外科学

外科学 · G/13

血栓塞栓症と血栓予防

Thromboembolism, thromboprophylaxis

前提:正常
血液凝固・線溶・生理的抗凝固機構
薬剤
モンテプラーゼ
スコア
CapriniスコアGenevaスコアPESI・sPESI

🧠 周術期の血栓塞栓症は「Virchowの3要素(・・)を手術がすべて同時に押し上げる」ことから始まる。 下肢のは多くが無症状で、塊が肺へ飛んで初めて肺塞栓症として気づかれる。したがって外科医の仕事は「診断して治す」よりも、入院ごとにと出血リスクの2軸で層別化し、予防を選ぶことに重心がある。層別化の軸は、極低リスクは無予防、低リスクは、は(出血高リスクなら)、高リスクは+——という段階的な構造で覚える。

💡 この項目はG/05: と合併症で触れた「」と「周術期のマネジメント」を掘り下げたものである。G/05の表と矛盾しないよう、授業で使われた古い表と現行ガイドラインの差も本項で整理する。

1. 病態 — なぜ手術で血栓ができるのか

Virchowの3要素と周術期の対応

要素 周術期に起きていること
全身麻酔中・術後ので下肢のが働かない。のとは下肢静脈圧を上げる。脱水・肥満も静脈流を遅らせる
手術操作・牽引(骨盤手術での、人工関節置換での)、中心静脈カテーテル、外傷
に伴う(フィブリノゲン・凝固因子の上昇、)、悪性腫瘍、炎症・感染、妊娠・経口避妊薬、()

💡 血栓の発生部位は下腿のポケットから始まることが多い。 そこは血流が最も淀み、局所の低酸素で内皮が活性化しやすい。下腿の孤立性血栓は自然に消えることもあるが、一部は・へ進展し、近位(を含む中枢側)の血栓が肺塞栓症の主な供給源になる。

下腿深部静脈の弁ポケットに生じる血栓と静脈血流の模式図

生成模式図(実際の患者画像ではありません)。

血栓リスクを上げる因子

授業の分類(患者側の急性・慢性因子、手術側の特殊因子)を、VTEの文脈で整理し直す。

区分 具体的な因子
患者の素因 高齢(特に65歳以上)、肥満(BMI 30超)、VTEの既往・家族歴、悪性腫瘍、、妊娠・、、・、、、静脈瘤
急性の状態 脱水・、感染・敗血症、発熱を伴う炎症、・不動(3日超)、急性臓器不全
手術の因子 手術時間(45分超で上昇)、大手術(腹部・骨盤・整形外科の人工関節・手術)、悪性腫瘍手術、緊急手術、下肢の固定、中心静脈カテーテル留置
腹腔鏡では開腹に比べて離床が早く血栓が少ないと教えられるが、自体はの要因であり、長時間手術・肥満では予防を省略しない

⭐ 授業では、一般的な予防適応(高齢・肥満・血栓塞栓症の既往・不動)と外科側の適応(整形外科・婦人科・泌尿器科・悪性腫瘍・大手術・長時間の一般外科手術・胸部外科)が並べて示された。 どれも「個々の項目をチェックして点数化する」ことでリスクを数値にでき、それがである。

外科の他領域で現れる血栓症

  • : の重症では、血便だけを理由に薬物的を一律に中止しない。のIBDはVTEリスクが高く、低用量LMWHなどを用いる。ただし活動性の大出血など、抗凝固が危険な状態では出血リスクを個別評価する(O/24: )。
  • 移植外科: 膵臓移植後1週間以内の最多の喪失原因はである。腎移植でも部の血栓・狭窄を認め、急なや機能悪化では速やかな評価が必要となる(移植の合併症)。
  • 肛門疾患: は、に生じる限局性の血栓である。や肺塞栓症の前駆とはで、抗凝固は不要(O/22: ・・)。
  • 腸間膜血管: 腸間膜の・血栓・静脈血栓はを起こすの原因である(G/14: 腹部の解剖を参照)。

2. 深部静脈血栓症

臨床像

  • 多くは無症状。症状があれば、片側の下肢の腫脹・疼痛・圧痛、熱感、の怒張、下腿周囲径の左右差(の10 cm下で3 cm超が目安)。
  • 左下肢に多い(がに交叉・圧迫される解剖。)。

右総腸骨動脈が左総腸骨静脈を腰椎との間で圧迫するMay-Thurner解剖の正面図と横断図

出典:Gozzo ほか(2020), CT imaging findings of abdominopelvic vascular compression syndromes: what the radiologist needs to know, Fig. 8(CC BY 4.0、WebPに変換)。

  • : の広範閉塞で、強い浮腫・チアノーゼ・疼痛、さらに動脈血流まで障害される。・に進みうる緊急事態で、血栓溶解または、外科的を要する。はその前段階で、動脈の拍動が保たれる。
  • 鑑別:血腫・筋、破裂、蜂窩織炎、、心不全・による浮腫。

診断

flowchart TD
  A["DVTを疑う症状"]
  A --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Wells score'>Wellsスコア</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical probability'>臨床的確率</span>を層別化"]
  B --> C["DVTの可能性が低い"]
  B --> D["DVTの可能性が高い"]
  C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='D-dimer'>D-ダイマー</span>測定"]
  E --> F["陰性<br>→ DVTを除外"]
  E --> G["陽性"]
  G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compression ultrasonography'>圧迫超音波検査</span>"]
  D --> H
  H --> I["血栓あり<br>→ <span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anticoagulation therapy'>抗凝固療法</span>"]
  H --> J["近位検査が陰性でも疑いが残る<br>→ 約1週間後の再検や追加検査"]
  • は、活動性の癌、下肢麻痺・最近の、3日以上のまたは12週以内の大手術、に沿う圧痛、下肢全体の腫脹、下腿周囲径の左右差(3 cm超)、圧痕を伴う浮腫、、DVTの既往に加点し、他の診断の方が確からしければ減点する。⚠️ (時の痛)は感度・特異度が低く診断根拠にしない。
  • はに使う検査(感度が高く特異度が低い)。術後・妊娠・悪性腫瘍・感染・高齢では陽性になりやすく、陽性でもDVTの確定にはならない。50歳超の外来患者では、500 µg/Lの測定法で年齢×10 µg/Lというを用いる方法がある1。
  • が第一選択の画像。プローブで静脈を圧迫しても潰れない()ことが診断の基準。ASHは、が低い(約10%以下)ならから始め、中等度以上なら近位または下肢全体のから始めることを提案する。中等度以上の確率で近位超音波が陰性でも疑いが残る場合は、約1週間後の再検などを行う。十分な下肢全体の検査が陰性の場合や低確率例まで、全例再検とはしない1。

