画像診断学

画像診断学 · 05

MRIの基礎

Basics of magnetic resonance imaging

前提:正常
ラーモア歳差運動と核磁気共鳴スピン–格子緩和スピン–スピン緩和MRIの空間符号化プロトン密度・T1・T2強調

🧠 全体像:は「強い磁場の中で水素原子核をで倒し、元に戻るときに出すを拾う」検査である。戻り方(T1緩和・)は組織ごとに違い、TRとTEという撮像のタイミングを変えると、同じ体から「」「」など見え方の違う画像を何種類も作れる。はまず水(脳脊髄液・尿・胆汁)を探して強調法を決め、次に脂肪・出血・流れ・拡散・の白黒を組み合わせて組織を推定する。は使わないが、磁場は常に入っており、金属・・に固有の安全管理がある。

1. MRIとはどんな検査か

は、非常に強い静磁場と()のパルスで体内の原子核の磁気的な性質を操作し、励起された原子核が元の状態へ戻るときに放出する信号を受信コイルで記録して、コンピュータで画像に組み立てる。信号は体の中から出てくるので、外からX線を当てて透過量を測るや単純X線とは画像のでき方が根本的に違う。

比べる点
画像のもと 水素原子核(主に水と脂肪)の緩和の違い X線の減弱(組織の密度)
使わない 使う
多(T1、T2、拡散、流れ、などを別々の画像で見る) 実質的に1つ(=値)
軟部組織の見分け 非常に良い(造影剤なしでも良い) に劣る
良いが、通常はに劣る 高い
検査時間 一般的な検査で30〜50分。急性脳卒中プロトコルでも約12分 数秒〜数分
動きの 多い。患者の協力が必要 少ない
主な 、・金属、と腎機能、費用と台数 被ばく、

の原理とは の原理・の で扱う。

2. 装置の構成と役割

装置の円筒(ボア)の中に患者が入り、その外側に何層ものコイルがに並ぶ。外側から主 → シムコイル → 傾斜磁場コイル → コイルの順で、いずれもの外装の中に収まっている。円筒型の装置では、静磁場(B0)の向きは患者の体軸(頭尾方向、z軸)に一致する。頭部用などのコイルは、周波数を合わせる整合・の電子回路を介して装置につながる。

部品 役割 臨床で知っておくこと
主 強く安定した静磁場を作る 超伝導が主流。常に磁場が入っている
シムコイル 静磁場の不均一を補正して均一にする 均一性が悪いとがむらになる
傾斜磁場コイル 位置によって少しずつ強さが変わる磁場をする 信号のを決める。大きなの原因
(送信)コイル 共鳴周波数のパルスを送り、原子核を励起する 体に吸収されたエネルギーが熱になる
受信コイル 組織から出る信号を受け取る 頭部用・膝用など部位専用コイルを体に密着させる
ボア 患者が横たわる筒 のより狭く長い →

主磁石:超伝導で「常にオン」

主のコイルは液体で約4 K(−269 ℃)まで冷やされ、電気抵抗がほぼゼロになる。一度流した電流が流れ続けるので、磁場は検査をしていない夜間も切れていない。臨床装置のはおおむね0.2〜3 Tで、地磁気(約50 μT)の数千〜6万倍にあたる。

⚠️ 「電源を落とせば安全」ではない。鉄製の物が検査室に持ち込まれると、いつでもへ向かって飛ぶ(8節)。

傾斜磁場コイル:位置を決め、音を出す

傾斜磁場コイルは、ボアのすぐ内側にある円筒状の導線ループや薄い導電シートである。電流を流すとをなパターンでわずかにゆがめる二次磁場が生じ、陽子の共鳴周波数が位置によって変わる。この周波数(と位相)の違いから、信号が体のどこから来たかを割り出す(空間)。一方、電流パルスのたびにコイルが振動し、特有の大きな「ガンガン」という音が出る。

3. 信号が生まれるまで:水素原子核、励起、緩和

3.1 なぜ水素なのか

臨床は水素原子核(陽子1個)を使う。体内に水と脂肪として圧倒的に多く存在し、磁気回転比も大きいので信号が強いからである。

原子核 不対陽子 不対中性子 正味
1H 1 0 1/2 42.58
31P 0 1 1/2 17.25
23Na 2 1 3/2 11.27
13C 0 1 1/2 10.71
19F 0 1 1/2 40.08

1H以外の原子核もに使えるが、用途は主に研究である。共鳴周波数(周波数)は磁気回転比×なので、1Hでは1.5 Tで約64 MHz、3 Tで約128 MHzになる。

3.2 励起から緩和までの5段階

flowchart TD
    A["① 磁場の外:陽子の向きはばらばら<br>全体としての磁化はゼロ"]
    B["② 静磁場の中:陽子が磁場の向きにそろう<br>平行・反平行のわずかな差が<br>磁場方向の正味の磁化(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='longitudinal magnetization'>縦磁化</span>)になる"]
    C["③ 送信コイルが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Larmor'>ラーモア</span>周波数の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiofrequency pulse'>高周波パルス</span>を数ミリ秒照射"]
    D["④ 励起:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='longitudinal magnetization'>縦磁化</span>が倒れ<br>磁場に垂直な面(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse plane'>横断面</span>)の磁化になる"]
    E["⑤ パルス終了:緩和が始まる"]
    F["T1緩和<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='longitudinal magnetization'>縦磁化</span>が元の大きさへ回復"]
    G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T2 relaxation'>T2緩和</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='transverse magnetization'>横磁化</span>が位相のずれで減衰"]
    H["受信コイルが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high frequency'>高周波</span>信号を記録<br>いつ記録するかで組織の見え方が変わる"]
    A --> B --> C --> D --> E
    E --> F
    E --> G
    F --> H
    G --> H

静磁場の中の陽子は、すべてがきれいに同じ向きになるわけではない。平行と反平行がわずかな差で入り混じり、その差が正味のになる。の磁場(B1)がこの磁化を倒すことを励起と呼ぶ。

3.3 T1緩和とT2緩和

T1緩和とは励起直後から同時に始まるが、が違う。

T1緩和(回復) (減衰)
何が起こるか 倒れたが、パルス前の大きさへ回復する が、陽子どうしの位相がばらけることで減っていく
の意味 が約63%まで戻る時間 が約37%まで減る時間
速さ 遅い(数百〜数千ms) 速い(数十〜数百ms。水では長い)
脳での順序 白質が最も速く回復し、灰白質、脳脊髄液の順に遅い 脳脊髄液が最も長く信号を保ち、灰白質、白質の順に短い

