眼科学

眼科学 · ML-08

コンタクトレンズによる屈折矯正とその合併症

Contact lenses and contact lens related complications

前提:正常
頭部:眼窩と眼

🧠 全体像:コンタクトレンズは「角膜の上に乗る、もう一枚の角膜」である。より眼に近いので像の大きさの変化と視野の制限が小さく、ハードレンズは角膜の凹凸をで埋めてまで直せる。さらに、角膜を守る(治療用)、見た目を整えるの代わり(的)、夜の間に角膜の形を変える()にもなる。その代わり、角膜への酸素の供給を妨げ、を乱し、微生物を角膜に運ぶ。合併症は乾燥・上皮障害から無菌性の浸潤、そして失明しうるまで連続しており、「痛みが増していく装用者の角膜に浸潤を見たら、装用をやめて直ちに抗微生物治療」が最大の原則である。

コンタクトレンズの種類

素材による分類

分類 素材 特徴
ハードレンズ PMMA 最初期の硬いレンズ。酸素をほとんど通さず、現在はほとんど使われない
ハードレンズ 酸素透過性ハードレンズ RGP 硬く形を保ち、酸素を通す。角膜より小さい径から大きい径まである。角膜との間のが角膜の凹凸を埋めるので、・をよく矯正する
ソフトレンズ 水を含んで柔らかく、指の間で簡単に曲がる。角膜全体と輪部を覆う大きい径で、装用感が良い。酸素は含水率に依存して通る
ソフトレンズ を加えて酸素透過性を大きく高めたソフトレンズ
レンズ 中央がハード、周辺がソフト 中央の酸素透過性ハード部分で鮮明に見せ、周辺のソフトな縁(スカート)で装用感を良くする

💡 ハードレンズの矯正力の秘密は「レンズ」である。硬いレンズの裏面と、でこぼこした角膜の間をが満たすので、光にとっての眼の表面はレンズの滑らかな前面になる。柔らかいソフトレンズは角膜の形になじんでしまうので、は直せない。

ソフトレンズとハードレンズの比較

項目 ソフトレンズ ハードレンズ RGP
装用感 初めから良い 慣れるまでがある
径 角膜より大きく輪部を覆う 角膜より小さいものが基本
眼の上での動き 少ない まばたきごとに動き、下のが入れ替わる
の矯正 が必要。は直せない 角膜・をレンズで直せる
ずれ・脱落 起こりにくく、運動に向く 起こりやすい
異常時の 痛みを感じにくく、障害に気づくのが遅れることがある ・痛みで早く気づきやすい
汚れと寿命 汚れやすく、交換期間が短い 丈夫で長く使える

💡 ソフトレンズの「つけ心地の良さ」は、裏返せば「角膜の傷に気づきにくい」ことでもある。ソフトレンズの装用者ほど、定期検査で角膜を染めて確かめる意味が大きい。

交換期間と装用時間による分類

交換期間 例
長期使用 1年ごとに交換(主にハードレンズ)
定期交換 3か月・1か月・2週間ごとに交換
使い捨て 1日で捨てる(ケア用品が不要で、汚れやアレルギーの問題が最も少ない)
装用時間 内容
終日装用 起きている間だけ装用し、毎晩外す
連続装用 寝ている間も外さずに続けて装用する(2週間、30日の製品がある)

⚠️ 眠ったまま装用すると角膜への酸素が大きく減り、の危険が高くなる。の発生は一晩装用で多く1、一晩装用はを含めての大きな危険因子である2。

光学設計と色による分類

分類 種類 内容
光学設計 球面レンズ ・を矯正する
光学設計 を矯正する。眼の上で回転しないよう、重りや形で向きを安定させる
光学設計 二重焦点・多焦点レンズ 用。遠用と近用の度数の領域をに並べる
色 淡い着色(ハンドリングティント) 視界には影響しない薄い色。洗面台などに落としたレンズを見つけやすくする
色 カラーレンズ・美容レンズ の色や模様を変える。星・模様・動物の眼などを描いた仮装用のものもある

