眼科学

眼科学 · ML-22

ドライアイ

Dry eye disease

前提:正常
感覚器:眼

🧠 全体像:は「目が乾く病気」ではなく、と眼表面のバランス(恒常性)が崩れ、症状を伴う病気である。涙が足りない(減少型)か、涙がすぐする(亢進型、多くは)かが入口で、どちらもの不安定化とから眼表面の炎症・障害へ進み、それがさらにを乱す悪循環に入る。診断は症状()+の不安定化・・眼表面の染色の組み合わせで行い、・染色・Schirmer 試験は必ず自分で行えるようにしておく。治療はが土台で、原因(不足・・炎症・眼瞼)ごとに治療を重ねる。

なぜドライアイを学ぶのか

  • はっきりした症状をもつ人は5〜30%にのぼり、画面を見る時間が増えるにつれて増えている。
  • 症状は、眼科を受診する患者で最も多い症状である。
  • 重い症状は、狭心症に匹敵するほど生活の質を下げる。

目をこする、目薬を何度も差す、といった日常の行動に表れる身近な病気だが、放置するとの障害や感染のになる。点眼薬としてのの成分との問題は眼科ので扱う。

涙液層と眼表面の要点

は、外側の(由来。を防ぎ、を安定させる)と、その内側のを含むからできている。古典的な「・・」の3層モデルは現実を単純化したもので、現在はとを、上皮に近いほどが濃い一体のムコとみなす。詳細は眼球の解剖と正常な眼科所見を参照。

成分 作る場所 足りないと
脂質 (瞼板の中、瞼縁に開口) 涙がすぐする → 亢進型
水分 ・副 涙の量そのものが足りない → 減少型
の、上皮細胞の表面 涙が眼表面にとどまらず、はじかれる

のたびには眼表面に広がり直す。が少ない・眼瞼がきちんと閉じないと、は途中で切れる。

定義

TFOS DEWS II(2017)の定義

⭐ 2017年の国際ワークショップ第2回報告 TFOS DEWS II は、を次のように定義した1。

  • 眼表面のの疾患である
  • の恒常性の喪失を特徴とする
  • 眼の症状を伴う
  • 病因として次の4つが働く
    • の不安定化
    • の
    • 眼表面の炎症と障害
    • 神経感覚の異常

TFOS DEWS III(2025)で改めた点

2025年の TFOS DEWS III は、DEWS II の定義を大きくは変えず、次のように言い直した1。

観点 DEWS II(2017) DEWS III(2025)
位置づけ 眼表面の疾患 症状を伴う疾患
恒常性を失うもの および/または眼表面
症状 「を伴う」 症状は定義の一部で、常に症状がある
病因 の不安定化と、眼表面の炎症と障害、神経感覚の異常 同じ4つ

💡 DEWS III は、が原因と経過と治療反応の分かっている「疾患」であり「症候群」ではないことも強調している1。症状があることが前提なので、所見だけあって症状のない眼はと診断しない。

悪循環

どの型のも、原因の違いを問わず共通の経路に入り、互いに強め合う悪循環になる2。

flowchart TD
    A["涙が足りない(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>減少)<br>または涙がすぐ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evaporation'>蒸発</span>する(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evaporation'>蒸発</span>亢進)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span>"]
    B --> C["眼表面の上皮に炎症<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span>が出る"]
    C --> D["上皮の障害・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='goblet cell'>杯細胞</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucins'>ムチン</span>の減少"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear film'>涙液層</span>の不安定化<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear film'>涙液層</span>が早く破れる)"]
    E --> B
    C --> F["角膜の神経が刺激・障害される<br>(神経感覚の異常)"]
    F --> G["痛み・乾燥感などの症状<br>反射性の涙の分泌の乱れ"]

