眼科学

眼科学 · ML-33B

小児と成人の緑内障手術

Surgery of pediatric and adult glaucoma

前提:正常
眼:網膜・虹彩・毛様体

🧠 全体像:緑内障手術は「の新しい出口を作る」か「ふさがった出口を開ける」かのどちらかである。小児の原発はの形成異常が原因なので、できるだけ早く隅角手術(隅角切開術・切開術)で本来の出口を開ける。成人のは点眼とレーザーで足りなければ、へを逃がす(標準手術)やシャント、軽症〜中等症にはを切らない MIGSを選ぶ。成人の閉塞隅角では切開とで隅角を開けることが治療の中心になる。

房水の出口と抵抗:手術で何を取り除くか

流出路のどこに抵抗があるか

はから(ぶどう膜網・角網・傍組織)を通っての内壁から管内へ入り、外壁から内の集合管を経て上強膜静脈へ出ていく。流出抵抗の配分は次のとおりである。

部位(側から外側へ) 流出抵抗に占める割合
ぶどう膜網・角網・傍組織 約70%
内壁 約5%
外壁と内の集合管 約20%

💡 抵抗の大半(約70%)はそのものにある。だから手術は「を切り開く(切開術・隅角切開術)」「を越えて別の出口を作る(・シャント)」「外側の抵抗層だけを削る(非穿孔手術)」のどれかになる。

術式 取り除く・迂回する範囲 残るもの
集合管からぶどう膜網まで、流出路の全層(とを直接つなぐ) なし(全層を開ける)
非穿孔深部切除術 三角形の弁の切除で外壁と集合管を、さらに内壁・傍組織・角網のを取り除く 角網のとぶどう膜網が、とともに薄い「-」として残る

開放隅角と閉塞隅角で狙いが違う

隅角 の流れの障害 手術の狙い
はから瞳孔を通ってへ入り、開いた隅角のに届くが、・で流れにくい の抵抗を切り開くか迂回する新しい出口を作る
閉塞・ 厚くなったと前へ膨らんだのために、周辺がに接して出口そのものがふさがる に孔を開ける、を取り除いてを後ろへ下げ、隅角を開く

隅角の構造(、、、、、の位置関係)は眼球の解剖と正常眼所見で扱う。

小児緑内障の手術

小児緑内障の分類と治療の原則

型 原因・特徴 治療の原則
原発 の形成異常(隅角形成異常) できるだけ早く手術する
続発小児緑内障 ほかの眼の異常・・後天的な病気に伴う ほとんどの例で緑内障薬と手術の両方を使う

現行の欧州緑内障学会(小児緑内障研究ネットワークの分類)では、原発小児緑内障を原発(新生児発症0〜1か月、乳児期発症1〜24か月、2歳以降の発症・発見)と若年(4歳超)に分け、続発を後天的な眼の病気・生来の眼の異常・生来のや症候群・後に分ける1。

原発はほぼ全例で初回手術の適応で、薬は長期には効かず続けにくいため、手術までのつなぎや手術後の再発時に使う1。

flowchart TD
    A["原発<span class='jp-term jp-term-diagram' title='congenital glaucoma'>先天緑内障</span>と診断"] --> B["薬は手術までのつなぎ<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carbonic anhydrase inhibitor'>炭酸脱水酵素阻害薬</span>の内服など)"]
    B --> C{"角膜は透明か"}
    C -->|"透明"| D["隅角切開術<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabecular meshwork'>線維柱帯</span>切開術"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opacity (turbidity)'>混濁</span>"| E["眼外からの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabecular meshwork'>線維柱帯</span>切開術"]
    D --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>は<br>コントロールできたか"}
    E --> F
    F -->|"できた"| G["生涯の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>管理<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractive correction'>屈折矯正</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amblyopia'>弱視</span>治療"]
    F -->|"できない"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filtering surgery'>濾過手術</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Antimetabolites'>代謝拮抗薬</span>併用)<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tube'>チューブ</span>シャント"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cyclodestructive procedure'>毛様体破壊術</span>は<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='revision surgery'>再手術</span>を先送りする暫定手段"]

