眼科学

眼科学 · ML-17

細菌性角膜炎

Bacterial keratitis

前提:病態
眼感染を起こす細菌とウイルス(一覧)とその診断
前提:正常
感覚器:眼
症状
デスメ膜瘤

🧠 全体像:は「上皮の傷 → 細菌が実質へ侵入 → 好中球と酵素が実質を溶かす → 浸潤・ → 穿孔・」と一方向に進む、視力を脅かす救急疾患である。入口は必ず上皮の破綻で、コンタクトレンズ・外傷・眼瞼の異常・眼表面の炎症・の低下・免疫抑制が危険因子になる。起因菌はが多いが、コンタクトレンズでは緑膿菌が重い。治療の幹は検体を採ってから、強力な抗菌薬を30分〜1時間ごとに点眼し、で痛みと癒着を防ぐこと。治らない潰瘍や穿孔にはを行う。ステロイドとクロスリンキングのは、な試験で平均すると効果が示されていない。

角膜炎の病原体ごとの見分け方と検査の正本は角膜炎の、抗菌薬の選び方と濃度の表は眼科の抗微生物薬が正本である。ここではの病態・臨床像・診断・治療方針・合併症を扱う。

角膜の構造と性質

物理的な性質

性質 値・内容 臨床的な意味
透明性 透明で血管がない 血管がないので感染への防御はと上皮に頼る。薬も血流では届きにくく、点眼が主役になる
形 につながる、時計皿のような特殊な球面 よりが強く、輪部でをつくる
眼の中で最大、約 +43.0 D 中央の瘢痕・不整がわずかでも視力を大きく落とす
厚さ 中央約530 µm(約0.5 mm)、輪部に向かって厚く約700 µm 中央ほど薄く、融解が進むと穿孔しやすい
成長 2歳ですでに成人の大きさ —
力学 外傷ではある点まではにふるまい、それを超えるとの変化が起こる —

肉眼的な形

項目 値
7.8 mm
水平径(前面) 11.7 mm
垂直径(前面) 10.6 mm
後面の形 円形(径11.7 mm)
厚さ(中央) 0.50 mm
厚さ(周辺:上方・下方・耳側・鼻側) 各0.70 mm

💡 前面が横長の楕円なのは、上下のとが角膜の縁にかぶさっているからで、後面から見ると角膜は円形である。

組織学的な構造

前から5層に分かれる(全体で約0.5 mm)。

層 厚さ 感染との関係
上皮(基底膜約1 µm を含む) 約40 µm 細菌に対する第一の防壁。傷がなければ多くの細菌は侵入できない
Bowman 層(前境界板) 約8〜14 µm 再生しない。傷つくと瘢痕が残る
実質 約450 µm 角膜の厚さの大部分。細菌が増殖し、酵素で融解する場
Descemet 膜(後境界板) 約5〜10 µm 丈夫な膜で、実質が溶けきっても最後まで残ることがある()
内皮 約4 µm 実質の水分をくみ出して透明性を保つ。炎症で傷むと浮腫になる

解剖の詳細は眼の解剖(眼球・付属器・)と眼球の解剖と正常眼所見で扱う。

危険因子

⭐ の多くでは、それに先立つ角膜の傷がある。

危険因子 例 なぜ感染しやすいか
眼瞼の異常 、 睫毛が角膜をこする、で角膜が乾く
眼表面の外傷 爪、植物、新聞紙の縁など 上皮に傷ができ、細菌の入口になる
眼表面の急性・慢性の炎症 眼瞼炎、、結膜炎 上皮が弱り、細菌が多い
とくに装用したままの就寝 上皮の低酸素・微小な傷、レンズやケースに付く細菌(緑膿菌など)
の既往 LASIK フラップの境界面に感染が入りうる
角膜の神経支配の障害 糖尿病、ヘルペス後、三叉神経の障害 知覚が落ちて・分泌が減り、上皮が治りにくい
局所・全身の免疫抑制治療 ステロイド点眼、 局所の防御が落ちる

米国ではがの最大の危険因子で、装用したままの就寝(を含む)が大きな危険因子である。一方、世界の多くの地域では外傷が最大の危険因子である1。コンタクトレンズの合併症はコンタクトレンズとその合併症、は角膜で扱う。

