眼科学

眼科学 · ML-68

小児のぶどう膜炎

Uveitis in childhood

前提:正常
眼:網膜・虹彩・毛様体

🧠 全体像:小児のぶどう膜炎は数こそぶどう膜炎全体の約1割だが、大人より失明に至りやすい。理由は3つある。子どもは見えにくさを訴えない、診察そのものが難しい、そして代表であるのぶどう膜炎が「白い眼」のまま無症状で進む。充血も痛みもないまま・・・緑内障・が積み重なり、気づいたときにはまで完成している。だから鍵は症状を待たずに眼科で定期的にスクリーニングすることで、その間隔は JIA の病型・ANA・発症年齢・で決める。治療は点眼ステロイドで始め、減らせなければ早めにメトトレキサート、効かなければへ進み、手術が要らない状態を保つことが最善の治療である。

ぶどう膜炎の SUN 分類と前部ぶどう膜炎のはぶどう膜炎の分類と前部ぶどう膜炎、検査の進め方はぶどう膜炎患者の検査、と後部の詳細はとが正本である。このノートは小児に特有の点に絞る。

小児のぶどう膜炎の特徴

頻度と重さ

  • 小児のぶどう膜炎は、ぶどう膜炎全体の約10%(報告により3〜22%)を占める。
  • 成人より失明に至りやすい。気づくのが遅れ、炎症の制御・診断・治療のいずれも難しいためである。
  • 一生のうち見えない年数(失明年数)が長くなり、・経済的な影響が大きい。
  • 重症度の内訳は、重症50%、中等症15%、軽症10%、治療抵抗性25%とされる。
  • 治療しなければ、平均1年で、2年で失明に至る。

「子どもは小さな大人ではない」

側面 小児の特徴 臨床での意味
免疫 生まれつき未熟で、十分に働かない 感染しやすく、炎症の出方も成人と違う
感染 獲得免疫がまだない、が済んでいない 先天感染・が原因になる
先天性・全身性疾患の症状と徴候がまだ出そろっていない 眼がの最初の手がかりになる
訴え 言葉を話す前の年齢、知識や自己観察の不足 見えにくさを訴えず、症状から見つからない
診察 協力が得にくく、麻酔下の検査が要ることもある ・眼底の評価が遅れやすい
治療 薬の用量・副作用・成長への影響に特別な配慮が要る 長期のステロイドは・緑内障・を招く

💡 成人のぶどう膜炎は「赤くて痛い」ことで受診につながるが、小児のは痛まず赤くもならない。症状という警報が鳴らない病気なので、スクリーニングという仕組みで見つけるしかない。

原因の全体像

小児のぶどう膜炎は、感染性と、全身の免疫の異常や原因不明の内因性()に分けて考える。

flowchart TD
    A["小児のぶどう膜炎"] --> B["感染性<br>主に後部・急速に進む"]
    A --> C["内因性(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-infectious'>非感染性</span>)"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='masquerade syndrome'>仮面症候群</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinoblastoma'>網膜芽細胞腫</span>・リンパ腫・白血病"]
    B --> E["先天・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perinatal infection'>周産期感染</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Toxoplasma'>トキソプラズマ</span>・風疹・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytomegalovirus, CMV'>サイトメガロウイルス</span><br>ヘルペスウイルス・EBV・梅毒"]
    B --> F["小児期の感染<br>トキソカラ・結核・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Borrelia'>ボレリア</span><br>バルトネラ"]
    C --> G["前部 57%<br>JIA・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enthesitis-related arthritis'>付着部炎関連関節炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tubulointerstitial nephritis, TIN'>尿細管間質性腎炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Kawasaki disease'>川崎病</span>"]
    C --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pars intermedia'>中間部</span> 12〜28%<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pars planitis'>扁平部炎</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple sclerosis'>多発性硬化症</span>"]
    C --> I["後部 6〜23%<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Behçet disease'>Behçet病</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Vogt-Koyanagi-Harada disease'>Vogt-小柳-原田病</span>・白点症候群"]
    C --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='panuveitis'>汎ぶどう膜炎</span> 13〜21%"]

感染性ぶどう膜炎

  • 主に後部に起こる。
  • 急速に進み、視力が大きく落ちることが多い。
  • 新生児は生まれつきのにあり、病原体の種類・免疫反応の仕方・寄生虫への反応()が成人と違う。

