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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬

ソトラシブ

sotorasib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
ルマケラス
科目
PharmacologyPulmonology and Thoracic SurgeryOncology and Reconstructive Oncoplastic SurgeryPathology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)32: Chemo-, immune- and targeted therapy of lung cancerII-28: Surgical and pharmacological treatment of lung cancerB/05: Promotion mechanisms of oncogenes and role in carcinogenesis
承認適応
肺癌大腸癌
副作用
下痢悪心嘔吐便秘筋肉痛咳呼吸困難
監視検査値
AST・ALT
相互作用
ファモチジンラベプラゾールリファンピシン

🧠 全体像:は、KRAS G12C変異が作る「新しいシステイン」に共有結合して、KRASを不活性な状態に固定する薬である1。KRASは長く「」とされてきたが、米国では2021年にこの薬が最初のKRAS G12C阻害薬として承認された。1日1回960 mgの内服で、日本では肺癌と大腸癌(併用)の両方に適応がある2。⚠️ 学習上の要点は、肝毒性(特に免疫療法の直後)、胃酸抑制薬との併用回避、肺癌のという位置づけの3点である。

薬効群の中での位置づけ

KRAS G12C阻害薬の代表は、この薬とである。どちらも同じ変異のシステインに共有結合するが、服薬回数や注意点が違う。

用法 960 mgを1日1回 600 mgを1日2回
半減期 約5時間 約23時間
大腸癌の併用相手
目立つ注意点 肝毒性、、胃酸抑制薬の回避 QT延長、CYP3A4の阻害と誘導、ワルファリンとの相互作用

は通常用量でQTc間隔の大きな延長(20ミリ秒超)を起こさない1。

⚠️ 肺癌での位置づけは一次治療ではない。 日本の電子添文は「一次治療における有効性及び安全性は確立していない」と明記する。初回は、ドライバー陰性群に準じた免疫療法・化学療法が基本で、KRAS G12C阻害薬は主に既治療後に使う。

機序

flowchart TD
    A["KRAS G12C変異<br>(12番目のグリシンがシステインに置換)"] --> B["活性型(GTP結合型)に偏り<br>下流の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proliferative signal'>増殖シグナル</span>が入りっぱなし"]
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sotorasib'>ソトラシブ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>のシステインに<br>共有結合(不可逆)"] --> D["KRASが<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inactive form'>不活性型</span>に固定される"]
    D --> E["下流のシグナル伝達が遮断され<br>増殖抑制とアポトーシス"]
  • 阻害はG12Cに限られ、野生型KRASには影響しない。この選択性が、変異検査で患者を選ぶ根拠になる1。
  • 💡 大腸癌ではを併用する。 KRAS G12C変異の大腸癌では、EGFRの活性化がKRAS G12C阻害に対するの一つとして同定されており、のとの併用でが高まった(マウスの腫瘍移植モデル)1。

適応——米国と日本の比較

適応 米国(2025年1月改訂)1 日本(2026年7月改訂、第7版)2
KRAS G12C変異陽性の 単剤。前に少なくとも1つの全身治療を受けた成人。 単剤。がん化学療法後に増悪したな進行・再発例
KRAS G12C変異陽性の大腸癌 併用。・・の既治療例 併用。がん化学療法後に増悪した治癒な進行・再発の結腸・
  • 患者選択はKRAS G12C変異の検出で行う。米国の添付文書は、肺癌では腫瘍組織または血漿で検査し、血漿で検出されなければ腫瘍組織を検査するよう求める(血漿は偽陰性がありうる)。大腸癌は腫瘍組織で判定する。
  • 米国の肺癌適応は、とに基づくであり、継続承認は確認試験での臨床的有用性の検証が条件とされている。

用法・用量

  • 960 mgを1日1回、毎日同じ時刻に服用する(320 mg錠3錠、240 mg錠4錠、または120 mg錠8錠)。食事の影響は小さく、食事の有無は問わない。は噛まずに丸のみする。
  • 服薬を6時間を超えて忘れたら、その日は飛ばして翌日に服用する。服用後に嘔吐しても追加で服用しない。
  • 嚥下が困難な場合は、砕かずに非炭酸の常温水120 mLにを分散して飲む。
  • 減量は960 → 480 → 240 mg/日で、240 mg/日に耐えられなければ中止する(日本の電子添文)。大腸癌では、を中止するときはも・中止する12。