分類

国際ドライアイワークショップ(2007)の原因別の分類

最初の国際ワークショップ(DEWS、2007年)は、を減少型と亢進型の2つに大きく分けた。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry eye'>ドライアイ</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>減少型"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evaporation'>蒸発</span>亢進型"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sjögren syndrome'>Sjögren症候群</span>に伴うもの<br>(一次性・二次性)"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sjögren syndrome'>Sjögren症候群</span>以外"]
    C --> F["内因性<br>(眼瞼と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blink(ing)'>瞬目</span>の問題)"]
    C --> G["外因性<br>(眼表面の外からの要因)"]
大分類 小分類 具体的な原因
減少型 に伴う 一次性(単独)、二次性(関節リウマチなど他のに合併)
減少型 以外の の機能不全(加齢・先天性など)、の導管の閉塞(瘢痕性の疾患など)、反射の遮断(の低下など)、全身薬(抗ヒスタミン薬・抗うつ薬・利尿薬など)
亢進型・内因性 眼瞼との問題 の脂質の不足、眼瞼の開き方の異常(・)、の減少(画面作業・Parkinson病など)、薬の作用()
亢進型・外因性 眼表面の外からの要因 、点眼薬と、、眼表面の疾患(アレルギーなど)

コンタクトレンズとの関係はコンタクトレンズとその合併症で扱う。

現行の考え方:2つの型は重なり、原因ごとに見る

TFOS DEWS と DEWS II は、減少型と亢進型(または両者の合併)に分けることを重視してきた。複数の研究で、の少なくとも3分の2が亢進型である1。亢進型の最大の原因はである()。

DEWS III はさらに、2つの型に分けるだけでは治療の的が絞れないとして、病因となる要因ごとに細かく分けた1。

領域 要因 例
の不足 脂質
の不足 水 、加齢、薬剤
の不足 ・ の減少
眼瞼の異常 と 不完全な、
眼瞼の異常 瞼縁 、、
眼表面の異常 解剖学的な不整合 弛緩症、瞼縁平行ひだ
眼表面の異常 神経の機能障害 、後
眼表面の異常 細胞の障害、一次的な炎症・ による障害、

💡 実際の患者では複数の要因が同時にあり、時期によって入れ替わる。だから「どの型か」を1つ決めるより、「何がこの人の症状を動かしているか」を並べて考える。

症状と問診

自覚症状

  • 乾燥感、灼熱感、、充血、眼の疲れ、しみる感じ、まぶしさ
  • 、涙目

⚠️ なのに涙が出ることがある。眼表面が乾いて刺激されると、から反射性の涙が一気に出る。しかしこの涙は脂質やのバランスが悪く、すぐに流れ落ちて眼表面を潤さない。「涙が出るからではない」と考えない。

問診で確かめること

質問 ねらい
いつ症状が出るか(夕方、朝起きた時から、一日中、夜間) 時間帯による変化は原因の手がかりになる。起床時から強いときは、夜間に眼瞼が閉じきっていない可能性も考える
特定の作業と関係するか(パソコン作業、運転) 画面作業ではが減り、涙がしやすい
を差すと症状が変わるか 変わるならの問題らしい。変わらなければ神経の痛みや別の病気も考える

ほかに、コンタクトレンズ、点眼薬()、全身薬、歴、口の乾き・状()も聞く。

OSDI 質問票

⭐ 症状を数値で評価するのがである。代表的な OSDI は、最近1週間の状態を12問で尋ねる。各問に「いつも・ほとんど・半分くらい・ときどき・まったくない」の5段階で答え、6〜12問目は「該当しない」も選べる。

群 質問の内容
眼の症状(1〜5) まぶしさ、ゴロゴロ感、痛み・ひりひり感、かすみ、見えにくさ
生活の制限(6〜9) 読書、夜間の運転、パソコンや銀行の端末での作業、テレビの視聴
環境による不快感(10〜12) 風の強い場所、湿度の低い場所、エアコンの効いた場所

DEWS III は、この短縮版の OSDI-6(6問)を診断のためのスクリーニングに勧め、合計4点以上で症状ありとする1。

細隙灯で見る所見

所見 見え方と意味
瞼縁の炎症 瞼縁が赤く厚ぼったくなり、血管が拡張する
開口部の閉塞 開口部が白〜黄色の栓でふさがり、小さく盛り上がる
泡状の 瞼縁に沿って細かい泡がたまる。脂質の性状の異常を示す
眼表面の炎症
瞼縁平行ひだ、弛緩症 下眼瞼のすぐ上のに、瞼縁と平行なしわが寄る
の高さ 下眼瞼縁にたまる涙の帯。低ければが足りない

