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Drug Atlas · A21 Antiepileptics / 抗てんかん薬

ホスフェニトイン

fosphenytoin

分類
Antiepileptics / 抗てんかん薬
商品名(日本)
ホストイン
商品名(EU)
Cerebyx
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
A21: Antiepileptics. Adjuvant analgesics07: Status epilepticus, ABCDE assessment and anticonvulsants12: Epilepsy
承認適応
てんかん外傷性脳損傷
禁忌疾患
徐脈性不整脈(洞不全症候群・房室ブロック)
副作用
低血圧眼振めまい掻痒知覚異常傾眠
監視検査値
アルブミン
相互作用
タダラフィルチカグレロルバルプロ酸マシテンタンリルピビリンルラシドン

🧠 全体像:はフェニトインにリン酸エステルをつけて水に溶けるようにしたで、体内で半減期約15分でフェニトインへ戻って効く。薬としての作用はフェニトインそのものなので、押さえるのは「何が変わったか」——水溶性で希釈して静注でき(米国では筋注も可能)、その代わりに投与量の単位(フェニトイン換算量)との上限(心血管リスク)を間違えると危険という点である。でベンゾジアゼピンが効かないときのの一つとして使われる。

薬効群の中での位置づけ

薬 位置づけ 特徴
静注用のフェニトイン() 水溶性。希釈でき、筋注も可能(米国)。変換が終わるまで血中フェニトイン濃度は評価できない
フェニトイン(静注製剤) 本体 を100〜150 mg PE/分で入れたときの遊離フェニトイン濃度の推移は、フェニトインを50 mg/分で入れたときに近い1
・バルプロ酸 同じ第二選択の仲間 を含む3剤の優劣は示されていない

⭐ ベンゾジアゼピン不応の痙攣性384例で3剤を比べたESETT試験では、60分時点の発作停止と意識改善は47%、45%、バルプロ酸46%で、優劣が示せないまま中止された。低血圧と挿管は群で数値上多かったが有意差はない2。米国てんかん学会の指針も第二治療期の3剤に優劣の根拠はないとしている3。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fosphenytoin'>ホスフェニトイン</span>ナトリウムを静注"] --> B["血中のホスファターゼなどでリン酸エステルが加水分解<br>(変換半減期は約15分)"]
    B --> C["フェニトイン+リン酸+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formaldehyde'>ホルムアルデヒド</span>(のちに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='formic acid'>ギ酸</span>)"]
    C --> D["フェニトインが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='voltage-gated sodium channel'>電位依存性Naチャネル</span>を遮断<br>(持続する高頻度発火を抑える)"]
    D --> E["発作の持続・波及を抑制"]

抗てんかん作用はすべて変換後のフェニトインによる1。変換が終わるまでに時間がかかるため、を入れ終えた直後が薬効のピークではない。ベンゾジアゼピンの静注を併用して発作を止めつつ進めるのが通常である1。

薬物動態

項目 内容
変換 静注後、半減期約15分でフェニトインへ完全に変換される1。日本の電子添文は「2時間以内にほぼ完全に変換」と記載する4
蛋白結合 は95〜99%がアルブミンに結合し、フェニトインを結合部位から追い出す。変換が終わるまでの約0.5〜1時間は、フェニトインのが通常の約12%から最大約30%に上がる1
筋注 完全に吸収され、フェニトインの血中濃度は約3時間でピークに達する1
代謝・排泄 生じたフェニトインは主にCYP2C9、一部CYP2C19で代謝され、代謝は。そのものは尿中に排泄されない1
血中濃度の測定 静注後約2時間、筋注後約4時間までは測らない。はで過大評価しうるため、早く測るなら法とEDTA採血を使う。目標は総フェニトイン10〜20 μg/mL(非結合型1〜2 μg/mL)1