の覚え方が TORCHES である(先天性TORCH症候群)。

頭文字 病原体
T 、、結核
O その他
R 風疹
C
H ・
E EBV
S 梅毒

ほかに、症(ライム病)、バルトネラ症()、肝炎ウイルス、HIV、まれに真菌や日和見感染の病原体がある。

内因性ぶどう膜炎

部位ごとの割合と代表的な疾患は次のとおりである。

部位 割合 代表的な疾患
前部 57% JIA に伴うぶどう膜炎(前部の60%)、、ぶどう膜炎症候群、
12〜28% 毛様体扁平部炎、、
後部 6〜23% 、、、白点症候群
13〜21% —
  • 内因性ぶどう膜炎の約60%は特発性(原因不明)で、約40%がに伴う。の中では JIA が47%と最も多い。
  • 小児ぶどう膜炎に占める JIA の割合は報告によって幅がある(ぶどう膜炎の分類と前部ぶどう膜炎では従来の整理として80%を挙げている)。

内因性ぶどう膜炎の背景となる

群 疾患
慢性関節炎 、、、に伴う関節炎
血管炎 、、、(旧称 Wegener 肉芽腫症)、(旧称 Churg-Strauss 症候群)
、強皮症、
腎疾患 、性糸球体腎炎、IgA腎症
その他 、Blau 症候群、慢性乳児神経皮膚候群(の最重症型)、
小児の 、リンパ腫、白血病

⚠️ 小児で治りにくい「ぶどう膜炎」、とくにの偽や白い眼底病変では、や白血病のを必ず除外する。は小児の眼腫瘍、の鑑別はで扱う。

関節炎とぶどう膜炎が重なる病気

「関節炎+ぶどう膜炎」という組み合わせの傘の下には、JIA だけでなく多くの病気が入る。

💡 JIA はである。関節炎とぶどう膜炎を併せ持つ子どもを「JIA のぶどう膜炎」と決める前に、同じ組み合わせを起こす他の病気を考える。

年齢で変わる原因

年齢ごとに多い原因を並べると、小児期と成人期の違いがよく分かる(年齢帯ごとに多いものを上から並べた整理)。

5歳未満 5〜15歳 16〜25歳 25〜45歳 45〜65歳 65歳超
JIA JIA・ バードショット 特発性ぶどう膜炎・血管炎
トキソカラ Fuchs ・Posner-Schlossman 症候群 特発性の前部・ 匐行性炎
ヘルペスウイルス トキソカラ 匐行性症 癌関連
・ — (リンパ腫・白血病)
白血病(・) 梅毒・AIDS — —

⭐ 5歳未満では JIA・トキソカラ・ヘルペスウイルス・と、白血病・・の、5〜15歳では JIA・・・トキソカラ・・を考える。

若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎

JIA とは

ぶどう膜炎の特徴

  • JIA のぶどう膜炎は、慢性・の前部ぶどう膜炎である。
  • 白い眼のまま、痛みもなく進む。
  • 病型によってぶどう膜炎の起こりやすさが違う。
JIA の病型 ぶどう膜炎の頻度
(陰性、ANA 陽性または陰性) 約20%
(陰性、ANA 陽性または陰性) 約5%
全身型、陽性など 低い

💡 典型例は「・ANA 陽性・幼い女児」で、関節炎が軽いほど眼の症状もないので見逃されやすい。関節の病気の重さと、眼の病気の重さは一致しない。

小児の前部ぶどう膜炎の3つの型

小児の前部ぶどう膜炎は、経過と症状で3つの型に分けると理解しやすい。JIA の典型は右の2つである。

項目 慢性再発性(急性の要素をもつぶどう膜炎) 慢性活動性前部ぶどう膜炎
痛み・・ あり なし なし
眼瞼 下垂気味 変化なし 変化なし
視力 0.5を超える 0.5を超えるが低下しうる 高度に低下
強い 充血なし 充血なし
角膜 浮腫(内皮の)のことがある
小さな点状、多数 小さな点状、少数 小さいものも大きいものも、消えかけの沈着物
多数の細胞とフレア() 細胞は少ないことも多いことも 慢性のフレア
・瞳孔 浮腫・腫脹・ 萎縮・ 萎縮、瞳孔閉鎖・瞳孔膜閉
急性の(ではがせる) あり 広範な・前癒着
上昇または低下(・に注意) 低下・上昇・正常 高度に上昇(緑内障)から高度に低下()まで
透明、前面にフィブリン・色素 透明または 併発・ステロイド
下方に細胞 透明 細胞、、塊状の
、 、、の拡大
  • の眼は、を取り巻く強い充血で赤い。
  • 慢性の2型の眼は充血がなく白い。慢性活動性の眼ではに白い()を認める。