病態

細菌感染は、上皮の傷からまで段階的に進む。

flowchart TD
    A["上皮の傷"] --> B["細菌が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal stroma'>角膜実質</span>へ侵入"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune cell'>免疫細胞</span>が集まり<br>サイトカイン・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory mediator'>炎症性メディエーター</span>を産生"]
    C --> D["角膜内に浸潤が現れる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>の Tyndall 現象<br>(炎症細胞とタンパクの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opacity (turbidity)'>混濁</span>)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopyon'>前房蓄膿</span>"]
    D --> G["酵素による実質の融解<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='descemetocele'>デスメ膜瘤</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal perforation'>角膜穿孔</span>"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior segment'>後眼部</span>への波及<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitritis'>硝子体炎</span>・網膜炎・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>炎"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endophthalmitis'>眼内炎</span>"]

💡 角膜を溶かしているのは細菌だけではない。 集まった好中球が出す酵素(など)も実質を溶かす。細菌が死んでも融解が続くことがあるのはこのためである。

💡 は多くの場合、無菌である。 細菌が角膜にとどまっていても、炎症がへ及んで好中球がにたまる。角膜が穿孔すると細菌が眼内へ入り、になる。

症状と所見

症状

  • 痛み、、
  • (浸潤がにかかると大きく落ちる)

所見

所見 内容
角膜炎の部位(上皮か実質か)に応じた白色〜黄白色の
上皮欠損 で染まる。その下に濃い
充血 と
炎症細胞(Tyndall 現象)、
角膜 長引いた角膜炎の周りに、輪部から角膜内へ血管が伸びる

角膜の例では、輪部から角膜の中へ向かって枝分かれした血管が伸び、その先に白いを認める。血管のない角膜に血管が入ると透明性が失われ、のも起こりやすくなる。

起因菌

⭐ 従来の整理では角膜炎の90%が細菌性で、とくにグラム陽性菌が多いとされる。ただしこれは先進国の傾向で、病因の構成は地域で大きく違い、先進国では細菌、途上国では真菌が優位である2。

グラム染色 菌 特徴
陽性球菌 黄色ブドウ球菌 最も多い起因菌の一つ。眼瞼炎・に伴う
陽性球菌 眼表面の常在菌。弱った角膜で感染する
陽性球菌 肺炎球菌 急速に広がる潰瘍と(匍行性角膜潰瘍)
陽性球菌 緑色レンサ球菌 後などに結晶状の角膜症を起こす
陰性桿菌 緑膿菌 者に多い。進行が非常に速く、輪状の膿瘍と融解
陰性球菌 淋菌 健康な上皮も破って侵入し、急速に穿孔しうる
陽性桿菌(嫌気性) プロピオニバクテリウム(現在の Cutibacterium) ゆっくり進む
陰性桿菌 プロテウス・ミラビリス —
陰性桿菌 ・ラクナータ 高齢者・者などの弱った角膜
陰性桿菌 小児

💡 淋菌がとくに危険なのは、多くの細菌が上皮の傷を必要とするのに対し、淋菌は無傷の上皮を通り抜けて侵入できるからである。大量の膿性を伴う急激な結膜炎では角膜を必ず確かめる。

臨床病型(従来の分類)

な教科書では、所見の形と起因菌を結びつけて次のように分けてきた。現在は起因菌の診断を塗抹・培養で行うので、この対応は目安と考える。

病型 所見 従来挙げられてきた原因
で角膜表面に細かい点状の染色が散らばる 細菌よりも、ウイルス性、性、紫外線による(、)、の点眼(乱用)、多剤点眼による上皮障害
角膜潰瘍 上皮と実質の限局した欠損
を伴う匍行性角膜潰瘍 潰瘍の縁が一方向へ這うように進み、を伴う。角膜中央に灰白〜黄白色の潰瘍、強い充血 肺炎球菌(旧称:肺炎)、・ラクナータ
輪状膿瘍 角膜中央に灰白色の輪状の浸潤。中央はやや澄むかし、の下方に 緑膿菌、アカントアメーバ