圧迫で虚脱する正常静脈と血栓で虚脱しない深部静脈の断面比較

生成模式図(実際の患者画像ではありません)。

3. 肺塞栓症

臨床像と診断

項目 内容
症状 突然の呼吸困難、、頻呼吸、頻脈、咳・喀血、失神。大塞栓では低血圧・ショック・心停止
手術後に注意 原因不明の頻脈・低酸素血症・でも疑う。術後は敗血症やと見分けにくい(術後合併症としての位置づけはG/05の鑑別表を参照)
心電図 が多い(約4割)。S1Q3T3、、V1〜V4のは重症例で見られるの所見で、軽症ではだけのことも多い2
心エコー 、心室中隔の平坦化、(右室の収縮低下では保たれる)、TAPSE低下(16 mm未満と右室/左室比1.0以上の併存が予後不良と関連)2。で造影CTが撮れない場合の迅速評価に使う
確定診断 ()。高度の・造影剤アナフィラキシー歴・妊娠・若年者ではーが好まれうる2

肺動脈分枝に血栓が詰まる位置と右心・肺の関係を示す模式図

出典:Baedr-9439, Pulmonary-embolism(CC0 1.0、PNGを1280pxに縮小しWebPに変換)。

  • の評価にはの肺塞栓症(PE)版(または)を使い、低〜中確率なら、高確率なら直ちにへ進む。ESCは、WellsまたはGenevaで確定PEの頻度が低確率で約10%、中確率で約30%、高確率で約65%と述べ、高確率ではを測らない2。ASHも、が低い(5%以下)ならから、高い(50%以上)なら造影CTから始めることを提案する1。

2026年の肺塞栓症分類

AHA/ACC2026は、症状・重症度指標・・をまとめてA〜Eの臨床カテゴリーに整理した3。

カテゴリー 大枠 管理の方向
A 無症状・偶発的に発見 入院を要する他の理由がなければ外来管理を検討
B 症状はあるが臨床重症度が低い ・外来治療を検討
C 重症度が高い。心筋指標上昇・を含みうる 入院して評価・抗凝固・監視
D 切迫した 高度治療を含めた迅速な多職種評価
E 持続性低血圧などを伴う 救命・再灌流を含む緊急対応

細分化したカテゴリーのうち、E1では・・・などが妥当、D1〜2では考慮可能とされる。出血リスク・循環状態・施設の対応能力で手段を選び、カテゴリーだけで自動的に血栓溶解へ進めない3。

ESC2019の重症度分類(早期死亡リスク)

⭐ PEのは「血行動態の安定性」と「」で決まる。2

分類 PESI III〜V/sPESI 1以上 (画像) 上昇
高リスク あり (不要) あり (不要)
中高リスク なし あり あり あり
中低リスク なし あり どちらか一方、または両方なし どちらか一方、または両方なし
低リスク なし なし(PESI I〜II/sPESI 0) 評価すれば陰性 評価すれば陰性
  • 高リスクPEの定義は心停止・・持続性低血圧(90 mmHg未満、または40 mmHg以上の低下が15分を超え、新規の不整脈・・敗血症では説明できない)である2。
  • sPESIは、年齢80歳超、癌、慢性、心拍数110/分以上、100 mmHg未満、90%未満の各1点で、0点が低リスク(30日死亡率は約1%、1点以上では約11%)2。

治療

flowchart TD
  A["PE確定または強く疑う"] --> B["循環・呼吸状態と出血リスクを評価"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiopulmonary failure'>心肺不全</span>・切迫した悪化"]
  C --> D["蘇生と多職種による緊急判断"]
  D --> E["抗凝固と再灌流の適応を検討"]
  E --> F["血栓溶解・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural intervention'>カテーテル治療</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical embolectomy'>外科的摘除</span>から選択"]
  B --> G["血行動態が安定"]
  G --> H["抗凝固を基本に重症度別の監視"]
  H -->|"悪化"| D
  H -->|"低リスク・外来条件を満たす"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early discharge'>早期退院</span>と継続治療"]
  • : 高リスクPEの標準。()100 mgを2時間で投与する短時間レジメンが望ましい2。ASHも、血行動態が不安定なPEには血栓溶解を行うことを強く推奨する4。⚠️ 術後直後は大出血の危険が高く、(歴など)に加え、直近の大手術は重大な出血リスクであり、手術からの期間・部位・切迫度を踏まえ禁忌を評価するである。外科患者では、血栓溶解の代わりにや外科的が選ばれることが多い。
  • : 下に肺動脈から血栓を除去する。血栓溶解が禁忌・無効な高リスクPEに用いる。
  • : 吸引・・低用量の。なRCTによる臨床転帰のエビデンスは乏しい。
  • 初期抗凝固: AHA/ACC2026は注射薬を必要とする例でLMWHをより優先する3。ESC2019もLMWHまたはを一般に優先する。は、重度腎障害(30 mL/分以下)、極端な肥満、を考える症例で用いる2。DOACが使えるなら第一選択とされる2(ASHはVKAよりDOACを条件付きで提案4)。
  • IVC: のがある場合に適応となる2。には推奨されない56。回収可能型を用い、禁忌が解消したら抗凝固を始めて早期にする。

4. DVT・PEの薬物療法と期間

薬剤・区分 要点
LMWH(など) 体重に応じた皮下注。通常のによるは不要。腎機能・血算・出血徴候は監視する。のため高度腎障害では蓄積する(の予防量は30 mL/分未満で30 mgを1日1回へ減量7。治療量の調整やへの変更は施設基準に従う)
(ヘパリン) 静注。aPTTでモニタリング。半減期が短く、で中和できる。腎不全・出血リスクが高く、が迫る場合に有利
() の間接阻害薬。で、30 mL/分未満では禁忌8。HITの治療で用いうる非ヘパリン系薬の一つ9
DOAC(・など) 治療期間に固定用量で使える。腎機能・薬物相互作用・出血リスク(特に・泌尿器癌)に注意
ワルファリン(ワルファリン) INR 2〜34。開始時はヘパリンと5日以上かつ治療域のINRが24時間以上得られるまで重ねるのが標準的な実務。・などでDOACの代わりに残る役割
  • 治療期間: PE患者はすべて少なくとも3か月のを受ける2。外科手術のような一過性の誘因が明らかな場合は3か月が基本、持続的な危険因子(癌など)や誘因のない例は、出血リスクを評価した上で延長を検討する。ESCは「誘発性/」の二分で期間を決めることを支持しなくなり、6か月後にまたはの減量を延長期間に考慮するとした2。ASHは、再発したには無期限のを強く推奨する4。
  • : LMWHや適格例のDOACを用い、癌の活動性・出血リスク・相互作用に応じて間を個別化する。ESC2019の・の選択肢に加え、ASCO2023はを治療の選択肢として強く推奨した10。消化管の出血リスクに注意する2。
  • ができない近位DVT: IVC(静脈は主に抗凝固が不可能なときの適応で、へのの根拠はない2)。
  • 慢性期の合併症: (下肢の慢性浮腫・色素沈着・潰瘍)。初発の近位DVT後に2年間を着用する無作為化試験(SOX)では、の発生は14.2%対12.7%(偽ストッキング)で差がなく、な着用は支持されない11。肺塞栓後のはを参照。

