Physiology

Physiology · 2.12

冠循環。脳循環。脳脊髄液。血液脳関門。

Coronary circulation. Circulation of the brain. Cerebrospinal fluid. Blood-brain barrier.

応用トピック
心拍再開後管理多発外傷患者の集中治療生命を脅かす神経疾患の集中治療(脳卒中・ギラン・バレー症候群)虚血性心疾患の臨床像と評価狭心症非ST上昇型急性冠症候群I:病因・症候・診断冠血行再建術:冠動脈バイパス術(CABG)機械的循環補助による末期心不全の治療心筋梗塞の合併症と治療狭心症高血圧切迫症と緊急症失神の鑑別診断脳循環とその調節脳浮腫髄液循環障害(水頭症)神経血管カップリングと機能的脳画像(fNIRS)早産の合併症(BPD・ROP・NEC・IVH)水頭症と頭蓋内圧亢進中枢神経疾患の警告徴候・検査と腰椎穿刺小児の頭部外傷と合併症中枢神経疾患の警告徴候、必要な検査、腰椎穿刺
検査値
抗AQP4抗体

🧠 は「神経支配よりが支配的」という共通点を持つ2つの特別なとして一括りにできる。は「自分の収縮が自分の血流を妨げる」という(収縮期に圧迫される)を抱え、は「頭蓋という固い箱の中」という, Monro-Kellie doctrine)を抱える——それぞれの特殊事情から個々の現象を導出する。

冠循環

解剖

心筋へのはすべて(大動脈起始部)に由来。RCA→右室・右房、LCA→左室・左房。静脈血はを介して右房へ、または心臓静脈(Thebesian静脈, Thebesian vein)を介して直接へ還流する。

調節の特徴

はほぼ全面的に(主に低酸素とアデノシン)によって調節され、交感神経支配の役割は小さい2-09-local-control-of-circulation-myogenic-humoral-control-mechanisms-functional-andの代表例)。

QC=PpRQ_C = \frac{P_p}{R}

Q_C()は約200〜250 mL/分(CO の約5%)。AVDO₂(動静脈O₂較差)は約110 mL O₂/L——安静時からすでにがほぼ最大のため、増加時には血流量そのものを増やすしかない(運動時AVDO₂は900〜1200相当まで上昇しうる)。

心周期による冠血流の変動

flowchart TD
  A["収縮期:心室<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wall tension'>壁張力</span>↑(大動脈弁閉鎖・心筋圧迫)"]
  A --> B["LCA:血管が圧迫され血流が一時的に減少"]
  B --> C["拡張期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='wall tension'>壁張力</span>↓(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='relaxation'>心筋弛緩</span>)"]
  C --> D["LCA:抵抗↓→血流が大きく増加"]

の血流の約80%は拡張期に起こる。 収縮期には左室内圧が高く心筋がLCAを圧迫するため血流が妨げられる——これは「心臓は収縮するたびに自分自身への血流を一時的に犠牲にする」という。RCAは左室ほど高いにさらされないため血流が0まで落ちない。頻脈になると拡張期の絶対時間が短縮し、にとって不利に働く。

冠血流の調節機構

機構 内容
、Bayliss効果) 60〜160mmHgの範囲でQ_Cをほぼ一定に保つ。圧↑→↑→→脱分極→VDCC→Ca²⁺↑→血管収縮(Rを上げて流量を一定化)
pO₂↓, pCO₂↑, [H⁺]↑, [K⁺]↑, アデノシン↑→血管拡張。K⁺チャネル活性化による平滑筋過分極、アデノシン由来cAMP↑も[Ca²⁺]↓に寄与
(NO) 代謝亢進→NO産生→平滑筋弛緩→血管拡張。正のフィードバック:血管拡張→Q_C↑→内皮へのストレス↑→NO放出↑→さらなる拡張
神経性 :α1(収縮)・β2(拡張)。間接効果:交感神経刺激→HR↑→CO↑→代謝↑→血管拡張→Q_C↑