💡 ・肝腎障害では「総濃度」を信用しない。 が上がるため、同じ総濃度でも効き過ぎ・中毒になりうる。このような患者では非結合型濃度で監視する1。

適応

日本(ホストイン静注)
の重積状態の治療
脳外科手術または意識障害(等)時のの発現抑制 手術中に起こる発作の予防と治療
経口フェニトイン投与中のてんかん患者の一時的 ができないときの短期の代替(同じ)

対象は日本が成人と2歳以上の小児で、2歳未満での有効性・安全性のはない4。米国は出生から17歳までの小児用量も示す1。

用法・用量

投与量の「単位」が国で違うのが最大の落とし穴である。米国は(mg PE)で表記し、1.5 mgのナトリウムが1 mg PEに当たる1。日本はナトリウムそのものの重量で表記し、分子量はフェニトインナトリウムの約1.5倍である4。

項目 日本(としての重量) 米国(mg PE)
の初回 22.5 mg/kg 成人15〜20 mg PE/kg
(初回) 3 mg/kg/分または150 mg/分の低い方 成人150 mg PE/分以下(目安100〜150 mg PE/分)。小児は2 mg PE/kg/分または150 mg PE/分の遅い方
維持 5〜7.5 mg/kg/日(1 mg/kg/分または75 mg/分の低い方を超えない速度)。初回から12〜24時間あける 成人4〜6 mg PE/kg/日(分割)

分子量比(約1.5倍)で換算すると、日本の22.5 mg/kgは約15 mg PE/kg、150 mg/分は約100 mg PE/分、維持の5〜7.5 mg/kg/日は約3.3〜5 mg PE/kg/日に当たる。日本の初回量は、米国の添付文書の範囲(15〜20 mg PE/kg)の下限に当たり、ESETT試験で使われた20 mg PE/kgやAESの指針の20 mg PE/kg(最大1,500 mg PE)より少ない23。国外の「mg PE」の用量を日本の「mg」にそのまま移してはいけない。

  • 日本の電子添文は、本剤で発作が止まらないときは追加投与せず他のを考える、が可能になれば速やかに経口フェニトインへ切り替える、国内で3日を超えた連用の経験はない、と記載する4。
  • 使用直前にまたは5%ブドウ糖液で希釈する。米国では1.5〜25 mg PE/mLに希釈し、投与中と投与後の10〜20分は心電図・血圧・呼吸を連続監視する1。
  • 米国では筋注の負荷もあるが、では治療濃度への到達が遅れるため通常は用いない1。

禁忌・注意

禁忌の区分 日本の電子添文4 米国の添付文書1
過敏症 成分・ヒダントイン系化合物に過敏症 ・フェニトイン・他のヒダントイン系に過敏症
心伝導 、高度の刺激 、、2度・3度房室ブロック、Adams-Stokes症候群
肝 (禁忌欄に記載なし) フェニトインまたは本剤による急性肝毒性の既往
併用 (の適応)、、、、など多数 デラビルジン
  • ⚠️ 枠付き(米国):静注が速いと重度の低血圧と不整脈(徐脈・房室ブロック・QT延長・・、心停止・死亡)を起こす。重症患者・高齢者・低血圧や重い心筋障害のある患者で多いが、推奨速度以下でも心事象の報告がある1。日本でも急速静注で心停止・一過性の血圧低下・呼吸抑制が起こりうるとして、衰弱の著しい患者・高齢者・心疾患や肝腎障害のある患者ではより緩徐に投与する4。
  • ⚠️ の事故:バイアルの濃度(50 mg PE/mL)を総量と取り違え、2倍・10倍の過量を投与して死亡した例がある。処方は必ず投与量(mg PE)で書き、総量が見える表示にする1。
  • :発疹が出たら原則中止する。アジア系ではHLA-B1502やCYP2C93がの危険因子とされ、保有者では他剤を考える1。日本の電子添文は・・を重大な副作用に挙げる4。
  • 妊娠:フェニトインは・などの危険を上げ、新生児にが出うる(母体と新生児へのビタミンK投与で予防できる)1。日本では治療上の有益性が危険性を上回るときだけ投与し、授乳は避けることが望ましいとされる4。
  • 相互作用:フェニトインのCYP3A誘導により、の薬剤(上表)の血中濃度が下がる。バルプロ酸との併用ではに注意する14。

