眼科学

眼科学 · ML-43

加齢黄斑変性

Age-related macular degeneration

前提:正常
感覚器:眼視覚の生理

🧠 全体像: AMD は、を支えると Bruch 膜が年とともに老い、の要である黄斑が壊れる病気である。最初はの下にがたまって(黄色い斑)ができるだけで、ほとんど見え方は変わらない。そこから2つの道に分かれる。はとが少しずつ消えてになり、何年もかけて視力を失う。滲出型はからが Bruch 膜を破って伸び、漏れと出血で数週〜数か月のうちに視力を失い、最後はになる。治療は、中には(AREDS2 の処方)、滲出型にはの(第一選択)、には(萎縮の拡大を遅らせるが視力は改善しない。承認は国によって違う)。症状はとで、片眼ずつ Amsler チャートで自分で見張る。

黄斑との構造は網膜の解剖と血液循環、疾患としての整理は、視力を失った後の支援は・補助具と・失明の法的側面を参照。

定義と特徴

は、高齢者の重いとを起こす病気である。次の所見で特徴づけられる。

所見 内容
の下(Bruch 膜との間)にたまる黄白色の沈着物
の変化 色素の()と集積(過色素)がまだらに混じる
と・が境界明瞭に消えた領域
性 による漏れ・出血・瘢痕

疫学

世界の疫学研究

研究 地域・期間 結果
Beaver Dam Eye Study 米国、1988〜2005年 発症率:早期 14.3%、晩期 3.1%。:早期の加齢 15.6%、晩期 1.6%、滲出型 1.2%
Framingham Eye Study 米国、1973〜1975年 :全体 8.8%
Rotterdam Eye Study オランダ、1990〜1993年 :全体 1.7%、滲出型 1.1%
Blue Mountains Eye Study オーストラリア、1992〜2004年 発症率:早期 10.8%、晩期 2.8%。:全体 1.9%

研究によって対象の年齢とが違うので、数値は直接比べられない。

  • ⭐ 先進国の失明原因の第1位である。
  • 50歳を超えた人に多く、米国ではこの年齢層のの最も多い原因である。
  • 患者の約80%は非滲出型だが、重い(20/200以下)の約90%は滲出型による1。
  • 片眼が滲出型になると、5年以内に反対眼も43%で発症するとされる。AREDS では、片眼が晩期の人の反対眼が5年で晩期へ進む割合は35〜50%だった1。

💡 片眼の発症は反対眼の警報である。反対眼を Amsler チャートで毎日見張り、変化があればすぐ受診するよう指導する。

ハンガリーの失明原因

ハンガリーの県別の集計(4県の1996〜2000年と、2県の2つの時期)では、失明原因の割合(%)はおおよそ次のとおりである(棒グラフからの概数)。

原因 4県 1996〜2000年 2県 1996〜2000年 2県 2005〜2012年
約23 約28 約27
緑内障 約12.5 約12.5 約14
約15.5 約16.5 約14
約14 約11.5 約11
約6.5 約6 約6
中枢性の原因 約4 約2.5 約6
角膜疾患 約2 約2.5 約4
約7.5 約5 約2
約1.5 約2 約1.5

2県はトルナ県とジェール・モション・ショプロン県である。はどの時期でも失明原因の首位で、は手術の普及で減っている(全国の失明原因の調査は失明の原因とスクリーニング・予防)。

病態

多因子の病気

要因 内容
光と高い酸素消費にさらされる黄斑は、の害を受けやすい
の老化 のを毎日貪食・分解するの処理能力が落ちる
炎症 慢性の低い程度の炎症
眼の血行動態の加齢変化 の血流の低下
VEGF がを作る
補体の過剰な活性化がとを傷める
遺伝要因 補体の CFH、ARMS2-HTRA1 領域などの変異
環境要因 喫煙、食事

