眼科学

眼科学 · ML-47

中間部ぶどう膜炎

Intermediate uveitis

前提:正常
眼:網膜・虹彩・毛様体

🧠 全体像:は、炎症の主座がにあるぶどう膜炎である。毛様体扁平部・・前部が炎症の場で、若い人の両眼に痛みも充血もないまま起こり、とかすみで気づかれる。眼底の下方のに浮かぶ雪玉状と、毛様体扁平部の雪堤状滲出物が目印で、視力を奪う最大の合併症はである。背後に・や、梅毒・結核などの感染が隠れていないかを確かめ、感染なら原因の治療、非感染なら局所ステロイドから全身の免疫抑制・生物学的製剤へと段階的に進める。

ぶどう膜炎の分類(SUN 分類)と前部ぶどう膜炎はぶどう膜炎の分類と前部ぶどう膜炎で、検査の進め方はぶどう膜炎患者の検査で扱う。は、小児のぶどう膜炎は小児のぶどう膜炎にある。

定義と用語

中間部ぶどう膜炎とは

SUN 分類では、炎症の主座がにあるものをと呼び、毛様体扁平部炎・後部炎・を含む1。網膜炎や炎がないことが前提で、の炎症があってもより軽い2。

炎症が及ぶ場所は次の3つである。

部位 内容
毛様体扁平部 のうち後方の平らな部分(前方のひだ部との間)
・・血管 網膜の最周辺部と、そこを走る血管(特に静脈)
前部 扁平部の前にある

ぶどう膜の断面で見ると、の場は(前部)と網膜・の(後部)にはさまれた、毛様体扁平部からにかけての帯にあたる。

歴史と「毛様体扁平部炎」

  • Fuchs は1908年に、この病気を慢性炎として記載した。
  • 毛様体扁平部炎は、を伴わないので、の雪玉状か毛様体扁平部の雪堤状滲出物を伴うものを指す2。
  • 雪玉状も雪堤状滲出物もないのは、「毛様体扁平部炎ではない型」として区別する2。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous body'>硝子体</span>が主座のぶどう膜炎<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate uveitis'>中間部ぶどう膜炎</span>)"] --> B{"感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>の検索で<br>何が見つかったか"}
    B -->|"感染"| C["感染性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate uveitis'>中間部ぶどう膜炎</span><br>梅毒・ライム病・結核・トキソカラ"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multiple sclerosis'>多発性硬化症</span>に伴うもの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoidosis'>サルコイドーシス</span>に伴うもの<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory bowel disease (IBD)'>炎症性腸疾患</span>に伴うもの"]
    B -->|"見つからない"| E{"雪玉状<span class='jp-term jp-term-diagram' title='opacity (turbidity)'>混濁</span>か<br>雪堤状滲出物があるか"}
    E -->|"ある"| F["毛様体扁平部炎"]
    E -->|"ない"| G["毛様体扁平部炎ではない型"]

疫学

  • ぶどう膜炎全体の約8%を占める。SUN 作業部会は、紹介施設での毛様体扁平部炎の割合を2.4〜15.4%(定義の違いで幅がある)、を年に10万人あたり2.08人としている2。
  • 若い人(20〜40歳)に多い。SUN 作業部会の226例では年齢の中央値が22歳で、雪堤状滲出物のある例はさらに若かった2。
  • 約80%が両眼性である(SUN の226例では85%)。経過は慢性がほとんど(87%)2。
  • 小児のは重い病気になることがある。

症状

症状 内容
の中の炎症細胞とが影を落とす
痛みももない 前部ぶどう膜炎と対照的。眼は充血しない
の低下 視力は0.5 程度に落ちることが多い。主な原因はで、患者の30〜50%に起こる

💡 前部ぶどう膜炎が痛いのは、とひだ部の炎症との痙攣が起こるからである。の炎症は扁平部とが中心で、の炎症は軽いので、痛み・充血・がほとんどない。「白い眼のままとかすみ」がの典型の訴えである2。

