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Drug Atlas · C12 Antibiotics / 抗菌薬

オマダサイクリン

omadacycline

分類
Antibiotics / 抗菌薬
科目
PharmacologyMedical Microbiology
トピック
C12: Tetracyclines and glycylcyclines1/18: Antibiotics altering the protein synthesis: aminoglycosides, tetracycline
承認適応
市中肺炎細菌性皮膚感染症
標的微生物
Streptococcus pneumoniaeStaphylococcus aureusHaemophilus influenzaeKlebsiella pneumoniaeLegionella pneumophilaMycoplasma pneumoniaeChlamydophila pneumoniae
副作用
悪心嘔吐下痢頭痛注射部位反応光線過敏
監視検査値
AST・ALT
相互作用
ワルファリン

🧠 全体像:は、テトラサイクリンの耐性機構(・)を乗り越えるよう設計された「」で、・と並ぶ拡張版テトラサイクリン系の一つである。この3剤のなかで唯一、静注と経口の両方があり、1日1回でと皮膚・皮膚構造感染症に使う1。⚠️ のようなはなく、での死亡率不均衡のも2026年5月に削除された。 日本の添付文書情報には該当がなく、未承認である(2026年11月の検索時点)。

薬効群の中での位置づけ

系統
剤形 静注のみ 静注のみ 静注+経口
米国の適応 、、 のみ 、
あり() なし なし

💡 適応が重ならない点に注意する。 にはの適応がなく、逆に経口で外来治療に移れるのはこの薬だけである。古典的なドキシサイクリン・と異なり耐性菌を想定して設計された薬で、添付文書も感染症が証明または強く疑われる場合に限る使用と培養・感受性に基づく選択を求めている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='omadacycline'>オマダサイクリン</span>が細菌の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='30S ribosomal subunit'>30Sリボソームサブユニット</span>に結合"] --> B["タンパク質合成が阻害される"]
    B --> C["基本は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bacteriostatic'>静菌的</span><br>(一部の肺炎球菌・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='H. influenzae'>インフルエンザ菌</span>には<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bactericidal'>殺菌的</span>)"]
    D["古典的テトラサイクリンの耐性機構<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='efflux pumps'>排出ポンプ</span>(TetK・TetL)と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribosomal protection'>リボソーム保護</span>(TetM)"] --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='in vitro'>試験管内</span>ではこれらを持つ菌にも活性"]
  • 基本は他のテトラサイクリン系と同じ30S阻害・の薬である。
  • では、TetM・TetK・TetLを持つグラム陽性菌や、TetBを持つにも活性がある。や耐性遺伝子(gyrA、parC)を持つ菌にも活性を示した。ただし臨床的意義は不明とされる1。

適応と対象菌

適応 添付文書が挙げる菌
(成人) 肺炎球菌、感受性黄色ブドウ球菌、、パラ、、、、肺炎
(成人) 黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)、Staphylococcus lugdunensis、、Streptococcus 、Enterococcus faecalis、Enterobacter cloacae、

用法・用量

感染症 初日(負荷) 維持 期間
静注200 mg(60分)、または100 mgを30分かけて2回。経口は300 mgを2回 静注100 mg(30分)を1日1回、または経口300 mgを1日1回 7〜14日
皮膚・皮膚構造感染症 静注は肺炎と同じ。経口は450 mgを初日と2日目に1日1回 静注100 mgを1日1回、または経口300 mgを1日1回 7〜14日
  • ・では不要。
  • 経口のは約35%(34.5%)で、300 mgの経口は100 mgの静注と同等の曝露になる。
  • の服用は厳格なルールを伴う:4時間以上絶食してから水で服用し、服用後2時間は水以外の飲食を避け、4時間は乳製品・・マルチビタミンを摂らない。を2時間前に摂ると吸収(AUC)が約6割低下するが、4時間前なら大きく低下しない1。
  • 静注は、カルシウムやなど多価のを含む液と同じ輸液ラインで投与しない。

禁忌・注意・副作用

  • 禁忌:、テトラサイクリン系、またはへの過敏症。
  • ・、:妊娠後半、乳児期、8歳までの使用で永続的な(黄〜灰褐色)が起こりうる。は可逆的である。18歳未満での有効性・安全性は確立しておらず、8歳未満には推奨されない。
  • テトラサイクリン系共通の副作用:、、、抗(BUN上昇、)、膵炎、。疑えば中止する。
  • C. difficile関連下痢症:ほぼすべての抗菌薬と同様に起こりうる。
  • 頻度が高い副作用:皮膚感染症の試験では悪心、嘔吐、注射部位反応、ALT・AST上昇、頭痛、下痢(2%以上)。の併合解析(718例)ではALT上昇2.8%、頭痛2.8%、高血圧2.2%、AST上昇2.1%で、と大きく変わらなかった。
  • では、心拍数ので可逆的な増加が観察されている。臨床的な意味は不明で、臨床的に意味のあるは認められていない。
  • 相互作用:テトラサイクリン系は血漿を下げるため、ワルファリンなどの抗凝固薬は減量が要ることがある。アルミニウム・カルシウム・を含む、、は吸収を妨げる。
  • 授乳は推奨されない1。