病期の進み方

正常では、の下にが1層に並び、その下の Bruch 膜を隔てての毛細血管が栄養を送る。では次のように進む。

flowchart TD
    A["正常な黄斑<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='photoreceptor'>視細胞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal pigment epithelium'>網膜色素上皮</span>・Bruch 膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroid'>脈絡膜</span>"] --> B["Bruch 膜の肥厚<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='drusen'>ドルーゼン</span>の形成"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal pigment epithelium'>網膜色素上皮</span>の色素の乱れ<br>大きな<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drusen'>ドルーゼン</span>(中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interphase'>間期</span>)"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrophic type'>萎縮型</span>(晩期)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='geographic atrophy'>地図状萎縮</span>"]
    C --> E["滲出型(晩期)<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='choroidal neovascularization'>脈絡膜新生血管</span>が Bruch 膜を破る"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span>から血液・蛋白が<br>黄斑の下へ漏れる"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fibrovascular'>線維血管性</span>の瘢痕<br>(円板状瘢痕)"]
段階 組織で起こること
の形成 Bruch 膜が厚くなり、の下に沈着物がたまる 黄斑の周りに黄白色の小さな斑が散らばる
の発生 から異常な血管が増えて Bruch 膜を突き破る 黄斑に灰色がかった病変と小さな出血が現れる
漏れ は脆く、血液と蛋白が黄斑の下へ漏れる 黄斑の下の出血と浮腫
瘢痕 線維芽細胞様の細胞が増え、は失われる 黄斑に大きな白っぽい瘢痕が広がり、その上と周りに黒い色素の塊が散らばる

組織の断面で見ると、初期のの不整から、を持ち上げるドーム状の、の減少と色素の移動、との消失、最後に線維性の瘢痕へと、黄斑のが段階的に壊れていく。

💡 なぜ黄斑だけが壊れるのか:は(とくに錐体)が最も密で、の貪食と再生の量が最も多い。その処理を一手に引き受けるが老いると、未処理のが Bruch 膜にたまり、からの酸素と栄養の通り道がふさがる。これがの()と、VEGF による(滲出型)の両方の出発点になる。

危険因子

⭐ 関連の強い〜中等度の危険因子は次のとおりである。

危険因子 補足
年齢 最大の危険因子
喫煙 ⭐ 最も重要な修正できる危険因子( 約2.5倍)。20年以上禁煙すれば危険は非喫煙者並みになる1
家族歴(遺伝) ルーチンのは推奨されていない1
の既往 —
高い BMI —
心血管疾患 —
高血圧 —
血漿フィブリノゲン高値 —

💡 年齢と遺伝は変えられないが、喫煙は変えられる。禁煙の指導が患者にできる最も確かな予防である。

病型と所見

早期・中間期:ドルーゼン

眼底では、黄斑とその周りに大小の黄白色のが多数散らばる。

AREDS の分類(を決める)1

カテゴリー 名称 所見
1 AMD なし 小(63 µm 以下)が無いか少数
2 早期 AMD 小が多数、中(63〜124 µm)が少数、または軽いの異常
3 中 AMD 中が多数、または大(125 µm 以上)が1個以上
4 晩期 AMD 片眼にまたは

萎縮型:地図状萎縮

  • と、が境界明瞭に消え、地図のような形の萎縮巣になる。
  • 眼底では、黄斑に境界のはっきりした淡い萎縮巣が多発して融合し、その底にの大きな血管が透けて見える。周りにと色素の乱れが残る。
  • では、萎縮巣はという「覆い」が無いための蛍光がそのまま透けて、境界明瞭な(窓陰影)として多発する。漏れではないので、時間がたっても広がらない。
  • はゆっくりで、が保たれている間は視力も比較的保たれる。

滲出型:脈絡膜新生血管

  • からが Bruch 膜を破っての下や網膜の下へ伸び、漏れと出血を起こす。
  • 組織では、の下にがたまり、その間の Bruch 膜の裂け目からの血管が網膜側へ伸びる。
  • では、黄斑に早期からを示し、後期にかけて蛍光が強く広がる(漏出する)病変を認める。病変の縁にの輪が見えることもある。
  • 放置すると黄斑の下にの瘢痕(円板状瘢痕)ができ、は戻らない。

