画像診断学

画像診断学 · 17

救急の神経画像診断

Emergency neuroradiology

🧠 全体像:救急の診断は「まずで出血を除外し、次に血管と組織の生死を見る」の二段構えで考える。急性脳卒中は症状だけでは虚血か出血か区別できないので、画像が治療を決める。出血はで白く()写り、形と場所で・硬膜下・くも膜下・脳内に分かれる。虚血はでは数時間たたないと見えにくいが、の()は発症直後のをとらえる。発症時刻・・救える組織()の3点を画像でそろえると、との適応が決まる。外傷はの脳条件とを両方読む。では、場所(内か外か)・・の組み合わせで膿瘍・・転移・脳炎を見分ける。

1. CTとMRIの使い分け

救急の頭部画像では、速さと手に入りやすさでが第一選択になり、は「で答えが出ない問い」に使う。の原理とウィンドウは の原理、のシーケンスごとの信号は の基礎 が正本である。

比べる点
撮り方 、造影CT、(同じ撮影をウィンドウを変えて表示)、 T1・T2・・/・グラディエントエコー(T2*)・・
主な救急の適応 (・硬膜下・くも膜下。で診断し、場合によりを追加)、発症4.5時間以内の急性脳卒中、外傷(骨折・急性のと出血。は除く) 起床時発見の脳卒中、発症4.5時間超または発症時刻不明の脳卒中、()の脳卒中、脳炎、の鑑別
速い、より安い、より手に入りやすい を使わない、軟部組織の分解能がより高い、発症直後の虚血とが見える
短所 を使う、軟部組織の分解能がに劣る、にの 検査に時間がかかる、高価、ほど手に入りにくい、体内金属・の確認が要る

⚠️ はX線に固有ので、には生じない。(脳幹・小脳)はに挟まれてでは筋状の影が出やすく、小さな梗塞を見落としやすい。の脳卒中を疑うときにを選ぶ理由の一つである。

💡 と造影CTを並べると、は脳の実質はほとんど変わらず、血管・静脈洞・が白くなる。出血を探すときに造影しないのは、造影剤の白さが出血の白さと紛れるからである。

2. 救急で使うMRIシーケンスの要点

各シーケンスの原理と信号の一覧は05で扱う。ここでは救急の頭部で「何を見るために使うか」だけをまとめる。

シーケンス 正常脳の見え方 救急での役割
白質が白、灰白質が灰色、水(脳脊髄液)が黒 解剖の。造影前後の比較(は血液脳関門の破綻部に漏れて白くなる。正常でも静脈は造影されて白くなる)
白質が灰色、灰白質は白質より明るい、水が白 病変の検出の基本。浮腫・炎症・感染・腫瘍は白く、蛋白の多い液体はやや暗い
T2に似るが脳脊髄液が黒 脳室やに接する病変が見やすい。ほぼ全例で撮る基本の撮像。急性のは高信号
/ — 急性期の虚血は(で白、で黒)。例えば橋のは、で橋の片側が明るく、で同じ部位が暗い。腫瘍と膿瘍の鑑別にも使う
グラディエントエコー(T2*)・ — に鋭敏。出血・・石灰化が黒く抜ける。はその発展形で、同じ脳でもT2*より多くの黒い点()を拾う
TOF法 動脈だけが白い 造影剤が不要。撮像範囲に流れ込む血液を利用するので静脈が重ならない
造影 撮るタイミングで静脈も写る は遅れて流れるので、遅い相まで写る造影法のほうがの評価に向く

⭐ 単純T1で白いものの覚え方は「My Best Friend is Pretty Cool」=メラニン、亜急性期の血液、脂肪、蛋白(および)、造影剤()。詳しくは05の「T1で白いもの」の表を参照。