重い眼瞼炎を伴うでは、瞼縁が全周で赤くただれ、睫毛のがかさつき、全体が充血する。

瞼縁平行結膜ひだの評価

弛緩症は、下方のにたるんだ、むくみのないひだができる状態で、その軽い形が瞼縁平行ひだである1。ひだはを乱し、の不安定化と症状を起こしうる。下眼瞼の耳側や鼻側ので、ひだの数と高さを評価する。

評価 所見
0 ひだがない
1 ひだが1本
2 複数のひだがの高さより低い
3 複数のひだがの高さより高い

評価が3の眼では、の上にまで盛り上がったひだが見える。

検査

検査は眼に触れないもの・刺激の少ないものから先に行う。やを先に使うと、が乱れて後の検査の値が変わるからである。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medical interview (history-taking)'>問診</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='questionnaire'>質問票</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>で瞼縁・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear meniscus'>涙液メニスカス</span>を観察"]
    B --> C["非侵襲的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear film break-up time, TBUT'>涙液層破壊時間</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein'>フルオレセイン</span>を点眼<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear film break-up time, TBUT'>涙液層破壊時間</span>・角膜染色"]
    D --> E["リサミングリーンで<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>・瞼縁の染色"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Meibomian gland'>マイボーム腺</span>の圧出"]
    F --> G["Schirmer 試験<br>(刺激が大きいので最後に)"]

涙液層破壊時間

⭐ のあと眼を開けたままにして、が最初に破れる(乾いた点が現れる)までの時間を測る。の安定性を見る検査である。・Schirmer 試験・による角膜染色は、臨床実習で自分で行えるようにすべき必須の手技に含まれる。

方法 やり方と所見
でを染め、のコバルトブルー光で見る。緑に光るの中に、暗い点や筋(が切れた部分)が現れるまでの時間を測る
非侵襲的 角膜にの光の輪(Placido リング)を映し、輪がゆがんだり途切れたりするまでの時間を測る。色素を使わないのでを乱さない
基準 異常とする値
非侵襲的 10秒未満1
(非侵襲的な機器がない場合) の量を最小にしたうえで5秒未満1

💡 を点眼するとの量と性質が変わり、破壊時間が短く出やすい。従来は10秒を目安にすることが多かったが、DEWS III はで測る場合は5秒未満を陽性としている。日本の研究会が支持するアジア学会の基準も、症状と5秒未満の組み合わせで診断する1。

眼表面の染色

⭐ 色素で、傷んだ上皮細胞を染め出す。

色素 染まるもの 主に見る場所
上皮の欠損・細胞間の結合がゆるんだ部分 角膜(コバルトブルー光で緑に光る点)
リサミングリーン 膜の保護を失った傷んだ細胞 ・瞼縁(白色光で青緑の点)

リサミングリーンで染めると、傷んだ眼では部(眼を開けたとき外気に触れる範囲)のに青緑の細かい点状の染色が散らばり、重いと点が集まって帯になる。下眼瞼の瞼縁も染まる。

Oxford の評価法

角膜(中央の円)と、その鼻側・耳側の(三角形の区画)の染色の点の数を、見本の図と比べて段階をつける。

見本 段階 程度
A 0 なし
B I ごくわずか
C II 軽度
D III 中等度
E IV 高度
E を超える V 重度

A から E へ進むにつれて角膜との各区画のが増え、E ではの三角形の区画に点が密集する。

診断に使う染色の基準

DEWS III では、角膜のが5個を超える、のリサミングリーンが9個を超える、または瞼縁のリサミングリーン染色が長さ2 mm 以上かつ幅25%以上のいずれかを、の所見とする1。

Schirmer 試験

⭐ の量(分泌)を測る。をしないで行う方法が Schirmer 第1法である。

flowchart TD
    A["目盛り付きの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filter paper'>濾紙</span>の端を折る"] --> B["下眼瞼の耳側3分の1の<br>瞼縁にかける"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filter paper'>濾紙</span>が角膜に触れないようにする<br>(触れると反射性の涙が出る)"]
    C --> D["軽く<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid closure'>閉瞼</span>または自然な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blink(ing)'>瞬目</span>で5分待つ"]
    D --> E["濡れた長さを mm で読む"]
5分間に濡れた長さ 判定
0〜5 mm 高度の
5〜10 mm 分泌低下
10 mm を超える 正常