💡 を「横方向の向きを取り戻すまでの時間」と説明する資料があるが、正しくはが失われていく時間である。倒れた磁化がそろって回っている間だけ信号が出て、位相がばらけるとお互いに打ち消し合って信号が消える。

回復・減衰の速さの違いを模式的に示す(実測値ではなく、白質・灰白質・脳脊髄液のT1をそれぞれ700・1100・3500 ms、T2を70・90・1500 msとおいた計算)。

xychart-beta
    title "T1回復の模式図(上から白質・灰白質・脳脊髄液)"
    x-axis "パルス後の時間 (ms)" [0, 250, 500, 750, 1000, 1500, 2000, 3000, 4000]
    y-axis "縦磁化 (%)" 0 --> 100
    line [0, 30, 51, 66, 76, 88, 94, 99, 100]
    line [0, 20, 37, 49, 60, 74, 84, 93, 97]
    line [0, 7, 13, 19, 25, 35, 44, 58, 68]
xychart-beta
    title "T2減衰の模式図(上から脳脊髄液・灰白質・白質)"
    x-axis "パルス後の時間 (ms)" [0, 20, 40, 60, 80, 100, 150, 200, 300]
    y-axis "横磁化 (%)" 0 --> 100
    line [100, 99, 97, 96, 95, 94, 90, 88, 82]
    line [100, 80, 64, 51, 41, 33, 19, 11, 4]
    line [100, 75, 56, 42, 32, 24, 12, 6, 1]

T1回復の図で500 ms付近に縦線を引くと、白質・灰白質・脳脊髄液の差が大きい。T2減衰の図で100 ms付近に縦線を引くと、脳脊髄液だけが高く残る。この「どこで縦線を引くか」がTRとTEである。

4. 信号強度を決めるもの:TR・TEと強調画像

4.1 装置側の因子と患者側の因子

装置側(撮像条件で変えられる) 患者側(組織が持つ性質)
プロトン密度(含水量、温度を含む)
・の選択 細胞間の水分量と構造
繰り返し時間(TR) 脂肪含量、蛋白含量
エコー時間(TE) 細胞質、核/細胞質比、細胞密度
フリップ角 線維化
前飽和(特定の部位や流れの信号をあらかじめ消す) 動き
常磁性物質(、メラニン、メトヘモグロビン)

4.2 TRとTE

エコー法では、90°パルスで励起し、TEの半分の時点で180°パルスを入れて位相のずれを巻き戻し、TEの時点でエコー(信号)を受信する。次の90°パルスまでの間隔がTRである。

  • TR(繰り返し時間):2つの励起パルスの間隔。の程度を決める。
  • TE(エコー時間):励起パルスから信号(エコー)を受け取るまでの時間。の程度を決める。
TR TE できる画像 白く写るもの
短〜中 短 T1が短い組織(脂肪など)
長 長 T2が長い組織(水、浮腫など)
長 短 プロトン密度強調像 水素原子核の多い組織
flowchart TD
    A["TRを短くする"] --> B["次の励起までに<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='longitudinal magnetization'>縦磁化</span>が戻りきらない"]
    B --> C["T1の短い組織だけが大きく回復している"]
    C --> D["TEも短くしてT2の影響を除く"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T1-weighted image'>T1強調像</span>:T1の短い組織が白い"]
    F["TRを長くする"] --> G["どの組織も<span class='jp-term jp-term-diagram' title='longitudinal magnetization'>縦磁化</span>がほぼ戻る<br>(T1の差が消える)"]
    G --> H["TEを長くして待つ"]
    H --> I["T2の短い組織は信号を失い<br>T2の長い組織だけが残る"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T2-weighted image'>T2強調像</span>:T2の長い組織が白い"]

5. 「何が白く何が黒いか」を読む

5.1 T1強調かT2強調かを見分ける:まず水を探す

⭐ 水はT1で黒く、T2で白い。 どんな画像でも、最初に確実に水とわかるもの(脳室や・の脳脊髄液、膀胱の尿、胆嚢の胆汁)を探す。上腹部のでも、脊柱管内の脳脊髄液がでは黒く、では白く抜けて見える。と腹腔内脂肪は、でもでも明るい。

5.2 正常脳の見え方

組織
脳脊髄液 非常に黒い 非常に白い
脂肪 白い 灰色〜明るい
灰白質 暗い灰色 明るい灰色
白質 明るい灰色 暗い灰色

💡 は脳の「解剖図」らしく見え(白質が白い)、は病変探しに向く(水を含む病変が白い)。脂肪のでの明るさは撮像法で変わり、古典的なエコー法では中間程度、に使う高速エコー法では明るく写る。

5.3 T1強調像で白いもの

白くなるもの 例
脂肪 、腹腔内脂肪、脂肪を含む腫瘍
を示す腫瘍や炎症
その他の常磁性物質(、など)
蛋白を多く含む液体 腎や肝の嚢胞の蛋白性内容、嚢胞性腫瘍
亜急性期の出血(メトヘモグロビン、約2〜28日) 出血を伴う(と中間葉の間の境界明瞭な正中の嚢胞が単純T1で高信号)
メラニン 悪性黒色腫の転移(背側の小さな高信号結節)
遅い血流・血栓

5.4 T2強調像で白いもの

水を含むものが白い。浮腫、炎症、感染、嚢胞がその代表である。

5.5 T1でもT2でも黒いもの

黒いもの 理由・例
気体・空気 水素原子核がほとんどない(・の空気、腸管ガス)
水素が少なく、T2が極めて短い
・腱
慢性期の出血
鉄
金属 信号が消え、周囲もゆがむ
速い血流() 血管内の流れの速い血液

フローボイド:血管が開いている証拠

エコー法では、励起された血液が信号を読み出す前にスライス面の外へ流れ去るため、そのボクセルは信号を出さず黒く抜ける。⭐ 勢いよく流れる血管の正常な黒い抜け=開存のである。で両側の部が黒く抜けていれば両側とも開存しており、片側だけ黒い抜けが消えて灰色の信号で埋まっていれば、その側は極めて遅い流れか閉塞を疑う。同じ画像での空気も黒いので、位置で血管と区別する。