💡 に静脈が白くなることは、のの前提でもある。静脈洞の壁だけが造影され、中の血栓が抜けて三角形に見えるのが empty delta徴候 である()。

3. 急性期脳卒中

3.1 画像が治療を分ける

急性脳卒中は虚血性と出血性に分かれるが、症状だけでは区別できない。画像検査が必須である。虚血性なら時間枠に応じてとを使える。

⚠️ は「の対象にならない」のであって、「治療がない」わけではない。、抗凝固薬の中和、必要なら外科的血腫除去やを行う()。

flowchart TD
    A["急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='focal neurologic symptoms'>局所神経症状</span><br>(脳卒中疑い)"] --> B["単純<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head CT'>頭部CT</span><br>出血を除外"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high attenuation'>高吸収</span>(出血)あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic/hemorrhagic stroke'>出血性脳卒中</span><br>部位と原因を評価<br>(外傷のない<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subarachnoid hemorrhage'>くも膜下出血</span>なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography angiography'>CTA</span>で動脈瘤検索)"]
    B -->|"出血なし"| D["続けて<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography angiography'>CTA</span>を撮り<br>大血管閉塞を探す"]
    D --> E{"最終健常確認から<br>何時間か"}
    E -->|"4.5時間以内"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous thrombolysis'>静注血栓溶解療法</span>を検討"]
    E -->|"4.5〜9時間・起床時発見"| G["発症時刻が分かる4.5〜9時間:<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>のコア/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perfusion mismatch'>灌流ミスマッチ</span><br>起床時発見:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluid-attenuated inversion recovery (FLAIR)'>FLAIR</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='mismatch (base-pair mismatch)'>ミスマッチ</span><br>またはコア/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perfusion mismatch'>灌流ミスマッチ</span><br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombectomy'>血栓回収</span>を予定しなければ<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravenous thrombolysis'>静注血栓溶解療法</span>を検討"]
    E -->|"9時間超"| H
    F --> H{"大血管閉塞はあるか"}
    G --> H
    H -->|"あり・6時間以内"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endovascular thrombectomy, EVT'>機械的血栓回収療法</span>"]
    H -->|"あり・6〜24時間"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perfusion imaging'>灌流画像</span>などで救える組織を確かめ<br>適応があれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical thrombectomy'>血栓回収療法</span>"]
    H -->|"なし"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reperfusion therapy'>再灌流療法</span>以外の<br>急性期治療"]

3.2 時間枠と拡大時間枠の条件

治療 従来の時間枠 拡大時間枠 現行の推奨で拡大時間枠に必要なもの
4.5時間未満 4.5〜9時間 またはのコア/。起床時発見例では-、または睡眠の中間点から9時間以内のコア/
6時間未満 6〜24時間 の大血管閉塞で、DAWN試験またはDEFUSE-3試験の選択基準(症状の重さと梗塞体積の不釣り合い、またはの)を満たす

この表は現行のガイドラインとおおむね一致するが、拡大時間枠は画像で選んだ患者に限られる点が大切である。

  • の標準の時間枠は発症(最終健常確認)から4.5時間以内で、2026年のAHA/ASAガイドラインはとを同等に選べるとしている1。
  • 欧州脳卒中学会(ESO)2021年の推奨では、発症時刻が分かっている4.5〜9時間の例でまたはのコア/があり、を予定しない場合にを推奨する。起床時発見例では、-がある場合、または睡眠の中間点から9時間以内にコア/がある場合に推奨する。逆に、発症時刻が分かっている4.5〜9時間の例で以外の画像がなければ、を行わないよう推奨している2。-は起床時発見(発症時刻不明)例の選び方で、発症時刻が分かっていて4.5時間を過ぎた例に使う根拠は無作為化試験で確かめられていない。
  • は、の大血管閉塞で6〜24時間に来院し、DAWN試験またはDEFUSE-3試験の選択基準を満たす例に推奨される3。
  • 以前は「が大きい例はの対象外」とされたが、 3〜5または梗塞コア50 mL以上の例でも24時間以内ので転帰が良かった試験(SELECT2)があり、対象は広がりつつある4。適応の細部(大きな、、禁忌)は で扱う。