多焦点レンズの設計の一例では、中央から外へ次の順に同心円の領域が並ぶ。

領域 直径 度数
中央の球面の領域 1.7 mm 近用
非球面の輪状の領域 5.0 mm まで 近用から遠用へ連続的に移る()
球面の輪状の領域 8.5 mm まで 遠用
レンズの縁 ― 光学的な働きのない周辺部

中央を近用、周りを遠用にする中心近用型のほか、中央を遠用にする設計もある。いずれも両方の像が同時に網膜に届き、脳が見たい方の像を選ぶ(同時視)。の矯正の全体は調節・・・を参照。

⚠️ 度の入っていない美容レンズも、角膜に乗せる以上はである。処方と装用指導を受けずに使い回したり、つけたまま眠ったりすると、重い角膜感染症の原因になる。

装用の適応

医学的でない理由

理由 内容
見た目 をかけた外見を好まない
の不便 湯気や温度差で曇る、フレームで視野が狭まる、鼻当てが痛い、運動中にずれる・壊れる
職業上の必要 舞台に立つ人、運動選手、刑務官(をつかまれたり割られたりする危険)、調理師(湯気で曇る)

医学的な適応

目的 適応 コンタクトレンズが優れる理由
視力を上げる 強度の(、、強い) では強いで像が小さく、の強いで像が大きく見え、視野の周辺がゆがむ。眼の表面に乗るレンズでは像の大きさの変化と視野の制限が小さい
視力を上げる 角膜表面の不正(、外傷・角膜炎の瘢痕、後、ー) ハードレンズのレンズがを打ち消す
を保つ による、片眼の 左右のの大きさの差を小さくし、両眼で一つの像にまとめやすくする
治療 (下記) 角膜を覆って守り、痛みを和らげ、上皮の再生を助ける
外見の回復 的コンタクトレンズ(下記) した角膜やなどを隠す

💡 ・の子どもは、厚いで像のゆがみや見た目の負担が大きい。片眼だけのでは、では左右の像の大きさが違いすぎてができないため、コンタクトレンズが視機能の発達を守る手段になる。そのものは視力・屈折と、とはを参照。

角膜表面が不正な眼:症例から学ぶ

では、角膜のを色で表す(暖色ほど、寒色ほど平坦)。正常な角膜は中央から周辺へなだらかに色が変わり、は左右対称の蝶ネクタイ型になる。不正な角膜では、局所的な部や非対称で不規則な模様が現れる。

原因 の特徴 での視力 円柱度数 ハードレンズでの視力
下方に偏った円錐状の部(暖色の突出) 0.5 6.75 D 1.0
外傷 瘢痕に沿った不規則で非対称な部 0.8 8.5 D 1.0
後 非対称の強い(ゆがんだ蝶ネクタイ型) 0.35(視力) 8.5 D 0.9
炎症後の 上方が、下方が平坦な上下の非対称 0.4 3.26 D 1.0
角膜炎後の瘢痕 瘢痕の部位に一致した局所の部 0.5 5.5 D 1.0
ー 中央付近の不規則な部 0.1(視力) 4.07 D 0.9

「(視力)」と付けた2例はの記載がない視力で、それ以外はでのである。

⭐ どの症例でも、では0.1〜0.8にとどまった視力が、ハードレンズで0.9〜1.0まで上がっている。で視力が出ないは、手術の前にまずハードレンズを試す。

不正な角膜に使うレンズ

レンズ 形と乗り方 向いている場面
RGP 角膜より小さい径のハードレンズで、角膜の上に乗る 軽度〜中等度の・の第一候補
輪部内径の大きいハードレンズ 輪部のすぐ内側まで届く大きい径のハードレンズ。で染めたの分布で合い具合を評価する 通常のハードレンズがずれる・外れる不正な角膜
ピギーバック ソフトレンズの上にハードレンズを重ねる ハードレンズの装用感に耐えられない眼、角膜の突出が強い眼
レンズ 中央がハード、周辺がソフト ハードレンズの矯正力とソフトレンズの装用感を両立させたいとき
角膜にも輪部にも触れずに橋渡しし、の上に乗る大きいレンズ。内側にをためてから装着し、角膜の前に液の層を作る 進行した、後、重いや

