病理学

病理学 · B/24

腫瘍治療(外科・放射線・化学療法・分子標的・免疫療法)

Tumor therapy (surgical, radiation, chemo, targeted molecular and immunotherapy)

タグ
Score / スコアHigh-yield / ポイント
応用トピック
癌治療の原則肺癌治療の原則
薬剤
ベムラフェニブ

🧠 全体像:は腫瘍そのものを取り除く(手術・放射線)と、全身に及ぶ細胞を標的とする(化学療法・・・免疫療法)に大別され、の中でも化学療法は非特異的に損傷を起こす一方、・免疫療法は特定の分子・免疫機構を狙う点で作用機序が根本的に異なる。

概要

は局所(手術、放射線療法)と全身(化学療法、ホルモン、標的、免疫療法)に分けられ、ますます(「適切な薬を、適切な患者に、適切な用量で、適切な時に」)に導かれる。

局所療法

  • 手術 — 根治的と、の切除。病理医が断端を評価。
  • 放射線療法 — が損傷を起こす。術後または単独で、しばしば化学療法と併用。分割して照射するのは、正常組織の回復と腫瘍細胞の感受性回復の差を利用するためで、この原理は4R(Repair:の修復、:感受性の高い周期への移行、Reoxygenation:低酸素腫瘍細胞の再酸素化、Repopulation:再増殖)として説明される。これに内因性を加えた5Rへ拡張され、さらに照射が局所・全身()の抗応答を引き起こすことから、免疫応答の再活性化を「第6のR」とみなす提案もある1。

化学療法

損傷・細胞周期阻害を起こす細胞増殖抑制・細胞傷害薬:

分類 例
、
シスプラチン、
メトトレキサート、()、
抗腫瘍 、、
植物 ()、()

分子標的療法

⚠️ の多くで、治療中に耐性が生じる。 治療中のでは、標的キナーゼであるBCR-ABLの変異がの主要な機序であり、変異部位によって第2世代薬(、)への感受性が異なり、T315I変異は多くのキナーゼ阻害薬に抵抗性を示す2。/でもEGFR T790M変異による耐性が生じ、これに対応する第3世代薬()が開発された——耐性の獲得とそれに対応する次世代薬の開発という同じパターンがで繰り返し見られる。

💡 「腫瘍の遺伝子変異に基づいて臓器横断的に承認される」薬が登場している。 遺伝子陽性で中枢神経以外を原発とする進行固形腫瘍159例(成人・小児、多様な組織型)を対象にしたラロトレクチニブのでは、組織型を問わず評価可能例153例中121例(79%)がし、うち24例(16%)はだった3。同様に、MSI-H/dMMR固形腫瘍でもが米国では発生臓器を問わず承認されている(国・地域で適応の書き方が違う。詳細は次項)。これらは腫瘍の発生臓器ではなく()だけで薬剤の適応が決まるの代表例である。

ホルモン療法・免疫療法

  • — (ER陽性乳癌)、(・など。前立腺癌)。
  • 免疫療法 — (抗PD-1=・、抗PD-L1、抗CTLA-4=)、CAR-T細胞(T細胞。B細胞性腫瘍への抗CD19=など、への抗BCMA)、腫瘍ワクチン。はMSI-H(が高い)/dMMR(機能欠損)固形腫瘍・高固形腫瘍に対し発生臓器を問わず承認された最初期の薬剤である。米国は2017年、既治療のMSI-H/dMMR固形腫瘍に対し原発部位ではなく共通のに基づく初の承認としてを承認した4。⚠️ ただし欧州()の承認はこの形をとらず、MSI-H/dMMRの適応は大腸癌・・胃癌・・とごとに列挙されている5。「」は国・地域の承認に依存する言い方である。大腸癌以外の既治療MSI-H/dMMR固形腫瘍(・胃癌・など)を組み入れたKEYNOTE-158試験の更新解析では、有効性解析対象321例で30.8%、中央値47.5か月であった6。

⚠️ の効き方は腫瘍によって全く異なる。 効果は腫瘍の・機構に左右され、しやすい腫瘍種とほとんどしない腫瘍種の差が大きい(とを参照)。(irAE)は化学療法の副作用と質的に異なり、解除された免疫が正常臓器を攻撃することで生じ、治療中止後にも発症しうるで、心筋炎など稀だが致死的な病型を含む7。

⚠️ には(CRS)と()という特有の急性期合併症がある。 CRSはIL-6を中心とするで、CD19標的CAR-T試験では頻度が最大100%と報告されている。2018年の総説は、では発熱がCRS発症に平均3日先行するとして、発熱をCRSを疑う最初の徴候に位置づけた8。その後の米国移植学会(ASTCT)2019年コンセンサスは、38℃以上の発熱をCRSの前提条件とし(やを受けた後の重症度評価には発熱を要しない)、CRSの重症度を低血圧と低酸素の程度で、ICANSの重症度を(・呼称・指示遵守・・注意の10点)・・けいれん・運動所見・頭蓋内圧亢進/脳浮腫のうち最も重い領域で、それぞれ別々にする。はCRSの経過中か、より多くはCRSに続いて生じ、CRSに先行することはまれである9。治療では抗抗体のが用いられる。は現在B細胞性の白血病・リンパ腫・などに承認されている。

💡 ポイント: 局所(手術、放射線)と全身。化学療法の分類:、プラチナ、、、植物。標的:-mab = 抗体(リツキシマブ/CD20、/、/EGFR)、-nib = キナーゼ阻害薬(/BCR-ABL、/EGFR)。免疫:+CAR-T(CD19)。