3.3 なぜCTでは早期の虚血が見えにくいか

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular occlusion'>血管閉塞</span>"] --> B["血流低下 → 酸素不足"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP depletion'>ATP枯渇</span>"]
    C --> D["Na+/K+-ATPaseが止まる"]
    D --> E["細胞外の水が細胞内へ移り<br>細胞が膨らむ=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytotoxic edema'>細胞性浮腫</span>"]
    E --> F["組織全体の水の量はまだ増えない<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>では変化が乏しい<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>では<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion restriction'>拡散制限</span>として見える"]
    F --> G["数時間後に細胞死が始まり<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='angioedema'>血管性浮腫</span>が加わる"]
    G --> H["組織の水が増えて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で低吸収として見えてくる"]

💡 は水の「置き場所」が細胞外から細胞内へ変わるだけなので、値はほとんど変わらない。一方、膨らんだ細胞に挟まれて水分子は動きにくくなるので、は発症直後から白く光る。これが「は早期の虚血をより正確に早く見つけられる」理由である(の高信号)。

3.4 発症4.5時間以内:単純CTとCTAで早期虚血所見を探す

第一選択はとである。では次の早期虚血所見を探す(詳しくは の早期虚血所見)。

所見 何が起きているか 見る場所
の 大血管()の中の血栓そのものが白く見える 鞍上槽の高さで、へ向かうの走行
の輪郭消失 が浮腫で白質と同じ濃度になり、細い灰白質の帯が消える 島
基底核の輪郭消失(の不明瞭化) 基底核の浮腫で、周囲の白質との境界が消える
皮質の浮腫で皮質との境界がぼける の大脳半球外側
浮腫による腫脹でが狭くなり見えなくなる 大脳半球外側の(左右を比べる)

で大血管閉塞が見つかれば、なければを検討する。両者は排他的ではなく、適応があればを行いながらへ進む。

の早期虚血所見の広がりはASPECTSで半定量化する。を10の領域に分け5、正常を10点として、所見のある領域ごとに1点を引く。点数が低いほど虚血が広い。

高さ 10領域
基底核の高さ 、、、、皮質3領域(M1〜M3)
その頭側 皮質3領域(M4〜M6)

⚠️ はの適応判断の材料の一つで、閾値は改訂で変わりうる。数値の基準は現行のガイドラインで確かめる。

3.5 起床時発見(発症時刻不明)の脳卒中:DWI-FLAIRミスマッチ

発症時刻が分からない場合はを選ぶ。-とは、虚血がでは見えるのにではまだ見えない状態である。虚血はおよそ4.5時間を過ぎるとでも高信号になってくるので、で見えなければ発症から4.5時間以内、つまりの時間枠内である可能性が高いと判断する。この基準で選んだ試験(WAKE-UP)で、群は90日後のが良かったが、は数値の上でやや多かった6。大血管閉塞があれば、なければを考える。

判定 意味
高信号 見えない あり 発症からおそらく4.5時間以内
高信号 同じ部位が高信号 なし 発症から時間がたっている可能性が高い

⚠️ 「4.5時間でに現れる」は目安で、時計のように正確ではない。は「おそらく時間枠内」を示す代用の指標である。

3.6 拡大時間枠(6〜24時間):灌流画像でペナンブラを探す

の拡散・、または+にを加えて評価する。梗塞の周りの域を探す。

用語 意味 画像での見え方
すでに不可逆的に障害された組織。再灌流しても救えない の高信号、灌流のの高度低下域
高度の低灌流で機能は落ちているが、まだ梗塞に陥っていない、危険にさらされた組織 灌流異常域のうちの外側
灌流異常域がコアより大きいこと=がある=救える組織 「の病変は小さく、灌流の欠損は大きい」

たとえばの梗塞で、の高信号は大脳半球外側の一部に限られるのに、ではその前後に広く血流が落ちている。灌流異常域からの病変を差し引いた残りがである。

発症6時間を過ぎた例でも、およそ半数ではの周囲にまだが残っているとされる。時間ではなく「救える組織が残っているか」で患者を選ぶ、という考え方が拡大時間枠の核心である。

