIDsは有用性が限られ病気の経過を変えないため利益が不利益を上回らないとしていることを確認した(2023年8月7日更新版の本文を NCBI の書籍アーカイブの XML で照合)。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Update on Therapy for Non-Infectious Scleritis(Clinical Ophthalmology・2026)WatsonとHayrehの分類が眼球の赤道で前部・後部を分け、前部強膜炎をびまん性・結節性・壊死性に、壊死性をさらに炎症を伴うものと伴わないもの(強膜軟化症)に分けること、強膜軟化症は典型的に無痛だが進行性の菲薄化で視力低下や眼球穿孔をもたらしうること、ANCA関連強膜炎が特発性強膜炎より強膜軟化症を呈しやすいこと、結膜下ステロイド注射は強膜壊死の懸念から非壊死性強膜炎に限って推奨されること、壊死性強膜炎は段階的な治療と対照的に診断時点から積極的な治療を要し、全身ステロイドは経口プレドニゾンを1 mg/kg/日で開始することが多く4〜6週以上かけて漸減すること、局所ステロイドの単独療法は専門施設での成功率が低く全身治療が選ばれてきた一方、ジフルプレドナート単独で83%の治療成功が報告されていること、強膜炎の多くで考慮する検査として ANCA・RF・抗CCP抗体・ANA・HLA-B27・ACE・胸部X線・赤沈・CRP・血算と梅毒・結核の除外を挙げていること、内科的治療を尽くしても菲薄化が進む例では強膜パッチグラフトを検討し手術の目的は眼球の構造的安定化であること、手術誘発性壊死性強膜炎の原因術式として翼状片切除と白内障手術が最も多いことを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Scleritis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)2026年9月14日更新版の本文(NCBI の書籍アーカイブの XML)で、強膜炎は前部型(約98%、びまん性・結節性・壊死性)と後部型(約2%)に分かれること、炎症を伴う壊死性型が最も重く予後が最も悪く全身疾患との関連が最も強いこと、深層上強膜血管は2.5%フェニレフリン点眼で退色しないこと、およそ半数に関節リウマチや全身性血管炎などの自己免疫疾患を伴うこと、後部強膜炎はB-scan超音波で2 mmを超える後部強膜の肥厚を示し、球後の肥厚と視神経周囲の液体がT字徴候をつくること、非感染性前部強膜炎の第一段階は局所ステロイド点眼(軽症向けで効果は限られる)と経口NSAIDs、第二段階は経口ステロイド、第三段階は免疫抑制薬(メトトレキサートが最多、シクロホスファミドは重症壊死性・血管炎関連に限る)、第四段階は生物学的製剤(TNF阻害薬、ANCA関連ではリツキシマブ)であること、後部強膜炎は迅速で強い治療を要することを確認した。閲覧 2026-09-29
  4. 4.P20 Scleritis as initial presenting feature in ANCA-associated vasculitis(Rheumatology Advances in Practice・2021)ANCA関連血管炎の初発症状として眼症状(強膜炎を含む)が現れることは全体の約6%とまれだが、強膜炎で発症し数日後に関節痛、その後に致死的な肺出血へ進んだ症例を挙げ、強膜炎を診た時点でANCA血清検査を含む全身検索を促すべきことを確認した。閲覧 2026-09-29