両眼の下眼瞼の外側に白いの細い帯を垂らし、5分後に濡れた長さを読む。

⚠️ Schirmer 試験は刺激の大きい侵襲的な検査で、結果は多くの要因に左右される。DEWS III は、麻酔を使ってとを分けようとする変法は再現性・感度・特異度が低いとしている1。1回の値だけで判断せず、症状や他の所見と合わせて読む。

マイボーム腺の圧出

手順・評価 内容
場所 下眼瞼の中央3分の1が最も押し出しやすい
押し方 指や器具で眼瞼を10〜12秒押し続ける
分泌物(マイバム)の性状 透明 → → して粒子を含む → 練り歯磨き状 の順に悪い
働いている腺の数 何本の腺から分泌物が出るかを数える

正常なは、押すと透明な油が開口部から押し出される。機能不全では開口部に栓がつまって小さく盛り上がり、押しても出ないか、濁ったり固まったりした分泌物がやっと出てくる。DEWS III でもマイバムの性状を0(透明な液)〜3(練り歯磨き状)の4段階で評価し、10〜15秒の圧迫後に何本の腺から出るかをみる1。

DEWS III による診断の組み立て

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry eye'>ドライアイ</span>を疑う症状"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='questionnaire'>質問票</span>で症状ありか<br>(OSDI-6 が4点以上)"}
    B -->|"いいえ"| X["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry eye'>ドライアイ</span>とは診断しない<br>他の原因を考える"]
    B -->|"はい"| C{"次のうち1つ以上あるか<br>・非侵襲的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear film break-up time, TBUT'>涙液層破壊時間</span>10秒未満<br>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span><br>・眼表面の染色"}
    C -->|"いいえ"| X
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry eye'>ドライアイ</span>と診断<br>(鑑別疾患を除外したうえで)"]
    D --> E["原因の要因を調べる<br>脂質・水・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucins'>ムチン</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blink(ing)'>瞬目</span>・瞼縁<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>のひだ・神経・炎症"]
    E --> F["要因に合わせて治療を選ぶ"]

のは、浸透圧が308 mOsm/L 以上、または左右差が8 mOsm/L を超えることを指す1。

💡 の恒常性の破綻を示す3つの所見(非侵襲的・浸透圧・眼表面の染色)とそのは DEWS II(2017)から変わっていない。DEWS III で変わったのは入口ので、DEWS II が2種類のを認めていたのに対し、両者が同等でないことが分かったため OSDI-6 に一本化した1。

⚠️ 同じような症状は、、眼瞼炎、感染性の結膜炎・角膜炎、眼表面の腫瘍でも出る。赤目の鑑別は赤目の鑑別で扱う。

治療

基本方針

⭐ でを補うことが治療の基本()である。そのうえで、型と原因に合わせて治療を足していく。

TFOS DEWS III(2025)も、第一段階をと環境の調整、の補充剤とし、原因となる要因ごとに治療を対応させ、複数の治療を併用するのが最も適切だとしている。軽症・中等症・重症や段階1〜4で患者を区切る従来の段階的な枠組みは、変化する複数の要因を表しきれないとして、最適ではないとされた3。

従来の(DEWS II 2017 の段階的な管理) 現行(DEWS III 2025)
重症度に応じて、 → → 清・ → 手術と段階を上げる 見つけた要因ごとに治療を当てはめ、はじめから複数を組み合わせる

生活と環境の調整

  • 画面作業では意識してを増やし、休憩をとる。画面を目の高さより下に置き、眼を大きく開けすぎないようにする。
  • エアコンや扇風機の風を顔に当てない。加湿する。
  • 入り点眼の回数を見直す。を悪くする全身薬がないか確認する。

人工涙液の使い方

型 点眼回数 選び方 効き方
減少型 1日3〜4回 粘稠度の低いものから始め、効かなければ高いものへ進む 比較的早く効く
亢進型 1日2〜3回 脂質を含む ゆっくりで、通常3〜4週間の治療後に症状が和らぐ

