Urology

Urology · U-08

泌尿器科救急疾患

Urological emergency

前提:病態
急性腎不全の原因と全身的影響陰茎・陰嚢・精巣上体の疾患
前提:正常
男性生殖:付属腺と陰茎
疾患
Fournier壊疽精巣捻転・卵巣捻転包茎・傍包茎
症状
陰茎持続勃起症血尿肉眼的血尿無尿膀胱膨満
画像所見
渦巻き徴候
スコア
TWISTスコア

🧠 全体像:泌尿器科救急は「尿が出せない/出ない(乏尿・)」「血が出る(血尿・)」「組織が壊死へ向かう)」の3系統で捉える。共通する原則は、を伴う病態()はすべて「時間との勝負」であり、確定診断を待って治療を遅らせてはならないという点である。

乏尿・無尿・急性腎不全

定義

用語 定義
乏尿 (<500mL/24h)
尿量<100mL/24h
の急激な低下により尿素・クレアチニン・カリウム・リン酸・硫酸塩が貯留する。尿量は通常<500mL/24h

病因

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute kidney injury'>急性腎不全</span>の原因"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prerenal'>腎前性</span>"]
  A --> C["腎性"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='postrenal'>腎後性</span>"]
  B --> B1["脱水、出血"]
  B --> B2["敗血症、心拍出量低下"]
  C --> C1["糸球体腎炎、間質性腎炎"]
  C --> C2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemolytic uremic syndrome, HUS'>溶血性尿毒症症候群</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute tubular necrosis, ATN'>急性尿細管壊死</span>"]
  D --> D1["両側尿管閉塞"]
  D --> D2["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solitary kidney'>単腎</span>患者の結石"]
  D --> D3["出口部閉塞"]

症状

  • 全身状態不良。
  • 排尿不能、尿意の消失。
  • 鈍い腎部痛。
  • 嘔吐。
  • 閉塞→急性、発熱、敗血症

診断

  • US:膀胱の虚脱、腎盂の拡張(を示唆)。
  • 血液検査(クレアチニン、Na、K、P、尿素):腎不全の重症度評価。

治療

  • (目安として>7mmol/L、または心電図変化を伴う場合)→不整脈のリスクがあるため緊急性が高い。
  • 閉塞→または
  • 腎盂腎炎合併時→

⚠️ 「K>7mmol/Lで透析」は目安の一つに過ぎない。実臨床では心電図変化の有無・薬物治療(カルシウム製剤、インスリン+ブドウ糖、など)への反応性を含めて緊急透析の適応を総合的に判断し、数値だけで機械的に決めない。

急性尿閉

病因

  • (BPH、、前立腺腫瘍、結石)。
  • UTI、妊娠、)。

症状

  • 膀胱が充満していても排尿できない。
  • 強い尿意。
  • 膀胱部へ放散する強い痛。
  • 腹部膨満。

診断

  • 充満した膀胱を触知できる。
  • US:の確認。
  • X線、IV urography、CT:閉塞原因の精査。
  • 発熱・全身状態不良があれば血液検査が必須。

治療

  • 膀胱ドレナージ:
    • カテーテル()。
    • カテーテルが禁忌の場合(前立腺炎、尿道外傷・狭窄)。

血尿

項目 内容
病因 、膀胱炎、BPH、前立腺腫瘍、、尿管・腎盂腫瘍
症状 血液がを形成すると排尿不能・尿閉を来しうる
診断 尿検査で出血の程度とを評価。で外尿道口の、前立腺の触診。USで腫瘍・結石・膀胱内/結石を評価。で膀胱内病変を可視化。上部尿路が疑われる場合は(造影CT尿路撮影)を行う。は現在ほぼ置き換えられている
治療 大口径カテーテルでを排出。止血。には抗菌薬。上部尿路出血には検査。症例により

腎疝痛

  • 腎から膀胱への尿流閉塞による、腎部の・急性の疼痛。
  • 病因:腎結石・腫瘍、尿管外圧迫。
  • 症状:腎部の強い痛みが男性は精巣部、女性はへ放散。、嘔吐、発熱、イレウス。
  • 診断:病歴・。US(の拡張)、X線、IV urography、CT、血液検査(CBC、電解質、CRP)、血液・尿培養。
  • 治療:
    • 発熱なし:、輸液。
    • 発熱あり:尿路の減圧(尿管または・ドレナージ)+