💡 は、装着時にレンズの内側を液で満たし、のついた棒に乗せて眼に入れる。を混ぜた液で装着すると、角膜の前に均一な液の層があることを確かめられる。この液の層は角膜を常に潤すので、重いの治療にもなる。

禁忌

禁忌 理由
眼表面の のをレンズがこすって刺激し、また病変の変化の観察を妨げる(眼表面の腫瘍は眼表面の腫瘍)
結膜炎・角膜炎・眼瞼炎などで充血・・眼瞼腫脹がある間は装用しない。炎症を悪化させ、感染を広げる

⚠️ 赤く痛む眼にレンズを入れ続けない。まず外し、原因を診断する(赤目の鑑別)。

治療用コンタクトレンズ

角膜を覆う「」として使う柔らかいレンズで、視力の矯正ではなく角膜の保護と治癒が目的である。

目的 適応 しくみ
機械的な刺激から守る 睫毛の生え方の異常(睫毛乱生)、眼瞼の縫合糸、()の上眼瞼の石垣状の、 睫毛・縫合糸・乳頭がまばたきのたびに角膜をこするのを防ぐ。では角膜の乾燥を和らげる
上皮の再生を助ける 再発性びらん、後の上皮欠損 眼瞼の摩擦から新しい上皮を守り、接着を助ける
痛みを和らげる 角膜症(など)、角膜の縫合糸 露出した神経終末や縫合糸の端を覆う
手術の前後 睫毛の異常の手術前後、後 移植した羊膜やを保護する

⚠️ 治療用レンズを入れた眼は、傷ついた角膜にレンズが乗っているので感染の危険が高い。多くは抗菌薬の点眼を併用し、定期的に診察してレンズを交換する。

義眼的コンタクトレンズ

角膜がしたり、眼の外見が損なわれたりしたとき、反対眼に合わせて色と模様を描いたレンズで角膜を覆い、外見を整える。

種類 形 使い方
透明レンズに黒い瞳孔 透明なレンズの中央に黒い円を描く 瞳孔を黒く見せる(・など)
単色印刷 の模様を1層で描く の色を反対眼に合わせる
二重印刷 の模様を2層で描き、奥行きを出す より自然なの外見
下地印刷 模様の下に不透明な下地を入れる 下にある白いや瘢痕を透けさせない
遮閉レンズ 中央全体が黒く不透明 光を遮って見えなくする(難治性の、強いまぶしさなど)

症例から学ぶ

症例 状態 レンズの効果
の若い女性 片眼が小さく見える() を描いたレンズで左右の眼の大きさと色の印象がそろう
15歳女性 の後にを受け、左眼の角膜が白く を描いたレンズでが隠れ、左右の眼がほぼ同じに見える
16歳女性 の点眼後、右眼の瞳孔が大きいまま を描いたレンズで瞳孔の大きさの左右差が目立たなくなり、まぶしさを減らせることもある
85歳女性 と眼球の後の右眼。+13.5 D という強いの度数を要する(が無い状態に相当する度数)うえ、左右の眼の外見が異なる +13.5 D の度数を入れた付きレンズで、外見を整えつつ右眼の視力0.2を得た
13歳男児 病変による左眼の 黒い瞳孔を描いたレンズでが隠れる

⚠️ 小児のは、をはじめとする失明・生命に関わる病気の徴候である。原因の診断と治療を済ませたうえで外見の補正を考える()。

💡 的レンズは、度数を入れて視力の矯正も同時に行える。85歳の症例のように、外見と視機能の両方を1枚で補える。

オルソケラトロジー

項目 内容
しくみ 中央が平坦で、その外側にをためる逆向きの曲面をもつ特殊なハードレンズを夜間の就寝中に装用し、角膜の中央を平らに押し広げる
効果 翌朝レンズを外すと、角膜中央が平らになった分だけが減り、日中はもコンタクトレンズもなしで見える
持続 角膜の形の変化は一時的で、装用をやめると数日〜数週で元に戻る。効果を保つには毎晩の装用が要る
中央に広い平坦な領域(寒色)、その周りにな輪(暖色の輪)ができる
の染まり方 レンズ中央が角膜に接して暗く、その外側にがたまった明るい輪、さらに外側にレンズが角膜に着地する帯が並ぶ(的の形)
の進行抑制 小児のの進行を遅らせる