2026年5月の改訂——死亡率不均衡の警告の削除

添付文書のと注意には、患者における死亡率の不均衡の項があった。2026年5月の改訂でこの項は削除された1。

試験 設計 死亡
試験1(OPTIC) 774例(対) 8/382(2%)対4/388(1%)
試験4(市販後の追加試験) 670例 6/336(1.8%)対6/332(1.8%)で差なし
  • 現行の添付文書も、試験1の死亡数の記載自体は有害事象の項に残している。つまりデータが消えたのではなく、としての扱いが外れた。削除の理由は添付文書に明記されていない。
  • ⚠️ クラスのを広げない。 のを持つのはだけで、とにはない。「テトラサイクリン系の拡張版は死亡率が高い」と一括りにしない。

根拠となる試験

適応 試験 結果
試験1(OPTIC)774例、対 早期臨床効果は81.1%対82.7%(差−1.6ポイント、95%CI −7.1〜3.8)。2
試験4(市販後)670例、対 89.6%対87.7%(差+1.9ポイント)
皮膚・皮膚構造感染症 試験2(静注→経口)655例、対リネゾリド 早期臨床効果は84.8%対85.5%(差−0.7ポイント)
皮膚・皮膚構造感染症 試験3(経口のみ)735例、対リネゾリド 87.3%対82.2%(差+5.1ポイント、95%CI −0.2〜10.5)
  • いずれも対照薬との差の95%CIが0をまたぎ、優れていることを示した試験ではない。 試験1(OPTIC)は10ポイントでが示された。2肺炎の早期臨床効果は、72〜120時間時点で4症状(咳、喀痰、胸痛、呼吸困難)のうち2つ以上が改善し悪化がないことと定義される。
  • 肺炎の試験の参加施設は東欧が中心で(試験1では登録の82%、試験4では全施設)、米国の登録は3例だった。対象はPORTリスククラスII〜IVで、最重症のクラスVは含まれない。
  • については、Mycobacterium abscessusに対して、を含む併用療法が有効だった5例の症例シリーズなどがある。ではなく、比較試験のエビデンスは乏しい3。関連疾患は、菌はMycobacterium abscessus。

体内動態

  • は約20%、は約190 L、半減期は約16時間(1日1回投与を支える)。
  • 代謝されない。静注後はが27%で、後はが大半(81%)を占める1。

まとめ

  • 。30S阻害で、テトラサイクリンの・による耐性を回避する設計。
  • 米国の適応は成人のと。静注と経口の両方があり1日1回で投与する。日本は未承認。
  • 経口の服用ルールが厳格(絶食、水のみ、乳製品・・マルチビタミンを4時間避ける)。腎・では不要。
  • での死亡率不均衡のは2026年5月に削除。のを拡張版テトラサイクリン系全体に広げない。
  • テトラサイクリン系共通の注意(、、、C. difficile関連下痢症)は残る。

出典

  1. 1.NUZYRA (omadacycline) for injection, for intravenous use; NUZYRA (omadacycline) tablets, for oral use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Paratek Pharmaceuticals, Inc.)・2026)Drugs@FDAの米国添付文書(改訂表示「Revised: 5/2026」)を全文読んで確認した。適応は成人の市中細菌性肺炎(CABP)と急性細菌性皮膚・皮膚構造感染症(ABSSSI)。「Recent Major Changes」に、警告と注意の項「市中細菌性肺炎患者における死亡率の不均衡」を2026年5月に削除(Removed)と明記し、警告の項は歯の変色・エナメル質形成不全、骨発育抑制、過敏症、C. difficile関連下痢症、テトラサイクリン系共通の副作用の構成になった。禁忌は成分およびテトラサイクリン系への過敏症。用法は初日に静注200 mg(または100 mgを12時間毎に2回)、以後100 mgを24時間毎、または経口300 mgを1日1回、治療期間7〜14日。経口は4時間以上の絶食後に水で服用し、服用後2時間は水以外を摂らず、4時間は乳製品・制酸薬・マルチビタミンを避ける。腎・肝機能障害での用量調整は不要。試験1(CABP)の死亡はオマダサイクリン群8/382(2%)、モキシフロキサシン群4/388(1%)、試験4は両群とも6例(1.8%)。経口のバイオアベイラビリティは34.5%。閲覧 2026-11-02
  2. 2.Omadacycline for Community-Acquired Bacterial Pneumonia(The New England Journal of Medicine・2019)抄録で確認した。PSI(Pneumonia Severity Index)リスククラスII〜IVのCABP成人774例を対象に、オマダサイクリン(静注100 mgを12時間毎2回、以後100 mgを24時間毎、3日後に経口300 mgへ切替可)とモキシフロキサシンを比較した二重盲検試験(OPTIC)。早期臨床効果は81.1%対82.7%(差−1.6ポイント、95%CI −7.1〜3.8)で非劣性マージン10ポイントを満たし、治療後評価は87.6%対85.1%。試験中の死亡は12例(オマダサイクリン群8、モキシフロキサシン群4)。下痢は1.0%対8.0%と差が最も大きい有害事象。閲覧 2026-11-02
  3. 3.Omadacycline for the treatment of Mycobacterium abscessus infections: Case series and review of the literature(IDCases・2023)抄録で確認した。Mycobacterium abscessus感染症は本来の多剤耐性と他の抗酸菌感染症に用いる抗菌薬への反応不良のため治療が難しいとされる。オマダサイクリンを含む併用療法を確定的治療として受けた5例で臨床的成功を報告した症例シリーズであり、無作為化比較試験ではない。閲覧 2026-11-02