⭐ 急性型は成人の HLA-B27 関連ぶどう膜炎と同じく症状で見つかる。慢性の2型は症状がないまま・癒着・・緑内障・へ進む。この差がスクリーニングの必要性の根拠である。

スクリーニング:間隔を決める4つの因子

・関節炎財団の2019年のガイドラインは、・米国眼科学会の推奨とドイツの小児ぶどう膜炎研究グループの推奨を統合し、次のようにリスクを分けた1。

リスク 条件 眼科スクリーニングの間隔
高リスク ・陰性・・未分化関節炎のいずれかで、かつ ANA 陽性、かつ JIA の発症が7歳未満、かつ4年以内 3か月ごと
低〜 上の病型でも ANA 陰性、7歳以上で発症、またはが4年を超える 危険因子の組み合わせに応じて6〜12か月ごと
低〜 全身型、陽性、 6〜12か月ごと
  • や HLA-B27 をもつ子どもは、急性と慢性の前部ぶどう膜炎の両方の危険があるので、やはりスクリーニングが要る1。
  • の子どもと家族には、の症状(赤み・痛み・)を教えておくことが強く推奨されている1。
  • SHARE の推奨は、JIA が疑われるすべての患者を定められた手順でスクリーニングし、全身のをやめた後は少なくとも1年間、3か月ごとに眼科で診ることを求めている2。
flowchart TD
    A["JIA と診断<br>(または疑い)"] --> B["診断後すみやかに<br>最初の眼科診察"]
    B --> C{"病型は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oligoarticular type'>少関節型</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rheumatoid factor, RF'>リウマトイド因子</span>陰性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyarticular type'>多関節型</span><br>乾癬性・未分化のどれかか"}
    C -->|"はい"| D{"ANA陽性・7歳未満の発症・<br>罹病4年以内をすべて満たすか"}
    C -->|"いいえ<br>(全身型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rheumatoid factor, RF'>リウマトイド因子</span>陽性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyarticular type'>多関節型</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='enthesitis-related arthritis'>付着部炎関連関節炎</span>)"| F["低〜<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medium risk'>中リスク</span><br>6〜12か月ごと"]
    D -->|"満たす"| E["高リスク<br>3か月ごと"]
    D -->|"満たさない"| F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enthesitis-related arthritis'>付着部炎関連関節炎</span>・HLA-B27陽性は<br>急性発作の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warnings'>警告</span>症状も教える"]
    E --> H["全身の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunosuppressant'>免疫抑制薬</span>を中止したら<br>少なくとも1年間3か月ごと"]
    F --> H

💡 4つの因子(病型・ANA・発症年齢・)は、どれも「ぶどう膜炎がいつ出やすいか」を表している。JIA のぶどう膜炎の多くは関節炎の発症から数年以内に起こるので、が長くなるとリスクは下がり、間隔を広げられる。

ぶどう膜炎と診断した後の経過観察

・関節炎財団のガイドラインは、ぶどう膜炎が制御されている子どもの眼科診察を次のように強く推奨している1。

状況 眼科診察のタイミング
点眼ステロイドを減量・中止した 変更のたびに1か月以内
安定した治療を続けている 3か月以内ごと(それより間隔をあけない)
全身治療を減量・中止した 変更後2か月以内

合併症

慢性の炎症と、治療のステロイドの両方が合併症を起こす。

合併症 頻度(報告の幅) 見え方・仕組み
35%(7〜70%) 部の角膜に、から離れた位置から帯状に広がる灰白色の
の前癒着・ 50%(8〜75%) がに貼り付き、瞳孔が花びら状・になる。はがれた跡に色素が前面に残る
23%(8〜38%) 癒着による隅角の閉塞、炎症、ステロイド
併発 30%(19〜81%) 炎症とステロイドによる。進行するとが真っ白になる
の線維化 — 前面の膜状の
11%(過小評価されている) OCT で網膜内のの腔。の主因
— OCT で網膜の下に液
— 慢性炎症による網膜表面の膜
・ — 下記
19% の障害でが作られない。を起こす
— が続いた末に眼球が萎縮する