PE後は、少なくとも1年間、受診ごとにやの低下を確認する。抗凝固で急性期を乗り切った後も、などの評価を忘れない3。

日本の指針との違い

日本の指針(日本循環器学会ほか、2025年版)では、上の海外の記述と次の点が異なる12。

項目 上の海外の記述 日本
治療と予防の中心 VTEの治療と再発予防に保険適用がない。は下肢と、リスクの高い腹部手術の予防にだけ使える。内科系入院患者のに使える抗凝固薬は、だけである(2025年3月時点)
初期の抗凝固 注射薬ではLMWHを優先 またはにワルファリンを併用する。血行動態が安定した例にはDOAC(・・)を投与する(推奨クラスI)
ワルファリンの治療域 INR 2〜3 PT-INR 1.5〜2.5を考慮する(推奨クラスIIa)。は、ワルファリンの効果が治療域に到達するまで継続する(推奨クラスI)
血栓溶解 100 mg 急性PTEに保険適用のはモンテプラーゼだけである。3週以内の・大手術・はに挙げられ、禁忌のときは、を使わないや肺動脈を考える

⚠️ ヘパリンとワルファリンを「5日以上かつ治療域のINRが24時間以上」重ねる基準は、ACCPの指針にある数値である。日本の指針は、をワルファリンの効果が治療域に到達するまで続けるとし、日数の数値は示していない。

5. 血栓予防の考え方

授業で示された数字

  • 肺塞栓症はの約10%を占めるとされる(講義の概数。出典は未確認で、全体の中の割合の推計は研究により幅がある)。
  • 講義では、予防しなければ高リスク患者のDVT発生は40〜80%、そのうち約10%がPEで死亡し、低リスク患者でも約10%に下腿のDVTが生じるとされた。これは講義の概数で出典は未確認である。ACCP 2012が示すVTE(0.5%未満〜約6%、下記の表)とは対象と測定法が異なるため、直接比べない。
  • だからこそ、予防は「全員に同じものを」ではなくリスクに応じて強度を変える。

リスク層別化の表

授業の4段階と、ACCPのCaprini基準5を対応させる。米国NSQIPの外科入院患者8,216例での検証でも、に基づくリスク区分(低・中等度・高・最高)は術後30日以内の(0%・0.70%・0.97%・1.94%)と有意に関連した13。

VTEリスク の目安 推定VTE率(ACCP 2012の基準リスク) 出血リスクが低い場合 出血リスクが高い場合
極低 0点 約0.5%未満 のみ のみ
低 1〜2点 約1.5% (できれば)
中 3〜4点 約3.0% LMWH(または)。も選択肢 (できれば)
高 5点以上 約6.0% LMWH(または)+ を、出血リスクが下がるまで。その後に薬物を追加
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hospitalization, surgery'>入院・手術</span>前にVTEリスクを評価"]
  A --> B["極低リスク"]
  A --> C["低リスク"]
  A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medium risk'>中リスク</span>"]
  A --> E["高リスク"]
  B --> B1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='early mobilization'>早期離床</span>のみ"]
  C --> C1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical prophylaxis'>機械的予防</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intermittent pneumatic compression (IPC)'>間欠的空気圧迫</span>><span class='jp-term jp-term-diagram' title='elastic stocking'>弾性ストッキング</span>)"]
  D --> D1{"出血リスクは高いか"}
  D1 -->|"低い"| D2["LMWH"]
  D1 -->|"高い"| D3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical prophylaxis'>機械的予防</span>"]
  E --> E1{"出血リスクは高いか"}
  E1 -->|"低い"| E2["LMWH+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical prophylaxis'>機械的予防</span>"]
  E1 -->|"高い"| E3["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mechanical prophylaxis'>機械的予防</span>→出血リスクが下がれば薬物を追加"]
  E2 --> F["高リスクの腹部・骨盤癌手術<br>計4週間の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='extended prophylaxis'>延長予防</span>を検討"]

Capriniスコアの項目

は、患者因子と手術因子に点を与えて合計する。簡略化した主な項目を点数別に示す。

点数 主な項目
1点 41〜60歳、小手術、BMI 25超、下肢の腫脹、静脈瘤、妊娠・、経口避妊薬・ホルモン補充、敗血症(1か月以内)、重度肺疾患、、(1か月以内)、の既往、内科患者の
2点 61〜74歳、手術、大手術(開腹・腹腔鏡で45分超)、悪性腫瘍、72時間超の、、アクセス
3点 75歳以上、VTEの既往・家族歴、、、、HITの既往、、上昇
5点 脳卒中(1か月以内)、、股関節・骨盤・下肢の骨折、急性(1か月以内)、

💡 は外科患者の入院時評価、は外来で化学療法を受ける癌患者の予防判断に使う。 同じ「癌がある」でも、使う場面と答えが違う。

機械的予防

方法 要点
・自動/ 全患者の基本。術後早期の歩行、の底
下肢を周期的に圧迫して静脈流を促す。より優先される56。出血高リスクで薬物が使えないときに選ばれる
単独の効果はIPCに劣る。に併用するか、IPCが使えない場合に。皮膚障害や虚血()に注意

⚠️ DVTを疑う場合は予防用の装置を漫然と続けず、診断と治療を優先し、IPCの使用は機器の適応・禁忌を確認する。すべてのを一括して禁忌とはしない。による症状軽減と、VTEやの予防は目的が異なる。では装着状態と皮膚・末梢循環を確認する。

