病理学

病理学 · B/23

腫瘍の病理・遺伝・免疫・分子診断

Pathological, genetic, immunological and molecular diagnostics of tumors

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High-yield / ポイント
応用トピック
腫瘍の分子病理
検査値
AFPCEA

🧠 全体像:腫瘍診断は単一の手法で完結せず、形態学的手法で組織を確認し、とマーカーで由来・活動性を絞り込み、で予後・治療標的・までを追う、というで理解すると整理しやすい。は単独では診断的でなくスクリーニング・モニタリング・再発検出に用いる点が要注意。

概念

腫瘍診断は形態学的、免疫学的、遺伝的、分子的手法を組み合わせ、悪性を確認し、腫瘍を分類し、治療・予後を導く。

形態学的・細胞学的手法

手法 用途
切除・生検 組織診断(大きな腫瘤の壊死中心に注意)
術中の迅速評価
触知病変(乳房、甲状腺、リンパ節)や深部臓器の細胞診
細胞塗抹(スメア) 剥離・凝集性の低い腫瘍細胞(例:)

⚠️ には精度の限界がある。 卵巣腫瘤を対象にした系統的レビュー(38研究・11,181例)では、浸潤癌のみを陽性とした場合のの感度は平均90.0%・特異度は平均99.5%であった一方、でと判定された症例のうち最終的な永久標本診断で浸潤癌であったものが平均21%含まれており、の判定は術中診断と最終診断の間で最も食い違いやすいことが示されている1。

免疫学的手法

  • — 標識モノクローナル抗体:PSA(前立腺癌由来の確認)、(乳癌の予後・治療)、(とリンパ腫の鑑別)。
  • マーカーと由来系統の対応 — =()、=(肉腫)、S100・SOX10・HMB-45=系(悪性黒色腫)、CD45(白血球共通抗原)=(白血病・リンパ腫)、=(・)、GFAP=グリア系(星細胞腫等)、・=。組織像だけでは系統を決められない低分化腫瘍の鑑別で中心的な役割を持つ。
  • (増殖マーカー) — 免疫染色で腫瘍細胞のを評価する。乳癌領域の国際ワーキンググループのコンセンサスでは、染色前処理・判定法を標準化すれば分析的は確保できるものの、臨床的な有用性は陽性・陰性の早期乳癌(T1-2, N0-1)でを省ける患者を見分ける予後推定に限られ、その集団でも 5%以下または30%以上の場合に予後推定に使えるとされる2。
  • 癌(CUP)における免疫染色の限界 — 全悪性腫瘍の3〜5%を占め、免疫染色と臨床像で腺癌を中心とする組織亜型や予後良好・不良群への分類はできても、多くの症例で発生臓器そのものは同定できないままを決めることになる3。
  • — 表面マーカー・分化抗原で白血病・リンパ腫を分類。

腫瘍マーカー

単独では診断的でない — スクリーニング、治療反応のモニタリング、再発の検出に用いる:

💡 なぜ単独で診断できないのか: の多くは正常組織や良性疾患でも産生されるため特異度が低く、早期の小さな腫瘍では上昇しないことも多い(感度も低い)。一方、診断が確定した患者で治療前に高値だったマーカーは、の推移を追う指標として役に立つ。

分子診断

  • 転座による診断 — FISH/PCRが例えばBCR-ABL(CML)を検出。
  • 予後・ — 増幅:HER2/neu(乳癌。予後因子であると同時に、などの適応を決める効果予測因子)、N-MYC()。
  • — 治療後のBCR-ABLをで。
  • 遺伝性素因 — 生殖細胞系列の変異(例:BRCA1。)→ スクリーニング・予防。
  • — 数千遺伝子の同時発現プロファイリング(正常と腫瘍のcDNA)。
  • (NGS) — を多数同時に置き換え、多数の変異・融合遺伝子・異常を一度に検出する。適合治療を直接導くが、検体量・核酸品質・結果解釈が律速になる4。
  • (血中循環腫瘍・循環腫瘍細胞) — が困難・侵襲的な場合に血液から循環腫瘍(ctDNA)や循環腫瘍細胞(CTC)を検出する。・分子標的薬・化学療法の効果と耐性の予測、術後を含むの評価、生検しにくい腫瘍の分子検査に用いられ始めているが、早期腫瘍では血中に放出される腫瘍由来成分が少ないため検出感度に限界があり、高齢者では腫瘍とな由来の変異が結果を紛らわせることもある5。