が11%とされるのは、小児では OCT の撮影が難しく、浮腫が見逃されやすいからである。

虹彩の癒着から緑内障へ

  • 瞳孔閉鎖:の全周がに癒着する。に炎症性の膜が張ったものは瞳孔膜閉と呼ぶ。
  • 膨隆:瞳孔でが流れなくなり、に水がたまってが前へ風船のように押し出される。周辺のが角膜後面に押し付けられ、ができて隅角が閉じる。
  • 治療はレーザー切開で、の周辺に小さな孔を開けてからへの抜け道を作る。
flowchart TD
    A["慢性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>炎症<br>フィブリン"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior synechiae'>虹彩後癒着</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pupillary margin'>瞳孔縁</span>の全周が癒着<br>(瞳孔閉鎖)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior chamber'>後房</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aqueous humor'>房水</span>がたまる<br>膨隆<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>"]
    D --> E["周辺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>が角膜後面に接する<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral anterior synechiae'>周辺虹彩前癒着</span>"]
    E --> F["隅角が閉じて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='elevated intraocular pressure'>眼圧上昇</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary glaucoma'>続発緑内障</span>"]
    D --> G["レーザー<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>切開で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior chamber'>後房</span>から<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>への抜け道"]

弱視

  • 同じ子どもの左右を比べると、のある左眼ではが萎縮して紋理が消え、平滑になり、の前面に嚢の線維化を認める。
  • 小児では、合併症そのものに加えてが視力を奪う。
の原因 内容
視覚遮断 ・・が網膜に像を結ばせない
屈折 の子どもに()を使い続けると、ピントを合わせられず、ぼやけた像しか入らない

⚠️ 角膜もも透明なのに視力が出ないなら、を考える。炎症が治まった後も、の治療(・遮閉)をしなければ視力は戻らない。の治療は:原因と治療で扱う。

その他の小児のぶどう膜炎

HLA-B27 関連・付着部炎関連関節炎

  • は、年長の男児に多い JIA の病型で、HLA-B27 と関連する(HLA-B27、)。
  • ぶどう膜炎は成人のと同じく、片眼の急な充血・痛み・で始まるが典型である。一方で慢性の前部ぶどう膜炎も起こりうる1。
  • の治療との拾い上げ DUET はぶどう膜炎の分類と前部ぶどう膜炎で扱う。
  • 全身治療で安定している子どもが短い急性発作を1回起こしただけなら、すぐに全身治療を変えず、まず点眼ステロイドで治療することが条件付きで推奨されている1。

尿細管間質性腎炎ぶどう膜炎症候群

川崎病

  • は、5歳未満の小児のぶどう膜炎の原因として挙がる血管炎である。
  • 発熱と両眼ののある幼児では、の炎症も確かめる。

中間部ぶどう膜炎

項目 内容
所見 の細胞と。の雪玉状、毛様体扁平部の雪堤状滲出物との膜。網膜周辺部の浸潤、周辺の血管炎、漿液性の網膜の隆起、萎縮
後期 の牽引、
予後 不良。慢性に活動し、治療に抵抗する
原因 特発性(=毛様体扁平部炎)が小児の内因性ぶどう膜炎で2番目に多い。ほかに、、症

毛様体扁平部炎の眼では、次の所見を認める。

  • が濁って眼底がかすみ、周辺部に黄白色の滲出物の塊が見える。
  • の上に白い膜状の組織がかかる。
  • では、を伴うを認める。

詳しくはを参照。

後部ぶどう膜炎

は視力が重く、急速に落ちる。

群 原因
感染性 、、ヘルペスウイルス(・・)
、、血管炎、白点症候群

トキソプラズマ症

トキソカラ症

項目 内容
年齢 2〜31歳、ピークは7〜16歳
病原体 ・の卵の中で育った幼虫(従来の記載では第2期幼虫)を口から取り込む
全身型 :好酸球増多、
眼の診断 臨床像と血清学的検査に基づく
眼底 白い肉芽腫と、そこから伸びる線維性の索。乳頭から周辺へ網膜が引かれて、血管が一方向に引き伸ばされる