薬物的予防

薬剤 標準的な予防量(成人の目安) 要点
低用量を皮下注(ENOXACANでは1日3回14)。具体的な用量は添付文書・施設基準に従う 安価で腎不全でも使える。拮抗薬は。HITはLMWHより起こりやすいとされる(本項では比較を確認していない)
LMWH 40 mgを1日1回皮下注(腹部手術では手術の2時間前から、通常7〜10日)7。は5,000 IU/日の用量が文献に見られる5 腹部・骨盤の癌手術では1日3回と同等の効果と安全性14。30 mL/分未満では30 mgを1日1回7。・・妊婦ではが必要になりうる
2.5 mgを1日1回皮下注。初回は止血後で術後6〜8時間以降、通常5〜9日8 30 mL/分未満と体重50 kg未満(予防)は禁忌8。ヘパリン類が使えない高リスク患者の代替にもなる5
DOAC 後の予防に用いられる(、など) ASHはでLMWHよりDOACを条件付きで提案する6。ASCO2023では、癌手術後のに・が選択肢として追加された(弱い推奨)。すべての一般外科手術へ一律に広げない10
アスピリン 低用量(ACCP 2012は160 mg) ではアスピリンまたは抗凝固薬のいずれでもよいとされる6。非では、ヘパリン類が使えない高リスク患者の代替という位置づけ5
  • LMWHかか: 一般外科の大手術ではどちらでもよい。ではLMWHが強く推奨される6。
  • の併用: 高リスクでは薬物にを足す56。
  • 開始時期: ASHは、術後12時間以内の早期開始でも、それより遅い開始でもよいとする(12時間は恣意的な区切り)6。の添付文書は腹部手術で手術2時間前の初回投与を記載する7。施設の方針と出血リスク、の有無で決める。
  • : 他の危険因子がなければ薬物的予防は不要とされる6。

延長予防

⭐ 高リスクの腹部・骨盤癌手術では、LMWHを退院後も含めて計4週間続けることが推奨される(ACCP 2012のGrade 1B)5。大腸癌手術などで、入院中の7〜10日のみでは術後2〜4週のVTEを防げないためである。ENOXACAN IIでは、腹部・骨盤の癌手術後に40 mg/日を6〜10日行った後、さらに21日続けると、で確認したVTEが25〜31日でプラセボ群12.0%に対し4.8%、3か月でも13.8%対5.5%に減り、出血に差はなかった15。また腹部・骨盤手術1,728例を対象とした7件のでも、退院後14日以上のLMWHは入院中のみの予防と比べVTEを13.2%から5.3%へ有意に減らし、出血合併症や死亡率の増加は認めなかった16。ASHはを一般的に提案するが、癌手術に限った独立の推奨ではない6。

癌手術後のでは、ASCO2023が・を追加した。対象試験にはがあるため、の吸収、腎機能、出血リスク、患者の希望を確認して選ぶ10。

神経軸麻酔との関係

・は出血性合併症として・を起こしうる。授業でも、の短所として「中は出血」が挙げられた。

薬剤 穿刺・カテーテルとの間隔の目安
(静注) 最終投与から4〜6時間あけ、aPTTなどの凝固状態を確認する。再開は穿刺・との間隔を守る17
低用量 ・まで最終投与から少なくとも12時間。高度腎障害では延長が必要。次回投与はから少なくとも4時間あける7
高用量 最終投与から少なくとも24時間。腎機能低下ではさらに慎重に評価し、術後再開は手術の出血リスクとカテーテルの有無を合わせて判断する7
添付文書では最適な間隔が不明。腎機能・用量を踏まえ、専門指針と施設基準を用いる8
高用量の阻害薬 ASRA2025では原則72時間の。薬剤別にされた濃度・活性測定が判断を助ける。正常PT・aPTTだけでは残存薬効を否定しない18
低用量・ ASRA2025ではそれぞれ36時間・24時間。は30 mL/分未満で30時間。適応と腎機能によって「低用量」の扱いを確認する18
用量と腎機能によってが変わる。阻害薬の一律72時間表を流用しない。現行指針を確認する19

⚠️ 「穿刺・後6時間で全DOACを再開」は不適切。ASRA2025の高用量DOACでは穿刺・から初回投与まで少なくとも24時間が必要となり、さらに手術の止血状況・出血リスクに応じた延期も必要となる。手技の間隔と手術後の再開条件の両方を満たす。中の投与、、腎障害は麻酔科と個別に判断する18。

血腫の症状(、下肢の新規の脱力・、膀胱直腸障害)が出たら直ちにMRIを撮り、を考える。

日本のリスク分類と予防法

日本の指針は、一般外科手術のリスクを低・中・高・最高の4段階に分け、腹腔・胸腔の手術と45分以上の手術を大手術とする。肥満などの付加的な危険因子があれば、リスクを1段階上げてよい12。

リスク 例 推奨される予防
低 60歳未満の非大手術、40歳未満の大手術 と積極的な運動
中 60歳以上または危険因子のある非大手術、40歳以上または危険因子のある大手術 に加え、または
高 40歳以上のがんの大手術 または
最高 VTEの既往またはのある大手術 と、(または)の併用
  • 腹部手術で使える抗凝固薬は、、、である。高リスク以上のすべての患者で使えるのは、である。
  • 出血リスクが高い場合は、抗凝固薬の使用を慎重に検討し、やなどの理学的予防を行う。
  • は周術期のリスク評価で最も広く研究されているが、日本では広くは用いられておらず、検証もなされていない。外来のがん患者にはがある。

6. 周術期の抗血栓薬マネジメント

授業の表と現行の考え方

授業の表(手術の出血リスクの高低を横軸にした)は次のとおり。G/05の表と同じ内容である。

薬剤 出血リスクの小さい手術 出血リスクの大きい手術
アスピリン 継続 術前7日で中止し、術後48時間で再開
または 継続 術前5日で中止し、アスピリンは循環器医の意見に従って再開
(ワルファリン) 目標INR 1.5未満。少なくとも術前5日からLMWHへ置換。術後は再開し、数日間は併用しINR 2〜3を目標 同じ

⚠️ 最後の行(ワルファリンをLMWHに置換する)は現在の標準ではない。 ACCP 2022は心房細動の患者にを行わないことを強く推奨した20(G/05参照)。はが特に高い患者(の一部、心房細動で高リスク因子を併せ持つ例など)に限って個別に考える17。個々の条件(弁の位置、直近の脳卒中・VTEの時期)ごとのACCP 2022の推奨文は本項では確認していない。出血リスクが高い手術では特に慎重にする。