💡 ポイント: 形態(生検、、FNA、スメア)+IHC(、ER、)+(白血病・リンパ腫)。マーカー(PSA、CEA、AFP)= モニタリング用で診断用ではない。分子:転座のFISH/PCR(BCR-ABL/CML)、増幅(HER2、N-MYC)、MRD、BRCA1生殖細胞系列、。

まとめ

  • 診断は形態学的手法(生検、、、スメア)から始まる。
  • (、ER、)とで由来・分化を同定する。
  • (、、)は単独では診断的でなく、スクリーニング・治療反応モニタリング・再発検出に用いる。
  • は転座の検出(/、例:BCR-ABL)、増幅による予後評価(/neu、N-MYC)、の追跡、(BRCA1)によるスクリーニングまで担う。

出典

  1. 1.Intraoperative frozen section analysis for the diagnosis of early stage ovarian cancer in suspicious pelvic masses(Cochrane Database of Systematic Reviews・2016)卵巣腫瘤を対象にした38研究・11,181例の系統的レビューで、浸潤癌のみを陽性とした場合の迅速凍結切片診断の平均感度は90.0%(95%信頼区間87.6〜92.0%)・平均特異度は99.5%(95%信頼区間99.2〜99.7%)であったこと、迅速凍結切片で境界悪性腫瘍と判定された症例のうち平均21%が最終的な永久標本診断で浸潤癌であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Assessment of Ki67 in Breast Cancer: Updated Recommendations From the International Ki67 in Breast Cancer Working Group(Journal of the National Cancer Institute(International Ki67 in Breast Cancer Working Group)・2021)Ki-67免疫染色は乳癌の増殖マーカーとして広く用いられるが分析的妥当性には限界があり、国際ワーキンググループのコンセンサスでは臨床的な有用性は解剖学的に予後良好なエストロゲン受容体陽性・HER2陰性乳癌で術後化学療法を要さない患者を見分ける予後推定に限られること(抄録「clinical utility is evident only for prognosis estimation … to identify those who do not need adjuvant chemotherapy」)、その集団ではKi-67 5%以下または30%以上を予後推定に用いられることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.A mini review on cancer of unknown primary site: A clinical puzzle for the oncologists(Journal of Advanced Research・2015)原発不明癌(CUP)は全悪性腫瘍の3〜5%を占め、早期に転移が播種し広範な検査後も原発部位が同定されない臨床症候群であること、組織病理学的・臨床的所見で予後良好群と予後不良群に分類され腺癌が最多の組織亜型であること、遺伝子発現マイクロアレイによる診断は感度が高いが予後・予測的価値は不確実であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Molecular profiling for precision cancer therapies(2020)分子プロファイリング(次世代シークエンスを含む)は診断だけでなくバイオマーカー適合治療を直接導き、検体品質と臨床的解釈が重要であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Liquid biopsy: current technology and clinical applications(Journal of Hematology and Oncology・2022)血中循環腫瘍DNA(ctDNA)・循環腫瘍細胞(CTC)を用いた液体生検が、免疫チェックポイント阻害薬・分子標的薬・化学療法への反応と耐性の予測、術後を含む予後・腫瘍量の評価、生検困難な腫瘍の分子検査、早期がん検出などに応用されつつある一方、早期腫瘍では血中に放出される腫瘍由来成分が少なく検出感度が制限されること、cfDNAの評価は特に高齢者で意義不明のクローン性造血に紛らわされうることを抄録で確認した。閲覧 2026-08-27