治療は次のとおりである。

  • 炎症がなければ経過観察。
  • 活動性のぶどう膜炎には、ステロイド、または+全身ステロイド。・を行うときは必ず全身ステロイドを併用する(幼虫が死ぬと強い炎症が起こるため)。
  • のについて、従来の記載はまたは「体重1 kg あたり1日50 mg を2週間」としている。現行の CDC の推奨は、400 mg を1日2回5日間(成人・小児とも)、または100〜200 mg を1日2回5日間である3。従来の体重あたりの値はの用量としてはこれと大きく異なるので、そのまま使わない。
  • では、治療の目標は眼の障害を最小限にすることで、活動性の病変には同じ用量のが有益かもしれない。点眼または全身のステロイドで炎症を抑える。炎症の落ち着いた眼では、慢性炎症による障害を防ぐための手術で転帰が改善しうる3。

⚠️ 小児の片眼の白い眼底病変では、トキソカラとを必ず鑑別する。病型ごとの詳細はとにある。

ヘルペスウイルス

眼の感染が問題になるのは次の子どもである。

  • 先天感染
  • 新生児・乳児(生理的に免疫が弱い)
  • 続発性の免疫不全・免疫抑制療法中
  • 臓器移植後

眼底では、黄白色の網膜炎のが散在し、で眼底がかすむ。ヘルペスウイルス(、・2型、)は、前部ぶどう膜炎、、進行性壊死を起こす。抗ウイルス薬は・に、にを使う()。

白点症候群

疾患 眼底の特徴
に多数の色の平たい斑。の早期に斑が暗く抜ける
の小さな黄白色の点
偽眼候群 周辺部に線状に並ぶ萎縮瘢痕と、打ち抜いたような小さな瘢痕(のに似る)

治療

感染性ぶどう膜炎

病原体に合った抗微生物薬を使う。

病原体 薬
+、クリンダマイシン、、
・2型、 アシクロビル

内因性(非感染性)ぶどう膜炎

JIA のぶどう膜炎の治療の段階

現行のガイドラインでは、治療は次の段階を踏む。

段階 内容 根拠
① 点眼ステロイド 最初の治療。1%をジフルプレドナートより優先する。短期の制御には全身ステロイドより点眼の追加・増量を優先する ・関節炎財団1、SHARE はまたは2
② 全身治療の追加 点眼で3か月以内に非活動化しない、減量中にする、または点眼を1日1〜2滴続けないと抑えられない SHARE2、・関節炎財団1
③ メトトレキサート 全身のの第一選択。経口より皮下注を優先 同上
④ メトトレキサートが無効・不耐なら追加または切り替え。SHARE は>>の順とし、・関節炎財団はとの優劣を示さずモノクローナル抗体を勧める。は使わない SHARE2、・関節炎財団1
⑤ の最適化 増量・の短縮 → 別のモノクローナル抗体の ・関節炎財団1
⑥ その他 ・、非生物学的製剤では・・ 同上
  • 視力を脅かす合併症のある重症例では、メトトレキサート単独から始めず、メトトレキサートとモノクローナル抗体のを最初から併用することが条件付きで推奨されている1。
  • 減量は、全身治療でぶどう膜炎が少なくとも2年間よく抑えられてから始める。点眼ステロイドが残っているなら、全身治療より先に点眼を減らす1。SHARE も、点眼ステロイドをやめて2年間非活動な状態が続いてから全身の免疫抑制を減らすとしている2。
  • NSAIDs は単独では効果が示されておらず、追加の治療にとどまる2。