⚠️ 東アジアでは、滲出型に似たの割合が高い。治療の選び方(の併用など)が変わるので区別する。

項目 () 滲出型(型)
頻度 多い 少ないが重いの大半
進行 年単位でゆっくり 週〜月単位で急速
主な所見 境界明瞭な萎縮巣 出血・・・瘢痕
窓陰影(大きさが変わらない) 漏出(後期に広がる)
治療 (承認は国で違う)

症状

症状 内容
見ようとする中心に影や欠けた部分がある。晩期の患者では、視野の中央が黒っぽい斑で覆われ、周辺だけが見える
まっすぐなの線が波打って見える。Amsler チャートでは、中心付近の線がゆがみ、一部がかすんで見える
  • は保たれるので、完全な失明(光も分からない状態)にはならない。ただし読書・顔の識別・運転ができなくなる。
  • 滲出型ではが急に出て悪化する。

⚠️ 急にやが出たら、滲出型を疑ってすぐに眼科を受診させる。治療の開始が遅れるほど、失った視力は戻りにくい。

自然経過:治療しない滲出型

の第3相試験でを受けた群の視力(ETDRS の文字数)の平均の変化は、次のとおりだった。

試験の群 経過
MARINA(238人) 最初の1か月はほぼ変わらず、その後ほぼ直線的に下がり、12か月で約−10文字、24か月で−14.9文字
PIER(263人) 最初の数か月で急に下がり、12か月で−16.3文字

💡 治療しなければ、中等度〜重度のと重いの危険が高い。15文字はの3段に当たる。

検査と診断

検査 何を見るか
視力 ETDRS などで測る
Amsler チャート のゆがみ()と欠け()。自宅でのにも使う
危険因子の聴取 喫煙( 約2.5倍)、家族歴
、色素の乱れ、萎縮、出血、滲出
の有無・部位・活動性(漏出)、萎縮(窓陰影)
OCT ・・・瘢痕。治療の効果判定との判断

典型例のでは、カラーで黄斑周囲に黄白色の斑が散らばり、無赤色光の写真でも斑が白く目立つ。では、早期に黄斑の下方にの病変が現れ、後期に蛍光が強まる。OCT ではを持ち上げる複数のドーム状の隆起と、網膜内の低反射の腔を認める。

OCT で見る黄斑

正常の OCT では、・、、、、、、の・の境界、層、、とが層として区別でき、はなだらかに陥凹する。

状態 OCT 所見
正常の黄斑 のなだらかな陥凹。の線は平ら
滲出型 AMD 網膜が盛り上がり、網膜内に大小のの腔、網膜の下に液体がたまる
の下に反射の強い塊があり、その上の網膜は薄くなる

画像検査の原理は眼球の解剖 II:と・OCT・眼底造影、、を参照。はにある。

flowchart TD
    A["50歳以上で<br>中心がゆがむ・見えにくい"] --> B["視力・Amsler チャート<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dilated fundus examination'>散瞳眼底検査</span>"]
    B --> C{"眼底に何があるか"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='drusen'>ドルーゼン</span>のみ"| D["AREDS カテゴリーを判定<br>中<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interphase'>間期</span>なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='supplement'>サプリメント</span><br>禁煙・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='self-monitoring'>自己監視</span>"]
    C -->|"境界明瞭な萎縮巣"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='geographic atrophy'>地図状萎縮</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus autofluorescence'>眼底自発蛍光</span>・OCT で範囲を評価"]
    C -->|"出血・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subretinal fluid'>網膜下液</span>・<br>灰色の病変"| F["OCT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluorescein angiography'>蛍光眼底造影</span><br>(必要なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='indocyanine green angiography'>インドシアニングリーン造影</span>)"]
    F --> G["滲出型:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-VEGF agent'>抗VEGF薬</span>を<br>できるだけ早く開始"]

