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Drug Atlas · A19 Antidepressants / 抗うつ薬

ドキセピン

doxepin

分類
Antidepressants / 抗うつ薬
商品名(EU)
Silenor
科目
Clinical PharmacologyPharmacology
トピック
11: Sedative-hypnotics, anxiety and insomniaA19: Monoamine reuptake inhibitors
承認適応
うつ病不眠障害
禁忌疾患
緑内障
副作用
傾眠口腔乾燥めまい便秘霧視低血圧
相互作用
カルバマゼピンシメチジンセルトラリンモクロベミドリネゾリド

🧠 全体像:は用量で顔が変わるである。75〜150 mg/日では抗うつ薬、3〜6 mgでは睡眠維持を助ける薬として使い、少量ではの拮抗が主役と考えられている。覚えるのは3点——少量錠(3・6 mg)はの不眠、カプセル(10〜100 mg)はうつ病、外用はそう痒と、剤形ごとに適応が別であること、(錠・カプセル)ではMAO阻害薬との併用が禁忌であること、少量でも抗うつ用量でも緑内障・尿閉に注意することである。日本の電子添文は確認できなかったため、本ノートの適応・用量・禁忌は米国の添付文書による。

薬効群の中での位置づけ

不眠に使うときの位置は、に限った弱い推奨である。米国睡眠医学会(AASM)の2017年の指針は、の不眠にを使うことを提案し(弱い推奨)、はにもにも使わないことを提案する1。

薬 剤形・用量 主な使い方
(少量) 錠3・6 mg の不眠。ほぼH1遮断として働く
(抗うつ用量) カプセル10〜100 mg、目標75〜150 mg/日 成人のうつ病。・心毒性に注意
抗うつ用量の薬 睡眠障害を伴ううつ病。不眠への単独使用は指針が勧めない
抗うつ用量の薬 睡眠障害()を伴ううつ病
三環系の代表 抗コリン性の副作用が出やすい。の抗うつ用量と副作用が重なる

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='doxepin'>ドキセピン</span>"] --> B{"用量"}
    B -->|"少量(3〜6 mg)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='H1 receptor'>H1受容体</span>に強く結合(Ki 1 nM未満)"]
    C --> D["覚醒を支えるヒスタミンの作用を遮断する"]
    D --> E["睡眠維持を助ける<br>(入眠後の覚醒時間が減る)"]
    B -->|"抗うつ用量(75〜150 mg/日)"| F["三環系として想定される作用<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoamine'>モノアミン</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reuptake inhibition'>再取り込み阻害</span>など)<br>抗コリン性の副作用・鎮静も強まる"]
    F --> G["抗うつ効果と、口渇・便秘・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='blurry vision'>霧視</span>・傾眠"]

睡眠維持での機序は添付文書でも「不明」とされ、の拮抗が関与しうると書かれている2。抗うつ用量での機序も「十分には分かっていない」とされる3。Silenorの添付文書は、が抗うつ薬として使われる用量は少量錠の10〜100倍であると明記している2。

💡 少量でも効く理由は、への結合が非常に強い(Ki 1 nM未満)ためと説明される。一方、抗うつ用量ではその10〜100倍の量を使うので、三環系に共通の抗コリン性の副作用(口渇、便秘、、尿閉)が前面に出る。

薬物動態

項目 少量錠(3・6 mg)2 カプセル(抗うつ用量)3
吸収 までの時間の中央値は約3.5時間。でAUCが41%、Cmaxが15%増え、に達する時刻が約3時間遅れる 75 mg単回で平均2.9時間
分布 11,930 L、蛋白結合約80% 約20 L/kg、蛋白結合約76%
代謝 酸化とで、主代謝物のノル(N-デスメチル)になる。主にCYP2C19と2D6、少しCYP1A2と2C9 肝ので55〜87%がノルになる
半減期 15.3時間、ノル31時間 8〜24時間(平均17時間)、ノル33〜80時間(平均51時間)
排泄 主にとして尿中へ。未変化体とノルは尿中に3%未満 主に代謝物として尿中へ
  • 少量錠の服用法はこの食事の影響から決まっている。食後3時間以内を避けるのは、効き始めを早め、翌日に持ち越す影響を減らすためである。
  • 少量錠はCYP酵素を阻害せず、誘導するかどうかは不明である。CYP2C19・2D6のは血中濃度が高くなる2。
  • 少量錠のへの影響は、50 mgまでので認められなかった2。