治療の順序は欧州緑内障学会による1。が下がっても、によるが視力障害の大きな原因として残るので、との管理を続ける()。

⚠️ 小児への点眼には大人と違う禁忌がある。α2作動薬は2歳未満で、β遮断薬はとくに早産児・新生児で禁忌、は生後1か月未満に勧めない。詳細は眼科の薬理:点眼薬にある。

新生児の牛眼

新生児のでは、角膜が大きく、全体が灰青色に曇ってが透けて見えない。新生児の正常は5〜10 mmHg と成人より低いので、成人の基準(21 mmHg)で「正常」と判断しない。

原発の診断は、次の5項目のうち2項目以上を満たすことで行う1。

項目 内容
21 mmHg 超
角膜所見 条(の)、(ときに実質)の浮腫、の拡大(新生児で11 mm以上、1歳まで12 mm超、年齢を問わず13 mm超)
進行するリムのびまん性の菲薄化、同程度ので陥凹比の左右差0.2以上、
進行する・(年齢に不相応なの延長を伴う)
視野 乳頭所見に対応する、再現性のある緑内障性(ほかに原因がないもの)

💡 小児のは、泣いていると高く、多くの麻酔薬で低く出る。だけで判断せず、条・・・といった構造の変化を重視する。なかでも 条はを強く示し、は診断にも経過観察にも欠かせない1。乳児のの見た目と、真のと後天性の違いは緑内障 Iで扱う。

続発小児緑内障の内訳

小児のの手術例(51人71眼)の内訳は次のとおりである。は症例の集計どおりで、分類の欄は小児緑内障研究ネットワークの区分に当てはめて整理したものである。の6人のうちのあとに発症した例があれば、同ネットワークの分類では「後の緑内障」という独立した区分に入る。

分類 原因
生来の眼の異常 13
に伴う緑内障 6
と 4
先天遺伝性 2
2
の完全な形成異常 1
生来の・症候群 Sturge-() 11
1
(18・) 1
後天的な眼の病気 3
2
のぶどう膜炎 2
腫瘍 1
分類不能の症候群 — 1+1

⭐ とSturge-が2大原因である。は PAX6 の変異によるもので、隣接する WT1 も障害されると Wilms腫瘍の危険が高い()ため WT1 も調べる。Axenfeld-Rieger異常では50〜75%が緑内障を起こすので家族もを調べる。生後9か月未満の後にはが最大50%に達する1。関連:眼の発達異常、小児の眼腫瘍、、小児のぶどう膜炎。

正常な隅角と先天緑内障の隅角

成人の正常な隅角をとの断面で対応させると、前から順に次の目印が並ぶ。

目印 見え方
隅角の最前端。の終わる細い線
その後ろの帯。が通り抜ける
白い線。ここまで見えれば隅角は確実に開いている
最も奥の暗い帯。がここに付着する

では、が前方(の高さ)に付着して波打つ線を作り、ぶどう膜組織が遺残して構造の分化が悪い1。広角の小児用で隅角を撮影すると、原発でを受けた眼の隅角に、手術で作られた暗い開口部を認める。

隅角切開術

隅角切開術は、角膜の側からを横切って刃を入れ、で見ながらを眼の内側から切開する手術である。

条件 理由
角膜が透明であること 越しに隅角を見ながら切る
手術用の 角膜に載せて隅角を観察する
傾けられる特殊な手術顕微鏡 隅角を斜めから見る

手術中は手術用を角膜に載せ、細い刃をに通して反対側の隅角に当てる。刃の先は、に近いの前方3分の1の高さに当て、を円周方向に切開する。はのすぐ外側にあり、切開でがへ直接届くようになる。