運動時、の増加により最大5倍まで上昇しうる。

病態生理

閉塞の様式 結果
急激な閉塞 壊死(心筋梗塞
緩徐な閉塞(狭窄の進行) )が間に合い、より良好な転帰

脳循環

もほぼ全面的にによって調節され、と機能性/を示す。最も重要な局所血管拡張因子はpCO₂上昇が感知)。

QB=750800 mL/分(COの約15Q_B = 750\text{–}800\ \text{mL/分}(COの約15%),\quad \text{灰白質} > \text{白質}

AVDO₂ ≈ 60 mL/分(心臓ほど酸素を血液から抽出しない)。

⚠️ が止まると5秒で、5分で 脳はが極めて低い臓器である。

脳血流の調節

機構 内容
組織自身が血流を調節。例:運動でPa↑してもQ_Bを上げる必要はない。Pa>160mmHgでは交感神経が活性化しα1受容体を介して血管収縮し、域を拡張してQ_Bを一定に保つ
神経活動↑→代謝↑→pCO₂↑(pO₂↓)、[H⁺]↑、[K⁺]EC↑、アデノシン↑→血管拡張→Q_B↑。最重要な調節因子はpCO₂と[K⁺]

💡 はpCO₂を下げて脳血管を収縮させ、失神を招くことがある。 逆にpCO₂上昇は脳血管を拡張させ余剰CO₂の除去を助ける——はCO₂のに直結した自己完結的なフィードバッを持つ。

アストロサイトの役割

シナプスに密着し、K⁺や他のを取り込んでへ伝達し、血管拡張をする——神経活動と局所血流を結びつける「役」。

頭蓋内容積とICP

V脳組織+V血液+VCSF=一定(頭蓋は剛体のため)V_{脳組織} + V_{血液} + V_{CSF} = \text{一定(頭蓋は剛体のため)}

いずれかの成分が増えれば他が圧迫される——増加は脳組織の圧迫・脳損傷につながる。

ICP↑→脳動脈圧迫→↓→活性化→末梢血管収縮+→(ICP由来の)動脈圧↑をが感知→副→HR↓。要約:ICP↑→HR↓+BP↑2-10-neurohormonal-and-reflex-control-of-circulation-baroreceptor-and-chemoreceptor参照)。

血液脳関門

で結合した毛細血管(毛細血管、2-07-functional-organization-of-microcirculation-and-its-control-control-of参照)が形成し、血管内溶質が脳ECFへ直接アクセスすることを防ぐ。輸送は内皮細胞を介したのみ。

物質 輸送機構
O₂・CO₂ 脂溶性拡散
グルコース GLUT1輸送体
アミノ酸 アミノ酸輸送体
H₂O
各種 ABC輸送体(ATP-binding cassette transporter、ATP依存)

BBBは脳からを除去するうえでも重要。

脳脊髄液

容積約150mL、産生速度約550mL/日。のような役割)、脳の、ニューロンに一定の環境を与える「」として機能する。脳室のにあるが産生する。

成分 血液と比較して
K⁺ 低い
蛋白濃度 低い(約0.03 g/dL)
pH 低い

産生: K⁺の能動的除去により細胞外[K⁺]を低く保つ。

吸収: を介した受動的(様)吸収で、CSF圧に駆動されてへ流出する。CSF圧は約100 mmH₂O。CSF圧が上昇すると吸収も増えるが、それでも追いつかなければ脳組織の圧迫・損傷につながる。

まとめ

  • はともに神経支配より局所(冠:低酸素・アデノシン、脳:pCO₂・K⁺)が支配的。
  • は収縮期に心筋圧迫で減少し拡張期に増加する(LCAの80%が拡張期血流)ため、頻脈はに不利。
  • 域が交感神経により拡張されうる(Pa>160mmHgでα1収縮)。によるpCO₂低下は脳血管収縮→失神を招きうる。
  • 頭蓋内容積は一定(脳組織+血液+CSF)で、ICP上昇は(HR↓+BP↑)を引き起こす。
  • BBBはを持つ毛細血管で構成され、輸送は内皮を介したに限られる。CSFはから圧依存的に吸収される。