有害事象

事象 頻度(肺癌の集計) 要点
肝毒性 27%(Grade 3以上が16%)。AST・ALT上昇は17%(Grade 3以上が9%) 発現までの中央値6.3週。免疫療法の直後に開始した例で多い。94%は、ステロイド併用の有無を問わず改善または消失
・ 2.2%(Grade 3以上が1.1%、致死1例) 発現までの中央値8.6週。疑えば直ちにし、他の原因がなければ恒久中止
下痢 42%(Grade 3〜4が5%) 最も多い副作用。悪心26%、嘔吐17%、便秘16%
・疲労・咳 35%、疲労26%、咳20% 肺炎12%(Grade 3〜4が7%)も重い有害事象に含まれる
  • ⭐ 免疫療法との順序が肝毒性を左右する。 直近(3か月以内)に免疫療法を受けてから開始した例では肝毒性が40%、3か月より後に開始した例では18%、免疫療法歴のない例では17%だった1。KRAS G12C阻害薬が主に免疫療法の後に使われることを考えると、免疫療法から間を置かずに始めるときほど肝機能検査を密にする。
  • 肝機能検査は最初の3か月は3週毎、その後は月1回を目安に行う。AST・ALTがの3倍を超えビリルビンが2倍を超える場合、他の原因がなければ恒久中止とする。
  • 肺癌単剤の安全性解析(204例)では、重篤な有害事象が50%、致死的な有害事象が3.4%、有害事象による恒久中止が9%で、中止の主な原因は肝毒性(4.9%)だった。
  • 併用の大腸癌では、発疹、、下痢、、疲労、が20%以上に出る。
  • 授乳は、投与中と最終投与後1週間は避ける。

相互作用と体内動態

併用薬 影響 対応
、 胃内のpH上昇でのが下がり、血中濃度が低下 併用を避ける。避けられなければ、をの4時間前、または10時間後に服用する
強いCYP3A4(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン) の血中濃度が低下し効果が減弱 併用を避ける
治療域の狭いCYP3A4基質(、など) のCYP3A誘導で基質の濃度が低下 併用を避ける。避けられなければ基質の用量を調整
治療域の狭い基質(ジゴキシンなど) がを阻害し基質の濃度が上昇 併用を避ける。避けられなければ基質を減量
  • 日本の電子添文は、さらにBCRP基質(、、メトトレキサート)の濃度上昇を併用注意としている2。
  • 血中濃度は服用の約1時間後に最高となり、半減期は約5時間。定常状態は22日で得られ、蓄積は見られない。蛋白結合率は89%で、主に抱合とCYP3Aで代謝され、糞中に約74%が排泄される。でAUCは25%上昇するが、食事の制限は不要とされている。
  • :米国の添付文書は軽度〜中等度(AまたはB)でを推奨しない一方、日本の電子添文は中等度以上(BまたはC)で減量を考慮するとしており、扱いが異なる。重度のでの安全性は不明で、いずれも副作用を慎重に観察する1。

根拠となる試験

試験 設計 結果
CodeBreaK 100(肺癌) 単群第2相。既治療のKRAS G12C変異陽性NSCLC 126例 評価可能124例で36%(95%CI 28〜45)、中央値10か月、6か月以上続いた割合58%1。論文では37.1%、6.8か月、中央値12.5か月3
CodeBreaK 200(肺癌) 第3相。と比較(345例) 5.6か月 対 4.5か月(HR 0.66)。Grade 3以上のは33%対40%4
CodeBreaK 300(大腸癌) 第3相。960 mg+53例 対 標準治療(・または)54例 5.6か月 対 2.0か月(HR 0.48)。26% 対 0%。は有意差なし(HR 0.7)
  • 肺癌の承認の中核はので、第3相のCodeBreaK 200でに対して延びたのはである。の読み方と、確認試験の結果を分けて理解する。
  • 大腸癌では、240 mg+群のの差は統計学的に有意でなく、承認用量は960 mgである1。