3.7 頸動脈解離:若年者の脳梗塞で必ず考える

若年者ののよくある原因である。の内膜が裂け、血液が血管壁の層の間へ入り込む()。・外傷・医原性のいずれもある。好発部位は分岐部の2〜3 cm頭側である。症状は同側の頭痛・・、、、局所の痛み(、)。

flowchart TD
    A["内膜の裂け目"] --> B["血液が壁の層の間へ入る<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intramural hematoma (IMH)'>壁内血腫</span>"]
    B --> C["内腔が細くなる・詰まる"]
    B --> D["交感神経線維の圧迫<br>→ 同側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Horner syndrome'>ホルネル症候群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck pain'>頸部痛</span>"]
    C --> E["血栓ができて末梢へ飛ぶ<br>または血流低下"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic stroke'>虚血性脳卒中</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal ischemia'>網膜虚血</span>"]
画像 所見
(頸部横断) 血管壁にの高信号=(。メトヘモグロビンのため白い)。で周囲の脂肪の白さを消すので、壁の血腫が浮かび上がる
T1・ 正常なら黒く抜ける内腔のが消える、または細くなる
3D TOF法 で内腔が狭くなり、立体表示でが長い区間にわたって細く狭窄する

⭐ 解離は両側のに同時に起こりうる。1本見つけても全部の血管を確かめる。両側例では、左右のそれぞれにのと狭いがあり、では両側とも細長い狭窄になる。

画像で確かめる

4. 頭蓋内出血

4.1 CTでの出血の濃度は時間で変わる

急性の出血はで(白)、慢性の出血は低吸収(黒)である。値の正本は04の「血腫の値」の表で、模式図の流れは次のとおり。

時期 目安の時間 値の模式 見え方
期 数分 灰白質(約40 )前後から上昇中 ほぼ〜やや
急性期 数時間 50〜80 、ピークで90 前後 明らかな
亜急性期 数日 灰白質(約40 )・白質(約30 )の値を横切って低下 脳と
慢性期 数週 脳脊髄液(0 )に近づく 低吸収

同じ部位でも、急性期の血腫は基底核の外側の白い塊として、慢性期には同じ場所の黒い()として見える。

⚠️ 亜急性期には血腫が脳と同じ濃度()になる時期がある。白い塊がなくても、・脳室の・といった間接所見を見る(の)。

4.2 MRIでの出血

  • は出血の検出感度がより高い(ただし多くの場合はで診断がつく)。
  • 出血の信号は出血からの時間とシーケンスで変わるので、は出血の時期をかなり正確に推定できる。(直後)→ デ(1〜2日)→ 細胞内メトヘモグロビン(2〜7日)→ 細胞外メトヘモグロビン(7〜28日)→ 慢性期と進む。各時期のT1・T2の白黒は05の表が正本である。
  • 慢性期には、血腫の辺縁に(T1・T2とも黒い縁)が沈着し、中心部は細胞外ヘミクロムとなってT2で白く残ることがある。
  • (10 mm未満の血液の粒)はでは感度が足りず、が第一選択である。T2*(グラディエントエコー)やなら1〜2 mmのも黒い点として見える。同じ患者で、では異常がはっきりしないのに、では両側の大脳に多数の黒い点が現れることがある()。

4.3 出血の4型を比べる

flowchart TD
    A["頭蓋骨"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural space'>硬膜外腔</span><br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural hematoma, EDH'>硬膜外血腫</span>"]
    B --> C["硬膜"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subdural space'>硬膜下腔</span><br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subdural hematoma, SDH'>硬膜下血腫</span>"]
    D --> E["くも膜"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subarachnoid space'>くも膜下腔</span><br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subarachnoid hemorrhage'>くも膜下出血</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pia mater'>軟膜</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain parenchyma'>脳実質</span><br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracerebral hemorrhage, ICH'>脳内出血</span>"]
型 場所 主な原因 第一選択 での形・特徴
頭蓋骨と硬膜の()の間 動脈損傷(約75%とされる)、とくに レンズ型の外の液体貯留。急性の血腫は(60〜90 )。縫合線を越えない。頭蓋骨骨折を伴うことが多い
硬膜とくも膜の間 外傷による皮質のの のの外の液体貯留で、を内側へ押す。縫合線は越えるが正中は越えないので、より広く広がる。テントに沿って大脳半球間裂へ入り込むことがある。や反対側のを伴うことがある
くも膜との間 (典型は)または外傷。「」 ・脳槽の中の。分布は破裂した動脈瘤の位置でおおむね決まる
() 中高年では高血圧が最多 基底核(と外包、視床)が好発部位。外側・外包または視床を中心とする円形〜卵円形のの腫瘤。をよく伴う

