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Disease Atlas · 神経 · 症候群

緊張病

Catatonia

別名
カタトニアcatatonia緊張病症候群
臓器系
神経精神全身
科目
NeurologyPsychiatryPharmacology
トピック
神経内科 G1-07:意識障害の分類と鑑別診断精神医学 A-05:その他の生物学的治療:電気けいれん療法・睡眠介入・反復経頭蓋磁気刺激・高照度光療法精神医学 A-08:統合失調症:病因・診断基準・歴史的亜型・経過・予後・鑑別診断精神医学 A-11:気分(感情)障害の急性期・長期治療神経内科 G3-26:自己免疫性脳炎薬理学 Core53:薬剤性有害反応:悪性症候群
鑑別疾患
悪性症候群抗コリン薬中毒
合併症
脱水静脈血栓塞栓症
治療薬
ロラゼパムオキサゼパム
症状
意識障害発熱発汗
検査値
クレアチンキナーゼ

🧠 全体像は、だけの病気ではなく、・代謝性疾患・薬剤など多様な原因のとして現れる精神運動症候群である。不動・・拒絶・奇異な姿勢という「動かない」像が典型だが、興奮型として現れることもある。診断は基準よりむしろベンゾジアゼピンへの反応が実務の要になり、2mgの静注で数分〜数時間のうちに劇的に改善すれば、それ自体が診断的治療になる。発熱・を伴うは、と臨床像・機序ともに連続する致死的な救急型で、が生命を救う中心的治療になる。

病態

は単一の原因ではなく、大脳基底核・視床・を含む運動の機能不全という共通の最終経路として理解される。GABA機能低下と系のという不均衡が中心的な仮説になっており、これがベンゾジアゼピン(GABA-A増強)が著効する理由を説明する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='schizophrenia'>統合失調症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mood disorder'>気分障害</span>などの精神疾患<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoimmune encephalitis'>自己免疫性脳炎</span>・代謝性疾患・薬剤など多様な原因"] --> B["大脳基底核・視床・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='frontal lobe'>前頭葉</span>を含む<br>運動<span class='jp-term jp-term-diagram' title='regulatory network'>制御ネットワーク</span>の機能不全"]
    B --> C["GABA機能低下+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glutamatergic system'>グルタミン酸系</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperactivity'>過活動</span>という不均衡"]
    C --> D["不動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutism'>無言</span>・拒絶・奇異な姿勢<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='echolalia'>反響言語</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='echopraxia'>反響動作</span>"]
    C --> E["自律神経調節の破綻(重症例)"]
    E --> F["発熱・血圧変動・頻脈・発汗"]
    D --> G["ベンゾジアゼピンでGABA-A系を補うと<br>症状が劇的に改善する"]

💡 「動かない」は必ずしも「意識がない」ことを意味しない。 の患者は意識が保たれていることが多く、病変によるの欠如)やせん妄とはこの点で区別される。不動の内側で意識が保たれているという事実が、を診察する上での出発点になる。

臨床像

は、・ろう屈症・症・拒絶症・姿勢保持・衒奇症・常同症・興奮・しかめ面・12所見のうち3つ以上を満たすことを診断要件とする1

興奮型と型の両極がありうる。 典型的な不動・型だけでなく、目的を欠いた興奮・多動を呈する型もあり、「動きが少ない」という先入観だけで除外しない。

⚠️ は救急疾患である。 38.5℃以上の発熱、血圧の変動・頻脈・頻呼吸・発汗といった、せん妄、強剛を特徴とし、急速に進行しうる1の患者で発熱・が加わったら、への移行を疑いを引き上げる。

分類

を独立した疾患としてではなく、背景にある病態への「指定」として位置づける。

分類 内容
他の精神疾患に伴う (うつ病・など
他の医学的疾患による障害 、代謝性疾患、中枢神経感染症、薬剤など
特定不能の 背景疾患が特定できない、または救急の場で診断を急ぐ状況

💡 」という診断名はでは廃止された。 かつてのDSM-IVではの亜型としてが存在したが、現在はなどの主診断にの指定を併記する形式に変わっている。この改訂は、に限らず多様な疾患で起こりうるという理解を反映している。

診断

Bush-Francis評価尺度(BFCRS)が標準的な評価ツールで、23項目(各0〜3点)からなり、最初の14項目がスクリーニング用のCatatonia Screening Instrumentとして使われる。スクリーニングとしての感度は100%、特異度は88%とされる1

ベンゾジアゼピンが診断的治療として機能する。 2mgを静注し(経口では60mg相当が同等の効果を持つとされる)、数分以内に改善することもあれば、多くは30〜120分、一部は2〜3時間かけて評価する1。運動症状・言語の速やかな改善があればを強く支持するが、陰性反応(一過性の傾眠のみなど)でも約20%以上はを否定しないため、臨床的疑いが強ければ陰性結果だけで除外しない1