所見

所見 内容
への炎症細胞の浸潤。の細胞と(ヘイズ)
雪玉状 炎症細胞が集まった白〜黄白色の丸い塊が、下方のに浮かぶ。綿とも呼ぶ
雪堤状滲出物 毛様体扁平部の灰白色の板状の滲出物。毛様体扁平部炎の目印
の静脈周囲炎 周辺のに白い鞘がつく、で漏れる
最も多い合併症。OCT で確かめる
  • 雪玉状:眼底の下方に、ぼんやりした黄白色の丸い塊がいくつか、の中に浮かんで見える。が濁っているので、眼底全体がかすんで見える。
  • 雪堤状滲出物:してで最周辺部を見ると、下方の毛様体扁平部からにかけて、灰白色の滲出物が土手のように連なって盛り上がる。
  • SUN 作業部会の226例では、雪玉状83%、雪堤状滲出物44%、血管の鞘形成か漏出25%、43% だった。の炎症は軽く、は83%でなかった2。

⚠️ 雪堤状滲出物は最周辺部にあるので、して倒像とで探さなければ見落とす。の細胞だけで終わらせず、必ず最周辺部まで診る。

嚢胞様黄斑浮腫

  • の最も多い合併症で、の主な原因である。
  • では、黄斑に色素がたまって花びら状(放射状)のを示し、もになる。
  • OCT では、の網膜の中に黒く抜けた大小の嚢胞が並び、網膜が厚く盛り上がる。その下にが見えることもある。

画像所見はを参照。ほかの構造的な合併症として、、まれに乳頭や雪堤のがある2。

原因

群 疾患 押さえどころ
自己免疫 従来の整理ではの患者の10〜15%にが生じる(下記)。神経内科と連携する
自己免疫 雪玉状が出うる。胸部画像でを探す
自己免疫 消化器症状を聞く
感染 梅毒 あらゆるぶどう膜炎をまねる。トレポネーマ検査
感染 ライム病 流行地・マダニ曝露の人で
感染 結核 、胸部画像
感染 小児の片眼の

SUN 作業部会の毛様体扁平部炎の分類基準は、・梅毒・・ライム病が証明されたら毛様体扁平部炎とは呼ばないとしている2。

除外する疾患 基準
McDonald 基準で診断
梅毒 トレポネーマ検査の
胸部画像の、またはの組織
ライム病 血清の IgG または IgM 陽性(を含む)

多発性硬化症との関係

  • とは関連が深く、の患者の10〜15%にが生じるとされる。そのため、神経症状をし、神経内科と連携して頭部 MRI を検討するという整理がある。
  • SUN 作業部会は、を伴わない毛様体扁平部炎からが生じる危険を年に2〜4%と見積もり、検査は収量が低いので全例に行うことは勧めないとした。は、神経症状や既往がないことを確かめ、McDonald 基準で臨床的に除外する2。
  • 2つの数字は意味が違う。従来の10〜15%は期間を定めない割合、SUN の2〜4%は1年あたりの発症の危険なので、そのまま大小を比べることはできない。どちらの立場でも、神経症状をしてを臨床的に見逃さないことが出発点になる。
  • SUN 作業部会は、に伴うを毛様体扁平部炎とは別のものとして扱う2。両者で雪玉状・雪堤状滲出物が重なることがあり、血管の鞘形成・漏出はに伴う例でやや多いが、診断に使えるほどの差はない2。

⭐ 若い人の両眼のでは、・の既往・などの神経症状を必ず聞く。症状があれば神経内科へ紹介し MRI を撮る。症状がなくても、経過中にが出てくることがあると説明しておく。

検査の考え方

  • 梅毒のトレポネーマ検査と、を除外するための少なくとも胸部画像は、毛様体扁平部炎と診断する前に行う2。
  • ライム病の検査は、非流行地では陽性のほとんどが偽陽性になるので、流行地の人やマダニ曝露・症状のある人に限るという意見がある2。
  • 結核(・胸部画像)とトキソカラ(血清)は、病歴と所見に応じて追加する。

