Internal Medicine

Internal Medicine · E-06

糖質コルチコイド欠乏と過剰

Glucocorticoid deficiency and overproduction

前提:病態
急性・慢性副腎皮質機能低下症;先天性副腎過形成ミネラルコルチコイド・副腎皮質拮抗薬及びステロイド合成阻害薬
前提:正常
副腎皮質におけるステロイドホルモンの合成副腎皮質の機能
疾患
クッシング症候群原発性副腎不全
症状
筋力低下食欲不振
検査値
17-ヒドロキシプロゲステロン24時間尿中遊離コルチゾールACTH刺激試験コルチゾールデスモプレシン試験下錐体静脈洞サンプリング深夜唾液コルチゾール低用量デキサメタゾン抑制試験

🧠 全体像:コルチゾール過剰では、まずを除外して過剰を生化学的に確認し、その後ACTHで原因を分ける。欠乏では原発性と中枢性を分けるが、を疑った瞬間は鑑別より投与を優先する。

クッシング症候群

過剰による臨床病態で、最も多い原因は医療用グルココルチコイドによる医原性である。は、そのうち下垂体ACTH産生腺腫によるものだけを指す。

原因

ACTH 原因 代表例
低値:ACTH非依存性 副腎からのコルチゾール産生 、癌、両側性結節性過形成
高値/不適切に正常:ACTH依存性 ACTH過剰 下垂体、異所性ACTH/CRH産生
抑制 経口、注射、吸入、外用、関節内など

慢性ストレス、重いうつ病、、重症肥満などでは生理的状態が検査異常を生じ、「」となることがある。発熱や手術を内因性の原因とはしない。

臨床像

特異度の高い所見は、幅広い、原因不明のである。

  • ・頸背部脂肪沈着、四肢
  • 、創傷治癒遅延、感染増加
  • 高血圧、低K血症、糖尿病、脂質異常、上昇
  • 症、、筋力低下
  • 抑うつ、認知・睡眠障害、精神病
  • ACTH依存性では色素沈着を伴い得る

診断

一般的な肥満、高血圧、糖尿病だけで無差別に検査せず、年齢に不釣り合いな症・高血圧、進行する複数の特徴、などで疑う。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cushing syndrome'>クッシング症候群</span>を疑う"] --> B["全経路の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exogenous steroid'>外因性ステロイド</span>を確認"]
    B --> C["適切な初期検査を反復"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='late-night salivary cortisol'>深夜唾液コルチゾール</span>2回"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='24-hour urinary free cortisol'>24時間尿中遊離コルチゾール</span>2回"]
    C --> F["1 mg一晩DST"]
    D --> G["過剰を生化学的に確定"]
    E --> G
    F --> G
    G --> H["ACTHを測定"]
    H --> I["ACTH低値:副腎画像"]
    H --> J["ACTH依存性:下垂体/異所性を鑑別"]

(urinary free cortisol:UFC)、1 mg一晩から、患者に適した検査を通常複数回用いる。シフト勤務、睡眠、腎機能、、CYP3A4相互作用、採尿不備などの偽陽性・偽陰性要因を確認する。

ランダムコルチゾール、ACTH、画像、高用量DSTを「過剰の初期確認」に使わない。ACTH依存性でが陰性・、または所見が矛盾する場合は、が下垂体性と異所性の鑑別に重要である。高用量DSTやだけで原因を確定しない。

治療

第一選択は可能であれば原因腫瘍の切除である。

原因 第一選択・主な治療
選択的腺腫摘出
良性片側副腎病変 片側副
異所性ACTH腫瘍 切除、適切な腫瘍治療
・残存・再発 、下垂体標的薬、受容体拮抗薬、放射線、選択例で両側副

薬物には、重症例の拮抗薬などがある。薬ごとに肝障害、QT延長、低K血症、副腎不全、アンドロゲン作用などを監視する。

は原疾患とリスクを見ながらし、急に中止しない。感染、血栓、糖尿病、高血圧、低K血症、症、精神症状を同時に治療する。

副腎不全

副腎不全はコルチゾール分泌不足で、原発性、中枢性、離脱に分ける。は自己免疫などによる原発性を指し、副腎不全全体の同義語ではない。

項目
障害部位 副腎皮質 下垂体ACTHまたは視床下部CRH
ACTH 高値 低値/不適切に正常
アルドステロン 低下し得る 通常保たれる
K 高値になり得る 通常正常
色素沈着 あり得る 通常なし
主な原因 自己免疫、感染・浸潤、出血、転移、両側摘除、遺伝性 下垂体疾患、手術・放射線、抑制