SYCAMORE 試験が、を JIA のぶどう膜炎の標準にした4。

項目 内容
対象 安定用量のメトトレキサートを使っていても活動性の JIA ぶどう膜炎がある2歳以上の小児・青年
割り付け (体重に応じて20 mg または40 mg を2週ごとに皮下注)対、2対1
結果 90例の時点でに到達。は群27%(16/60)、プラセボ群60%(18/30)、0.25
安全性 有害事象・重篤な有害事象は群で多かった
flowchart TD
    A["活動性の JIA ぶどう膜炎<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span>細胞あり)"] --> B["点眼ステロイド<br>+必要なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriatic'>散瞳薬</span>"]
    A --> C{"視力を脅かす合併症を<br>伴う重症例か"}
    C -->|"はい"| G["メトトレキサート+<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='adalimumab'>アダリムマブ</span>(または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='infliximab'>インフリキシマブ</span>)を<br>最初から併用"]
    C -->|"いいえ"| B
    B --> D{"3か月以内に非活動化し<br>点眼を減らせるか"}
    D -->|"はい"| E["点眼を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span><br>変更ごとに1か月以内に診察"]
    D -->|"いいえ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relapse'>再燃</span>"| F["メトトレキサート<br>(皮下注を優先)"]
    F --> H{"メトトレキサートで<br>制御できるか"}
    H -->|"いいえ"| G
    H -->|"はい"| I["2年以上の良好な制御の後に<br>点眼→全身治療の順に減量"]
    G --> I

⚠️ 点眼ステロイドを長く頻回に使うほど、とが増える。「点眼で何とか抑えている」状態を続けず、早めに全身治療へ進むことが、結局はステロイドの合併症と手術を減らす。

合併症の手術

⚠️ 手術そのものが炎症をさせる。最善の選択は、手術が必要にならないように炎症を抑え続けることである。

合併症 手術 小児での注意
を剥がしてカルシウムを除く にかかるとの原因になる
吸引+挿入 眼軸が伸び続けるのでの度数を成長を見越して計画する。が起こりやすくが要る。調節が失われるので二重焦点ので近くを補う
緑内障 、 成功率は限られる
・牽引 の進行、、、を起こしうる

の基本はの疾患と、小児の緑内障手術は小児と成人の緑内障手術、はの疾患とで扱う。

まとめ

  • 小児のぶどう膜炎はぶどう膜炎の約10%(3〜22%)だが失明に至りやすい。重症50%・中等症15%・軽症10%・治療抵抗性25%で、無治療なら平均1年で、2年で失明する。子どもは訴えず、診察も難しい。
  • 感染性(主に後部・急速)は TORCHES:・トキソカラ・結核、風疹、、ヘルペスウイルス、EBV、梅毒が中心。内因性は前部57%・12〜28%・後部6〜23%・汎13〜21%、60%が特発性、40%が(その中で JIA が最多)。(・白血病・リンパ腫)を忘れない。
  • JIA は16歳未満発症の関節炎。ぶどう膜炎は慢性・の前部ぶどう膜炎で、で約20%、陰性で約5%。白い眼のまま・癒着・・緑内障・・が進む。
  • スクリーニング:・陰性・乾癬性・未分化のうち ANA 陽性・7歳未満発症・罹病4年以内なら3か月ごと、それ以外は6〜12か月ごと。全身のの中止後は少なくとも1年間3か月ごと。・HLA-B27 は急性発作の症状も教える。
  • 合併症:35%、癒着50%、23%、併発30%、11%(過小評価)、19%、。瞳孔閉鎖→膨隆→にはレーザー切開。遮断と屈折(+)によるに注意。
  • 治療:点眼ステロイドで始め、3か月で抑えられない・減らせないならメトトレキサート(皮下注)、次に(SYCAMORE で27%対60%)・。は使わない。重症例は最初から併用。2年以上の制御の後に点眼→全身の順で減らす。
  • はが小児の内因性で2番目に多く、慢性・治療抵抗性で予後不良。後部は感染(・トキソカラ・ヘルペスウイルス)が多く急速に視力が落ちる。トキソカラのは現行 CDC で400 mg 1日2回5日間。
  • 手術は炎症をさせる。小児のでは眼軸の成長を見越した計画・・が要る。最善は手術を要しない状態を保つこと。