💡 が縫合線を越えないのは、硬膜のが縫合線で頭蓋骨に強く付着しているからである。がを裂くと出血は速く、で血腫の中に低吸収とが渦を巻く「」(まだ固まっていないな出血)が見えることがある。

💡 急性は片側の大脳半球の表面を広く覆い、テントに沿って後方の大脳半球間裂へ入り込んでも、正中のを越えて反対側へは広がらない。出血は・で見ると、血腫が上内側へ伸びての中へ流れ込んでいる()ことが分かりやすい。

4.4 くも膜下出血の画像の進め方

  • が第一選択で、発症6時間以内に撮れば感度はほぼ100%とされる。根拠になった前向き研究は、異常がなく、発症1時間以内に痛みが最大になった新しい急性頭痛の成人を対象とし、第3世代のを放射線科医がした条件での結果である7。6時間を過ぎると感度は下がるので、が陰性でも疑いが強ければなどの追加評価を考える()。
  • 典型像では、鞍上槽を中心とするが血液で鋳型のように白く埋まり、そこからとへ広がる。
  • 外傷のないでは、必ずで動脈瘤を探すか除外する()。
  • では、急性のはでが高信号に見えるのが最もよく描出される。

4.5 スポットサイン:活動性出血のしるし

造影CTまたはで、血腫の中に造影剤の漏れ出し(点状の)が見えるのがスポットである。活動性の出血を示している可能性があり、血腫が大きくなる可能性が高いことを意味する。だけでなく、の中にも見られる。

場面 見え方
の大きな基底核の血腫の中に、でだけ点状の強いが現れる
のの血腫の中に、皮質の血管とは離れた点状のがある

画像で確かめる

5. 頭部外傷の画像の進め方

外傷の第一選択はである。骨折、急性の、出血はでよく見えるが、だけはで写りにくい()。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='head injury (head trauma)'>頭部外傷</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncontrast CT'>単純CT</span>"]
    B --> C["脳条件<br>(L 40 / W 80)"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone window'>骨条件</span><br>(広いウィンドウ)"]
    C --> E["血腫の形と場所<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='convex lens'>凸レンズ</span>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epidural'>硬膜外</span><br>三日月=硬膜下<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='sulcus'>脳溝</span>・脳槽=くも膜下"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral contusion'>脳挫傷</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contrecoup injury'>対側損傷</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='midline shift'>正中偏位</span>・脳室の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mass effect'>圧排</span>"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fracture line'>骨折線</span><br>頭蓋内の空気"]
    E --> H{"意識障害の重さを<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>で説明できるか"}
    F --> H
    H -->|"できない"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='susceptibility-weighted imaging'>SWI</span>)で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffuse axonal injury'>びまん性軸索損傷</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microhemorrhage'>微小出血</span>を探す"]
  • 脳条件では骨がすべて真っ白になりが埋もれるので、同じ撮影を必ずでも見直す(ウィンドウの値は03が正本)。
  • 骨折が副鼻腔やに及ぶと、頭蓋内に空気が入る()。やに近い広いウィンドウで黒い点として探す。
  • では、を受けた側のと、反対側の(脳が頭蓋骨の反対側にぶつかって生じる)が同時に見られることがある。

6. 占拠性病変:腫瘍か膿瘍か

6.1 まず場所:脳実質外か脳実質内か

区分 定義 代表と見え方
外 ・硬膜・硬膜下・・脳室内から発生 :硬膜に広く接し、脳を外から押す。造影で強く均一に染まる
内 から発生 :脳の中に埋まり、周囲の脳に囲まれ、不整に造影される