減少型では、次のように段階的に進める。

flowchart TD
    A["開始<br>カルボキシ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='methylcellulose'>メチルセルロース</span><br>ヒプロメロース・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyaluronic acid'>ヒアルロン酸</span>"] --> B{"効果は十分か"}
    B -->|"はい"| Z["継続"]
    B -->|"いいえ"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyethylene glycol (PEG)'>ポリエチレングリコール</span>400<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='propylene glycol'>プロピレングリコール</span>・グリセリン"]
    C --> D{"症状は治まったか"}
    D -->|"はい"| Z
    D -->|"いいえ"| E["ゲル・脂質製剤を考える<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ophthalmic (eye) ointment'>眼軟膏</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='liposome'>リポソーム</span>スプレー<br>処方の挿入剤"]

⚠️ 1日に何度も差す患者では、が上皮を傷めてかえって悪くなるので、の製剤を選ぶ(詳細は眼科の)。

マイボーム腺機能不全への対応

亢進型でがあれば、に加えて固まった分泌物を溶かして出すことが必要になる。

方法 内容
温めたアイマスクなどで眼瞼を温め、固まった脂を溶かす
・眼瞼の清拭 温めたあと瞼縁を押して分泌物を出し、瞼縁の汚れを落とす
脂質を補う 脂質を含む・スプレー
診療所での加温機器など 家庭でので不十分な場合

・・診療所での加温機器は、DEWS III でもの治療に挙げられている3。

有効成分による保存的治療(抗炎症)

眼表面の炎症が悪循環を回しているときは、炎症を抑える薬を使う。

薬 作用 対象・特徴
点眼 カルシニューリン阻害でT細胞の活性化とサイトカイン放出を抑える3 、など炎症の強い。分泌を増やし、確かな抗炎症作用がある。全身では移植後のとして使われる薬なので、副作用の印象から敬遠されがち。米国では2002年に0.05%製剤が承認された3
リフィテグラスト点眼 リンパ球の LFA-1 の拮抗薬。LFA-1 と ICAM-1 の結合を阻み、リンパ球の移動・増殖とサイトカイン産生を抑える3 と同じ抗炎症の位置を争う薬。と比べて徴候・症状を改善した3。「より効果が高く副作用が少ない」と紹介されることもあるが、DEWS III は両者の優劣を示しておらず、点眼時の刺激感と(約16%)を挙げている3
ドキシサイクリン内服 と IL-1 を抑える抗炎症作用。脂を分解する細菌の酵素も減らす3 ・・眼瞼炎。抗菌薬としてより抗炎症目的で使う。ただしの厳密な試験はまだ少ない。⚠️ 妊娠中と8歳未満の小児には禁忌(歯の着色・骨の発育への影響)3
ステロイド点眼(短期) 強い抗炎症作用 急性の悪化に短期間。・に注意

DEWS III は、一次的な炎症・免疫の要素にはステロイド、、リフィテグラスト、清などを使うとしている3。日本ではと水分・の分泌を促す点眼、を増やす点眼も使われる。

侵襲的治療・手術

保存的治療で不十分な重い例では、次の方法を使う。

方法 ねらい 主な対象
をふさいで涙の排出を減らし、眼表面にためる 中等症〜重症の減少型。効果の根拠は十分ではなく、・の脱落、まれに・・を起こす3
角膜を覆って保護し、を保つ 遷延性の上皮障害
・の閉鎖手術 涙の排出路を恒久的に閉じる が脱落する重症例
のひだの切除・ を乱すひだを取り除く 弛緩症
傷んだ眼表面の上皮化を助ける 治らない上皮欠損
角膜の手術 穿孔・瘢痕への対応 重症の合併症