副作用

頻度 内容
高頻度 掻痒、眼振、めまい、傾眠、失調(米国の成人で10%以上)1。日本の国内試験(26例)では低血圧19.2%、眼振とめまい各15.4%4
に依存 150 mg PE/分で20 mg PE/kgを入れると、を中心とする灼熱感・掻痒・がよく生じる。数分で始まり、投与後約10分で多くが治まる。速度を落とすか一時中断すると軽くなる1
局所 に入れたあと、注射部位より末梢の浮腫・・疼痛()が数日遅れて出ることがある1
重篤 心停止・、、、肝障害、(・)、、など4

💡 掻痒・は「アレルギーではない」ことが多い。 に比例し、アレルギーを示す所見を伴わず、数分で消える。まず速度を落とす1。

まとめ

  • はフェニトインの水溶性で、効果は変換後のフェニトインによる。
  • でベンゾジアゼピンが無効なとき、・バルプロ酸と並ぶ。ESETT試験では3剤の発作停止率は約45〜47%で同程度だった。
  • 用量の単位が国で違う。米国はフェニトイン換算量(mg PE)、日本はそのものの重量で、1.5 mgが1 mg PEに当たる。日本の初回量22.5 mg/kgは約15 mg PE/kgで、米国の範囲の下限に当たる。
  • 枠付きは静注速度:低血圧と不整脈を避けるため速度の上限を守り、心電図・血圧を連続監視する。
  • 禁忌は・高度の、ヒダントイン過敏症、多数の併用薬。国で禁忌欄が異なる。
  • 血中フェニトイン濃度は変換が終わってから、では非結合型で評価する。