💡 外の腫瘤は脳の表面をへこませて外から押すので、腫瘤と脳の間に脳脊髄液や血管の境界が残る。内の腫瘤は脳の中から膨らむので、周りを脳組織が取り囲む。

6.2 リング状に造影される病変の鑑別

の鑑別は英語の頭文字でMAGIC DR(Metastasis・Abscess・Glioblastoma・Infarct・Contusion・Demyelination・Radiation necrosis)と覚える:転移、膿瘍、、亜急性期の梗塞、、脱髄、。救急では特に転移・膿瘍・の3つ(MAG)を見分ける()。

所見 脳転移
T1 中心が低信号、(薄く滑らかな壁) 白質の中の低〜の腫瘤。中心は壊死・腫瘍内出血で不均一。厚く不整な辺縁増強 多くは等〜低信号。出血性なら高信号。出血のない悪性黒色腫の転移もメラニンの常磁性で高信号
T2・ 中心が高信号。被膜は中間〜やや低信号の薄い縁として見えることがある 高信号。周囲に。ときに 多くは高信号(出血やメラニンで変わる)
・ 中心に(で白、で黒) (造影される)部分がで高信号・低値()。壊死した中心は拡散が亢進する(で暗く、で明るい)。血液成分を含む腔は解釈に注意 腫瘍の大きさに比べて浮腫が不釣り合いに大きい。浮腫はを示さずで暗めに見え、が低いのはだけ

💡 膿瘍の中身の膿は粘稠で細胞や蛋白に富み、水分子が動きにくいので中心がを示す。腫瘍の壊死した中心は逆に水が動きやすい(拡散亢進)。「リングの中がなら膿瘍」が救急での最大の手がかりである。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ring-shaped'>リング状</span>に造影される病変"] --> B{"リングの中は<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion restriction'>拡散制限</span>か"}
    B -->|"はい(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusion-weighted imaging'>DWI</span>で白・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apparent diffusion coefficient'>ADC</span>で黒)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='brain abscess'>脳膿瘍</span>を第一に考える"]
    B -->|"いいえ(中心は拡散亢進)"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corpus callosum'>脳梁</span>に及ぶか"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glioblastoma (GBM)'>膠芽腫</span>を考える"]
    D -->|"いいえ"| F{"小さな腫瘍に<br>不釣り合いな浮腫・多発"}
    F -->|"はい"| G["脳転移を考える"]
    F -->|"いいえ"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glioblastoma (GBM)'>膠芽腫</span>と転移を<br>両方残して評価"]
  • :脳炎(限局性の脳の炎症)の段階から局所の壊死が始まり、線維性の被膜に囲まれる。命に関わるので早く見つけて早く治療する。では周囲に低吸収の浮腫を伴うと淡い輪、造影CTでは薄く均一なとして見える。でほぼ診断できる()。
  • :成人の内に生じるで最も多い。攻撃的で治療抵抗性、予後不良。白質を中心とする不均一な腫瘤で、不整な辺縁増強・・周囲のを示す()。現行の分類(2021年)では「、野生型」と呼ぶ。治療は手術と、を併用する放射線治療が中心である()。
  • への浸潤は転移よりを示唆する。の線維は密に詰まっており、非常に攻撃的な腫瘍しか浸潤できないからである。を越えて両側の大脳半球へ広がると、造影T1で左右対称に近い蝶の羽の形の不整な辺縁増強になる。同じ病変はグラディエントエコーで腫瘍内出血が黒く抜け、では造影される辺縁の血流が増えている。
  • 脳転移:成人ので圧倒的に多い。診断時に約半数は単発とされる(脳転移)。

画像で確かめる

  • EI-10-01 :79歳男性のと右下肢の。で左の内に広い浮腫(高信号)、の像での辺縁増強があり、左をする。病変はとに及ぶ。のでは腫瘍内出血が黒く抜ける。
  • EI-15-02 悪性黒色腫の多発脳転移:悪性黒色腫の患者の頭痛とけいれん。造影前のですでに高信号の内病変が左とにあり、も白い。造影前の画像がないと、元からの高信号をと取り違える。
  • EI-14-01 :非対応のを持つ中年患者のけいれん。で右に小さな石灰化()を含む外の腫瘤があり、造影CTで強く造影され、脳を外から押す。が撮れない患者ではで外の腫瘤を評価する。
  • EI-11-01 :数か月かけて進んだ感音難聴。強いと後ので、左のに境界明瞭で造影される腫瘤がある。の外(脳槽内)の腫瘤の例として、場所から鑑別を始める。