検査項目の選び方の全体はぶどう膜炎患者の検査にある。

治療

感染性の中間部ぶどう膜炎

原因の病原体に合った抗菌薬・抗ウイルス薬で治療する。梅毒・結核を見逃してステロイドやだけで治療すると悪化する。

非感染性の中間部ぶどう膜炎

治療の目的は、の炎症を抑え、を治して視力を守ることである。片眼か両眼かで、局所治療と全身治療を使い分ける。

局所治療

治療 内容
眼周囲のステロイド注射 やをなどに注射する
毛様体扁平部の・ 雪堤状滲出物との炎症の場を凝固する(従来の治療)
のステロイド やの徐放製剤をに入れる
のが強く視力を妨げるとき

米国眼科学会の技術評価では、ぶどう膜炎のに対して、眼周囲・の注射、・ののいずれも視力や黄斑の構造を改善した。比較研究では、の注射とが眼周囲注射より有効だった。どれもとの進行を起こしうる3。

全身治療(両眼性の例)

  1. 全身のステロイド(など)
  2. (メトトレキサート、など)。次のときに使う。
    • ステロイドから長く離脱できない(慢性の)
    • ステロイドの効きが不十分
    • ステロイドが禁忌、または副作用に耐えられない
  3. 生物学的製剤:TNF-α 阻害薬の(ハンガリーで使える生物学的製剤)
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermediate uveitis'>中間部ぶどう膜炎</span>"] --> B{"感染性か"}
    B -->|"感染性"| C["原因に合った<br>抗菌薬・抗ウイルス薬"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-infectious'>非感染性</span>"| D{"片眼か両眼か"}
    D -->|"片眼"| E["局所治療<br>眼周囲ステロイド注射<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravitreal corticosteroid'>硝子体内ステロイド</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='implant'>インプラント</span><br>扁平部の凝固(従来の治療)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous opacity'>硝子体混濁</span>が強ければ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitrectomy'>硝子体手術</span>"]
    D -->|"両眼"| F["全身のステロイド"]
    F --> G{"ステロイドだけで<br>治療を続けられるか"}
    G -->|"いいえ<br>依存・効果不十分・禁忌・副作用"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunosuppressant'>免疫抑制薬</span><br>(メトトレキサート・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ciclosporin'>シクロスポリン</span>)"]
    H --> I["生物学的製剤<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adalimumab'>アダリムマブ</span>)"]

の根拠となった VISUAL I 試験では、ステロイドを2週以上使っても活動性のの・後部・の成人217例で、(初回80 mg、その後40 mg を2週ごと)はに比べてまでの期間を延ばした(中央値24週対13週、0.50)。一方で有害事象・重篤な有害事象は多かった4。

⚠️ が疑われる・合併する患者では、TNF-α 阻害薬はを起こしたり悪化させたりしうるので使う前に神経内科と相談する。

💡 治療を「片眼なら局所、両眼なら全身」と分けるのは、局所治療は注射した眼にしか効かず、両眼を繰り返し注射するより全身治療のほうが合理的だからである。ステロイドを長く続けると・緑内障・全身の副作用がかさむので、ステロイドを減らすためにや生物学的製剤を加える。

まとめ

  • は炎症の主座がのぶどう膜炎(SUN 分類)で、毛様体扁平部・と血管・前部が炎症の場。網膜炎・炎はない。
  • 毛様体扁平部炎=を伴わないので、雪玉状か雪堤状滲出物を伴うもの(Fuchs は1908年に慢性炎として記載)。
  • ぶどう膜炎の約8%。20〜40歳の若い人に多く、約80%が両眼性、多くは慢性。
  • 症状はとの低下(0.5 程度)で、痛み・・充血はない(前部ぶどう膜炎と対照的)。
  • 所見は、下方のの雪玉状、扁平部の灰白色の雪堤状滲出物、の静脈周囲炎。最周辺部は・で探す。
  • 最大の合併症は(30〜50%)。で花びら状の、OCT で網膜内の嚢胞。
  • 原因:(10〜15%に生じるとされる。SUN は年2〜4%と推定しを全例には勧めない)、、、梅毒、ライム病、結核、トキソカラ。梅毒の検査と胸部画像は必須。
  • 治療:感染性は原因の治療。は局所(眼周囲ステロイド、、扁平部の凝固、)、両眼なら全身ステロイド→(・効果不十分・禁忌・副作用)→。局所ステロイドはとに注意。