5.6 出血の信号は時間とともに変わる

⭐ は出血の時期をかなり正確に推定できる。T1とT2の組み合わせで考える。

時期 ヘモグロビンの状態
直後(期) 中間 中間
1〜2日(急性期) デ 中間 黒い
2〜7日(亜急性早期) 細胞内メトヘモグロビン 白い 黒い
7〜28日(亜急性後期) 細胞外メトヘモグロビン 白い 白い
それ以降(慢性期) 黒い 黒い
flowchart TD
    A["直後:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxyhemoglobin'>オキシヘモグロビン</span><br>T1 中間/T2 中間"] --> B["1〜2日:デ<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxyhemoglobin'>オキシヘモグロビン</span><br>T1 中間/T2 黒"]
    B --> C["2〜7日:細胞内メトヘモグロビン<br>T1 白/T2 黒"]
    C --> D["7〜28日:細胞外メトヘモグロビン<br>T1 白/T2 白"]
    D --> E["慢性期:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemosiderin'>ヘモジデリン</span><br>T1 黒/T2 黒(辺縁の黒い縁)"]

💡 変化の順序は「T1とT2の2軸の図」で覚えるとよい。直後のは両方とも中間の位置にあり、デオキシ化でT2だけ黒へ、メトヘモグロビン化でT1が白へ、赤血球が壊れて細胞外へ出るとT2も白へ移り、最後にで両方とも黒へ落ちる。T1で白くなるのはメトヘモグロビンが常磁性でT1を短縮するため、T2で黒くなるのはデや細胞内メトヘモグロビン・が局所の磁場を乱すためである。

⚠️ 日数は目安である。教科書的には期()はT2でやや高信号に見えることが多く、は主に血腫の辺縁に黒い縁として残る。信号の移り変わりの速さは、出血の部位(内か硬膜下か)・大きさ・・で変わる。

時期の異なるが同時にあることは、虐待が疑われる小児では強い証拠になりうる(的な意味)。出血そのものの詳しい画像診断は を参照。

5.7 信号強度のまとめ

で高信号 で高信号
脂肪 液体・浮腫
脂肪(中等度〜高信号)
その他の常磁性物質 出血(7〜28日)
蛋白に富む構造
出血(2〜28日)
メラニン
遅い血流・血栓

6. パルスシーケンスと撮像プロトコル

6.1 パルスシーケンスとは

パルスシーケンスは、・傾斜磁場・信号収集のタイミングを組み合わせた撮像条件の「レシピ」である。疾患や部位ごとのプロトコルとしてあらかじめ決められ、診療放射線技師が装置のコンピュータで選ぶ。基本は2系統ある。

エコー法 グラディエントエコー法
励起 90°パルス 90°より小さいフリップ角(α°)
エコーの作り方 180°パルスで位相のずれを巻き戻す 180°パルスを使わず、傾斜磁場の反転でエコーを作る
信号雑音比が高い 速い。高速撮像・動的撮像に向く
弱点 時間がかかる 磁場の不均一や磁性体の影響を受けやすい(これを逆に利用するのが強調画像)

どちらのシーケンスも、時間軸に沿って「」「受信される信号」「信号をする」と、3方向の傾斜磁場(・周波数〈読み出し〉・位相)をいつ入れるかを並べたタイミング図で表される。エコー法では90°と180°の2つのパルスのあとTEの時点にエコーが現れ、グラディエントエコー法では小さなフリップ角のパルス1つのあと、読み出し方向の傾斜磁場を反転させてエコーを作る。

6.2 プロトコルは複数のシーケンスの組み合わせ

1回の検査(たとえば頭部のルーチン検査)は、見え方の違う複数のシーケンスの連続でできている。1つのシーケンスは20秒〜15分かかる。撮像の計画では、位置決め用の3方向の画像の上でスライスの範囲と断面の向きを設定し、撮るシーケンスを一覧から選ぶ。脳卒中のプロトコルなら、位置決め像のあと、、、強調画像、頸部血管の造影、像、といった順に並ぶ。

6.3 シーケンス別の見え方(早見表)

シーケンス しくみ 白いもの 黒いもの 主な使いどころ
短TR・短TE 脂肪、亜急性出血、蛋白性液体、メラニン、 水(脳脊髄液・尿)、空気、、、、 解剖、脂肪や出血の確認、造影前の基準
長TR・長TE 水、浮腫、炎症、嚢胞、亜急性後期の出血、(高速エコー法では)脂肪 空気、、、、 病変の検出の基本
にを加えの信号を消す 浮腫・脱髄・梗塞などの病変 脳脊髄液() 脳室やに接する病変
(T1・T2) 脂肪の信号を選択的に消す 浮腫・液体・(背景が黒くなり目立つ) 脂肪 腹部・骨盤・骨軟部、脂肪を含む病変の証明
プロトン密度強調像(多くは併用) 長TR・短TE 、(時) ・腱・、(時)脂肪 関節(膝の・)、
水分子の拡散が大きいほど信号が落ちる 拡散が制限された組織(、細胞密度の高い腫瘍、膿) 自由に拡散する水 急性、腫瘍、膿瘍
マップ から計算したの地図 拡散が大きい(浮腫、壊死、脳脊髄液) の高信号が本物か確かめる
TOF法 流入する未飽和の血液が明るくなる 流れの速い動脈 静止した組織(信号が抑えられる) 造影剤を使わない頭部動脈の評価
非常に強い 胆管・膵管・胆嚢の液体 周囲の実質、結石(充填欠損) ・・狭窄・膵管と嚢胞性病変
像 がT1を短縮 血流の多い組織(腫瘍・炎症)、血液脳関門の破綻部 造影されない壊死・嚢胞・膿 腫瘍・炎症の評価、ダイナミック撮像
強調画像 グラディエントエコー法で磁性の乱れを強調 出血(など)、石灰化、静脈 、腫瘍内出血