適応

剤形ごとに適応が別である。

剤形 米国の適応
錠3・6 mg(Silenor) を特徴とする。有効性の根拠となった試験は最長3か月2
カプセル10〜100 mg 成人の(うつ病)。双極うつ病には承認がない3
5% またはの成人の中等度のそう痒の短期(8日まで)管理4

少量錠の不眠への効果

試験・指針 内容
添付文書の試験 6本の試験(1423例)で、3 mgと6 mgがな入眠後の覚醒時間でより優れた。やを示す所見はなく、中止後の悪心・嘔吐は6 mg群の5%で出た2
AASM 2017 3 mgと6 mgの試験に基づく弱い推奨。の改善は小さく(差−2.30分で有意でない)、入眠後の覚醒時間(3 mgで−22.17分)と(+26.14分)で臨床的に意味のある改善が示された。エビデンスの質は低い1

の不眠には向かない。効くのは眠りに入ってからの覚醒の減少で、寝つきの改善はごくわずかである。25〜50 mgを使った試験は、承認されたの用量を著しく超えるとして指針の根拠から除かれた1。

用法・用量

剤形 内容
少量錠2 成人は6 mgを1日1回(3 mgでよい場合もある)。65歳以上は3 mgから始め、必要なら6 mgへ。就寝30分以内に服用し、食後3時間以内は避ける。1日6 mgを超えない。肝障害のある人や尿閉の傾向がある人は3 mgから。併用時は最大3 mg
カプセル3 開始は25 mgを1日3回、または75 mgを1日1回。目標は75〜150 mg/日(1回でも分割でもよい)。最大は100 mgを1日3回。開始前に・躁病の既往を確認する。中止は。高齢者は一般に低用量から
4 薄く塗って1日4回、間隔は3〜4時間以上。8日を超えて使わない。は吸収が増えるので避ける
  • MAO阻害薬からの切り替え:中止後14日あけて開始する。を中止した後も、MAO阻害薬の開始まで14日あける3。
  • 抗コリン性の副作用(口渇、、便秘)が出たら減量する。強いの併用中や、CYP2D6・2C19のでも、血中濃度に基づいて減量する3。

禁忌・注意

剤形 禁忌
少量錠2 本剤・・他のジベンゾキセピンへの過敏症。MAO阻害薬の併用と中止後2週間。未治療の(閉塞隅角)緑内障または高度の尿閉
カプセル3 過敏症(舌浮腫・蕁麻疹など)。緑内障。現在または過去の尿閉。MAO阻害薬(リネゾリド・静注を含む)の併用と中止後14日(のリスク)
4 未治療のまたは尿閉の傾向。成分への過敏症

少量錠は未治療のと高度の尿閉に限る一方、カプセルは緑内障全般と過去の尿閉まで禁忌に挙げる。用量と剤形で禁忌の幅が違うので、一方の添付文書を別の剤形に当てはめない。

  • ⚠️ ・行動(カプセルの枠囲みの):24歳以下で抗うつ薬の投与後に・行動が増える。投与中は悪化や新たな出現を観察する。小児への承認はない。少量錠でも、うつ病の悪化やの可能性は否定できないとされる32。
  • ⚠️ 複雑な睡眠関連行動(少量錠):のように、十分に覚醒しないまま行動して健忘を残すことがある。アルコールや他のCNS抑制薬、承認用量を超える使用でリスクが上がる。起きたら中止を強く考える2。
  • :他のとの併用で上がる。出たらと併用薬を中止する3。
  • :開始前にを確認する。双極うつ病には承認がない3。
  • 睡眠時無呼吸:少量錠はで検討されておらず、重い睡眠時無呼吸には通常勧められない2。
  • 不眠が7〜10日続くとき:別の精神疾患や身体疾患が隠れていないかを再評価する2。
  • 妊娠・授乳:のは新生児に呼吸窮迫・・・振戦などの不適応症状を起こしうる。少量錠の添付文書は授乳を勧めない2。
  • :三環系の中毒像(不整脈、高度の低血圧、けいれん、昏睡を含む中枢抑制)で、心電図のQRS幅0.1秒以上が重症度のよい指標になる。死亡することもある3。