出典

  1. 1.Standardization of uveitis nomenclature for reporting clinical data. Results of the First International Workshop(Standardization of Uveitis Nomenclature (SUN) Working Group・2005)PMC収載の著者稿(PMC8935739)の表1で、解剖学的分類は炎症の主座で決まり、中間部ぶどう膜炎は主座が硝子体で、毛様体扁平部炎・後部毛様体炎・硝子体炎を含むことを確認した。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Classification Criteria For Pars Planitis(Standardization of Uveitis Nomenclature (SUN) Working Group(American Journal of Ophthalmology)・2021)PMC全文(PMC8634775)で、中間部ぶどう膜炎は炎症が主に硝子体にあり網膜炎・脈絡膜炎のない一群で、ライム病・梅毒などの感染、サルコイドーシス・多発性硬化症などの全身疾患によるもの、原因不明の眼だけのものがあること、毛様体扁平部炎は全身疾患を伴わない非感染性の中間部ぶどう膜炎で硝子体の雪玉状混濁(多くは下方)か毛様体扁平部の雪堤状滲出物を伴うものとされ、周辺網膜の血管鞘・無灌流はあってよいが後極・中間周辺部の閉塞性網膜血管炎はないこと、分類基準(表3)が硝子体の細胞・混濁、前房の炎症が硝子体より軽いこと、網膜炎・脈絡膜炎がないことに加え雪玉状混濁か雪堤状滲出物を求め、多発性硬化症(McDonald基準)・梅毒のトレポネーマ検査陽性・サルコイドーシス(両側肺門リンパ節腫脹か非乾酪性肉芽腫)・ライム病血清陽性を除外とすること、紹介施設でぶどう膜炎の2.4〜15.4%を占め発生率は年10万人あたり2.08と推定されること、合併症は黄斑浮腫・網膜前膜・まれに乳頭や雪堤の新生血管で、前房炎症は軽く眼は急性に充血せず、症状は飛蚊症か多くは黄斑浮腫によるかすみであること、226例の特徴(年齢中央値22歳、両眼性85%、慢性87%、雪玉状混濁83%、雪堤状滲出物44%、周辺網膜血管の鞘形成・漏出25%、黄斑浮腫43%)、雪堤状滲出物のある例は若いこと、多発性硬化症を伴わない毛様体扁平部炎から多発性硬化症が生じる危険は年2〜4%と推定され神経画像検査の収量は低く routine には勧められないこと、サルコイドーシスは少なくとも胸部画像で除外を試みるべきこと、ライム病の検査は流行地や曝露歴のある人に限るべきとの意見があることを確認した。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Treatment of Noninfectious Uveitic Macular Edema with Periocular and Intraocular Corticosteroid Therapies: A Report by the American Academy of Ophthalmology(American Academy of Ophthalmology(Ophthalmology、Smith JR ほか)・2024)PubMedの抄録(PMID 38647511)で、非感染性ぶどう膜炎の黄斑浮腫に対する眼周囲・脈絡膜上・硝子体内のトリアムシノロン注射、デキサメタゾンとフルオシノロンの硝子体内インプラントの18研究が一貫して視力・黄斑構造を改善したこと、1つの比較研究で硝子体内トリアムシノロン注射とデキサメタゾン硝子体内インプラントが眼周囲トリアムシノロン注射より有効だったこと、これらの治療が眼圧上昇と白内障の進行を起こしうることを確認した。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Adalimumab in Patients with Active Noninfectious Uveitis(New England Journal of Medicine(Jaffe GJ ほか、VISUAL I)・2016)PubMedの抄録(PMID 27602665)で、2週以上のプレドニゾン治療でも活動性の非感染性中間部・後部・汎ぶどう膜炎の成人217例を、アダリムマブ(80 mgの初回投与後40 mgを2週ごと)とプラセボに無作為に割り付け、全例にプレドニゾンを15週かけて漸減したこと、治療失敗までの期間の中央値が24週対13週で治療失敗のハザード比0.50(95%信頼区間0.36〜0.70)だったこと、有害事象・重篤な有害事象はアダリムマブ群に多かったことを確認した。閲覧 2026-09-29