6.4 脂肪抑制

は、脂肪・水・シリコンなど特定の組織の信号だけを選んで消し、その組織を黒くできる。脂肪は通常T1でもT2でも白いが、では黒くなる。

  • 脂肪を含む病変の証明:抑制なしので両腎に小さな高信号病変が複数あり、ではそれらが皮下・腹腔内脂肪と同じく黒くなった → 病変は脂肪を含む小さなと判断できる。同時に膵や肝は、周囲の脂肪が黒くなったぶん相対的に明るく見える。卵巣皮様、・骨髄、も「抑制なしで白 → 抑制で黒」の変化で脂肪を証明する。
  • 白い病変を黒い背景で目立たせる:特に腹部で有用。抑制なしのではの壁肥厚と周囲の怒張したが見えるが、強調像では皮下・腹腔内脂肪が黒くなり、炎症を起こしたの浮腫と結腸周囲の液体貯留がはるかに見やすくなる。
  • 脂肪の多い部位の造影評価:の(白)が周囲の脂肪(白)に埋もれないよう、像はを併用することが多い。

6.5 FLAIR:脳脊髄液を消したT2

はでの信号を消したである。はでは白いが、では黒い。脳室やの脳脊髄液が黒くなるので、浮腫を伴う病変が脳脊髄液と区別しやすくなる。

では、で周囲に卵円形の病変が多発し、静脈周囲に沿って分布する。脳室が黒いので病変ははっきり分離して見える。同じ患者のでは、脳室も三角部周囲のもともに白く、両者の境界が分かりにくい。

6.6 拡散強調像とADCマップ

は、組織の構造・含水量・細胞密度についての情報を与える機能的な撮像法で、による水分子の平均的な拡散のしやすさを測る。水が自由に動ける組織ほど信号が落ち、動きが妨げられた組織が白く残る。

  • 拡散強調の方向(左右・前後・頭尾)を変えて3方向で撮り、それらをまとめた(トレース)画像を読む。拡散強調をかけない画像(b=0)はに近い見え方になる。通常の拡散強調にはb=1000程度を使う。
  • ADC()はから計算した定量値の地図で、が低い(黒い)=、が高い(白い)=拡散の亢進を意味する。正常脳では脳室の脳脊髄液がで白い。
マップ 解釈
白 黒 (の、細胞密度の高い腫瘍、膿瘍)
白 白 の成分が透けて見えているだけ(T2スルー)。ではない
黒 白 拡散の亢進(、壊死、嚢胞、脳脊髄液)
変化なし 変化なし 正常
flowchart TD
    A["急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral infarction'>脳梗塞</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flow interruption'>血流途絶</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP depletion'>ATP枯渇</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ion pump'>イオンポンプ</span>が停止"]
    B --> C["細胞内へ水が移動(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cytotoxic Edema'>細胞傷害性浮腫</span>)<br>細胞が膨らみ細胞外腔が狭くなる"]
    C --> D["水分子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Brownian motion'>ブラウン運動</span>が制限される"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>拡散強調像</span>:高信号"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apparent diffusion coefficient'>ADC</span>マップ:低信号"]
    E --> G["発症早期から描出<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>や<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T2-weighted image'>T2強調像</span>より早い"]
    F --> G
  • 急性:正常脳はでもでも変化がない。ではとがで白く、で黒い。詳しくは と 。
  • 悪性腫瘍:腫瘍組織は周囲より細胞密度が高く、で高信号()を示しやすい。右の腫瘤では、がで白くで黒い()。一方、壊死部と周囲の浮腫はで白い(拡散の亢進)。のが疑われる所見である。体幹部でもの検出と性状評価に使う。

6.7 拡散テンソル画像とトラクトグラフィ

は、水分子の拡散を方向ごとに測って組織の微細構造を調べる機能的撮像法である。束の中では水は線維に沿った方向に動きやすいので、その方向をつないでいくと白質路を立体的に描ける(トラクトグラフィ)。の治療前計画で、左右のの線維が腫瘍に押されて迂回する様子を後方・側方・前方から確認し、手術で温存すべき経路をする。

6.8 MRスペクトロスコピー

は、の中の代謝物の有無と濃度を定量的に示す機能的手法で、臨床では主に脳病変の性状評価に使う。全体の診断を大きく変えることは多くないが、特異度を上げ、組織学的悪性度の予測に役立つことがある。

代謝物 ピーク位置 意味
約2.0 ppm 正常な神経細胞の指標。腫瘍で低下
クレアチン 約3.0 ppm 。比の基準に使う
コリン 約3.2 ppm 細胞膜の。増殖の盛んな腫瘍で上昇

左側頭の腫瘤の中にを置いた測定例では、が低下し、約3.2 ppmのコリンのピークが突出した。コリン/比は約12.5と基準の2.5を大きく超え、コリン/クレアチン比も約5.2と高く、/クレアチン比は約0.4に下がっていた。悪性、特にを示唆する。悪性度の評価にはを加えるとさらに手がかりが増える。

6.9 TOF法MR血管撮影

TOF法は、造影剤を使わずに血管内の流れを描出する。撮像面の中の静止組織は繰り返し励起されて飽和し信号が弱いが、撮像面の外から流れ込んだ血液は飽和していないので強い信号を出し、血管が白く写る。元のではやが白い点・線として見え、それを最大値投影で立体的に再構成するとと主な脳動脈が一望できる。

  • があってを避けたい患者で、やカテーテルによるの代わりになる。
  • 細い血管まで見たいときは、造影剤を使うを用いる。

6.10 その他の重要シーケンス

  • MRCP:非常に強いで、胆管・膵管の液体だけを白く描く。造影剤は不要。結石は白い胆管の中の黒い充填欠損として写る。
  • プロトン密度強調像:長TR・短TEで、T1・T2の影響を抑え水素の量を反映する。関節の・の評価に適し、を併用するとやが白く目立つ。骨軟部の詳細は 骨軟部の画像診断。
  • 単発撮像(シングルショット):1回の励起で1枚の画像を得る高速撮像で、など動きの多い対象でを減らす。

7. ガドリニウム造影剤

7.1 性質と体内動態

  • 臨床で最もよく使う静注造影剤である。
  • は希土類ので、毒性を抑えるため有機分子()と強く結合させて造影剤にする。の形で直鎖型と環状型に分かれ、環状型の方が安定である。
  • 静注後は血液プールに入り、臓器実質を造影し、で腎から排泄される。
  • 一部の製剤(肝細胞特異性造影剤、たとえば)は胆汁中にも排泄され、肝細胞相で肝腫瘤の性状評価に使う。