薬剤別の実際

薬剤 周術期の考え方(一般的な実務の要点)
ワルファリン 術前少なくとも5日で中止し、再開は術後24時間以内を目安に、出血や追加処置の予定がなければ行う17。手術前のINR確認と、基準を超えた場合の対応は施設基準に従う。・ではVKAを継続する(強い推奨)20。多くの症例では不要。ビタミンKや・複合体の使い分けはG/12: 出血・止血・輸血を参照
DOAC 手術側の出血リスクで数を決める。は、低出血リスクの手術の1日前、高出血リスクの手術の2日前にし(最終投与は手術の2日前・3日前)、・では腎機能による調整を設けなかった。は50 mL/分未満でを延長(低出血2日、高出血4日)。もも行わない。再開は止血が得られれば、低出血リスクで術後1日、高出血リスクで術後2〜3日21。再開までの間、止血が得られていれば予防量のヘパリンを使うかは施設基準
アスピリン 低用量(200 mg未満)は多くの手術で継続できるが、・眼科の一部では例外17。や脳卒中などが高ければ継続が基本。のみの場合のは個別に判断
・ PCI後の時期とを中断する必要性を先に判断する。が必要な場合の回復の目安は5〜7日、7〜10日、3〜5日。再開は止血・追加処置・を循環器医と評価する22

DES後にを中断するは、ACSに対するPCI後では理想的には12か月以上、慢性冠動脈疾患では6か月以上延期する。延期の害が大きい手術は3か月以降を考慮する。PCI後は可能ならアスピリンを継続し、BMS後30日以内・DES後3か月未満で必要な手術では、出血リスクと比較してDAPT継続を検討する。後の全患者に「P2Y12薬だけ中止」を適用しない22。

💡 「全体としてするか・継続するか」は、薬剤の血栓防止効果と手術の出血リスクを天秤にかける問題である。が高い(後早期など)のにアスピリンまですると、のリスクを背負う。逆に出血が致命的な手術(脳・脊髄・眼科の一部)では、の判断が優先される。

日本の指針(DOACの休薬と冠動脈ステント)

日本循環器学会の2022年版ガイドラインは、DOACをする際のヘパリン置換を推奨しない(推奨クラスIII、B)23。での最終内服の目安は次のとおりである。

手技の出血リスク (CCr 80以上/50〜79/30〜49 mL/分) ・・
中 24時間以上前/36時間以上前/48時間以上前 24時間以上前(CCr 30以上)。CCr 15〜29は36時間以上前
高 48時間以上前/72時間以上前/96時間以上前 48時間以上前

再開は、出血低リスクの手技では術後6〜8時間以降から翌日、出血高リスクの手技では術後の出血の状況に応じて可能な限り早期(術後6〜8時間以降)とし、が問題となる場合は48〜72時間以降を考える。実際の時期は、外科医・麻酔科医との合意で決める。

は、留置後1〜1.5か月以内の非心臓手術は実施すべきでない(推奨クラスIII Harm)。DAPTを継続したままでは実施が難しい手術は、DAPTが必要な期間が終了するまで延期することを考慮し(推奨クラスIIa)、1年までは延期するほど心血管リスクは低下する。ACSかか、の種類は問わない23。上のAHA/ACCの月数とは区別して読む。

出血時の拮抗

薬剤 拮抗・中和
(で自身が出血を起こす点に注意)
LMWH で部分的に中和
ワルファリン ビタミンK、、
阻害薬(、など) 地域の承認・供給と出血・に応じた拮抗・補正。米国での販売は2025年末に終了。出血・止血・輸血を参照

7. ヘパリン起因性血小板減少症

HITは、ヘパリン投与で生じた抗PF4/ヘパリン抗体が血小板を活性化し、血小板減少にもかかわらず血栓症を起こす薬剤反応である。

項目 内容
発症時期 ヘパリン開始後5〜14日が典型。過去30日以内に曝露があれば再曝露から数時間で起こりうる9
所見 がベースラインから50%以上低下、または減少を伴う新規の血栓症(静脈・動脈)、注射部位の
リスク >LMWH。外科(特に心臓科・整形外科)患者で高い
診断 でを評価する(ASHは直感ではなく4Tsを強く推奨し、低確率なら検査ももしない)9。そのうえで抗PF4抗体の、必要なら
治療 ヘパリンを中止し、非ヘパリン系の抗凝固薬(、、、、DOAC)に切り替える9。LMWH・も含めてすべて中止する
避けること が回復するまでVKA(ワルファリン)を開始しない、なをしない(出血時など例外はある)、IVCをには入れない9。VKA開始の危険はである

⚠️ ヘパリンを使う患者では、リスクに応じてを監視する。 ASHは、HITのリスクが0.1〜1.0%なら2〜3日ごと、1.0%超なら少なくとも1日おきに測り、過去30日にがあれば0日目から、なければ4日目から14日目まで(またはヘパリンを中止するまで)行うことを提案する9。「血小板が減ったがヘパリンを続ける」ことが最大の失敗である。

日本の診療ガイドライン

のガイドライン(2021年)では、次の点を押さえる24。

  • 日本で承認されているヘパリン以外の抗凝固薬は、だけである。
  • 過去100日以内にヘパリン投与歴がある患者は、再投与から数分〜24時間以内に急速発症型HITを起こしうる。投与前と投与後24時間以内にを測る(1C)。の時期の項目は、過去30日以内の曝露で1日以内の血小板減少を2点、31〜100日を1点とする。
  • 0〜3点はHITの可能性が低く、ヘパリンの中止や血清学的診断を行わない(1B)。4点以上で、ヘパリンを中止し、ヘパリン以外の抗凝固薬を投与する。
  • 急性期(が回復するまで)はワルファリンを投与しない(1B)。以降は、DOACの投与を推奨する(1C)。出血のリスクが高くないHIT患者には、予防的なを行わない(2C)。

8. 表在性血栓性静脈炎

は、・静脈(カテーテル関連)や静脈瘤に起こる。多くは局所の温湿布・NSAID・圧迫で対応するが、下肢の症候性のでは、2.5 mgを1日1回45日間行うとに比べ症候性のPE・DVT・接合部への進展・再発の複合が0.9%対5.9%に減った(CALISTO)25。長さ・接合部からの距離によって予防量か治療量かを分ける具体的な基準は、本項では確認していない。

まとめ

  • 周術期の血栓塞栓症は、Virchowの3要素(うっ滞・・)を手術が同時に押し上げる。DVTは無症状が多く、PEとして発見される。
  • 予防は「入院ごとにと出血リスクの2軸で層別化」する。極低=のみ、低=(がより優先)、中=LMWH(出血高リスクなら)、高=LMWH+。
  • で層別化する(0/1〜2/3〜4/5点以上)。腹部・骨盤の癌手術では、LMWHを退院後も含めて計4週間まで延長する。
  • DVTの診断は、で確率を出し、低確率ならで除外、それ以外は。PEは確率評価の後にで確定し、血行動態とで重症度を分ける。
  • 高リスクPEは蘇生と抗凝固・再灌流の適応を迅速に評価し、術後の出血リスクに応じて血栓溶解・・を選ぶ。IVCの主な適応は抗凝固のである。治療期間は一過性の誘因なら3か月が基本。
  • 周術期のは、手術の出血リスクと患者ので個別化する。授業の「ワルファリンはLMWHへ置換」は古く、は一律には行わない。心房細動でDOACを使う例を対象としたでは、出血リスクに応じて1〜2日し(は腎機能で延長)、を行わなかった21。
  • は抗凝固薬とのを守る(間隔は薬剤・用量・腎機能で変わる)。HITはで確率を評価し、疑えばヘパリンを全中止して非ヘパリン系へ。
  • の重症では血便だけでを中止しない。大出血などの禁忌は個別に評価する。術後の合併症としての位置づけはG/05: と合併症を参照。