精巣捻転

  • 小児・若年成人に最多。精索の捻転により精巣への血流が絞扼される、泌尿器科で最も緊急性の高い疾患の一つ

病因

症状

  • 突然の激しい疼痛だが、発熱は伴わない
  • 陰嚢皮膚の腫脹・発赤。
  • 嘔吐。

診断

  • :腫脹・圧痛を伴い挙に位置する精巣。
  • :現行ガイドラインで推奨される第一選択の画像検査。動脈血流の途絶や精索のを評価する。血流が残存していても捻転を否定できず、検査のために手術を遅らせてはならない。
  • 血液検査:
  • :灌注の有無を評価できるが施行に時間がかかり、緊急対応にはそぐわない。現在ではが広く利用可能になったため、は限られた施設・非典型例に限られる二次的な検査であり、「最も確定的な検査」として第一に選択されるものではない。

治療

  • 手術前にを試みることがある。
    • 成功した場合:数日以内に外科的固定術を行う。
    • 不成功の場合:直ちに外科的整復術
  • 精巣が壊死していれば摘除する。

⚠️ 出典は「が不成功の場合は4〜5時間以内の緊急外科的整復」としているが、これは標準的教育で広く用いられる「発症から6時間以内ならが最も高い(90%以上)、12時間を超えると温存率が有意に低下し、24時間を超えるとほぼ温存不可能(10%未満)」というの原則をやや保守的に表現したものと解釈できる。数値の細部(4〜5時間か6時間か)にこだわるより、を疑ったら、確定診断(画像検査)を待たずに直ちに泌尿器科へコンサルトし、可能な限り最速で整復を行う」という原則を優先して覚えること。

傍包茎

  • された包皮が亀頭の後方に絞扼され、正常位置に戻せなくなった状態。
項目 内容
病因 既存の(先端から包皮をできない状態)
病態生理 輪による→浮腫・亀頭腫大。動脈閉塞・亀頭壊死に至ることもある
症状 包皮の腫脹、強い疼痛、亀頭が腫脹し紫色・虚血様の色調を呈することがある
診断
治療 を試みる。不成功ならの外科的切開。炎症消退後にを行う

持続勃起症

  • 性的欲求・刺激と4時間を超えて持続する勃起(現行のAUA/SMSNAガイドラインの定義。4時間未満で消退するものは「」として区別される)。

病因

  • に対する内注射療法が最多。
  • 鎌状赤血球症白血病、骨盤腫瘍・感染、陰茎外傷、

病態生理と分類

機序 緊急性
会陰部外傷により陰茎が損傷し、陰茎血流のが破綻して生じる。無痛性の勃起 緊急疾患ではない
静脈還流の生理的閉塞により海綿体内に酸素化不良の血液が貯留する。疼痛を伴う硬直した勃起、海綿体血流が途絶

症状・診断

  • 疼痛を伴い、性的欲求はない。
  • 陰茎は強く勃起しているが、亀頭・していない(触診でのみがし圧痛を伴う)。
  • 血液ガス分析(高O₂・正常CO₂)と(低O₂・高CO₂)を鑑別する。

治療

  • 4時間を超える(虚血性)は直ちに泌尿器科的介入を要する(現行のAUA/SMSNAガイドラインは4時間超をとしており、6時間を待たない)。
  • 海綿体内のうっ滞した血液を穿刺・排出。
  • など)を海綿体内洗浄で追加投与する。

Fournier壊疽

項目 内容
好発 50歳以降で基礎疾患(糖尿病、免疫抑制状態など)を有する例に多い
病因 尿路・肛門周囲・腹部・後腹膜の感染の進展、または局所外傷に続発する。と嫌気性菌のによる
症状 陰茎・陰嚢・会陰部のの激痛と、急速に進行する紅斑・壊死
診断 基礎疾患に注意した詳細な。紅斑・の有無を評価する
治療 +培養、即時の(創は開放のまま管理し、1日2〜3回のガーゼ交換を行う)

⚠️ 出典は抗菌薬として「アンピシリン++メトロニダゾール」の3剤併用を挙げているが、これは古典的なレジメンであり、現行ののマネジメントではが判明するまでの広域エンピリック治療(例:など+MRSAカバーとしてのバンコマイシン/リネゾリド、毒素産生抑制目的でのクリンダマイシン併用)が一般的であり、を伴いやすい敗血症患者への投与は腎毒性の観点から慎重を要する。抗菌薬の具体的選択は施設のプロトコルと感受性パターンに従うべきであり、最重要点は「診断がついたら抗菌薬より先に、あるいは同時に、即時のを遅らせないこと」である。

まとめ

  • 泌尿器科救急は「排尿できない系(乏尿・)」「出血系(血尿、)」「系()」に整理すると全体像をしやすい。
  • はいずれも・壊死を来す真の緊急疾患であり、画像・検査結果を待たず速やかな外科的介入が予後を左右する。
  • は発症から時間が経つほどが低下するという原則を最優先に覚え、具体的な「◯時間」という数値の細部よりも「疑ったら即座に外科的整復」を徹底する。
  • の抗菌薬は古典的な3剤併用より現行の広域エンピリック治療が優先されるが、いずれにせよ即時のが治療の中心である。