治療

早期・中間期:サプリメント

AREDS のカテゴリーと方針

カテゴリー 方針
1(AMD なし)・2(早期 AMD) 経過観察。で晩期への進行が減るという根拠は無い1
3(中 AMD) ⭐ を勧める
4(片眼が晩期) ⭐ 反対眼のためにを勧める
  • 最初の AREDS では、中または片眼晩期の人で、に・を加えた組み合わせが、5年で晩期 AMD になる危険を25%、3段以上のを19%減らした1。
  • AREDS2 では、を・に置き換えた。の補充は肺癌の増加と関連するので、除くことでその危険も避けられる1。

の組成

成分 AREDS AREDS2
ビタミンC 500 mg 500 mg
ビタミンE 400 IU 400 IU
15 mg 0(除いた)
() 80 mg 80 mg または 25 mg(25 mg に減らしても進行の抑制に差は無かった)
() 2 mg 2 mg(によるを防ぐ)
— 10 mg
— 2 mg

AREDS2 の組成との減量の結果は米国眼科学会の整理による1。

のとの比較(ハンガリーで入手できる製品を組成で区別したもの。括弧内は AREDS の量に対する割合)

製品の型 ビタミンC ビタミンE
AREDS の処方 500 mg 400 IU 15 mg 80 mg 2 mg — —
A:AREDS 相当量、半量+ 500 mg(100%) 400 IU(100%) 7.5 mg(50%) 80 mg(100%) 2 mg(100%) 6 mg —
B:AREDS にほぼ近い量、なし 452 mg(90%) 400 IU(100%) 15 mg(100%) 70 mg(87%) 1.6 mg(80%) — —
C:一般的なマルチビタミン 60 mg(12%) 30 IU(7.5%) 1.8 mg(12%) 15 mg(19%) 2 mg(100%) — —
D:低用量ビタミン+ 60 mg(12%) 30 mg=30 IU(7.5%) 0 10 mg(12.5%) 0.25 mg(12.5%) 6 mg —
E:低用量ビタミン+・ 60 mg(12%) 8.4 mg=8.4 IU(2.1%) 0 5 mg(6.3%) 2 mg(100%) 6 mg 0.52 mg
F:低用量ビタミン+10 mg 90 mg 15 mg 0 9 mg 1.1 mg 10 mg —
AREDS2 の処方 500 mg 400 IU 0 80 mg 2 mg 10 mg 2 mg

💡 品の多くは AREDS の量に遠く及ばない。AREDS の量に届くのは A・B の型だけで、マルチビタミン(C)やを主にした製品(D〜F)では、ビタミンC・E・が AREDS の1〜2割以下しか入っていない。を含んでいても量が AREDS2 の10 mg に届かないものが多く、まで含むものは少ない。効果が示されているのは AREDS・AREDS2 の量なので、成分表を確かめて選ぶ。

⚠️ AREDS の処方は治療ではなく進行の予防で、早期の AMD や AMD の無い人には勧めない。を含む古い処方より、AREDS2 の処方を選ぶ。

滲出型:抗VEGF薬の硝子体内注射

⭐ のが、ほとんどの滲出型 AMD の第一選択である1。これが滲出型を「必ず失明する病気」から「視力を保てる病気」に変えた。

の登場

年 薬 要点
2007年 VEGF の一つのだけに結合する。現在はほとんど使われない
2008年 VEGF-A に対する抗体の Fab 断片
2008年 全身用の抗体を適応外でに使う。安価
2013年 VEGF-A・VEGF-B・胎盤に結合する融合タンパク
2020年 。液を引かせる力は強いが、の報告がある
その後 、8 mg 最長16週ごとまで間隔を延ばせる

示した年は導入の目安で、承認の年は国によって前後する。と8 mg の位置づけは米国眼科学会の整理による1。

注射の間隔:従来と現行

従来(承認時の第3相試験の固定投与) 現行
0.5 mg 4週(毎月)ごと 個別化した間隔(トリート・アンド・エクステンド法など)
2 mg 毎月3回の導入後、8週ごと(毎月投与と1年目は同等) 同上。導入後8週ごとの固定投与も標準の一つ
— 最長16週ごとまで延ばせる
8 mg — 毎月3回の導入後、8〜16週ごと(PULSAR では12週または16週ごとの間隔で2 mg の8週ごとに劣らず、や網膜厚の増加があれば間隔を縮めた)1