⚠️ をふさぐのは、眼表面に炎症があるときには慎重に行う。を含んだ涙まで眼表面にためてしまうからである。

と角膜の手術は角膜の手術で扱う。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry eye'>ドライアイ</span>と診断"] --> B["生活・環境の調整<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='artificial tears'>人工涙液</span>(全員)"]
    B --> C{"主な要因は何か<br>(複数あれば並行して対応)"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='meibomian gland dysfunction (MGD)'>マイボーム腺機能不全</span>"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warm compress therapy'>温罨法</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid massage'>眼瞼マッサージ</span><br>脂質を含む<span class='jp-term jp-term-diagram' title='artificial tears'>人工涙液</span><br>必要ならドキシサイクリン"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>不足"| E["粘稠な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='artificial tears'>人工涙液</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='punctal plug'>涙点プラグ</span>"]
    C -->|"眼表面の炎症"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciclosporin'>シクロスポリン</span>・リフィテグラスト<br>短期のステロイド"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='incomplete eyelid closure'>閉瞼不全</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>のひだ"| G["眼瞼の治療<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>のひだの切除"]
    D --> H{"重症・難治か"}
    E --> H
    F --> H
    G --> H
    H -->|"はい"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bandage contact lens'>治療用コンタクトレンズ</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='punctal occlusion'>涙点閉鎖</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amniotic membrane transplantation'>羊膜移植</span>など"]

全身疾患との関係

疾患 眼表面への影響
と唾液腺にリンパ球が浸潤し、減少型の重いとを起こす。二次性は関節リウマチなどに合併する
後にとが障害され、重いになる
・眼瞼炎を合併しやすい
(、) 眼が閉じずに乾く(性角膜症)

⚠️ が重く、口の乾きや状を伴うときは、を疑って内科・科に紹介する。自己免疫疾患と眼表面は自己免疫疾患と眼表面、の疾患としての整理はにある。

まとめ

  • 症状は5〜30%で、眼科で最も多い訴え。重症では狭心症に匹敵するほど生活の質を下げる。
  • TFOS DEWS II(2017)の定義:眼表面の疾患で、の恒常性の喪失を特徴とし、を伴う。病因はの不安定化、、眼表面の炎症と障害、神経感覚の異常。DEWS III(2025)は「症状を伴う疾患」「および/または眼表面の恒常性の喪失」と言い直した。
  • DEWS(2007)の分類:減少型(に伴うもの/それ以外:の機能不全・導管閉塞・反射の遮断・全身薬)と亢進型(内因性:の脂質不足・眼瞼の開き方・減少・/外因性:・点眼の・コンタクトレンズ・アレルギー)。実際は少なくとも3分の2が亢進型で、両者は重なる。DEWS III は要因ごとに細分類する。
  • 症状は乾燥感・灼熱感・・充血・疲れ・しみる・まぶしさに加え、反射性のもある。いつ・何をしているとき・で変わるかを聞く。は OSDI で、DEWS III は OSDI-6 の4点以上を症状ありとする。
  • では瞼縁の炎症、開口部の閉塞、泡状の、、瞼縁平行ひだ(0〜3)、の高さを見る。
  • ⭐ :非侵襲的で10秒未満、で測るなら5秒未満が異常とするのが DEWS III の基準。⭐ 染色:は角膜、リサミングリーンは・瞼縁。Oxford の評価法は0〜V。⭐ Schirmer 第1法:麻酔なし5分、角膜に触れさせず、0〜5 mm 高度低下・5〜10 mm 低下・10 mm 超正常。
  • は下眼瞼中央3分の1を10〜12秒押し、性状(透明〜練り歯磨き状)と働く腺の数を見る。
  • 治療の基本は(減少型は1日3〜4回で粘稠度を段階的に上げる、亢進型は脂質入りを1日2〜3回で効果は3〜4週後)。はとマッサージ。炎症には、リフィテグラスト(LFA-1 拮抗薬)、ドキシサイクリン。重症には、、、のひだの切除、、角膜手術。DEWS III は段階で区切らず、要因ごとに複数の治療を組み合わせる。