鑑別診断

最大の鑑別はである。両者は連続体をなし、を抗精神病薬で誤って治療するとへ移行しうる。

疾患 筋緊張の性質 CK 治療のかぎ
ろう屈症・姿勢保持など間欠的な筋緊張 上昇するがほど極端でないことが多い ベンゾジアゼピンに反応しやすい
の一様な しばしば1,000〜5,000 U/L超の 原因薬中止+支持療法が主体

このほか、意識障害を伴わない欠如、病変が原因)、様症状の重要な鑑別・原因)、中毒も、不動・強剛・という所見の一部を共有しうる。「動かない」という所見をみたら、まず生理学的な原因を十分に除外してから・機能性を考える姿勢が実務上重要である。

治療

ベンゾジアゼピンが第一選択で、・難治例にはが生命を救う。

  • を1日4〜12mgに分割し、反応率はおよそ60〜80%とされる1。症状が制御された後は数か月かけてすることがある。
  • は、ベンゾジアゼピン抵抗例、またはのように緊急性の高い例に適応となり、反応率は70〜90%とされる1では抗精神病薬導入以前は死亡率75〜100%とされたが、などの治療法の確立により1986〜1992年のレビューでは31%まで低下した。・ベンゾジアゼピンがした報告もあるが、が最も救命的とされる2
  • ⚠️ 抗精神病薬(神経遮断薬)はの患者でしばしば致死的に作用しうる。 と誤認して抗精神病薬を投与すると、からへの移行を招き病態を悪化させることがある2を疑う患者への抗精神病薬投与は慎重に判断する。
  • 支持療法として、不動による脱水の予防(輸液・栄養管理・)を並行する。

疫学

英国でのは人口10万人年あたり4.3例、1年は10万人あたり4.4人、米国での関連入院の1年は10万人あたりおよそ5.1人とされ、決してまれな症候群ではない1。精神科入院患者の一部にとどまらず、内科・救急領域でも見過ごされやすい。

まとめ

  • ・代謝性疾患・薬剤など多様な原因が共通の運動機能不全に収束して現れる精神運動症候群である。
  • は12所見中3つ以上を診断要件とし、Bush-Francis評価尺度(23項目、スクリーニング感度100%・特異度88%)が標準的評価に使われる。
  • 2mg静注によるベンゾジアゼピンが診断的治療として機能するが、陰性反応でも約20%以上はを否定しない。
  • は発熱・・せん妄・強剛を伴う救急型で、と臨床像・機序が連続し、誤って抗精神病薬を投与すると移行・悪化しうる。
  • 治療はベンゾジアゼピンが第一選択(反応率60〜80%)で、抵抗例・には(反応率70〜90%)が生命を救う。
  • は人口10万人年あたり4例前後とまれではなく、精神科以外でも見過ごされやすい病態である。

出典

  1. 1.Catatonia(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)DSM-5の緊張病診断基準が昏迷・カタレプシー・ろう屈症・無言症・拒絶症・姿勢保持・衒奇症・常同症・興奮・しかめ面・反響言語・反響動作の12所見中3つ以上の存在を要件とすること、Bush-Francis緊張病評価尺度が23項目(0〜3点)からなり最初の14項目がスクリーニング用でその感度100%・特異度88%とされること、2mgのロラゼパム静注(またはオキサゼパム経口60mg相当)によるベンゾジアゼピン負荷試験で診断を支持し反応は数分から2〜3時間かけて評価され陰性反応でも約20%以上は緊張病を否定しないこと、悪性緊張病が38.5℃以上の発熱・自律神経不安定・せん妄・強剛を特徴とし急速に進行しうること、悪性緊張病は蝋屈症・姿勢保持など間欠的な筋緊張を示しうるのに対し悪性症候群は鉛管様の一様な筋強剛とCK 1000〜5000 U/L超のことが多い著明高値を特徴とする点で区別されること、ロラゼパムを1日4〜12mgに分割経口投与し反応率は60〜80%とされること、電気けいれん療法はベンゾジアゼピン抵抗例・悪性緊張病に適応となり反応率は70〜90%とされること、英国での緊張病の発生率が人口10万人年あたり4.3例・1年有病率が10万人あたり4.4人、米国での緊張病関連入院の1年有病率が10万人あたり約5.1人であることを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Malignant catatonia--a continuing reality(Annals of Clinical Psychiatry・1994)悪性緊張病の死亡率が抗精神病薬導入以前は75〜100%であったのに対し1986〜1992年の世界文献レビューでは31%まで低下したこと、ブロモクリプチン・ダントロレン・ベンゾジアゼピンが奏効した症例がある一方で電気けいれん療法が最も救命的とされたこと、悪性緊張病の患者では神経遮断薬(抗精神病薬)がしばしば致死的に作用しうることを確認した閲覧 2026-08-10