線維柱帯切開術

切開術は、とを直接つなぐ手術である。とを切って眼の外からに入るので、 MIGS には含まれない。

方法 内容
a. 硬いステンレス製器具(トラベクロトーム) 左右一対で、平行な2本の腕をもつ。1本をに差し込み、回転させてを側へ破る
b. 糸・カテーテル 6-0 ナイロンや糸、または先端が光る細いカテーテルをに全周(360°)通し、両端を引いて全周を切り開く
手技の要点 内容
部位 通常は12時の位置で行う。前の手術でその部位が使えなければ、側方(あるいは下方)から入る
器具の挿入 切り出したの両方の断端にトラベクロトームを入れる
順序 1本目を回転させる前に、2本目も入れておく。先に回転させるとがつぶれ、2本目が入りにくくなる

💡 角膜がしていて隅角切開術ができない乳児でも、切開術は眼の外から行えるので選べる。角膜が透明なら、で見ながら眼内から糸を通して全周を切り開く方法(補助下の経管的切開)もあり、これはの成人にも使われ、MIGS に分類される1。

線維柱帯切除術(小児・成人共通)

原理と手順

は、と腔の間に、弁で保護された瘻孔を作り、をに逃がしてを作る手術で、緑内障手術で最も広く行われる1。成人でも標準手術()とされる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>を切開して<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>を出す"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>の半層の弁(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>ポケット)を作る"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>に灌流を入れて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>を保つ"]
    C --> D["弁の下で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='trabecular meshwork'>線維柱帯</span>を含む<br>角<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>片を切除(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>開口)"]
    D --> E["周辺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>切除<br>(開口部から出てきた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>を切る)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sclera'>強膜</span>弁を縫合し、灌流下で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor'>房水</span>が漏れ出す圧を確かめて<br>流出量を調節"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>を閉じる"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subconjunctival'>結膜下</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='filtering bleb'>濾過胞</span>ができ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor'>房水</span>が吸収される"]
手技の場面 所見
灌流 角膜の周辺から細い灌流針をに刺し、を保ちながら開口部からが漏れ出す圧を確かめる
ポケットの作成 をし、に接するに四角い半層の弁を刃で切り出す
周辺切除 灌流をしていると、小さな開口の後縁をそっと押すだけでが開口部から出てくるので、眼内に器具を入れずに切除できる
良好な濾過(小児例) に接して、白っぽく広く盛り上がった血管の少ないを認める

適応と危険

項目 内容
適応 薬・レーザー・ほかの手術でに届かない、または病気が安定しない(遵守不良・副作用で続けられない場合を含む)。進行例では、初回から薬より効果的な選択として考える1
危険 による(黄斑にが寄る、剥離)、炎と(薄いのや漏れがあると多い)、の進行1

⚠️ を受けた人には、充血・・・が出たらすぐに眼科を受診するよう説明する。からの感染は術後何年経っても起こり、に進む1()。

瘢痕化を防ぐ代謝拮抗薬

手術の成否はの創傷治癒で決まり、がするとが吸収されなくなる。の危険因子は、若年、アフリカ系、炎症性眼疾患、長期の多剤点眼、無、3か月以内の、を切る手術の既往、の失敗、である1。

薬 使い方(術中) 注意
0.1〜0.5 mg/mL をスポンジに含ませて1〜5分当てるか、同じ濃度を0.1 mL に注射。当てたあとは10〜20 mL 以上の灌流液で洗い流す ごく少量でも眼内に入るとを不可逆的に傷める
25〜50 mg/mL をスポンジで約5分、または術後に注射 同上

使い方は欧州緑内障学会による1。を使うと濾過が効きすぎてや薄いのが起こりやすくなるので、弁の大きさと縫合で流出量を調節する1。

非穿孔手術:深部強膜切除術とビスコカナロストミー

深部切除術は、を穿孔せずにの深い層との外壁を切除し、薄い-を通してをしみ出させる手術である。手動で行う方法と、を補助に使う方法がある。ビスコカナロストミーは、さらにをに注入して管を広げる。手術中はに接した深い弁を鑷子で持ち上げて切除する。