⚠️ はの一型というより、さまざまな上皮障害の共通の表現である。の点眼を患者に渡してはならない(上皮の治癒を妨げ、角膜を溶かす)。

⚠️ 輪状の浸潤は緑膿菌でもアカントアメーバでも起こる。者で輪状浸潤を見たら、両方を考えてし、アカントアメーバの検査も出す()。

診断

手順 内容
臨床像から原因を推定する 進行の速さ、の数、上皮欠損、、危険因子
を調べる はヘルペスやを示唆する
細菌検査の検体を採る 浸潤部ので塗抹と培養
者ではレンズの保存液も調べる レンズ・ケース・保存液から起因菌が見つかることがある
で角膜を観察する 浸潤の深さ・大きさ・位置、、菲薄化
PCR とくにアカントアメーバを疑うとき
やを疑うとき

米国眼科学会の2023年版は、のの多くを占める小さな周辺部の潰瘍は経験的な局所治療で治るが、特定の状況では塗抹・培養が特に適応になるとしている1。重症(にかかる・大きい・深い)の判断と検体の採り方・染色の選び方は角膜炎ので扱う。

治療

治療の流れ

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacterial keratitis'>細菌性角膜炎</span>を疑う"] --> B["コンタクトレンズを外す"]
    B --> C{"重症か<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='visual axis'>視軸</span>・大きい・深い)"}
    C -->|"はい"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='stroke/scratch (stimulus)'>擦過</span>して塗抹・培養<br>その後に抗菌薬を開始"]
    C -->|"いいえ"| E["経験的に抗菌薬を開始"]
    D --> F["強力な抗菌薬を<br>30分〜1時間ごとに点眼"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriatic'>散瞳薬</span>で痛みと<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior synechiae'>虹彩後癒着</span>を防ぐ"]
    G --> H{"臨床的に改善しているか"}
    H -->|"はい"| I["点眼回数を減らしていく<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood/culture results'>培養結果</span>で薬を調整"]
    H -->|"いいえ<br>(悪化・治らない)"| J["培養・感受性で薬を変更<br>真菌・アメーバも再検討"]
    J --> K{"治らない潰瘍・穿孔か"}
    K -->|"はい"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='penetrating keratoplasty'>全層角膜移植</span>"]

抗菌薬

薬 系統・役割
。単剤で幅広く効く
グラム陽性菌を狙う(高濃度に調製した点眼)
アミノグリコシド系。グラム陰性菌(緑膿菌)を狙う
アミノグリコシド系。グラム陰性菌を狙う
  • 30分〜1時間ごとの頻回点眼で始める。角膜に血管がないので、点眼で高い濃度を保つ必要がある。
  • 米国眼科学会の2023年版は、中央部や重症の角膜炎(実質に及ぶ、または化膿の強い2 mm を超える浸潤)では、はじめに5〜15分ごとの負荷投与を行い、その後1時間ごとなどの頻回点眼に移るよう勧めている。48時間たっても改善や安定化がみられなければ最初の治療を見直す1。
  • 起因菌が分かる前は、グラム陽性菌用()とグラム陰性菌用(・)を高濃度で併用するか、を単剤で使う。起因菌別の薬と濃度の表は眼科の抗微生物薬にある。
  • 治療効果は主に臨床反応で判断する。緑膿菌などのグラム陰性菌の角膜炎では、適切な治療をしていても最初の24〜48時間は炎症所見が強まることがある1。
  • 2005〜2015年にかけて、MRSA と緑膿菌の局所フルオロキノロンへの耐性が増えた1。重症例でフルオロキノロン単剤に頼りきらない理由の一つである。

散瞳薬

やなどのでさせる。の痙攣による痛みを和らげ、の炎症によるを防ぐ。

ステロイドの位置づけ

根拠 内容
SCUT(2012年) 培養陽性の500例で、を48時間以上使ったあとに点眼を加えても、3か月後の視力・瘢痕・上皮化・穿孔に差はなく、安全性の問題もなかった。初診時の視力が以下の群と完全に中央の潰瘍の群では、ステロイドで視力がやや良かった3
SCUT II(2025年) 視力20/40以下の280例で、早期からのジフルプレドナート点眼のは6か月後の視力も瘢痕の大きさも改善しなかった4
米国眼科学会 2023年版 抗菌薬を48時間使い、起因菌が同定されるか治療に反応してから検討してよい。アカントアメーバ・ノカルジア・真菌が疑われる場合は避ける1