💡 の進行を遅らせるしくみとして、角膜の中央は平らになり周辺がになるため、網膜の周辺部で像がやや手前に結ぶ(周辺の性の焦点ずれ)ことが、眼軸の伸びを抑える信号になると考えられている。の予防と進行抑制の方法の比較と効果の大きさはの予防と進行抑制が正本である。

⚠️ は「一晩装用するレンズ」であり、の危険因子になる2。小児に使う場合は、保護者を含めたレンズのの指導と定期検査が欠かせない。

コンタクトレンズの合併症

合併症の全体像

障害の種類 代表的な合併症 重さ
の乱れ 軽い
酸素不足 角膜、 慢性に進む
アレルギー 装用継続が困難になる
化学的・機械的な刺激 上皮障害(点状の染色) 軽い
免疫反応(無菌性) 無菌性の、周辺部角膜潰瘍 中等度
感染 細菌・真菌・アカントアメーバによる角膜炎 失明の危険

ドライアイ

コンタクトレンズはを上下に分断して不安定にし、を増やす。さらに角膜の知覚を鈍らせて、反射性の涙の分泌を減らす。

2007年の国際ワークショップ DEWS の機序別の分類では、の中心にのとの不安定化という2つの中核機序があり、原因の違いを問わずこの共通の経路で悪循環に入るとされる3。コンタクトレンズの装用は、この分類の2か所に原因として挙げられている(を鈍らせる原因として・と並ぶ枠と、を不安定にする原因の枠。後者では疑問符付きで挙げられている)。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contact lens wear'>コンタクトレンズ装用</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear film'>涙液層</span>の不安定化"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal sensation'>角膜知覚</span>の低下<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractive surgery'>屈折矯正手術</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topical anesthesia'>点眼麻酔</span>と同じ枠)"]
    C --> D["反射性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>分泌が減る"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>の減少"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperosmolality'>高浸透圧</span>"]
    B --> F
    G["環境(強い気流・低湿度)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='meibomian gland dysfunction (MGD)'>マイボーム腺機能不全</span>・眼瞼炎による<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipid layer'>油層</span>の不足"] --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='evaporation'>蒸発</span>の亢進"]
    H --> F
    F --> I["上皮細胞の炎症シグナルが活性化"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory cytokine'>炎症性サイトカイン</span><br>(IL-1・TNFα)と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proteolysis'>タンパク分解</span>酵素"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='goblet cell'>杯細胞</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucins'>ムチン</span>の喪失<br>上皮障害・細胞死"]
    K --> B

同じ分類で、の減少を招く原因としては加齢、アンドロゲンの低下、分泌を抑える全身薬、の炎症性の障害(に伴うものとそれ以外)、の導管の閉塞が、の不安定化を招く原因としては、眼アレルギー、点眼薬の、が並ぶ。

の定義と分類はその後改訂され、現在は2017年の TFOS DEWS II の報告が基準である。そのものはとを参照。

対策 内容
装用時間を減らす 装用しない日を作る
レンズを替える 1日使い捨て、含水率や素材の異なるレンズへ
コンタクトレンズの上から使えるなしの点眼
眼瞼の治療 ・眼瞼炎の治療(眼瞼炎と)

酸素不足:角膜新生血管

角膜には血管がなく、酸素の大部分をを介して空気から受け取る。レンズが酸素の通り道をふさぐと、角膜は低酸素に陥る。

  • 所見:輪部の血管網から細い血管が角膜の周辺部へ伸びてくる。特にソフトレンズの縁の下で目立つ。
  • その他の低酸素の所見:の浮腫、、角膜のむくみによるかすみ。
  • 対策:酸素透過性の高いやハードレンズへの変更、装用時間の短縮、連続装用の中止。