相互作用

相手 影響
などMAO阻害薬、リネゾリド、静注 禁忌。のリスク3
他の を監視する3
強い の曝露が増える。血中濃度に基づいて減量する3
CYP阻害でCmaxとAUCが約2倍。少量錠は最大3 mgとする23
50 mgの併用で6 mgのAUCが21%、Cmaxが32%増え、投与2〜4時間後の精神がより低下した2
カルバマゼピン とノルの曝露が55%減る3
アルコール、CNS抑制薬、鎮静性の抗ヒスタミン薬 鎮静が強まる。少量錠はアルコールと併用しない2
() 1 g/日を服用していた2型糖尿病の患者で、経口75 mg/日の追加11日後に重い低血糖が1例報告された2

副作用

剤形 頻度・内容
少量錠(長期のプラセボ対照試験)2 傾眠・鎮静は4%、3 mg群6%、6 mg群9%。悪心は1%・2%・2%、は2%・4%・2%、高血圧は0%・3%・1%未満。第1〜3相試験全体で、有害事象による中止は0.6%、3 mg群1.0%、6 mg群0.7%
カプセル(うつ病1635例)3 傾眠17%、口渇15%、めまい6%、便秘5%、疲労5%、3%、頻脈3%、低血圧3%、振戦2%、悪心2%、体重増加2%
カプセルの市販後3 、、血小板減少、、不整脈、不適合分泌、、
4 傾眠22%(基剤は2%)で約5%が中止。局所の灼熱感・刺痛23%(基剤は16%)。でが出うる

少量錠の添付文書は、翌朝に残る影響を調べた試験で、6 mgでは起床後の精神に軽い悪化があり、高齢者の1 mgと3 mgはと同等だったとする2。高齢者の開始量が3 mgである背景の一つである。

まとめ

  • はで、用量で使い方が変わる。75〜150 mg/日はうつ病、3〜6 mgはの不眠、外用はそう痒。
  • 少量では主にを遮断して睡眠維持を助ける。はほとんど変わらないので、の不眠には向かない。
  • AASMの指針はの不眠に弱い推奨で提案する。根拠は3 mgと6 mgの試験で、エビデンスの質は低い。
  • 少量錠は就寝30分以内に服用し、食後3時間以内を避ける。65歳以上は3 mgから、1日6 mgを超えない。
  • の禁忌はMAO阻害薬の併用と中止後(少量錠は2週間、カプセルは14日)、緑内障、尿閉。少量錠は未治療のと高度の尿閉に絞られ、カプセルは緑内障全般と過去の尿閉まで広い。
  • で曝露が約2倍になる。三環系ののとの心毒性は、抗うつ用量で重要になる。
  • 日本の電子添文は確認できなかったので、国内での承認や用量は本ノートで断定しない。