7. 救急で出会う脳と脊椎の感染症

7.1 単純ヘルペス脳炎

散発性で劇症の壊死性ウイルス脳炎のうち、致死的なものの原因として最も多い。発熱、頭痛、、けいれん、の変化・低下で来る。画像はが第一選択である()。

見るもの 所見
分布 辺縁系・内側・・下外側に、典型的には両側・非対称に広がる。基底核は保たれることが多く、梗塞やとの区別に役立つ
T2・ で高信号。例外として、出血があるとその部分は信号が抜ける
・ で高信号かつで低値=
亜急性期 出血を起こし、とを伴うことがある。出血はでもでも低信号

典型例では、片側のとの周りがで白くで黒い。進んだ壊死性の例では、左の側頭極にで白い広い浮腫があり、その中の出血がでもでも黒く抜ける。

治療はアシクロビルとである。⚠️ 画像や検査結果を待たずに、疑った時点でアシクロビルを始める。

💡 の鑑別は を参照。梗塞は動脈の支配領域に一致し基底核も侵すが、は支配領域に従わず基底核を避ける。

画像で確かめる

  • EI-05-03 :免疫不全患者の数日で悪化する強い・発熱・・尿閉。の像で第9〜12の高さに造影される腫瘤があり、で信号が落ちない(脂肪ではない)。中は造影されない液体の信号である。神経症状を伴う発熱とでは、脊椎の緊急での感染を探す()。

8. まとめ

  • ⭐ 急性脳卒中は症状で虚血と出血を区別できない。で出血を除外 → で大血管閉塞 → 必要ならやで救える組織を探す。
  • 虚血はでは数時間後に見えてくる(の、・の輪郭消失、、)。広がりはで数える。は発症直後からをとらえる。
  • ⭐ は4.5時間以内が標準。起床時発見例は-、4.5〜9時間はコア/で選ぶ。は6時間以内が標準で、6〜24時間は画像で選んだの大血管閉塞に行う。
  • 若年者のでは(T1の高信号、の消失)を考え、全部の血管を見る。
  • ⭐ =レンズ型・縫合線を越えない・骨折を伴う。=・縫合線は越えるが正中は越えない。=・脳槽ので、外傷がなければで動脈瘤を探す。高血圧性=・外包・視床、が多い。
  • スポットは活動性出血と血腫増大のしるし。はT2*・で探す。
  • 外傷は脳条件との両方で読み、で説明できない意識障害はでを探す。
  • の病変は、中心のなら膿瘍、浸潤なら、浮腫が不釣り合いに大きく多発なら転移を考える。
  • は内側・の両側非対称の高信号とで、基底核は保たれる。疑えばすぐアシクロビル。