従来は「毎月の受診と注射を続ける」ことが前提だったが、いまは液の再発の有無を OCT で見ながら間隔を患者ごとに延ばす考え方が主流になり、作用の長い薬で年間の注射回数を減らせるようになった。どの間隔が最適かについての一致した見解は無い1。

投与の組み立て(治療レジメン)

方式 進め方 特徴
固定投与 毎月、またはのあと8週ごとなど決まった間隔で注射 の標準。受診と注射の負担が大きい
毎月診察し、活動性(液・出血・)があるときだけ注射 1年では毎月投与と同等だが、長く続けると初期の改善を保てない1
⭐ トリート・アンド・エクステンド法 (毎月の注射を数回)のあと、毎回注射しながら、液が無ければ次の間隔を少しずつ延ばし、再発すれば縮める 実際の診療で最も広く使われる。毎月投与と同等の効果(LUCAS)1
flowchart TD
    A["滲出型 AMD の診断"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='induction phase'>導入期</span><br>毎月の注射を数回"]
    B --> C{"OCT で活動性<br>(液・出血)はあるか"}
    C -->|"ない"| D["注射して<br>次の間隔を延ばす"]
    C -->|"ある"| E["注射して<br>次の間隔を縮める"]
    D --> C
    E --> C
  • 固定投与と個別化の方式のどちらを選ぶかは、患者とが話し合って決める。理想的な間隔についての一致した見解は無く、個別に調整する1。
  • 長期には治療を続けても視力が少しずつ下がることがあり、あるの追跡では1〜2年目の改善が5年では保たれず、20/40を保っていたのは半数だった1。
  • 注射の合併症(、、など)と手技はの治療にまとめた。

光線力学療法

()を静脈注射し、に集まったところへ弱いレーザー光を当ててを作らせ、だけを閉塞させる。周りの網膜への熱の害が少ない。

  • の時代になって単独で使うことは減った。新しく発症した滲出型にへ加えても、明らかなの利益は無かった1。
  • ⭐ では、と併用すると注射の回数が減る1。
  • 合併症:治療後1週以内の重い低下(1〜4%)、投与中の、(治療後5日間は直射日光を避ける)。は禁忌1。
  • の下にかからない病変に対する熱レーザーは、現在はまれにしか使わず、下のには勧められない1。

地図状萎縮:補体阻害薬

⭐ に対して、補体を抑える2つの薬が開発された。どちらも萎縮の拡大を遅らせるが、視力(最高)は改善しない1。

薬 標的 試験の結果 主な注意
補体 C3・C3b OAKS で12か月の拡大を21%抑えた。DERBY は12か月のを満たさず(12%)、24か月では両試験とも有意に抑えた 滲出型 AMD への転換が増える。(注射1回あたり0.01%)、
補体 C5 GATHER2 で12か月の拡大を14%抑えた 滲出型への転換が増える(7%対4%)

試験の数値は米国眼科学会の整理による1。

承認状況は地域で違う(2026年9月時点)

地域
米国 2023年に承認1 2023年に承認1
欧州 承認拒否が確定(2024年9月の再審査でも、萎縮の拡大は遅らせたが患者の日常の機能に及ぶ利益が示されず、利益が危険を上回らないと判断)2 申請取り下げ(2024年10月。取り下げ時点の暫定見解も「承認できなかったであろう」)3
日本 の効能では承認されていない 2025年9月に。効能は「におけるの進行抑制」。2 mg を最初の12か月は毎月、以降は2か月ごとにする。投与前と投与中になどで萎縮のへの拡大を定期的に評価して適否を判断する。に国内の成績の提出がある4