出典

  1. 1.American Society of Hematology 2018 guidelines for management of venous thromboembolism: diagnosis of venous thromboembolism(Blood Advances・2018)PMC版の本文で確認した。下肢DVTは検査前確率が低い(約10%以下)ときD-ダイマーから始めて除外し、中等度・高確率では近位または下肢全体の超音波検査から始める。初回超音波が陰性で他の診断がなければ1週間後に追加の超音波(連続超音波)を行う。年齢調整カットオフは年齢×10 µg/L(カットオフ500 µg/Lの測定法、50歳超の外来患者)。PEでは低確率(5%以下)でD-ダイマーから、高確率(50%以上)は造影CTから始め、後続検査は被曝を減らすため換気血流シンチグラフィーが優先される閲覧 2026-10-12
  2. 2.2019 ESC Guidelines for the diagnosis and management of acute pulmonary embolism developed in collaboration with the European Respiratory Society (ERS)(European Heart Journal・2020)本文の一部で確認した。高リスクPEは血行動態不安定(心停止・閉塞性ショック・持続性低血圧=収縮期血圧90mmHg未満または40mmHg以上の低下が15分超)で定義され、血行動態不安定にCTPAでのPE確認またはRV機能不全があれば高リスクに分類される。中リスクのうちRV機能不全と心筋バイオマーカー上昇の両方があれば中高リスク、PESIクラスI〜IIまたはsPESI 0は低リスクの信頼できる予測因子。高リスクPEの全身血栓溶解はrtPA 100 mgを2時間で投与する短時間レジメンが望ましい。IVCフィルターは抗凝固療法の絶対禁忌がある場合に適応。初期抗凝固はLMWHまたはフォンダパリヌクスが未分画ヘパリンより好まれ、DOACが適格なら第一選択。本文の別の箇所で、PE確率は10%・30%・65%(低・中・高)、LMWHとフォンダパリヌクスが初期抗凝固で未分画ヘパリンより好まれる、全PE患者は少なくとも3か月抗凝固、「誘発性/非誘発性」の用語はもはや支持されない、癌ではエドキサバンまたはリバーロキサバンがLMWHの代替になるが消化管癌は出血増に注意、静脈フィルターは抗凝固ができないときが主な適応でアジュバントとしての根拠はない、sPESI 0の早期死亡は約1%、心電図の洞性頻脈は約40%、といった記載も確認した。⚠️ 推奨表(クラス・エビデンスレベル)は画像で本文に出ないため未確認閲覧 2026-10-12
  3. 3.2026 AHA/ACC/ACCP/ACEP/CHEST/SCAI/SHM/SIR/SVM/SVN Guideline for the Evaluation and Management of Acute Pulmonary Embolism in Adults: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines(American Heart Association / American College of Cardiology・2026)原著全文は取得できず、AHA公式のTop Things to Knowの全10項目で確認。A〜E分類、C〜Eの入院、E1で高度治療が妥当・D1〜2で考慮可能、初期注射薬ではLMWHを未分画ヘパリンより優先、経口薬では適格例のDOACをVKAより優先、少なくとも1年間の症状・機能評価を確認した。各サブカテゴリーの詳細は未確認。閲覧 2026-10-13
  4. 4.American Society of Hematology 2020 guidelines for management of venous thromboembolism: treatment of deep vein thrombosis and pulmonary embolism(Blood Advances・2020)抄録で確認した。28の推奨のうち、血行動態が不安定なPEに血栓溶解を行うこと、VKA使用時のINRは2.0〜3.0とすること、再発した非誘発性VTEには無期限の抗凝固療法を行うことが強い推奨。合併症リスクの低い非複雑性のDVT・PEは入院より在宅治療を、一次治療ではVKAよりDOACを提案(条件付き)閲覧 2026-10-12
  5. 5.Prevention of VTE in nonorthopedic surgical patients: Antithrombotic Therapy and Prevention of Thrombosis, 9th ed: American College of Chest Physicians Evidence-Based Clinical Practice Guidelines(Chest・2012)PMC版の全文で確認した。VTEリスクをCapriniスコアで極低(0点、約0.5%未満)・低(1〜2点、約1.5%)・中(3〜4点、約3.0%)・高(5点以上、約6.0%)に分け、極低リスクは早期離床のみ、低リスクは機械的予防(できれば間欠的空気圧迫)、出血高リスクでない中リスクは低分子量ヘパリンまたは低用量未分画ヘパリン、中リスクで出血高リスクなら機械的予防、高リスクは低分子量ヘパリンまたは低用量未分画ヘパリンに機械的予防(弾性ストッキングまたは間欠的空気圧迫)の併用を提案すること。腹部・骨盤の高リスク癌手術では低分子量ヘパリンによる延長予防(4週間)を推奨(Grade 1B)し、IVCフィルターを一次予防に用いないことを提案(Grade 2C)。著者らは弾性ストッキングよりIPCを好むと述べる。Capriniの項目表(1点・2点・3点・5点の各因子)も同じ文献で確認した。出血高リスクの高リスク患者では出血リスクが下がるまでIPCを使い、その後に薬物的予防を始めることを提案(2C)。ヘパリン類が使えないとき低用量アスピリン(160 mg)・フォンダパリヌクス・IPCを代替として提案(2C)閲覧 2026-10-12
  6. 6.American Society of Hematology 2019 guidelines for management of venous thromboembolism: prevention of venous thromboembolism in surgical hospitalized patients(Blood Advances・2019)PMC版の推奨一覧で確認した。30の推奨のうち強い推奨は1つ(人工関節置換術で低分子量ヘパリンを未分画ヘパリンより推奨)のみで、残りは条件付き。大手術では薬物的予防と機械的予防のどちらでもよく出血高リスクでは機械的予防を優先しうる、機械的予防では弾性ストッキングより間欠的空気圧迫装置、薬物予防に機械的予防を併用する、IVCフィルターを日常的には用いない、短期より延長予防を提案、一般外科大手術では薬物的予防を無予防より提案し低分子量ヘパリンと未分画ヘパリンはどちらでもよい、腹腔鏡下胆嚢摘出術では薬物的予防を提案しない。本文では、人工関節置換術で低分子量ヘパリンを未分画ヘパリンより強く推奨し、DOACを低分子量ヘパリンより条件付きで提案、アスピリンまたは抗凝固薬のいずれでもよいとし、予防の開始は術後12時間以内でも後でもよい(12時間は恣意的な区切り)とも確認した。⚠️ 癌手術後の延長予防に特化した独立の推奨は無い。神経軸麻酔の節は未確認閲覧 2026-10-12