⚠️ ステロイドは「使ってはいけない」わけではないが、検討してよいのは抗菌薬を48時間使い、起因菌が分かるか抗菌薬が効いていることを確かめてからである1。真菌やアカントアメーバにステロイドを使うと急速に悪化するので、これらが否定できない段階では出さない。

角膜クロスリンキング

を点眼して紫外線を当て、実質のコラーゲンを架橋して酵素に溶かされにくくし、病原体も殺すことを狙う治療である(本来はの進行を止める治療)。

  • 従来はの選択肢として挙げられてきた。
  • 現行の知見では、SCUT II でクロスリンキングをステロイドに加えても6か月後の視力は改善せず、ステロイド単独より瘢痕が大きくなった。穿孔・のにも有意差はなかった4。試験の著者らは、ステロイドもクロスリンキングも平均すると単独に勝らないとしている4。

手術

手術 適応
眼瞼の手術 ・などの原因を取り除く
治らない潰瘍、

では、・融解した角膜を円形に切り取り、提供者の角膜を縫い付ける。術後早期にはの縁に沿ってジグザグに往復するを認め、後は円形のの境界だけが見える透明な角膜になる。の術式は角膜の手術で扱う。

角膜移植の拒絶反応

段階 所見
差し迫った の内皮にが線状に並ぶ(Khodadoust 線)。この線がの周辺から中央へ進みながら内皮を壊していく
完全な 全体が浮腫で灰青色に濁り、周囲から血管がへ侵入し、強い充血を伴う

💡 感染で角膜にが入った眼は、へが届きやすく、の危険が高い。感染をできるだけ早く鎮めて血管の侵入を防ぐことが、将来の移植の成績も左右する。

⚠️ 後の患者が充血・・を訴えたら、を疑ってその日のうちに眼科へ送る。早期ならステロイドの強化でを救える。

合併症と予後

合併症 内容
永続的な。にかかると視力を奪う
実質が溶けきり、丈夫な Descemet 膜だけが残って前方へ膨らむ。穿孔の一歩手前
が浅くなり、が穿孔部に嵌頓する
穿孔から細菌が眼内に入る(、)
瘢痕や穿孔に対して必要になる

⚠️ は、潰瘍の底が透明に薄く盛り上がって見える。眼を圧迫しない(・の強い圧迫を避ける)、硬い保護で守り、すぐに眼科の手術へつなぐ。小さな穿孔はで閉じることもあるが、大きければ移植が必要になる。

予防

  • コンタクトレンズの衛生を守る(装用したまま寝ない、レンズとケースを水道水で洗わない、ケースを定期的に替える)。
  • 手術室のを保つ。
  • 角膜の外傷を避ける()。
  • 者や外傷によるには、感染予防のを処方する。早期にで覆うと二次的なの危険が高まるので勧められない1。

⭐ の治療は眼科専門医の能力と責任に属する。非専門医の役割は、疑ったらコンタクトレンズを外させ、ステロイドを出さず、その日のうちに眼科へ送ることである。

まとめ

  • 角膜は血管がなく透明で、眼の中で最大の(約 +43 D)をもつ。中央約530 µm、周辺約700 µm。上皮・Bowman 層・実質・Descemet 膜・内皮の5層。
  • 危険因子:・、眼表面の外傷(爪・植物・紙の縁)、眼表面の炎症、コンタクトレンズ、LASIK 後、の低下、免疫抑制。多くは先行する角膜の傷がある。
  • 病態:上皮の傷 → 実質への侵入 → 炎症細胞と酵素 → 浸潤 → の Tyndall 現象・ → 穿孔 → への波及 → 。
  • 症状は痛み・・、所見は部位に応じた、上皮欠損と、、、長引けば角膜。
  • 起因菌はグラム陽性菌が多い(ブドウ球菌・肺炎球菌・緑色レンサ球菌)が、緑膿菌・淋菌・・なども。先進国では細菌、途上国では真菌が優位。
  • 従来の病型:(多くは細菌以外)、角膜潰瘍、を伴う匍行性角膜潰瘍(肺炎球菌)、輪状膿瘍(緑膿菌・アカントアメーバ)。
  • 診断:臨床像、、して塗抹・培養、コンタクトレンズ保存液、、必要に応じて PCR・。
  • 治療:、または+/を30分〜1時間ごと。。治療効果は臨床反応で判断し、グラム陰性菌では最初の24〜48時間は悪化して見えることがある。
  • ステロイドは起因菌の同定か治療反応の確認後に検討し、真菌・アカントアメーバ・ノカルジアが疑われれば避ける。SCUT・SCUT II ではステロイドので平均の視力は改善せず、クロスリンキングは瘢痕を大きくした。
  • 治らない潰瘍・穿孔には。の前触れは Khodadoust 線。合併症は瘢痕・・穿孔・。