出典

  1. 1.TFOS DEWS III: Diagnostic Methodology(Tear Film & Ocular Surface Society (American Journal of Ophthalmology)・2025)Aston大学機関リポジトリの全文で、2017年のTFOS DEWS IIの定義(眼表面の多因子性疾患で、涙液層の恒常性の喪失を特徴とし眼症状を伴い、涙液層の不安定化・高浸透圧・眼表面の炎症と障害・神経感覚の異常が病因として働く)と、DEWS IIIが改めた定義(症状を伴う多因子性疾患で、涙液層および/または眼表面の恒常性の喪失を特徴とする)を確認した。ドライアイは症候群ではなく疾患で常に症状を伴うこと、スクリーニング質問票はOSDI-6で合計4点以上、これに非侵襲的涙液層破壊時間10秒未満・涙液浸透圧308 mOsm/L以上または左右差8 mOsm/L超・角膜のフルオレセイン点状染色5個超/結膜のリサミングリーン点状染色9個超/瞼縁のリサミングリーン染色(長さ2 mm以上かつ幅25%以上)のいずれかが加われば診断すること、非侵襲的な測定機器がなくフルオレセインを使うときは量を最小にし5秒未満を陽性とすること、DEWSとDEWS IIが涙液減少型と蒸発亢進型(または両者の合併)への分類を重視し少なくとも3分の2が蒸発亢進型であること、DEWS IIIの細分類が涙液層の不足(脂質・水・ムチン/糖衣)・眼瞼の異常(瞬目と閉瞼・瞼縁)・眼表面の異常(解剖学的な不整合・神経機能障害・細胞障害・一次的な炎症と酸化ストレス)であること、Schirmer試験は下眼瞼の耳側3分の1に濾紙をかけて5分後の濡れた長さをみる侵襲的な検査で、麻酔を使う変法は再現性・感度・特異度が低いこと、結膜弛緩症の軽い形が瞼縁平行結膜ひだで下方の球結膜に多いこと、マイバムの性状は0(透明な液)・1(混濁した液)・2(混濁し粒子を含む)・3(練り歯磨き状)と評価され、圧出性は10〜15秒の圧迫後に評価されること、涙液層の恒常性を評価する主要な検査(非侵襲的涙液層破壊時間・浸透圧・眼表面の染色)はDEWS IIから変わっていないこと、DEWS IIは2種類の質問票を認めていたがDEWS IIIはOSDI-6に一本化したこと、アジアドライアイ学会は症状とフルオレセイン涙液層破壊時間5秒未満で診断するとしていることを確認した閲覧 2026-09-29
  2. 2.The definition and classification of dry eye disease: report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye WorkShop (2007)(The Ocular Surface(International Dry Eye WorkShop)・2007)抄録(PubMed 17508116)で、ドライアイの分類が原因別・機序別・重症度別の3部構成で、機序別の分類は各原因が共通の経路を通って作用することを示し、どの型のドライアイも互いに作用し合い悪循環の一部として増悪しうることが強調されていることを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.TFOS DEWS III: Management and Therapy(Tear Film & Ocular Surface Society (American Journal of Ophthalmology)・2025)Aston大学機関リポジトリの全文で、第一段階の管理が生活習慣の調整・涙液層の補充剤・環境の調整であること、マイボーム腺機能不全には温罨法・眼瞼マッサージ・診療所での加温機器などを用いること、一次的な炎症・免疫の要素にはステロイド・シクロスポリン・リフィテグラスト・自己血清などを用いること、重症・難治例には羊膜移植や手術を行うこと、軽症・中等症・重症や段階1〜4、涙液減少型か蒸発亢進型かで患者を区切る段階・重症度の分類は最適な枠組みではなく、病因となる要因ごとに治療を対応させ複数の治療を併用するのが最も適切な戦略であるとしたこと、シクロスポリンはカルシニューリン阻害薬でT細胞の活性化とサイトカイン放出を抑え、2002年にFDAが0.05%製剤を承認したこと、リフィテグラストはLFA-1とICAM-1の結合を阻害する拮抗薬で、点眼時の刺激感と味覚異常(メタ解析で16%)が報告されること、テトラサイクリン系はMMPやIL-1・TNF-αを抑える抗炎症作用をもつが、プラセボ対照の二重盲検試験は2件しかないこと、テトラサイクリン系は妊娠中と8歳未満の小児では歯と骨への影響のため禁忌であること、リフィテグラストはOPUS試験などでプラセボに対し徴候・症状を改善したこと、涙点プラグはCochraneレビューで症状・所見の改善が結論づけられず、流涙・プラグの脱落、まれに涙小管炎・化膿性肉芽腫・涙嚢炎を起こしうることを確認した閲覧 2026-09-29