出典

  1. 1.2026 Guideline for the Early Management of Patients With Acute Ischemic Stroke(American Heart Association / American Stroke Association・2026)出版社の全文ページは取得できず(HTTP 403)、PubMed(PMID 41582814、2026年1月26日電子版、2026年8月に訂正記事あり)とCrossrefの抄録で2018年版・2019年改訂を置き換える現行ガイドラインであることと血栓溶解薬の選択が主な改訂点であることを確認した。推奨4.6.2(COR 1)「発症または最終健常確認から4.5時間以内で静注血栓溶解療法の適格な成人に、テネクテプラーゼ0.25 mg/kg(最大25 mg)またはアルテプラーゼ0.9 mg/kgを推奨する」の文言は二次資料の引用でのみ確認した閲覧 2026-09-26
  2. 2.European Stroke Organisation (ESO) guidelines on intravenous thrombolysis for acute ischaemic stroke(European Stroke Organisation・2021)PMC掲載の全文(PMC7995316)で推奨文を逐語で確認した。発症時刻が分かっている発症4.5〜9時間の例で単純CT以外の画像がなければ静注血栓溶解療法を行わないよう推奨すること(質は中、推奨は強)、発症時刻が分かっている発症4.5〜9時間の虚血性脳卒中でCTまたはMRIのコア/灌流ミスマッチがあり、機械的血栓回収療法の適応がないか予定されていない場合にアルテプラーゼ静注を推奨すること(エビデンスの質は低、推奨は強)、起床時に発見され最終健常確認から4.5時間を超える例でMRIのDWI-FLAIRミスマッチがあり血栓回収を予定しない場合にアルテプラーゼ静注を推奨すること(質は高、推奨は強)、起床時発見例で睡眠の中間点から9時間以内にCTまたはMRIのコア/灌流ミスマッチがある場合にも推奨すること(質は中、推奨は強)閲覧 2026-09-26
  3. 3.European Stroke Organisation (ESO) – European Society for Minimally Invasive Neurological Therapy (ESMINT) Guidelines on Mechanical Thrombectomy in Acute Ischaemic Stroke(European Stroke Organisation / European Society for Minimally Invasive Neurological Therapy・2019)PMC掲載の本文(PMC6533858、PMID 31165090)の推奨表で、発症6時間以内の前方循環の大血管閉塞に機械的血栓回収療法+最良の内科治療を推奨すること(質は高、推奨は強)と、前方循環の大血管閉塞による急性虚血性脳卒中で最終健常確認から6〜24時間に来院し、DEFUSE-3またはDAWNの選択基準を満たす成人には、最良の内科治療単独より機械的血栓回収療法+最良の内科治療を推奨すること(質は中、推奨は強)を逐語で確認した。DEFUSE-3基準は6〜16時間・梗塞コア70 mL未満・ペナンブラ15 mL超・比1.8超、DAWN基準は6〜24時間の年齢・NIHSS別の梗塞コア上限である閲覧 2026-09-26
  4. 4.Trial of Endovascular Thrombectomy for Large Ischemic Strokes(The New England Journal of Medicine・2023)PubMed抄録(PMID 36762865)で確認した。内頸動脈または中大脳動脈M1閉塞で、ASPECTS 3〜5または梗塞コア体積50mL以上という大きな虚血コアを持つ352例を対象とした24時間以内の試験(SELECT2)で、血栓回収術群は内科治療単独群よりmodified Rankin Scaleの転帰分布が良好だった(一般化オッズ比1.51)こと、機能的自立は20%対7%で、血管合併症(穿刺部合併症・解離・血管穿孔)を伴ったこと閲覧 2026-09-26
  5. 5.Validity and reliability of a quantitative computed tomography score in predicting outcome of hyperacute stroke before thrombolytic therapy(Lancet・2000)PubMed抄録で、ASPECTSが中大脳動脈領域を10の関心領域に分けるCTスコアであり、発症3時間以内にアルテプラーゼを投与した203例で点数が機能転帰と症候性頭蓋内出血を予測したことを確認した(領域ごとに1点を引く採点方法は抄録には書かれていない)閲覧 2026-09-26
  6. 6.MRI-Guided Thrombolysis for Stroke with Unknown Time of Onset(New England Journal of Medicine・2018)PubMed抄録(PMID 29766770)で確認した。発症時刻不明の脳卒中で拡散強調画像に虚血病変を認めるがFLAIRに実質性高信号を認めない(発症からおおむね4.5時間以内を示唆する)ミスマッチを基準に選んだ503例を対象とした試験で、アルテプラーゼ群は90日時点の機能良好例(mRS 0-1)がプラセボ群より多かった(53.3% 対 41.8%)が、症候性頭蓋内出血もやや多かった(2.0% 対 0.4%)こと閲覧 2026-09-26
  7. 7.Sensitivity of computed tomography performed within six hours of onset of headache for diagnosis of subarachnoid haemorrhage: prospective cohort study(BMJ(Perry JJ, et al.)・2011)PubMed抄録(PMID 21768192)で、神経学的異常がなく発症1時間以内に痛みが最大になった新しい急性頭痛の成人3132例のうち、発症6時間以内にCTを撮影した953例ではSAH121例をすべて検出し感度・特異度とも100%だったこと(全体の感度は92.9%)を確認した閲覧 2026-09-26