7.2 造影T1強調像で何を見るか

は近くの水素原子核のT1を短縮する。T1が短くなると、造影前の同じより明るくなる。だからの画像は必ずで撮る。に白くなる構造は通常、血流が豊富(腫瘍や炎症組織)で、「造影される」と表現する。前立腺では、ダイナミック撮像で周囲より早く造影される部分が腫瘍を示す。

⭐ は血流の多さや血液脳関門が保たれているかなど多くの因子で決まり、腫瘍の組織学的悪性度とは相関しない。

  • 良性のは、像で均一に強く造影される。
  • 左の腫瘤(星細胞腫が疑われる)は、もほとんど造影されない。
  • ただし、以前は造影されなかった病変に新たにが出現したら、悪性化を示唆する不利な所見である。

7.3 腎性全身性線維症

は、のある患者でと関連して起こる、まれだが痛みを伴い、身体機能を奪い、ときに致死的な疾患である。強皮症に似た線維化が皮膚・皮下組織を中心に起こり、肺・食道・心・骨格筋などの内臓にも及びうる。1 眼(の斑)や関節の周囲にも線維化が生じる。症状は大半が投与後数日〜数か月で現れる(まれに数年後)。初めは痛み・かゆみ・皮膚の腫れと紅斑で、多くは下肢から始まる。進むと前腕や下腿の皮膚が赤褐色〜紫色の斑を伴って硬く厚くなり、関節がして動かせなくなる。2

危険因子 内容
患者側 腎機能低下、特に 15 mL/min/1.73 m²未満。透析中の患者
薬剤側 報告例の大半は。とでも発生。用量が増えるほど危険が上がるが、1回の投与でも起こりうる
重度腎不全での推定発症率 後3〜18%、後0.1〜1%

この表の値は、の安定性が低い直鎖型製剤が使われていた時期のデータである。2 ACRは、CKD4・5( 30未満)の患者がとの関連が最も強い製剤に1回以上曝露された場合の発症率を1〜7%と推定しており、の12〜20%はの患者で起きている。1

ACRの分類 製剤 位置づけ
グループI 、、(いずれも直鎖型) 例が最も多い。透析中・ 30未満の患者では禁忌、(疑いを含む)では避ける
グループII 、ガドテル酸、、、、(暫定) のない例がほとんどない。危険のある患者では強く推奨
グループIII 現在該当なし

欧州では、が高リスクの直鎖型製剤の静注使用を停止し(はにだけ使える)、は市場から撤退した。の直鎖型(、)は肝胆道系の撮像に限って承認されている。2 「高リスク製剤はすべて市場から撤退した」という記述は欧州の状況を指し、米国ではグループI製剤も分類表に残ったうえで危険のある患者に禁忌とされている。1

腎機能別の扱い(現行)

腎機能 扱い
60以上(CKD1・2) どの製剤も安全に使える
30〜59(CKD3) 安定していれば特別なは不要
30未満(CKD4・5)で透析なし グループIは禁忌。グループII(環状型など低リスク製剤)を使い、適応・利益・リスクを比べる通常の判断に従う
透析中 グループII製剤を使い、できれば定期透析の直前に撮像する。ACRは造影のために透析を新たに始めたり回数を増やしたりしないとする。は、環状型の後の緊急透析は不要だが、直鎖型(肝細胞特異性造影剤など)の後は直後に透析し翌日・翌々日にも繰り返すとしており、両者で扱いが異なる。なら造影CTで同等の情報が得られるかも考える
(疑いを含む) は当てにならない。グループI製剤は避け、グループII製剤を選ぶ

ACRはグループII製剤なら標準量以下で投与前の(・採血)を任意とし1、も低リスク製剤では投与前の測定を必須としない。2 どの患者でも、診断に必要な最小量を使い、製剤名と用量を記録する。臨床的に必要な造影MRIを腎機能だけを理由に拒まないという原則も両者に共通する。

⚠️ 従来( 2018年版)は「低リスク製剤も 30 mL/min未満では慎重に使い、2回の注射の間を少なくとも7日あける」とされていた(歴史的)。現行の2025年版では、 30未満での使用は通常のリスク・判断に従うとし、な造影MRIを繰り返す間隔は理想的には7日、急ぐ場合も最低2.5日と改められた(残存腎機能のないでは透析3回分以上。緊急・生命に関わる場合は待たない)。2

7.4 脳などへのガドリニウム沈着

反復してを受けた患者の脳にが残ることが分かっている。単純で深部灰白質核(・など)が高信号になる形で気づかれ、直鎖型製剤の後で報告され、環状型製剤だけでは報告されていない。腎機能に関係なく、の後にだけ起こる。2 現時点で神経症状や神経毒性を示す組織変化は確認されておらず、臨床的意義は不明である。それでも、特に生涯に何度も造影MRIを受ける小児などでは、毎回の造影で得られる利益を考え、製剤名と用量を記録する。1

7.5 妊娠・授乳と造影剤

  • 妊娠:は胎盤を通過して胎児循環に入り、胎児の腎から羊水へ排泄されて胎児への影響が分かっていない。そのため妊婦へのルーチン投与は避け、得られる情報が胎児・母体の管理に不可欠で、造影なしや他の検査では得られず、出産後まで待てない場合に限って、同意を得て低リスク製剤を最小量で使う。造影前には妊娠の可能性を確認する仕組みを施設として持つ。1 も、非常に強い適応があるときに限り環状型製剤を最小量で使えるとし、その場合でも新生児の検査は不要としている。2
  • のある妊婦・には、を投与しない。2
  • 授乳:乳汁へ移って乳児の腸から吸収される量はごくわずかで、ACRは投与後24時間の授乳中断を必要としない(母親が希望すれば、説明を受けたうえで搾乳して捨ててもよい)。1 も環状型製剤なら授乳を通常どおり続けてよいとする。2