比べる点 が有利 非穿孔手術が有利
長期の より低い —
術後の 少ない —
に関連した合併症 — 少ない
の発生 — 少ない
術後の管理(の処置など) — 手間が少ない
習得 比較的容易 習得に時間がかかる

比較は欧州緑内障学会による1。

チューブシャント(緑内障ドレナージ器具)

長いの緑内障ドレナージ器具は、に差し込んだのでを、眼球のより後ろに置いたプレートへ導く。プレートの周りにできる被膜からが吸収される。Ahmed シャントはプレートの上に弁の部屋があり、そこからが伸びる形で、弁によって術後早期の過剰な流出を抑える。

項目 内容
適応 の失敗、が失敗しやすい眼、多くの、ほかの手術が効かない難治の小児緑内障1
危険 術後早期の視力を脅かす(弁のないはやで防ぐ)、器具の露出とそれに伴う、長期の(が内皮に近いほど)1
成人での使い方の例 長いの Ahmed シャントにを併用する。濃度はで「0.2〜0.4%」、注射で「0.1%」と書かれることがある(下の注意を参照)

⚠️ の濃度は「%」で書かれることがあるが、欧州緑内障学会の記載は 0.1〜0.5 mg/mL(0.01〜0.05%)である1。上の値は mg/mL の意味と読むのが妥当で、「0.2〜0.4%」を文字どおり%と読むと現行の推奨の範囲の数倍〜10倍近い濃度になる。また、手術にを併用する質の高い根拠はない1。

比べる点 が有利 シャントが有利
異物 器具が無く、露出の危険が無い —
角膜 が少ない —
その後の選択肢 追加の緑内障手術の選択肢が多い —
対象 — が失敗しやすい眼
— 手間が少なく、創からの漏れが少ない

比較は欧州緑内障学会による1。

⭐ やの既往がある眼を対象にした TVT 試験では、5年後の(14.4 mmHg、併用の12.6 mmHg)と点眼の数は同程度だったが、失敗率は29.8%・46.9%、緑内障のは9%と29%で、の方が成功率が高かった2。「があってが失敗しやすい眼には」という適応の根拠の一つである。

成人の緑内障手術

いつ手術を決めるか

成人のでは、薬物治療が成功しなかったときに手術を考える。

判断に影響する因子 内容
全身 年齢、心臓の状態を含む全身状態、血圧(とくに夜間と早朝)
眼 視力、視野、と黄斑(OCT、の UBM)、の設定、による隅角の構造、の表面の状態

は12〜18 mmHg を目安にする。現行の欧州緑内障学会は、病期と進行速度に応じて眼ごとに設定するよう求めている(緑内障 II)。また同学会は、薬やレーザーで視機能を保てそうにないときは手術を考え、手術を最後の手段に残すべきではないとしている1。

手術の前提条件:結膜の状態

の状態 対応
炎症がない そのまま手術できる
炎症がある 緑内障点眼を少なくとも1か月中止し、その間はの内服(必要に応じて)でを保つ
強い炎症がある とステロイドの点眼を使う

⚠️ のは効果が数時間しか続かず、1か月にわたってを保つ手段にはならない。の主役は内服ので、は手術の直前など一時的な補助と考える。

💡 長年の多剤点眼(とくに)でに慢性の炎症があると、術後にがして失敗しやすい。手術の前に点眼を休んでを「落ち着かせる」のはこのためである。

成人の術式の選び方

術式 特徴
標準手術。を併用したが、長期の下降で最も効率がよい1
深部切除術 手動または補助。合併症は少ないが下降は劣る
シャント 長いの Ahmed シャントと。が失敗した・失敗しやすい眼
MIGS が対象。に触れない