⚠️ 角膜がに近づくと、脂質の沈着やで視力が落ち、将来ののの危険も上がる。を見つけたら、レンズの素材と装用法を見直す。

巨大乳頭結膜炎

項目 内容
原因 レンズ(とその表面の沈着物)という異物に対する遅延型のアレルギー反応と、機械的な刺激
発症時期 装用開始から平均約18か月(3〜33か月)で起こる
症状 装用時の違和感・かゆみ・の、レンズが上方へずれる
所見 上眼瞼を裏返すと、瞼に大きな乳頭が石垣状に並び、充血する
治療 数週間レンズの装用を中止する、レンズの素材を替える(1日使い捨てなど)、重い場合は薬物治療(抗アレルギー点眼、短期のステロイド点眼)

💡 のと見た目は似るが、は「レンズをやめれば治る」ことが大きな違いである。アレルギー性疾患の全体は結膜炎で扱う。

上皮障害

項目 内容
原因 乾燥、レンズケア用品(多目的など)の毒性
症状 症状(違和感・乾燥感)と他覚所見がある。症状がないこともある
所見 で角膜に細かい点状の染色が散らばる。ケア用品の毒性では、角膜の広い範囲に細かい点状の染色がびまん性に出る
臨床的な意味 ソフトレンズの終日装用者で、ケア用品の毒性による広い(角膜の5区域のうち4区域以上)を示す眼では、性イベントが約3倍起こりやすい(3.08)4
治療 装用中に使える潤滑用の点眼、ケア用品とレンズの組み合わせの変更(系のケア用品で毒性染色と角膜の炎症が最も少なかった4)

無菌性の点状角膜炎

項目 内容
原因 免疫反応による無菌性の角膜の炎症
所見 角膜の上皮下に小さな白い点状の浸潤が散在する
症状 症状(・充血)と他覚所見
治療 装用の中止とステロイド点眼

表層の鑑別全般は角膜炎の鑑別を参照。

⚠️ ステロイドを使うのは、を否定できたときだけである。

コンタクトレンズ関連の周辺部角膜潰瘍

項目 内容
原因 免疫反応による無菌性の角膜炎(レンズに付着した細菌の毒素などへの反応と考えられる)
所見 角膜の周辺部、輪部寄りに小さな円形の白い浸潤を1個認め、その部位のが局所的に充血する
治療 装用の中止、(感染を否定しきれないため)とステロイド点眼

無菌性か感染性か

同じ「角膜の白い浸潤」でも、無菌性の周辺部角膜潰瘍とでは対応がまったく違う。

項目 周辺部角膜潰瘍(無菌性) (細菌・真菌・アカントアメーバ)
痛み 目立たない 強い
充血 局所的 眼全体に広がる
部位 周辺部(輪部寄り) 中央・中央寄り
染まらないことが多い 必ず染まる(上皮欠損がある)
の炎症 なし あり(を伴うことも)
浸潤の大きさ 小さい 大きく、広がっていく

⭐ ただし両者は連続していて、きれいに二分できない。コンタクトレンズ関連のは無菌性から微生物性まで連続したスペクトラムとして扱い、輪部寄りの浸潤ほど軽症の傾向がある。痛みが悪化していく装用者の角膜に浸潤を認めたら、装用を中止し、ただちに抗微生物治療を始める1。

感染性角膜炎

コンタクトレンズの装用は、米国では微生物性の角膜炎の最大の危険因子である(世界の他の地域ではの主な危険因子は外傷)2。

起因微生物 特徴的な所見 詳細
細菌(特に緑膿菌) 中央寄りの白い浸潤、眼全体の強い充血、進行が速い。重いと
真菌(フザリウムなど) 中央の白く盛り上がった浸潤、強い充血、
アカントアメーバ 中央の灰白色の、強い充血。所見に不釣り合いな強い眼痛
アカントアメーバと緑膿菌の 角膜の大部分を占める濃い白色の浸潤と 複数の微生物が同時に感染しうる