出典

  1. 1.2019 American College of Rheumatology/Arthritis Foundation Guideline for the Screening, Monitoring, and Treatment of Juvenile Idiopathic Arthritis-Associated Uveitis(American College of Rheumatology / Arthritis Foundation・2019)PMC全文(PMC6777949)の表3と本文で、米国小児科学会・米国眼科学会の推奨とドイツの小児ぶどう膜炎研究グループの推奨を統合し、少関節型・RF陰性多関節型・乾癬性関節炎・未分化関節炎のうちANA陽性かつJIA発症が7歳未満かつ罹病期間4年以内の児を高リスクとして3か月ごとの眼科スクリーニングを条件付きで推奨したこと、これらの病型でもANA陰性・7歳以上発症・罹病4年超の児と全身型・RF陽性多関節型・付着部炎関連関節炎の児を低〜中リスクとして6〜12か月ごとにスクリーニングすること、付着部炎関連関節炎やHLA-B27保有児は急性と慢性の前部ぶどう膜炎の両方の危険があること、ぶどう膜炎の経過観察は点眼ステロイドの変更ごとに1か月以内・安定治療中は3か月以内ごと・全身治療の変更後2か月以内とすること(強い推奨)、初期治療は点眼ステロイドで、プレドニゾロン酢酸エステル1%をジフルプレドナートより優先すること、プレドニゾロン酢酸エステル1%を1日1〜2滴必要とし続ける場合は全身治療を加えること、全身治療の開始にはメトトレキサートの皮下注を経口より優先し、TNF阻害薬はエタネルセプトよりモノクローナル抗体(アダリムマブ・インフリキシマブ)を優先し(最初の抗TNF抗体としてアダリムマブとインフリキシマブのどちらを選ぶかは推奨を出していない)、視力を脅かす合併症のある重症例ではメトトレキサートとモノクローナル抗体TNF阻害薬を直ちに併用すること、効果不十分なら増量・頻回化、次に別のモノクローナル抗体TNF阻害薬、さらにアバタセプト・トシリズマブなどへ進むこと、全身治療の漸減は少なくとも2年間の良好なコントロールの後とすること、脊椎関節炎の児には急性前部ぶどう膜炎の警告症状を教育することを確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Consensus-based recommendations for the management of uveitis associated with juvenile idiopathic arthritis: the SHARE initiative(Annals of the Rheumatic Diseases・2018)PMC全文(PMC6059050)の表1〜3で、JIAが疑われる全患者を監査された手順でぶどう膜炎についてスクリーニングすること、全身の免疫抑制薬を中止した後は少なくとも1年間3か月ごとに眼科でスクリーニングすること、点眼ステロイド中止後2年間の非活動期を経てから全身の免疫抑制を減らすこと、点眼ステロイド(プレドニゾロン酢酸エステルまたはデキサメタゾン)が前部ぶどう膜炎の第一選択で、NSAIDs単独には効果が示されていないこと、点眼ステロイドで3か月以内に非活動化しない場合や減量中に再燃する場合に全身の免疫抑制を行い、メトトレキサートが第一選択であること、メトトレキサート無効・不耐なら生物学的製剤を加えるか切り替え、抗TNF療法はアダリムマブ>インフリキシマブ>ゴリムマブの順で推奨し、エタネルセプトは用いないこと、トシリズマブ・リツキシマブ・アバタセプトは抗TNF抵抗例の選択肢となりうることを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Clinical Care of Toxocariasis(Centers for Disease Control and Prevention・2024)2024年2月9日更新のページで、内臓型トキソカラ症の治療はアルベンダゾール400 mgを1日2回5日間(成人・小児とも)またはメベンダゾール100〜200 mgを1日2回5日間であること、眼トキソカラ症の治療目標は眼の障害を最小にすることで、活動性の病変には同じ用量の抗寄生虫薬が有益かもしれないこと、点眼または全身のステロイドによる炎症の制御が適応となりうること、幼虫の外科的摘出は不成功になりうるが、慢性炎症による障害を防ぐための手術で転帰が改善しうることを確認した。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Adalimumab plus Methotrexate for Uveitis in Juvenile Idiopathic Arthritis(New England Journal of Medicine(Ramanan AV, et al.)・2017)抄録(PMID 28445659)で、SYCAMORE試験は安定用量のメトトレキサートを使用中の2歳以上の活動性JIAぶどう膜炎の小児・青年を、アダリムマブ(体重に応じ20 mgまたは40 mgを2週ごと皮下注)とプラセボに2対1で割り付けた多施設二重盲検無作為化試験で、90例登録の時点で中止基準に達し、治療失敗はアダリムマブ群60例中16例(27%)、プラセボ群30例中18例(60%)、ハザード比0.25であったこと、有害事象と重篤な有害事象はアダリムマブ群で多かったことを確認した。閲覧 2026-09-29