低侵襲緑内障手術 MIGS

MIGS は次の特徴をもつ。

  • に触れない(将来ののためにを温存できる)。
  • 1 mm 程度の透明角膜切開から、微小な器具でを切除する。
  • あるいは、のまたは後壁を取り除くか開く。
  • 特殊な、、そのほか高価な器具が必要になる。
分類 内容
の迂回() を迂回してを直接へ導く小さな器具を入れる
の拡張 先端の光るカテーテルを全周に通し、で管を広げる
の切開・切除 専用の刃でを切り取る、糸で全周を切り開く
へのレーザー エキシマレーザーでから内壁まで小孔を開ける
への器具 とをつなぎ、を増やす

分類は欧州緑内障学会による1。

項目 内容
対象 初期〜中期のとで、と点眼の負担を減らしたいとき。多くはと同時に行う
効果 下降は控えめで、10台半ばを下回ることはまれ
通常は適応にならない 進行した緑内障、低いが必要な例、閉塞隅角。型の MIGS はの上昇・隅角の・にも使わない

内容は欧州緑内障学会による1。短いをに通してを作る器具(プレートのないもの)は、に伴う合併症の危険があるので MIGS に含めない1。

レーザー治療

選択的レーザー線維柱帯形成術

⭐ SLT は、周波数倍増 Nd:YAG レーザー(532 nm)でのだけを選んで刺激し、流出を増やす。LiGHT 試験で、未治療の・に初回SLTを行った群の74.2%が3年間点眼なしでを保ち、緑内障手術は0例(点眼群11例)で、SLTは第一選択として提示すべき治療とされた3。

項目 内容
適応 POAG、、色素緑内障、高リスクの。初回治療として、または効果・・遵守の理由で追加・置き換えとして
禁忌 閉塞隅角、、ぶどう膜炎による緑内障、若年、隅角の形成異常
SLTの設定 スポット400 µm、照射時間3ナノ秒(固定)、0.4〜1.2 mJ。小さな泡(シャンパンの泡)が出る出力に合わせ、全周に約100発を重ならないように打つ
効果 初期に80〜85%の眼で有効で、を20〜25%(4〜9 mmHg)下げる。効果は時間とともに薄れ、が有効なこともある
合併症 一過性の、炎症、の変化、一過性の、

表は欧州緑内障学会による1。形成術も下降効果は同等だが、を起こしうる。SLTの効果はの色素の量に左右されにくい1。

レーザー周辺虹彩切開

項目 内容
適応 高リスクの原発閉塞隅角疑い、原発閉塞隅角、、(または)が疑われる急性閉塞隅角
位置 上方の11〜1時、または3時か9時の周辺部。上眼瞼で完全に覆われるか完全に出る位置にすると、まぶしさや像のだぶりが出にくい
設定 Nd:YAG レーザー1〜6 mJ。茶色の厚いでは、先にで下処理すると Nd:YAG の総エネルギーを減らせる
合併症 数時間後の一過性(最多)、軽い炎症、視覚症状、まれに・の誤流
術後 1〜3時間後にを確認し、1週後以降にで隅角の開き方を確かめる

表は欧州緑内障学会による1。切開後の眼では、上方の周辺部に小さな黒い孔を認める。

毛様体光凝固(毛様体破壊術)

や周波数倍増 Nd:YAG レーザーでを凝固し、の産生そのものを減らす。経・眼内視鏡・経瞳孔の方法がある。

項目 内容
適応 やが失敗しやすい・失敗した・適さない難治緑内障、の誤流の急性期
合併症 持続する炎症、前房出血、角膜の、、と

表は欧州緑内障学会による1。有用な視力が残る眼では、よりを優先してよい1。

閉塞隅角の手術

周辺虹彩切除・虹彩切開

閉塞隅角の手術の第一歩は、レーザーまたは手術での周辺部に孔を開けることである。のが孔を通ってへ抜けるので、が解け、膨らんでいたが平らになって隅角が開く。レーザーが使えないとき(が引かない、協力が得られないなど)は、手術で周辺を切除する。