出典

  1. 1.Bacterial Keratitis Preferred Practice Pattern(American Academy of Ophthalmology・2023)米国眼科学会の2023年版のページの要点(Highlighted Findings)で、市中発症の細菌性角膜炎の多くを占める小さな周辺部の潰瘍は局所の経験的治療で治るが特定の状況では塗抹・培養が特に適応になること、米国ではコンタクトレンズ装用が微生物性角膜炎の最大の危険因子で夜間装用(オルソケラトロジーを含む)が大きな危険因子であり、他の地域の多くでは外傷が最大の危険因子であること、コンタクトレンズ装用者や外傷による角膜びらんには感染予防の抗菌薬点眼を処方し早期の眼帯は二次感染の危険を高めるので勧めないこと、ステロイドは抗菌薬を48時間使い起因菌が同定されるか治療に反応してから検討してよく、アカントアメーバ・ノカルジア・真菌が疑われる場合は避けるべきこと、治療効果は主に臨床反応で判断し、緑膿菌などのグラム陰性菌の角膜炎では適切な治療中でも最初の24〜48時間は炎症所見が強まりうること、2005〜2015年にMRSAと緑膿菌の局所フルオロキノロン耐性が増えたことを確認した。2026-09-29 に全文PDFで、中央部・重症の角膜炎(実質深層に及ぶ、または化膿の強い2 mm 超の浸潤)では5〜15分ごとの負荷投与のあと1時間ごとなどの頻回点眼を推奨すること、調節麻痺薬は癒着と痛みを減らす目的で使ってよいこと、48時間以内に改善・安定化がなければ初期治療を修正することも確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.The persistent dilemma of microbial keratitis: Global burden, diagnosis, and antimicrobial resistance(Survey of Ophthalmology(Ung L, et al.)・2019)抄録(PubMed 30590103)で、微生物性角膜炎は南アジア・東南アジア・東アジアで流行状態にある可能性があり世界で年200万例を超えうること、病因の構成は経済的な先進国では細菌が、途上国では真菌が優位であること、塗抹・培養は時間がかかり臨床的に有用な結果が出ないことも多いことを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Corticosteroids for bacterial keratitis: the Steroids for Corneal Ulcers Trial (SCUT)(Archives of Ophthalmology(Srinivasan M, et al.)・2012)抄録(PubMed 21987582)で、培養陽性の細菌性角膜潰瘍500例にモキシフロキサシン点眼を48時間以上行ったうえでプレドニゾロンリン酸エステル1.0%点眼とプラセボを比べた二重遮蔽多施設RCTで、3か月後の最良矯正視力・浸潤/瘢痕の大きさ・上皮化までの期間・角膜穿孔に有意差がなく、安全性の懸念もなかったこと、初診時の視力が指数弁以下の群と完全に中央の潰瘍の群ではステロイドで視力が0.17〜0.20 logMAR良かったことを確認した。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Steroids and Cross-Linking for Ulcer Treatment: The SCUT II Randomized Clinical Trial(JAMA Ophthalmology(Prajna NV, et al.)・2025)抄録(PubMed 40705354)で、視力20/40以下の塗抹・培養陽性の細菌性角膜潰瘍280例をモキシフロキサシン0.5%単独(プラセボ・偽照射)、ジフルプレドナート0.05%併用、ジフルプレドナート+リボフラビンによる角膜クロスリンキング併用に割り付けた偽照射・プラセボ対照RCTで、6か月後の最良矯正視力はステロイド併用でもクロスリンキングの上乗せでも差がなく、ステロイドは瘢痕の大きさも改善せず、クロスリンキング+ステロイドはステロイド単独より瘢痕を大きくしたこと、穿孔・治療的全層角膜移植のハザードにも有意差がなかったこと、結論としてこれらの補助療法は平均すると抗菌薬点眼単独に勝らないとしていることを確認した。閲覧 2026-09-29