💡 同じ試験の結果を見ても、米国・日本は「萎縮の拡大を遅らせる」ことを利益と認め、欧州は「患者が感じる見え方の利益が示されていない」として認めなかった。「承認された=視力が保たれる」ではないことを理解したうえで、効果の限界と滲出型への転換の危険を患者に説明する。

⚠️ の治療中に滲出型へ転換することがあるので、定期的に診察し、転換すればで治療する1。

自己監視と生活指導

まとめ

  • は先進国の失明原因の第1位で、ハンガリーでも失明原因の首位(約27%)。片眼が滲出型になると5年で反対眼の約4割が発症する。
  • 病態はと Bruch 膜の老化に、・炎症・補体・遺伝(CFH、ARMS2)・喫煙が重なる。
  • ⭐ 危険因子は年齢・喫煙(修正できる最大の因子、約2.5倍)・家族歴。
  • 所見は → の乱れ → (、窓陰影)または滲出型(、漏出、出血、瘢痕)。患者の約80%はだが、重いの約90%は滲出型。
  • 症状はと。Amsler チャートで片眼ずつし、急な変化はすぐ受診。
  • 治療しない滲出型は2年で約15文字(3段)視力を失う。
  • ⭐ AREDS カテゴリー3(中)と4(片眼晩期)に。AREDS2 はを10 mg・2 mg に置き換えた(ビタミンC 500 mg・E 400 IU・80 mg または25 mg・2 mg)。早期には勧めない。品の多くは量が足りない。
  • ⭐ 滲出型の第一選択はの。実際の診療では トリート・アンド・エクステンド法 が主流。と8 mg は最長16週ごと。はに注意。
  • ()は主にでと併用。は禁忌、治療後5日間は直射日光を避ける。
  • の(:C3、:C5)は萎縮の拡大を遅らせるが視力は改善しない。米国は両剤承認、欧州は承認されず(拒否確定・申請取り下げ)、日本はが2025年9月に。