出典

  1. 1.Clinical Practice Guideline for the Pharmacologic Treatment of Chronic Insomnia in Adults: An American Academy of Sleep Medicine Clinical Practice Guideline(American Academy of Sleep Medicine・2017)PMC掲載の全文(PMC5263087)で確認した。推奨8が『睡眠維持困難の不眠にドキセピンを使うことを提案する(弱い推奨)』で、根拠は3 mgと6 mgの試験であり、25〜50 mgの試験は承認された睡眠薬の用量より著しく高いとして除外されたこと、入眠潜時の改善は小さく(差−2.30分、有意でない)、入眠後の覚醒時間・総睡眠時間・睡眠効率では臨床的に意味のある改善(3 mgで入眠後の覚醒時間−22.17分、総睡眠時間+26.14分)が示されたこと、傾眠は3 mgで増えず6 mgで小さな増加(リスク差+0.04)であること、エビデンスの質は低く、総括では非常に低いと評価されたこと、トラゾドンは入眠困難・睡眠維持困難のいずれにも使わないことを提案する(弱い推奨)こと。閲覧 2026-10-31
  2. 2.SILENOR (doxepin) tablets for oral use — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / labeler Currax Pharmaceuticals LLC・2026)DailyMedのSPL全文(SPL版11、2026年4月公開)を取得して確認した。適応は睡眠維持困難を特徴とする不眠症(根拠となった試験は最長3か月)、成人の推奨量は6 mg(3 mgでよい場合もある)、65歳以上は3 mgから、就寝30分以内に服用し食後3時間以内は避け1日6 mgを超えないこと、肝障害・尿閉傾向では3 mgから、シメチジン併用では最大3 mg(曝露が約2倍)、禁忌は本剤・添加物・他のジベンゾキセピンへの過敏症、MAO阻害薬の併用と中止後2週間、未治療の狭隅角緑内障または高度の尿閉であること、複雑な睡眠関連行動(睡眠運転)・うつ病悪化・CNS抑制・重い睡眠時無呼吸への注意、7〜10日で不眠が続けば他疾患を再評価すること、機序は睡眠維持では不明だがH1受容体拮抗が関与しうる(Ki<1 nM)こと、QT間隔に影響しないこと(50 mgまでの反復投与)、Tmax約3.5時間・高脂肪食でAUC41%増・分布容積11,930 L・蛋白結合約80%・CYP2C19と2D6が主な代謝酵素で終末半減期15.3時間(ノルドキセピン31時間)・尿中の未変化体は3%未満、長期プラセボ対照試験の有害事象(傾眠・鎮静は3 mg群6%・6 mg群9%・プラセボ4%、悪心2%・2%・1%、上気道感染4%・2%・2%)、6本の無作為化二重盲検試験(1423例)で3 mgと6 mgが客観的な入眠後覚醒時間でプラセボより優れ、反跳性不眠や離脱症候群を示す所見がなかったこと(中止後の悪心・嘔吐は6 mg群で5%)、乱用の可能性はなく規制薬物でないこと、妊娠第3三半期の使用で新生児に不適応症状が起こりうること、授乳は勧められないことを確認した。閲覧 2026-10-31
  3. 3.DOXEPIN HYDROCHLORIDE capsules, for oral use — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / labeler Amneal Pharmaceuticals LLC・2026)DailyMedのSPL全文(SPL版16、2026年9月公開、一般名製剤の標準的な文言)を取得して確認した。適応は成人の大うつ病性障害、開始は25 mgを1日3回または75 mgを1日1回、目標は75〜150 mg/日、最大は100 mgを1日3回、MAO阻害薬の中止後14日は開始せず本剤の中止後14日は開始しないこと、抗コリン性の副作用が出たら減量し、強いCYP2D6阻害薬の併用およびCYP2D6・2C19の代謝不良者では血中濃度に基づいて減量すること、中止時は漸減すること、禁忌は過敏症(舌浮腫・蕁麻疹)、緑内障、現在または過去の尿閉、MAO阻害薬(リネゾリド・静注メチレンブルーを含む)の併用と中止後14日であること、小児・青年・若年成人の自殺念慮・行動の増加に関する枠囲みの警告、セロトニン症候群、狭隅角の緑内障の発作、鎮静と運転、躁転のリスクと双極うつ病には承認がないこと、有害事象(1635例で傾眠17%・口渇15%・めまい6%・便秘5%・疲労5%・霧視3%・頻脈3%・低血圧3%・振戦2%・悪心2%・体重増加2%)、市販後の無顆粒球症・伝導障害・不整脈・抗利尿ホルモン不適合分泌・閉塞隅角緑内障、機序は十分に分かっていないこと、Tmax約3時間・分布容積約20 L/kg・蛋白結合約76%・半減期8〜24時間(ノルドキセピン33〜80時間)・初回通過で55〜87%がノルドキセピンになること、カルバマゼピンで曝露が55%低下しシメチジンで約2倍になること、過量投与で不整脈・高度の低血圧・けいれん・中枢抑制が起こりQRS幅0.1秒以上が重症度の指標になることを確認した。閲覧 2026-10-31
  4. 4.Doxepin hydrochloride cream, 5% — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / labeler Sun Pharmaceutical Industries, Inc.・2026)DailyMedのSPL全文(SPL版2、2026年9月公開)を取得して確認した。適応はアトピー性皮膚炎または単純苔癬の成人の中等度のそう痒の短期(8日まで)管理、薄く1日4回で3〜4時間以上あけること、8日を超える使用の安全性と有効性のデータがなく接触感作と全身曝露が増えること、経皮吸収で血漿中に最大47 ng/mLが検出されうること、禁忌は未治療の狭隅角緑内障または尿閉傾向と成分への過敏症、傾眠が22%(基剤は2%)で体表面積10%超に塗るとさらに多く約5%が中止、局所の灼熱感・刺痛が23%(基剤は16%)、閉鎖密封療法を避けることを確認した。閲覧 2026-10-31