  7. 7.LOVENOX (enoxaparin sodium) injection, prescribing information(DailyMed (Sanofi-Aventis U.S.)・2026)添付文書の本文で確認した。腹部手術のDVT予防は40 mgを1日1回皮下注(初回は手術2時間前、通常7〜10日)、クレアチニンクリアランス30 mL/分未満では30 mgを1日1回。脊髄・硬膜外血腫の枠囲み警告があり、カテーテルの留置・抜去は低用量(40 mg 1日1回など)の投与後少なくとも12時間、高用量では少なくとも24時間あける(CrCl 30未満ではおよそ2倍)閲覧 2026-10-12
  8. 8.ARIXTRA (fondaparinux sodium) injection, prescribing information(DailyMed (Mylan Institutional)・2026)添付文書の本文で確認した。腹部手術の予防は2.5 mgを1日1回皮下注し、初回は止血後で術後6〜8時間以降、通常5〜9日。クレアチニンクリアランス30 mL/分未満と体重50 kg未満(予防)は禁忌。硬膜外・脊髄血腫の枠囲み警告があり、「神経軸手技との最適な間隔は分かっていない」と記載される閲覧 2026-10-12
  9. 9.American Society of Hematology 2018 guidelines for management of venous thromboembolism: heparin-induced thrombocytopenia(Blood Advances・2018)PMC版の本文で確認した。4Tsスコアで検査前確率を推定し、低確率なら検査も経験的治療もしないこと(強い推奨)。血小板数の監視は、低リスク(0.1%未満)では不要、中リスク(0.1〜1.0%)は2〜3日ごと、高リスク(1.0%超)は少なくとも1日おきで、過去30日にヘパリン曝露があれば0日目から、なければ4〜14日目まで。急性HITではヘパリンを中止して非ヘパリン系(アルガトロバン・ビバリルジン・ダナパロイド・フォンダパリヌクス・DOAC)に切り替え、血小板回復前のVKA開始と日常的な血小板輸血を推奨しない、IVCフィルターも日常的には推奨しない。HITの典型的な発症はヘパリン開始後5〜14日で、30日以内の再曝露では数時間で起こりうる。⚠️ 4Tsの点数表は確認していない閲覧 2026-10-12
  10. 10.Venous Thromboembolism Prophylaxis and Treatment in Patients With Cancer: ASCO Guideline Update(Journal of Clinical Oncology・2023)EuropePMCの原著抄録で確認。癌手術後の延長予防の選択肢にアピキサバンとリバーロキサバンを弱い推奨として追加し、癌関連VTE治療のアピキサバンを強い推奨として追加した。対象試験の制約があり、用量・開始日数を本項へ一般化しない。閲覧 2026-10-13
  11. 11.Compression stockings to prevent post-thrombotic syndrome: a randomised placebo-controlled trial(The Lancet・2014)抄録で確認した。初発の近位DVT 806例を、2年間の弾性ストッキングか偽ストッキングへ割り付けた多施設無作為化試験で、血栓後症候群の累積発生は14.2%対12.7%(調整HR 1.13、p=0.58)。著者は、DVT後の弾性ストッキングの日常的な着用を支持しないと結論した閲覧 2026-10-12
  12. 12.JCS/JPCPHS 2025 Guideline on Pulmonary Hypertension and Pulmonary Embolism/Deep Vein Thrombosis(日本循環器学会・日本肺循環・肺高血圧学会・2025)日本語版の本文PDFを抽出して確認した(英語版はJ-STAGEの本文)。VTEの治療(推奨表6〜10・14)、予防(表19・20、推奨表16)、診断を読み、低分子ヘパリンはVTE治療に保険適用がないこと、内科系入院患者の一次予防に使える抗凝固薬は未分画ヘパリンのみ(2025年3月時点)、ワルファリンの治療域PT-INR 1.5〜2.5、血栓溶解はモンテプラーゼのみ保険適用で3週以内の大手術などが絶対禁忌、日本の4段階リスク分類と推奨される予防法、を確認した。閲覧 2026-11-02
  13. 13.A validation study of a retrospective venous thromboembolism risk scoring method(Annals of Surgery・2010)米国NSQIPの外科入院患者8216例でCaprini risk assessment modelに基づく後方視的スコアリング法を検証し、リスク区分(低・中等度・高・最高)が術後30日以内の静脈血栓塞栓症発生率(0%・0.70%・0.97%・1.94%)と有意に関連したこと。閲覧 2026-08-26
  14. 14.Efficacy and safety of enoxaparin versus unfractionated heparin for prevention of deep vein thrombosis in elective cancer surgery: a double-blind randomized multicentre trial with venographic assessment. ENOXACAN Study Group(British Journal of Surgery・1997)抄録で確認した。腹部・骨盤の待機的癌手術(40歳超)で、手術2時間前から開始するエノキサパリン40 mg 1日1回は、低用量未分画ヘパリン1日3回と同等の効果と安全性だった(評価可能631例でVTEは未分画ヘパリン18.2%・エノキサパリン14.7%、出血に差なし)閲覧 2026-10-12
  15. 15.Duration of prophylaxis against venous thromboembolism with enoxaparin after surgery for cancer(New England Journal of Medicine・2002)抄録で確認した。腹部・骨盤の癌の根治的開腹手術後に、エノキサパリン40 mg 1日1回を6〜10日間行った後、さらに21日間エノキサパリンかプラセボに割り付けた二重盲検試験(解析332例)。静脈造影で確認したVTEは25〜31日でプラセボ群12.0%・エノキサパリン群4.8%、3か月でも13.8%対5.5%で、出血は差がなかった閲覧 2026-10-12
  16. 16.Prolonged thromboprophylaxis with low molecular weight heparin for abdominal or pelvic surgery(Cochrane Database of Systematic Reviews・2019)腹部・骨盤手術(良性・悪性を含む)を受けた1728例を対象とした無作為化比較試験7件のメタ解析で、退院後も14日以上低分子量ヘパリンを継続する延長予防は、入院期間中のみの予防と比べ静脈血栓塞栓症の発生率を有意に下げ(13.2%対5.3%)、出血合併症や死亡率の増加は認めなかったこと。閲覧 2026-08-26