7.6 絶食は不要

静注造影剤の前に絶食を求めるのは、嘔吐の多かったの時代の名残である。現在のの前の絶食は勧められない(鎮静・麻酔を行う場合は麻酔の基準に従う)。1

8. MRIの安全性

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>検査の予定"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medical interview (history-taking)'>問診</span>票と面談で安全確認"]
    B --> C{"体内に金属・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='implanted device'>植込み機器</span>・<br>異物がある?"}
    C -->|"ない"| G["身に着けた金属・電子機器を外す"]
    C -->|"ある"| D["製品名・型番を特定<br>MR Safe/MR Conditional/MR Unsafe を確認"]
    D -->|"MR Unsafe・特定できない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>を行わない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>など他の検査へ"]
    D -->|"MR Conditional"| F["表示された条件<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic field strength'>磁場強度</span>など)を守って撮像"]
    F --> G
    B --> H{"眼の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metallic foreign body'>金属異物</span>の可能性?<br>(金属加工業など)"}
    H -->|"ある"| I["眼窩の単純X線撮影<br>(または受傷後の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>を確認)"]
    I -->|"金属あり"| E
    G --> J{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='claustrophobia'>閉所恐怖症</span>・妊娠・<br>造影の予定は?"}
    J --> K["説明・鎮静・オープン型装置<br>妊娠確認・腎機能と製剤の選択"]
    K --> L["検査室(磁場内)へ入室"]

8.1 検査室の外から持ち込まれる強磁性体

酸素ボンベ、はさみ、、金属製の工具などのは、磁場に入った途端に飛来物となって患者や職員を傷つける。そのため検査室への持ち込みは厳禁である。実際に、酸素ボンベ、床磨き機、事務用椅子がボアに吸い付いた事故が起きている。病棟から来る患者のストレッチャー、台、酸素ボンベ、救急カートは特に注意する。

8.2 体内の強磁性体

体内のは、磁場で動いて周囲の組織を傷つけたり、加熱されて熱傷を起こしたりする。

  • のクリップ、血管クリップ、手術用ステープルはのである。ただし現在の血管クリップやステープルの多くは対応で作られている。クリップがある場合は、メーカー・型番・種類を特定してMR UnsafeかMR Conditionalかを確かめるまで撮像しない。以前に問題なくを受けたという事実だけでは安全の根拠にならない。3
  • 、の破片、眼内の金属片(金属加工に従事する人に見られることがある)ものことがある。眼窩に釘が刺さった外傷例では、側面の頭部単純X線で眼窩に線状の金属陰影が写り、でもの異物が確認できる。
  • ⭐ 眼内の可能性がある患者は、の前に眼窩の単純X線撮影を行う。 金属があればなど他の方法で画像検査を行う。現行のACRは、受傷後に撮られたを放射線科医が確認する方法も認めており、MR画像だけでは眼窩を安全と判断できないとしている。3

8.3 植込み型の機械・電子機器

、用の刺激装置、インスリンポンプなどの植込み型薬剤注入ポンプ、がある患者は、原則としてそのままではを行えない。ただし、で安全な機器や条件付きで安全な機器もあり、特定のに限って認められていることに注意する。

表示 意味 例
MR Safe どの環境でも既知の危険がない の
MR Conditional 定められた条件の下(例:3 Tまで)でだけ安全 条件付き対応の、多くのや
MR Unsafe すべての環境で危険が知られている はさみ

個々の植込み物の安全情報は、製品ごとのデータベース(数千の機器の一覧)や添付文書で確認する。MR Conditional表示のは米国で2011年から使われ、やの機器にも広がった。条件付き対応でない心臓植込み電子機器では、心臓専門医との、撮像直前・直後の機器の評価と再設定、心電図との監視、検査室の外に置いた体外ペーシング付き、再設定が終わるまで立ち会うの要員を整えたうえで、検査の必要性を個別に判断する。3 実際、条件付き対応でないを持つの患者では、の検索にが選ばれる(下の症例 EI-14-01)。

8.4 閉所恐怖症

のボアはのより狭く閉ざされた空間で、検査時間も長い。まれに、検査を始められない、あるいは最後まで続けられないほど強いを起こす患者がいる。

  • 鎮静薬の前投与
  • オープン型装置(C字型ので側方が開いている)への変更。ただしが低く、信号雑音比とが劣る
  • 事前の説明と検査中の声かけなど、が決定的に大切

8.5 妊娠

1.5 Tまたは3 Tのが発育中の胎児に有害であるという根拠は、現在のところない。利益がリスクを上回ると判断されれば、妊娠のどの時期でもを受けられる。現行のACRは、3 Tまでの装置を通常操作モードで使い、期待される利益があり、他の実際的な方法で同じ情報を得られないことを条件としている。妊娠初期の胚は熱にやや敏感な可能性があるため、妊娠が分かっている場合は利益と未知のリスクを比べて決める。3 一方、は前述のとおり妊娠中は推奨されない(7.5)。

では、動きのを減らすため単発撮像のシーケンスを使う。では、白い羊水と胎児の脳脊髄液が画像をと見分ける手がかりになり、胎児の体幹と腕、臍帯(血管内の正常な)が見える。

8.6 検査前の準備

準備 理由・現行の扱い
金属類(ピアス、ヘアピン、時計、矯正装置など)と電子機器(補聴器など)を外す 飛来・加熱・故障・の防止
動脈瘤クリップなど、に対応していない体内金属を除外する 8.2
は入室前に点検し、用の設定に再プログラムする 8.3
腎機能:一部の製剤は 30 mL/min未満で注意() 現行は低リスク製剤を選び、通常のリスク・判断に従う(7.3)
30 mL/min未満では2回の注射の間隔を7日以上あける 従来の規定。現行はなら理想7日・最低2.5日、のは透析3回分以上(7.3)
腎機能検査()は必須ではない 低リスク製剤の場合。高リスク製剤を考える場合やの疑いでは別(7.3)
骨盤の前は膀胱を中等度に満たしておく 膀胱壁や周囲臓器の評価のため
の前に妊娠を除外する 7.5
の前の絶食は勧めない 7.6

9. 臨床での使い分け

9.1 主な診断的適応

領域 臓器・対象 主な疾患・目的
骨軟部 骨髄、、腱、筋 、・腱損傷、
骨 単純X線で見えない骨折、
骨髄炎 が正常なら否定的(が高い)
脊椎 疾患、、術後の瘢痕と再発の区別、脊髄の評価
神経 脳 脳の評価に最適、特に。腫瘍、脳卒中、
末梢神経 絞扼、損傷
消化器 肝 肝腫瘤の性状評価、小さな肝病変の検出、嚢胞、血管腫、、、、
胆道 で、、狭窄、膵管と
小腸・大腸 MR、妊婦の虫垂炎
内分泌・生殖 副腎 腺腫、
女性骨盤 子宮・卵巣の解剖、、、卵巣腫瘤、、、・の局所
男性骨盤 ・・前立腺癌の局所
泌尿器 腎 、と腫瘤の区別