出典

  1. 1.CEREBYX (fosphenytoin sodium) injection, for intravenous or intramuscular use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Pfizer、2022年4月改訂版)・2022)米国添付文書(2022年4月改訂)の全文を取得して確認した。用量・濃度・投与速度は常にフェニトインナトリウム換算量(PE)で表記し、1.5 mgのホスフェニトインナトリウムが1 mg PEに相当すること、バイアル濃度50 mg PE/mLを総量と取り違えた2倍・10倍の過量投与(致死例を含む)があったこと、枠付き警告として静注速度は成人で150 mg PE/分、小児で2 mg PE/kg/分または150 mg PE/分の遅い方を超えないこと(重度の低血圧と不整脈のため)、てんかん重積状態の負荷量は成人15〜20 mg PE/kgを100〜150 mg PE/分、筋注は通常用いないこと、禁忌はヒダントイン系を含む過敏症・洞性徐脈・洞房ブロック・2度および3度房室ブロック・Adams-Stokes症候群・フェニトインまたは本剤による急性肝毒性の既往・デラビルジン併用であること、変換半減期が約15分で変換が済むまでフェニトイン濃度を測らないこと(免疫測定法は過大評価しうる)、ホスフェニトインが蛋白結合部位からフェニトインを追い出して非結合型分率が一時的に最大約30%に上がること、成人の高頻度の副作用が掻痒・眼振・めまい・傾眠・失調であること、150 mg PE/分で20 mg PE/kgを入れると鼠径部を中心とする灼熱感・掻痒・知覚異常がよく生じること、パープルグローブ症候群、HLA-B*1502とCYP2C9*3に関する皮膚重症薬疹の注意、バルプロ酸併用での高アンモニア血症を確認した。閲覧 2026-10-29
  2. 2.Randomized Trial of Three Anticonvulsant Medications for Status Epilepticus(The New England Journal of Medicine・2019)PMC全文(PMC7098487)で確認した。ベンゾジアゼピン不応の痙攣性てんかん重積状態の小児・成人384例で、レベチラセタム60 mg/kg(最大4500 mg)・ホスフェニトイン20 mgPE/kg・バルプロ酸40 mg/kgを比べ、60分以内の発作停止と意識改善はそれぞれ47%・45%・46%で、優劣を見いだせないとして中間解析で中止された。低血圧と挿管はホスフェニトイン群、死亡はレベチラセタム群で数値上多かったが有意差はなかった。閲覧 2026-09-29
  3. 3.Evidence-Based Guideline: Treatment of Convulsive Status Epilepticus in Children and Adults: Report of the Guideline Committee of the American Epilepsy Society(American Epilepsy Society・2016)本文で、治療を安定化期(0〜5分)・初期治療期(5分から開始し20分までに反応を判定)・第二治療期(20分から開始し40分までに判定)・第三治療期(40分以降)に分けること、初期治療は筋注ミダゾラム・静注ロラゼパム・静注ジアゼパムのいずれかを第一選択とし、十分量を1回で投与して少量に分割しないこと、再投与できるのは静注ロラゼパムと静注ジアゼパムを全量で1回だけであること、病院前では直腸ジアゼパム・鼻腔内ミダゾラム・頬粘膜ミダゾラムが妥当な代替であること、静注フェノバルビタールは有効だが投与速度が遅いため代替の位置づけであること、第二治療の選択肢(ホスフェニトイン・バルプロ酸・レベチラセタム)の間に優劣の明確な根拠がないこと、第二・第三治療は初期治療より効果が落ちること、第三治療期には第二選択薬の反復か脳波監視下の麻酔量のチオペンタール・ミダゾラム・ペントバルビタール・プロポフォールを考慮することを確認した。2026-09-26にPMC(PMC4749120)の治療アルゴリズム図(Figure 1)で、成人の血糖60 mg/dL未満ではチアミン100 mg静注ののち50%ブドウ糖50 mL静注、筋注ミダゾラム40 kg超10 mg・13〜40 kg 5 mg(単回)、静注ロラゼパム0.1 mg/kg(最大4 mg、1回反復可)、静注ジアゼパム0.15〜0.2 mg/kg(最大10 mg、1回反復可)、代替の静注フェノバルビタール15 mg/kg・直腸ジアゼパム0.2〜0.5 mg/kg(最大20 mg)、第二治療期のホスフェニトイン20 mg PE/kg(最大1500 mg PE)・バルプロ酸40 mg/kg(最大3000 mg)・レベチラセタム60 mg/kg(最大4500 mg)をいずれも単回投与とすることを確認した。閲覧 2026-09-26
  4. 4.ホストイン静注750mg 電子添文(独立行政法人医薬品医療機器総合機構(ノーベルファーマ、2026年6月改訂・第5版)・2026)日本の電子添文(2026年6月改訂・第5版)の本文で確認した。効能は、てんかん重積状態、脳外科手術または意識障害(頭部外傷等)時のてんかん発作の発現抑制、経口フェニトイン投与中のてんかん患者における一時的な代替療法であること、対象は成人と2歳以上の小児であること、用量はホスフェニトインナトリウムそのものの重量(mg)で表記され、てんかん重積状態の初回は22.5 mg/kgを3 mg/kg/分または150 mg/分の低い方を超えない速度で、維持は5〜7.5 mg/kg/日を1 mg/kg/分または75 mg/分の低い方を超えない速度で投与し、維持投与は初回から12〜24時間あけること、分子量がフェニトインナトリウムの約1.5倍であること、国内では3日を超えて連用した経験がないこと、禁忌が成分またはヒダントイン系化合物への過敏症・洞性徐脈・高度の刺激伝導障害・タダラフィル(肺高血圧症の適応)やマシテンタン、チカグレロル、ルラシドン、リルピビリンなど多数の併用薬であること、投与後2時間以内にほぼ完全にフェニトインへ変換されること、国内臨床試験(てんかん重積状態26例)で血圧低下19.2%・眼振と浮動性めまい各15.4%が主な副作用であったことを確認した。閲覧 2026-10-29