  17. 17.Perioperative antithrombotic medication: An approach for the primary care clinician(African Journal of Primary Health Care and Family Medicine・2024)PMC版の本文で確認した二次的な総説(ACCP・ESRA・ASRAを要約)。神経軸麻酔について、未分画ヘパリン静注は4〜6時間前に中止しaPTT正常を確認、予防量LMWHは12時間あけて穿刺しカテーテル抜去の4時間後に再投与、治療量LMWHは24時間、第Xa因子阻害薬は3日前に中止し穿刺・カテーテル抜去の6時間後に再開、ダビガトランはCrCl 80 mL/分超で3日・50〜79で4日・30〜49で5日前。P2Y12阻害薬はプラスグレル7〜10日・クロピドグレル5〜7日・チカグレロル3〜5日前に中止、低用量アスピリンは多くの手術で継続。薬剤溶出ステント後は待機手術を少なくとも6週〜3か月延期、DAPTは6〜12か月。ワルファリンは5日以上前に中止し24時間以内に再開。一次資料ではなく総説であり、数値は原典の確認が望ましい閲覧 2026-10-12
  18. 18.Regional anesthesia in the patient receiving antithrombotic or thrombolytic therapy: American Society of Regional Anesthesia and Pain Medicine Evidence-Based Guidelines (fifth edition)(American Society of Regional Anesthesia and Pain Medicine・2025)原文全文は403で取得できず、ASRA公式2025年9月1日教育資料のDOACの節と原著の索引化された推奨文を照合した。高用量第Xa因子阻害薬は72時間、低用量アピキサバン36時間、低用量リバーロキサバン24時間(CrCl 30未満は30時間)を基本とし、薬剤別濃度測定の役割を確認。高用量DOACを術後6時間で一律再開する表は不適切で、穿刺・抜去から初回高用量投与まで24時間以上という推奨を確認した。閲覧 2026-10-13
  19. 19.Regional anaesthesia in patients on antithrombotic drugs: Joint ESAIC/ESRA guidelines(European Journal of Anaesthesiology・2022)抄録で確認した。神経軸ブロックと出血リスクの高い末梢神経ブロックでは、抗血栓薬の種類・用量、腎機能、穿刺が外傷性だったかによって異なる最終投与からの時間間隔を守る必要があり、超音波ガイド・薬剤併用・出血リスクスコアは間隔を変えないこと、血腫の早期発見の体制が要ること。エビデンスの確実性はすべてGRADE C。⚠️ 具体的な時間は有料本文のため確認していない閲覧 2026-10-12
  20. 20.Perioperative Management of Antithrombotic Therapy: An American College of Chest Physicians Clinical Practice Guideline(Chest・2022)抄録で確認した。VKA・ヘパリンブリッジング・DOAC・抗血小板薬の4領域を扱う43のPICO、44の推奨のうち強い推奨は2つだけで、心房細動でのヘパリンブリッジングを行わないこと、およびペースメーカー・ICD植込み時にVKAを継続することである。⚠️ 抄録のみで、DOACの休薬日数・抗血小板薬の個別の推奨文は本文で確認していない閲覧 2026-10-12
  21. 21.Perioperative Management of Patients With Atrial Fibrillation Receiving a Direct Oral Anticoagulant(JAMA Internal Medicine・2019)PMC版の本文で確認した。心房細動でDOAC(アピキサバン・ダビガトラン・リバーロキサバン)を内服する待機手術3007例(高出血リスク手技は33.5%)で、低出血リスクの手技の1日前、高出血リスクの手技の2日前に休薬し、術後は低出血リスクで1日後、高出血リスクで2〜3日後(止血後)に再開する標準化プロトコルを検証した。ダビガトランはクレアチニンクリアランス50 mL/分未満で休薬が長く(低出血2日、高出血4日)、アピキサバン・リバーロキサバンは腎機能による調整なし。ヘパリンブリッジングも凝固検査もなしで、30日の大出血は全体で約1〜2%(高出血リスクで約3%)、動脈血栓塞栓症は0.6%以下閲覧 2026-10-12
  22. 22.2024 AHA/ACC/ACS/ASNC/HRS/SCA/SCCT/SCMR/SVM Guideline for Perioperative Cardiovascular Management for Noncardiac Surgery: A Report of the American College of Cardiology/American Heart Association Joint Committee on Clinical Practice Guidelines(American Heart Association / American College of Cardiology・2024)AHA公開の原著スライドセット72〜76頁の推奨と表12を確認。抗血小板薬を中断する待機手術は、ACS後のDESで理想的には12か月以上、慢性冠動脈疾患のDESでは6か月以上延期し、時間依存性手術は延期の害と比較して3か月以降を考慮する。PCI後は可能ならアスピリン継続、BMS30日以内・DES3か月未満で必要な時間依存性手術では出血リスクとの比較の下でDAPT継続を推奨する。閲覧 2026-10-13
  23. 23.非心臓手術における合併心疾患の評価と管理に関するガイドライン(2022年改訂版)(日本循環器学会・日本心臓病学会・2022)本文PDFを抽出して確認した。DOACを休薬する際のヘパリン置換は推奨されない(推奨クラスIII、エビデンスレベルB)、DOACの術前の休薬時期と術後の再開時期(表34)、冠動脈ステント留置後1〜1.5か月以内の待機的非心臓手術は実施すべきでない(推奨クラスIII Harm、表42)を確認した。閲覧 2026-11-02
  24. 24.ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)の診断・治療ガイドライン(日本血栓止血学会・2021)本文PDFを抽出して確認した。4Tsスコア0〜3点はHITの可能性が低くヘパリン中止や血清学的診断を行わない(1B)、過去100日以内のヘパリン投与歴があれば急速発症型HITに注意し投与前と24時間以内に血小板数を測定(1C)、急性期(血小板数の回復まで)はワルファリンを投与しない(1B)、亜急性期以降はDOACを推奨(1C)、日本で承認されている非ヘパリン系の抗凝固薬はアルガトロバンのみ、を確認した。閲覧 2026-11-02
  25. 25.Fondaparinux for the treatment of superficial-vein thrombosis in the legs(New England Journal of Medicine・2010)抄録で確認した。深部静脈血栓症や症候性肺塞栓症を伴わない症候性の下肢表在静脈血栓症3002例で、フォンダパリヌクス2.5 mg 1日1回45日間はプラセボに比べ、死亡・症候性PE・DVT・伏在大腿静脈接合部への進展・再発の複合を0.9%対5.9%に減らし(相対リスク低下85%)、大出血は各群1例だった閲覧 2026-10-12