まとめ

  • (手術、放射線療法)と(化学療法、、、免疫療法)に大別される。
  • 化学療法は、、、抗腫瘍、植物に分類され、いずれも損傷・細胞周期阻害を起こす。
  • は「-mab」=モノクローナル抗体(リツキシマブ/CD20、/など)と「-nib」=小分子キナーゼ阻害薬(/BCR-ABL、/EGFRなど)に分かれる。
  • 免疫療法は(抗PD-1/PD-L1、抗CTLA-4)と(抗CD19など)が中心。にはCRSとという特有の急性期合併症がある。

出典

  1. 1.The 6th R of Radiobiology: Reactivation of Anti-Tumor Immune Response(2019)放射線治療の分割照射の効果は歴史的に4R、次いで5R(Repair・Redistribution・Reoxygenation・Repopulation と、より最近加わった内因性放射線感受性 intrinsic Radiosensitivity)で説明されてきたこと、本総説は照射による抗腫瘍免疫応答の再活性化を「第6のR」とみなせると主張していることを抄録で確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Bcr-Abl kinase domain mutations, drug resistance, and the road to a cure for chronic myeloid leukemia(Blood(O'Hare T, Eide CA, Deininger MW)・2007)BCR-ABLキナーゼドメイン変異がCML患者における獲得イマチニブ耐性の最も多い機序であり、変異部位によって第2世代Ablキナーゼ阻害薬(ダサチニブ、ニロチニブ)への感受性が異なること、T315I変異が複数のキナーゼ阻害薬に抵抗性を示す難治性の変異であることを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Larotrectinib in patients with TRK fusion-positive solid tumours: a pooled analysis of three phase 1/2 clinical trials(The Lancet Oncology・2020)TRK融合遺伝子陽性で中枢神経以外を原発とする局所進行・転移性固形腫瘍159例(生後1か月以上の成人・小児、多様な組織型、標準治療があれば既治療)を対象にした3試験の統合解析で、評価可能例153例中121例(79%、うち完全奏効24例)が奏効したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.FDA Approval Summary: Pembrolizumab for the Treatment of Microsatellite Instability-High Solid Tumors(Clinical Cancer Research・2019)FDAが2017年5月23日、既治療で進行した切除不能・転移性のMSI-H/dMMR固形腫瘍(成人・小児)に対しペムブロリズマブを承認し、これが原発部位ではなく共通のバイオマーカーに基づく初のFDAの癌治療承認であることを抄録で確認した。閲覧 2026-09-23
  5. 5.Keytruda : EPAR - Product information(European Medicines Agency(EMA)・2026)EUの製品情報(EMAのページで2026年7月1日更新)の4.1で、MSI-H/dMMRの適応が大腸癌と、大腸癌以外では子宮体癌・胃癌・小腸癌・胆道癌として癌腫ごとに列挙されており、発生臓器を問わない形の適応ではないことを確認した。閲覧 2026-09-23
  6. 6.Pembrolizumab in microsatellite instability high or mismatch repair deficient cancers: updated analysis from the phase II KEYNOTE-158 study(Annals of Oncology(Maio M, Ascierto PA, Manzyuk L, et al.)・2022)既治療の進行MSI-H/dMMR固形腫瘍(大腸癌以外。多い順に子宮体癌22.5%・胃癌14.5%・小腸癌7.4%)を組み入れたKEYNOTE-158コホートKの更新解析(登録351例、有効性解析対象321例)で、ペムブロリズマブの奏効率が30.8%(95%信頼区間25.8〜36.2%)、奏効期間中央値47.5か月であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.Immune-related adverse events of checkpoint inhibitors(Nature Reviews Disease Primers・2020)irAEが治療中止後を含め多臓器に発症し、心筋炎・神経筋重複症候群など稀でも致死的な病型があることを確認した。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Cytokine release syndrome(Journal for ImmunoTherapy of Cancer・2018)サイトカイン放出症候群はIL-6が中心的な役割を持つ全身性炎症反応であり、CD19標的CAR-T細胞試験では頻度が最大100%と報告されていること(本文「reported in frequencies of up to 100% in CD19-targeted CAR T cell trials」)、CAR-T細胞療法では発熱がCRS発症に少なくとも1日、平均3日先行するとして発熱をCRSを疑う徴候に位置づけていること(「fever precedes the onset of CRS by at least 1 day and on average occurs 3 days prior to CRS」)を全文(PMC6003181)で確認した。ASTCT 2019のコンセンサスより前の総説である。閲覧 2026-08-27
  9. 9.ASBMT Consensus Grading for Cytokine Release Syndrome and Neurological Toxicity Associated with Immune Effector Cells(American Society for Transplantation and Cellular Therapy (ASTCT) / Biology of Blood and Marrow Transplantation・2019)ASTCTコンセンサスはCRSとICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)を別個の病態として、CRSは発熱(38℃以上、他の原因によらないもの)を前提に低血圧・低酸素の重症度で、ICANSはICEスコア(見当識・呼称・指示遵守・書字・注意の合計10点)と意識レベル・けいれん・運動所見・頭蓋内圧亢進/脳浮腫の5領域のうち最も重い評価でそれぞれグレード分類すること、発熱は他の原因によらない38℃以上と定義されるが、解熱薬やトシリズマブ・ステロイドなどの抗サイトカイン療法を受けた後はその後のCRSの重症度評価に発熱を要しないこと、神経症状はCRSの経過中か、より多くはCRSの後に生じ、CRSに先行することはまれであること(「Neurologic symptoms may occur during or more commonly following CRS symptoms (but rarely before CRS)」)を全文(PMC12180426、著者最終稿)で確認した。閲覧 2026-08-27