脳の緊急画像での使い分けは 緊急神経放射線 で扱う。

9.2 長所と短所

短所
3次元の撮像ができ、任意の断面を作れる 装置が高価
を使わない 利用できる台数・時間が限られる
多の画像(は実質的に単一) は通常に劣る
造影剤なしでも軟部組織の分解能が非常に高い 構造によっては信号が出ない(・肺・空気)
も良好 撮像が比較的遅く、より動きのが多い
が腫瘍領域で広がりつつある 禁忌がある(、、動脈瘤クリップなど)
患者の協力が必要

10. Exam Imagesで確かめる

各症例で、まずどのシーケンスか(水が白いか黒いか、脂肪が白いか黒いか)を確かめてから所見を読む。

T1強調像とT2強調像の基本

  • EI-07-05 L2/3:造影なしので、では脊柱管内の脳脊髄液が黒く、では白い。これで強調法を決めてから見ると、L2/3のはT2で黒く(水分の少ない変性)、脊柱管内へ突出している。のでの後縁を追う。
  • EI-15-02 悪性黒色腫の多発脳転移:造影前の横断・で、左とに小さな高信号の結節がある。黒色腫の転移が造影前からT1で白く見えるのは、主にメラニン(ときに腫瘍内出血)のためである(5.3)。のでも白く造影されるので、造影前の画像がないと「」と区別できない。造影前後を必ず比べる。
  • EI-09-02 左の急性:でのに三日月形の明らかな高信号があり、横断でも同じ側のが高信号を示す。T1・T2ともに高信号という組み合わせは、の表(5.6)では細胞外メトヘモグロビンの時期に当たる。診断名の「急性」は臨床経過に基づく呼び方であり、信号から時期を推定するときは表と照らし合わせ、ではと変化の速さが異なりうることも意識する。

脂肪抑制とプロトン密度強調

  • EI-10-03 胆嚢結石と():横断で胆汁は白く、胆嚢内の結石は黒い信号欠損になる。大動脈・下大静脈・門脈はで黒く、腸管内のガスも黒い。強調像ではが黒くなり、左腎の境界明瞭な嚢胞が際立って白い。
  • EI-11-05 :造影なしので、正常例ではが全長にわたり黒い帯として連続する。例ではその帯が追えず、プロトン密度強調像で白いが少量たまっている。
  • EI-12-06 :プロトン密度強調像で、中部〜遠位と遠位の骨髄が浮腫で白く、周囲の軟部組織にも広い高信号とがある。なしの像と比べ、を黒くすることで浮腫が浮き出ることを確かめる。

FLAIR・拡散強調像・ADC

  • EI-01-03 小範囲の急性:造影なしので、右後部の小さな病変が(脳脊髄液が黒い)で高信号の浮腫、で高信号のとして同じ位置に写る。
  • EI-02-03 右血栓症による広範な急性:で右の広い範囲が白く、同じ検査のTOF法では右が途中で急に途絶え、左側のような枝が描出されない。梗塞巣とを造影剤なしで一度に示す組み合わせである。
  • EI-08-04 ():ので、で直腸壁が半周性に肥厚し、像で中等度に造影され、マップで黒い()。では腫大した所属リンパ節が小さな白い点としてを示す。
  • EI-14-04 と:で子宮頸部の腫瘤がへ浸潤し、横断マップで、像で造影される腫瘤と、腫大した腸骨リンパ節が見える(左右はキャプションと画像の向きが一致しないので、画像の向きで確かめる)。

フローボイドとTOF法MR血管撮影

MRCP

  • EI-06-06 ():横断では白い液体の輪の中に黒い点を含み、の3次元(強い)では白く描出されたの下部に楕円形の黒い充填欠損がある。

造影T1強調像とダイナミック撮像

  • EI-11-01 :造影なしの強いでは脳脊髄液が白く、左の腫瘤はそれより暗い。像で境界明瞭に強く造影される。
  • EI-05-03 :像()で、下部のに辺縁が造影され中心が造影されない腫瘤がある。強調像では内部が液体の信号で白く、で信号が消えないので脂肪ではないとわかる。
  • EI-03-03 :のダイナミック造影(造影前、、、静脈相)で、大きな肝腫瘤がで強く造影され、その後も造影剤が抜けず(なし)、は造影されない。 も参照。
  • EI-13-04 前立腺癌():で辺縁域に黒い(低信号の)領域があり、ダイナミック造影で同じ部位の造影の強さを確かめる(腫瘍は早く強く染まるのが典型)。移行域は正常。
  • EI-15-05 右乳癌(造影MRI):と差分画像で、右乳房の・を伴う腫瘤が強く造影される。の信号強度のは、早期にに立ち上がったあと後期に下がる型を示す。造影の「強さ」だけでなく「」を読む例である。
  • EI-06-04 の術:塞栓術後の像で、大きなの内部が造影されず黒く抜け、周囲のだけが輪状に造影される。血流の途絶えた壊死組織は造影されない(6.3の表)ことを確かめる。

複数シーケンスの組み合わせと磁化率強調画像

  • EI-10-01 :で左の〜の腫瘤の周囲に広い高信号の浮腫、像で辺縁の造影と左の、横断の強調画像で腫瘤内の出血が黒く写る。 も参照。

安全性と検査の選択

まとめ

  • は水素原子核の緩和の違いを画像にする。TR・TEの組み合わせで、短TR・短TEが、長TR・長TEが、長TR・短TEがプロトン密度強調になる。
  • ⭐ はまず水を探す(T1で黒・T2で白)。脂肪はT1・T2とも白く、で黒くなる。空気・・・・速い血流はT1・T2とも黒い。
  • は脳脊髄液を消したT2、はを白く描き、で黒ければ。TOF法とは造影剤なしで血管・胆管を描く。
  • はT1を短縮し、はで撮る。は悪性度と相関しないが、新たなの出現は不利な所見。
  • ⚠️ 安全の要点は、常時オンの磁場(飛来物)、体内金属・(眼窩X線)、の表示と条件、、妊娠(は可、はルーチンで使わない)。
  • は主に直鎖型の高リスク製剤と重度・透析・で起きた。現在は低リスク製剤を選び、腎機能だけを理由に必要な造影MRIを拒まない。