まとめ

  • KRAS G12C変異のシステインに共有結合するで、野生型KRASには影響しない。960 mgを1日1服する。
  • 日本の適応はがん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性のと大腸癌(併用)。肺癌の一次治療には位置づけられていない。
  • 注意する副作用は肝毒性(免疫療法の直後に多い)と。肝機能検査を最初の3か月は3週毎に行う。
  • PPI・、強いCYP3A4は併用を避ける。 自身がCYP3A4を誘導し、を阻害する。
  • との違いは、服薬回数(1日1回か2回か)、QT延長の有無、大腸癌での併用抗体(かか)。

出典

  1. 1.LUMAKRAS (sotorasib) tablets, for oral use — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(Amgen Inc.)・2025)Drugs@FDAに掲載された米国添付文書(改訂表示「Revised: 01/2025」)を全文読んで確認した。適応は、①FDA承認検査で判定したKRAS G12C変異陽性の局所進行・転移性非小細胞肺癌の単剤療法(前に少なくとも1つの全身治療を受けた成人、奏効率と奏効期間に基づく迅速承認)、②フルオロピリミジン・オキサリプラチン・イリノテカンの既治療のKRAS G12C変異陽性転移性大腸癌へのパニツムマブ併用。用法は960 mgを1日1回経口。禁忌は「None」で、警告は肝毒性(NSCLCの集計で27%、Grade 3以上16%)と間質性肺疾患/肺臓炎(2.2%、致死1例)。肝機能検査は最初の3か月は3週毎に行う。プロトンポンプ阻害薬とH2受容体拮抗薬の併用は避け、避けられなければ、本剤を局所制酸薬の4時間前または10時間後に服用する。強いCYP3A4誘導薬は併用を避ける。CodeBreaK 100の124例で奏効率36%(95%CI 28〜45)、奏効期間中央値10か月。CodeBreaK 300では960 mg+パニツムマブ群の無増悪生存期間中央値5.6か月、標準治療群2.0か月(ハザード比0.48)。閲覧 2026-11-02
  2. 2.ルマケラス錠120mg 電子添文(医薬品医療機器総合機構(PMDA)/アムジェン株式会社・2026)改訂「2026年7月改訂(第7版)」の電子添文を開いて確認した。効能又は効果は「がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」と「がん化学療法後に増悪したKRAS G12C変異陽性の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」(パニツムマブとの併用)。一次治療の有効性・安全性は確立していない。用法は960 mgを1日1回経口、減量は480 mg、240 mgの2段階で240 mg/日に耐えられなければ中止、間質性肺疾患は全Gradeで中止。禁忌は成分への過敏症の既往。中等度以上(Child-Pugh分類BまたはC)の肝機能障害では減量を考慮する。国際共同第I/II相試験(CodeBreaK 100)のNSCLCで奏効率37.4%。閲覧 2026-11-02
  3. 3.Sotorasib for Lung Cancers with KRAS p.G12C Mutation(The New England Journal of Medicine・2021)抄録で確認した。KRAS G12C変異陽性の既治療進行NSCLC 126例に960 mgを1日1回投与した単群第2相試験。中央判定の奏効率37.1%(95%CI 28.6〜46.2)、奏効期間中央値11.1か月、病勢コントロール80.6%、無増悪生存期間中央値6.8か月、全生存期間中央値12.5か月。治療関連有害事象は69.8%(Grade 3が19.8%)。閲覧 2026-11-02
  4. 4.Sotorasib versus docetaxel for previously treated non-small-cell lung cancer with KRASG12C mutation: a randomised, open-label, phase 3 trial(The Lancet・2023)抄録で確認した。白金製剤とPD-1/PD-L1阻害薬の後に進行したKRAS G12C変異陽性NSCLC 345例を、ソトラシブ960 mg 1日1回(171例)とドセタキセル75 mg/m2 3週毎(174例)に1対1で割り付けた第3相試験。無増悪生存期間中央値は5.6か月対4.5か月(ハザード比0.66、95%CI 0.51〜0.86)で主要評価項目を満たした。Grade 3以上の治療関連有害事象は33%対40%、重篤なものは11%対23%。ソトラシブでGrade 3以上の主な事象は下痢12%、ALT上昇8%、AST上昇5%。閲覧 2026-11-02