水晶体摘出

が厚く、が浅く、隅角がほぼ閉じている場合は、を摘出する。

のを(超音波吸引術)の前後で比べると、術前はが前へ押されて角膜との間が狭く隅角が閉じているが、術後はが平らにしてが深くなり、隅角が開く。

💡 厚いを薄いに置き換えると、を後ろから押していた力がなくなる。これが、原発閉塞隅角とでが第一選択になりうる理由で、EAGLE 試験の結果と急性発作後の対応は緑内障 IIで扱う。そのものはの疾患とで扱う。

まとめ

  • 流出抵抗の約70%は(ぶどう膜網・角網・傍組織)、約5%が内壁、約20%が外壁と集合管にある。手術はを切り開くか、迂回するか、外側の抵抗層だけを削る。
  • 原発はの形成異常によるもので、治療は手術。できるだけ早く、角膜が透明なら隅角切開術か切開術、していれば眼外からの切開術。無効ならかシャント。薬はつなぎ。
  • 新生児の正常は5〜10 mmHg。診断は・角膜所見・・・視野の5項目中2項目。小児のは泣くと高く、麻酔で低く出る。
  • 続発小児緑内障は多くの例で薬と手術を併用する。2大原因はとSturge-。
  • 隅角切開術には透明な角膜・手術用・傾けられる顕微鏡が必要。切開術はとを直接つなぐ眼外からの手術で、MIGS ではない(金属のトラベクロトーム、または糸・光るカテーテルで全周)。
  • はとの間に弁で保護された瘻孔を作る標準手術。( 0.1〜0.5 mg/mL)でを防ぐが、・感染・に注意。
  • 非穿孔手術(深部切除術・ビスコカナロストミー)は安全性が高いが下降は劣る。シャント(Ahmed シャント)はが失敗した・失敗しやすい眼とに。
  • 成人のは点眼・レーザーで不十分なら手術。に炎症があれば点眼を1か月以上休み、内服・でを保ってから手術する。MIGS はを温存する初期〜中期向けの手術。
  • ⭐ SLTは・の第一選択になりうる(LiGHT 試験)。閉塞隅角・・ぶどう膜炎・若年型には禁忌。
  • 成人の閉塞隅角では手術の役割が大きい。切開・周辺切除でを解き、が厚くが浅い眼ではを摘出する。