症状

  • 感、筋力低下、体重減少、
  • 悪心、嘔吐、腹痛、下痢
  • 低血圧、起立性症状、低Na血症、低血糖
  • 原発性では、高K血症、口腔・手掌線・瘢痕などの色素沈着
  • 女性の原発性では副腎アンドロゲン低下による減少を伴い得る

診断

状態が安定していれば、8~9時コルチゾールとACTHを同時採血し、標準250 µg で確認する。は測定法に依存し、新しい測定法やでは、旧来の一律18 µg/dLではなく14~15 µg/dL前後がとなり得るため、施設の測定法別基準で解釈する1。原発性ではレニン・アルドステロン、自己抗体、原因に応じた副腎画像・感染・遺伝評価を追加する。

⚠️ 重症症候やでは、可能ならコルチゾール・ACTHを採血しても、結果を待たず治療する。はコルチゾール測定への干渉が少ないが、危機では第一選択のを遅らせない。

維持治療

原発性ではを生理的に近い分割で補充し、アルドステロン欠乏にはを用いる。中枢性ではは通常不要である。

患者には次を教育する。

  • 発熱、嘔吐、手術などの重症度に応じた
  • 嘔吐で内服不能なら筋注を使用し救急受診
  • ステロイド緊急カード・医療識別票の携帯
  • 緊急注射キットの常備と本人・家族への実技指導

ストレス時をすべて機械的に「常に2倍」とせず、発熱・処置・手術の程度に応じて個別化する。

副腎クリーゼ

は急性のコルチゾール欠乏による循環不全で、治療遅延が致命的となる。既知AIの感染・手術・消化器炎、未診断AI、急なステロイド中止、両側などで起こる。

疑う所見

低血圧・ショック、強い感、意識障害、発熱、悪心・嘔吐、下痢、激しい腹痛、低Na血症、低血糖、腎障害を認める。原発性では高K血症を伴い得るが、中枢性ではなくても否定できない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adrenal crisis'>副腎クリーゼ</span>を疑う"] --> B["治療を遅らせない範囲で採血"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hydrocortisone'>ヒドロコルチゾン</span>100 mgを直ちに静注/筋注"]
    C --> D["24時間200 mg持続静注または50 mgを6時間ごと"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='isotonic saline'>等張食塩水</span>で循環を回復"]
    E --> F["低血糖ならブドウ糖を追加"]
    F --> G["感染など誘因を治療し電解質・尿量を監視"]

初期補液量は年齢、心・腎機能、脱水・ショックの程度で調整する。「1日2000~500 mL」のような誤った固定記載を用いない。高用量投与中は十分ながあるため、急性期のは通常不要である。

先天性副腎過形成

は、コルチゾール合成酵素の遺伝性欠損によりACTHが増加し、副腎過形成と前駆体の偏流を来すである。すべての病型を「」と一括しない。

酵素欠損 アンドロゲン 代表的臨床像
欠損 低下、では著明 増加 低血圧・低Na・高K、46,XXの男性化、思春期
増加 増加 高血圧・低K、男性化・思春期
17α-水酸化酵素欠損 増加 低下 高血圧・低K、、46,XYの男性化不全

21-水酸化酵素欠損

欠損はCAHで最も多い病型で、古典的、非に分ける2では(17-hydroxyprogesterone:17-OHP)を用いる。では出生後に嘔吐、体重増加不良、脱水、低Na血症、高K血症、ショックを来す。

治療は成長・アンドロゲン抑制・予防のバランスを取ったグルココルチコイド補充である。ではと乳児期の食塩補充を行う。過剰なグルココルチコイドは、肥満、骨量低下を起こすため、ACTHを完全正常化する目的でしない。

まとめ

  • ではを最初に確認し、過剰の確認後にACTHで局在を絞る。
  • 高用量DSTやだけで下垂体性と異所性を確定せず、必要時IPSSを用いる。
  • は原発性AIであり、中枢性AIではアルドステロンが通常保たれる。
  • は採血結果を待たず、100 mgとを開始する。
  • CAHは酵素ごとに血圧、K、アンドロゲンが逆方向になり得るため、病型別に理解する。

出典

  1. 1.New Cutoffs for the Biochemical Diagnosis of Adrenal Insufficiency after ACTH Stimulation using Specific Cortisol Assays(Journal of the Endocrine Society(Javorsky et al.)・2021)新しい特異的コルチゾール測定法では、ACTH刺激後の正常下限として一律18 µg/dLではなく測定法別に14~15 µg/dLを提案した。閲覧 2026-08-09
  2. 2.Congenital adrenal hyperplasia(The Lancet(Auer et al.)・2023)21-水酸化酵素欠損がCAHで最も多い病型であり、非古典型は古典型より頻度が高いことを整理した。閲覧 2026-08-09