出典

  1. 1.ACR Manual on Contrast Media(American College of Radiology・2026)発行元が配信する2026年版PDFの全文で確認した。Nephrogenic Systemic Fibrosis(2025 Update)の章で、NSFは主に皮膚・皮下組織を侵し肺・食道・心・骨格筋にも及びうること、CKD4・5では最もNSFと関連の強いGroup I製剤の1回以上の曝露で1〜7%に発症すると推定されること、確定例の12〜20%が急性腎障害で生じたこと、標準量1回の投与でも発症例があること、Table 1の分類(Group I=ガドジアミド・ガドペンテト酸メグルミン・ガドベルセタミド、Group II=ガドベン酸メグルミン・ガドブトロール・ガドテル酸・ガドテリドール・ガドキセト酸ナトリウム・暫定のガドピクレノール、Group III=該当なし)、Group II製剤では標準量以下なら投与前の腎機能評価は任意であること、透析中・eGFR 30未満・急性腎障害の患者ではGroup I製剤は禁忌でGroup II製剤を強く推奨すること、CKD3(eGFR 30〜59)では特別な予防策は不要なこと、透析患者では定期透析の直前に撮像し新たな透析導入や回数変更はしないこと、症状は大半が投与後数日〜数か月で現れまれに数年後であることを確認した(急性腎障害ではGroup I製剤は「避ける」、透析中とCKD4・5では「禁忌」と書き分けられている)。授乳の章で、乳児の腸から吸収される量が0.0004%未満と推定され投与後24時間の授乳中断は不要で、母親が情報に基づいて判断すればよいことを確認した。同章以外で、ACR–ASNR Position Statementにおいて反復投与後に脳内へガドリニウムが残存し、腎・肝疾患のない患者にも起こりうるが、現時点で有害な健康影響や神経毒性を示す組織変化は報告されていないこと、使用した製剤名と用量を毎回記録すべきことを、Gadolinium Pregnancy Screening Statementと妊婦への投与の章で、妊娠中のルーチン投与は避け、利益が未知のリスクを上回るときに限り低NSFリスク製剤を最小量で用いること、造影前に妊娠の可能性を確認する仕組みを施設に置くことを、Fastingの章で現在の造影剤では静注前の絶食は不要であることを確認した。閲覧 2026-09-25
  2. 2.ESUR Contrast Media Safety Committee Guidelines 2025(European Society of Urogenital Radiology・2025)発行元PDFの全文で確認した。NSFの危険因子がeGFR 15 mL/min/1.73 m²未満と透析であり、ガドジアミドが報告例の大半を占め、重度腎不全での推定発症率がガドジアミドで3〜18%・ガドペンテト酸メグルミンで0.1〜1%であること、最高リスク群(直鎖型のガドジアミド・ガドペンテト酸メグルミン・ガドベルセタミド)はEMAが静注使用を停止し(ガドペンテト酸メグルミンは関節造影のみ可)、ガドベルセタミドは欧州市場から撤退したこと、中間リスク群(ガドベン酸メグルミン・ガドキセト酸ナトリウム)は欧州では肝胆道系撮像に限って承認されていること、最低リスク群(環状型のガドピクレノール・ガドブトロール・ガドテル酸メグルミン・ガドテリドール)では投与前の腎機能検査は必須でなく、GFR 30未満が既知または疑われる場合も適応・期待される利益・NSFリスクを比べる通常のリスク・ベネフィット判断に従うこと、eGFR 30未満では待機的な造影MRIの反復間隔を理想的には7日(168時間)、臨床上急ぐ場合でも最低2.5日(60時間)とし、残存腎機能のない透析患者では透析3回分以上、緊急時は短縮してよいこと、血液透析患者では環状型の後の即時透析は不要で直鎖型(肝特異性造影剤など)の後は即時に透析し翌2日も繰り返すこと、全患者で臨床的に適応のある造影MRIを拒まないこと、NSFの初期症状は痛み・かゆみ・皮膚の腫脹と紅斑で通常下肢から始まり発症は投与当日〜2〜3か月(まれに数年後)であること、妊婦には非常に強い適応がある場合に環状型を最小量で使え新生児の検査は不要であること、環状型なら授乳を通常どおり続けてよいこと、腎機能障害のある妊婦・授乳婦にはガドリニウム造影剤を投与しないこと、脳の深部核のT1高信号が直鎖型の投与後に報告され環状型単独では報告されず腎機能に関係なく反復投与後にのみ生じ臨床的意義は不明であること、静注造影剤の前の絶食は勧めないことを確認した。閲覧 2026-09-25
  3. 3.ACR Manual on MR Safety(American College of Radiology・2024)発行元が配信する2024年版マニュアルPDFの本文で確認した。眼窩に強磁性異物が入った可能性のある外傷歴がある患者は、単純X線の眼窩撮影1枚(必要に応じ追加撮影)か受傷後の薄層CTの読影で評価し、MR画像だけでは除外できないこと、頭蓋内動脈瘤クリップはメーカー・型番・種類を特定してMR UnsafeかMR Conditionalかを確認するまで撮像しないこと、過去に問題なくMRIを受けた事実だけでは安全の根拠にならないこと、MR Conditional表示のペースメーカーは米国で2011年から使われICD・CRTなども含まれるようになったこと、MR Conditionalでない心臓植込み電子機器は心臓専門医との体制・撮像直前直後の機器評価と再設定・心電図とパルスオキシメータの監視・検査室外の体外ペーシング付き除細動器・再設定まで立ち会う二次救命処置要員など心臓リズム学会の推奨に従って扱うこと、妊娠中の患者には3 Tまでの装置を通常操作モード(全身平均SAR 2 W/kg以下)で使い、期待される利益があり他の方法で同じ情報を得られない場合にMRIを行ってよく、妊娠のどの時期でも造影剤なしのMRIの有害性は再現性をもって示されていないこと、造影剤は妊婦にルーチンで投与しないことを確認した。閲覧 2026-09-25