出典

  1. 1.Terminology and Guidelines for Glaucoma, 6th Edition(European Glaucoma Society・2025)EGSが配布する全文PDF(Br J Ophthalmol 2025年9月8日オンライン公開)で確認した。小児緑内障はCGRN分類で原発(原発先天緑内障:新生児0〜1か月・乳児期1〜24か月・2歳以降、若年開放隅角緑内障:4歳超)と続発に分けること、原発先天緑内障の診断は眼圧21 mmHg超・角膜所見(Haab線条、上皮浮腫、新生児11 mm以上・1歳まで12 mm超・年齢を問わず13 mm超の角膜径)・乳頭陥凹(進行するリムのびまん性菲薄化、同程度の乳頭径で陥凹乳頭径比の左右差0.2以上、ノッチ)・年齢に不相応な眼軸長の延長による近視化・対応する再現性のある視野欠損の5項目中2項目によること、隅角鏡で虹彩の前方付着・遺残ぶどう膜組織・分化の悪い構造を認めること、小児の眼圧は泣くと高く麻酔で低く出ること。原発先天緑内障はほぼ全例で初回手術の適応で、薬は手術までのつなぎであり、隅角手術(線維柱帯切開術・隅角切開術)が第一選択で、無効なら濾過手術かチューブシャント、毛様体破壊術は再手術を先送りする暫定手段であること、隅角切開術は角膜が透明な場合の選択肢で、線維柱帯切開術は小児緑内障で主に使われ成人では少なく、角膜が透明なら隅角鏡下に眼内から行う方法(GATT)もあること。Axenfeld-Rieger異常の50〜75%が緑内障を起こすこと、無虹彩症はPAX6変異でWT1も調べること、乳児期早期(生後9か月未満)の白内障手術後は続発緑内障が最大50%に達すること。線維柱帯切除術は前房と結膜下腔の間に保護された瘻孔を作る最も広く行われる手術で、薬・レーザーで目標眼圧に届かない場合や進行例の初回手術に適応し、低眼圧による黄斑皺襞・脈絡膜剥離、濾過胞炎・眼内炎、白内障の進行が危険であること。濾過胞の瘢痕化の危険因子(若年・アフリカ系・炎症性眼疾患・長期多剤点眼・無水晶体・3か月以内の内眼手術・結膜手術歴・濾過手術の失敗・血管新生緑内障)、マイトマイシンCは術中0.1〜0.5 mg/mLを1〜5分(注射は0.1〜0.5 mg/mLを0.1 mL)使い眼内に入れないこと、代謝拮抗薬で低眼圧と薄い嚢胞状濾過胞が増えること。非穿孔手術(深部強膜切除術・カナロプラスティ・ビスコカナロストミー)は低眼圧と白内障が少ないが長期の眼圧下降は線維柱帯切除術に劣ること。長いチューブの緑内障ドレナージ器具は濾過手術が失敗した・失敗しやすい眼と多くの続発緑内障・難治の小児緑内障に適応し、術後早期の低眼圧・露出と眼内炎・角膜内皮の障害が危険で、機種間の優劣やチューブ手術での代謝拮抗薬に質の高い根拠はないこと。MIGSは眼内から結膜を切らずに線維柱帯・脈絡膜上腔の流出を増やす術式で眼圧下降は控えめ、初期〜中期の開放隅角緑内障と高眼圧症が対象で、進行例・低い目標眼圧・閉塞隅角には通常適応がなく、プレートのない濾過胞形成型の器具はMIGSに含めないこと。レーザー周辺虹彩切開の位置(上方の11〜1時か3時・9時で、上眼瞼で完全に覆われるか完全に出る位置)・Nd:YAGの出力1〜6 mJ・合併症(一過性眼圧上昇・炎症・視覚症状)と術後1〜3時間の眼圧確認。レーザー線維柱帯形成術の適応(POAG・落屑・色素緑内障・高リスク高眼圧症の初回または追加)と禁忌(閉塞隅角・血管新生緑内障・ぶどう膜炎続発・若年開放隅角緑内障・隅角形成異常)、SLTの設定(スポット400 µm・3ナノ秒・0.4〜1.2 mJ・全周約100発)、初期に80〜85%で有効で眼圧を20〜25%下げ、効果は時間とともに薄れること。毛様体破壊術は濾過手術やチューブが失敗しやすい・失敗した・適さない難治例に使い、低眼圧・眼球癆・視力低下が合併症であること。手術は最後の手段に残すべきでないこと。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Treatment outcomes in the Tube Versus Trabeculectomy (TVT) study after five years of follow-up(American Journal of Ophthalmology(Gedde SJ, et al.)・2012)PubMedの抄録(PMID 22245458)で、線維柱帯切除術または眼内レンズ挿入を伴う白内障手術の既往があり最大耐用薬物治療で眼圧18〜40 mmHgの212眼を、Baerveldt 350 mm²のチューブとマイトマイシンC(0.4 mg/mL・4分)併用の線維柱帯切除術に無作為に割り付け、5年後の眼圧は14.4 mmHgと12.6 mmHg(有意差なし)、薬剤数も同程度で、5年の累積失敗率はチューブ29.8%・線維柱帯切除術46.9%、緑内障の再手術は9%と29%だったことを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.Selective laser trabeculoplasty versus eye drops for first-line treatment of ocular hypertension and glaucoma (LiGHT): a multicentre randomised controlled trial(The Lancet(Gazzard G, et al.)・2019)Europe PMCの抄録(PMID 30862377)で、未治療の開放隅角緑内障・高眼圧症718例で初回SLTの群の74.2%が3年間点眼なしで目標眼圧を保ち、緑内障手術はSLT群0例・点眼群11例で、著者らがSLTを第一選択として提示すべきと結論したことを確認した閲覧 2026-09-29