は報告例の大部分が者に起こり、所見に比べて強すぎる眼痛、輪状の、に沿った放射状の浸潤を特徴とする。初期はやと紛らわしく、診断が遅れやすい。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contact lens wear'>コンタクトレンズ装用</span>者の<br>赤く痛む眼"] --> B["ただちにレンズを外し、装用を中止"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein staining'>フルオレセイン染色</span>"]
    C --> D{"角膜に浸潤があるか"}
    D -->|"ない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dry eye'>ドライアイ</span>・上皮障害・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant papillary conjunctivitis'>巨大乳頭結膜炎</span>などを評価"]
    D -->|"ある"| F{"小さく周辺部で、痛み軽度・<br>染色なし・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>炎症なしか"}
    F -->|"はい"| G["無菌性の周辺部角膜潰瘍を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='topical antibiotic eye drops'>抗菌薬点眼</span>と慎重な経過観察"]
    F -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infectious keratitis'>感染性角膜炎</span>として扱う"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal scraping'>角膜擦過</span>で塗抹・培養<br>レンズとレンズケースも培養に提出"]
    I --> J["頻回の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='topical antibiotic eye drops'>抗菌薬点眼</span>を開始"]
    G --> K{"悪化するか"}
    K -->|"はい"| H

の治療の原則は次のとおりである。

  • の小さな周辺部の潰瘍は経験的なで治ることが多いが、それ以外(大きい、中央にある、深い、治療に反応しない)では角膜をして塗抹と培養を行う2。
  • ステロイド点眼は、抗菌薬を始めて48時間が過ぎ、起因菌が分かるか治療への反応を確認してから検討する。アカントアメーバ・真菌が疑われるときは避ける2。
  • 抗菌薬の選び方は眼科の抗微生物薬、角膜炎全般は角膜炎と角膜潰瘍を参照。

⚠️ 者の角膜潰瘍は、特に緑膿菌では進行が速く、に至ることがある。眼科への当日紹介が原則で、ステロイドだけを処方して帰さない。緑膿菌などグラム陰性菌の角膜炎では、適切な治療をしていても最初の24〜48時間は炎症所見が強まることがあり、効果は臨床経過で判断する2。

⚠️ 浸潤のない剥離でも、者では二次的なを防ぐためにを処方し、早い時期の(圧迫)は感染の危険を高めるので行わない2。は初期にとされやすく、診断の遅れが視力予後を悪くするため、装用者の「治らない角膜炎」「所見に合わない強い痛み」ではまずこれを疑う。

合併症を防ぐ生活指導

指導 理由
決められた交換期間と装用時間を守る 汚れ・沈着物・酸素不足を防ぐ
レンズをつけたまま眠らない(連続装用が認められたレンズでも慎重に) 一晩装用は感染の大きな危険因子
水道水でレンズやケースを洗わない。装用したまま泳がない・シャワーを浴びない 水にすむアカントアメーバが角膜に運ばれる
手を洗ってから扱い、レンズをこすり洗いしてすすぐ 微生物と沈着物を落とす
レンズケースを毎回乾かし、定期的に交換する ケースは微生物の温床になる
充血・痛み・まぶしさ・かすみが出たらすぐ外して受診する の早期発見