出典

  1. 1.Age-Related Macular Degeneration Preferred Practice Pattern (2024, Updated 2026)(American Academy of Ophthalmology・2024)本文PDFで確認した。患者の約80%が非滲出型だが重い視力低下(20/200以下)の約90%は滲出型によること、喫煙が主な修正可能な危険因子で20年以上禁煙すれば危険は非喫煙者並みになり、ルーチンの遺伝子検査は推奨されないこと。AREDSの分類(カテゴリー1は小ドルーゼン63 µm以下のみ、2は小ドルーゼン多数・中ドルーゼン63〜124 µm少数・軽い網膜色素上皮異常、3は中ドルーゼン多数または大ドルーゼン125 µm以上1個以上、4は片眼の地図状萎縮または黄斑新生血管)と、片眼が晩期の人の反対眼が5年で晩期へ進む割合が35〜50%であること。早期(カテゴリー2)にはサプリメントの根拠が無く、中間期または片眼晩期で、抗酸化ビタミンに亜鉛・銅を加えた組み合わせが5年の晩期AMD発症を25%、3段階以上の視力低下を19%減らしたこと、AREDS2の組成(ビタミンC 500 mg、ビタミンE 400 IU、ルテイン10 mg/ゼアキサンチン2 mg、酸化亜鉛80 mgまたは25 mg、酸化銅2 mg)とβカロテンをルテイン・ゼアキサンチンに置き換える根拠(肺癌の増加の回避)、亜鉛を80 mgから25 mgに減らしても進行に影響しなかったこと。滲出型には抗VEGF薬が第一選択で、固定の毎月・隔月投与、必要時投与、treat-and-extendなどがあり、LUCASで毎月投与とtreat-and-extendが同等、必要時投与は長期に初期の改善を保てないこと、CATTの改善は5年で維持されず20/40を保ったのは50%であること、ブロルシズマブの閉塞性網膜血管炎、アフリベルセプト8 mgとファリシマブが最長16週ごとまで延ばせること(8 mgはPULSARで毎月3回の後12週または16週ごとの投与が2 mgの8週ごとに非劣性で、活動性があれば間隔を短縮したこと、8 mgの推奨用量が毎月3回の後8〜16週ごとであること。2026-09-29に本文PDFで再確認)、VIEWでアフリベルセプト2 mgの毎月3回後8週ごとが1年目に4週ごとのラニビズマブ0.5 mgと同等であったこと、理想的な間隔の一致した見解が無いこと。ベルテポルフィンの光線力学療法は抗VEGF薬への上乗せで新規の滲出型に利益がないがポリープ状脈絡膜血管症では注射回数を減らし、中心窩下病変に承認が残ること、合併症(1週以内の重い中心視力低下1〜4%、投与中の腰背部痛、光線過敏で5日間直射日光を避ける)とポルフィリン症での禁忌。地図状萎縮にペグセタコプラン(C3・C3b阻害。OAKSで12か月21%、DERBYは12か月の主要評価項目未達)とアバシンカプタドペゴル(C5阻害。GATHER2で12か月14%)が2023年に承認され、いずれも最高矯正視力を改善せず滲出型への転換を増やすこと。自己監視にAmslerチャートなど片眼の近見検査を使うこと。閲覧 2026-09-29
  2. 2.Refusal of the marketing authorisation for Syfovre (pegcetacoplan): re-examination confirms refusal(European Medicines Agency・2024)欧州医薬品庁の公式文書(EMA/432931/2024、EMEA/H/C/005954)と EPAR ページで確認した。Apellis Europe B.V. が2024年6月27日の承認拒否勧告に対して再審査を請求し、同庁が2024年9月19日の最終見解で地図状萎縮に対するSyfovre(ペグセタコプラン)の承認拒否勧告を確定したこと。根拠となった2試験は計1,258例・24か月で、主要評価項目は12か月時の病変面積の変化であったこと。病変の拡大は遅らせたものの患者にとって臨床的に意味のある利益にはつながらず、治療の利益は患者の日常の機能に及ぶべきであるのにそれが示されなかったとしたこと。反復する硝子体内注射は他の型のAMDの発症や眼内の炎症を含む重大な有害事象のリスクを伴うこと。再審査でも判断は変わらず、有効性の大きさが潜在的なリスクを上回らないため利益とリスクの均衡が確立できないと結論したことを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.Withdrawal of application for the marketing authorisation of Izelvay (avacincaptad pegol)(European Medicines Agency・2024)欧州医薬品庁の公式文書(EMA/522714/2024、EMEA/H/C/006153、2024年11月15日付)と EPAR ページで確認した。Astellas Pharma Europe B.V. が地図状萎縮を適応とするIzelvay(アバシンカプタドペゴル。欧州での申請時の販売名)の承認申請を2024年10月24日に取り下げたこと。取り下げ時点での同庁の暫定見解は「Izelvayは地図状萎縮の治療として承認できなかったであろう」というものであったこと。計734例の2試験(主要評価項目は12か月時の病変面積の変化)で病変拡大の遅延は示されたが視機能の臨床的に意味のある改善にはつながらず、反復する硝子体内注射による結膜出血・眼圧上昇・脈絡膜新生血管のリスクを踏まえて利益とリスクの均衡を確立できないと結論したことを確認した閲覧 2026-09-29
  4. 4.アイザベイ硝子体内注射液20mg/mL 電子添文(医薬品医療機器総合機構・2025)2025年11月改訂(第2版)の電子添文本文で、条件付き承認品目で主要文献の記載から2025年9月19日承認であること、効能又は効果が「萎縮型加齢黄斑変性における地図状萎縮の進行抑制」、効能又は効果に関連する注意として眼底自発蛍光検査などで投与開始時と投与中に地図状萎縮の中心窩への拡大を定期的に評価すること、用法及び用量が2 mgを初回から12か月までは1か月に1回、以降は2か月に1回硝子体内投与であること、承認条件に実施中の国内臨床試験の成績の提出が含まれること、GATHER2でGA面積(平方根変換)の12か月の成長速度が本剤0.336 mm/年・シャム0.392 mm/年で有意に減ったことを確認した閲覧 2026-09-29