まとめ

  • コンタクトレンズは素材でハード(PMMA・RGP)、ソフト(・)、に分かれ、交換期間(1年〜1日使い捨て)、装用時間(終日・連続)、光学設計(球面・トーリック・多焦点)、色(淡い着色・美容用)でも分類される。
  • ハードレンズはレンズで角膜の凹凸を埋め、を矯正できる。・外傷・後・瘢痕・ジストロフィーででは0.1〜0.8だった視力が、ハードレンズで0.9〜1.0になる。不正な角膜には RGP、大径ハード、ピギーバック、、を使い分ける。
  • 医学的適応は、強度の(・・)と角膜不正の矯正、でのの維持、治療用、的の4つ。禁忌は眼表面のと。
  • 治療用レンズは睫毛乱生・・・再発性びらん・後・・後などで角膜を守り、痛みを和らげる。
  • 的レンズは透明レンズに黒い瞳孔、単色・二重・下地印刷、遮閉レンズがあり、・・・・の外見を整える。は原因の診断が先。
  • は夜間装用で角膜中央を平らにし、日中の視力を得る一時的な矯正で、小児のの進行も遅らせるが、一晩装用なので感染に注意する。
  • 合併症は、(DEWS 2007 の機序別の分類での不安定化との低下の両方の原因)、酸素不足による角膜、(装用後平均約18か月、上眼瞼の、装用中止と素材変更)、ケア用品や乾燥による上皮障害、無菌性の・周辺部角膜潰瘍、(緑膿菌・真菌・アカントアメーバ)。
  • 周辺部角膜潰瘍は痛み軽度・局所充血・周辺部・染色少・炎症なし、は強い痛み・広い充血・中央寄り・必ず染色・炎症ありだが、両者は連続する。痛みが増す装用者のは、装用中止と直ちに抗微生物治療。
  • 感染が疑われればで塗抹・培養(レンズとケースも)を行い、ステロイドは抗菌薬開始後48時間以降に反応を見て検討し、アカントアメーバ・真菌が疑われれば避ける。

出典

  1. 1.Rethinking contact lens associated keratitis(Clinical and Experimental Optometry・2006)抄録(PubMed 16907666)で、コンタクトレンズ関連の角膜浸潤性イベントを微生物性か無菌性かの二分法で分けることには曖昧さがあり連続したスペクトラムとして扱うべきこと、輪部寄りの浸潤ほど軽症であること、一晩装用で発生率が高いこと、従来型ハイドロゲルの連続装用ではシリコーンハイドロゲルの連続装用に比べ重症化の危険が5倍であること、痛みが悪化していく装用者に浸潤を認めたら装用を中止してただちに抗微生物治療を始めるべきことを確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Bacterial Keratitis Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2023)要点(Highlighted Findings)で、米国ではコンタクトレンズ装用が微生物性角膜炎の最大の危険因子で、一晩装用(オルソケラトロジーを含む)が感染の大きな危険因子であり、世界の他地域では外傷が細菌性角膜炎の主要な危険因子であること、コンタクトレンズ装用者や外傷の角膜上皮剥離には感染予防の抗菌薬点眼を処方し早期の眼帯は二次感染の危険を高めるため勧めないこと、副腎皮質ステロイド点眼は抗菌薬開始後48時間が経過し起因菌が同定されるか治療反応が確認されてから検討しAcanthamoeba・Nocardia・真菌感染が疑われる場合は避けること、緑膿菌などグラム陰性菌の角膜炎では適切な治療でも最初の24〜48時間は炎症所見が強まりうること、市中発症の小さな非中心性潰瘍の多くは経験的局所治療で軽快する一方で塗抹・培養が特に適応となる状況があることを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.The definition and classification of dry eye disease: report of the Definition and Classification Subcommittee of the International Dry Eye WorkShop (2007)(The Ocular Surface(International Dry Eye WorkShop)・2007)抄録(PubMed 17508116)で、ドライアイの分類が原因別・機序別・重症度別の3部構成で、機序別の分類は各原因が共通の経路を通って作用することを示し、どの型のドライアイも互いに作用し合い悪循環の一部として増悪しうることが強調されていることを確認した。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Solution toxicity in soft contact lens daily wear is associated with corneal inflammation(Optometry and Vision Science・2007)抄録(PubMed 17435514)で、ソフトレンズ終日装用者609人の解析で、ケア用品の毒性(フルオレセインで角膜5区域のうち4区域以上にびまん性の点状染色)を示した眼では角膜浸潤性イベントが約3倍起こりやすかったこと(オッズ比3.08、95%信頼区間1.40〜6.76)、過酸化水素系のケア用品で毒性染色と角膜の炎症が一貫して最も少なかったこと、装用開始後早い時期にフルオレセインで診察し毒性染色があればケア用品とレンズの組み合わせを見直すよう勧めていることを確認した。閲覧 2026-09-29