画像診断学

画像診断学 · 09

核医学の症例検討

Nuclear medicine case review

前提:正常
SPECTマルチモダリティ画像:PET/CTとSPECT/MRI

🧠 全体像:核医学の症例は「何を知りたいか → どのならそれが写るか → を差し引いて何が残るか → それで方針がどう変わるか」の順に読む。は骨芽細胞の働き、甲状腺シンチはヨウ素の取り込み、動態腎シンチは尿の通り道、心筋血流シンチは負荷時と安静時の血流の差、シンチは腫瘍の受容体、 はブドウ糖代謝を写す。どの症例でも、機能画像が「どこかに異常がある」ことを高感度に示し、画像のが「それが何か」を絞り込む。と装置の原理は 核医学 が正本で、ここでは症例の読み方に集中する。

1. 症例を読む共通の手順

臨床の問いから検査を選ぶ

は「撮ってから考える」検査ではない。臨床の問いがはっきりしていれば、選ぶはほぼ一つに決まる。

臨床の問い 選ぶ検査 写っているもの
癌が骨へ転移しているか (99mTc-ジホスホネート)、必要なら - 骨芽細胞の活性
の原因は何か、結節は機能しているか (99mTc-過酸) ヨウ素と同じ経路での取り込み
腎は働いているか、尿は流れているか 動態( など) 腎への取り込みと尿路への排泄の
負荷で虚血が起こるか (負荷時と安静時) 心筋の相対的な血流分布
の・転移はどこか、受容体を標的にした治療が使えるか ・-(現在はが主流) の発現
癌の広がり(病期)、良性か悪性か、治療が効いたか ブドウ糖代謝

所見を読む順序

flowchart TD
  A["臨床像<br>年齢・既往・症状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Labs'>検査値</span>"] --> B["臨床の問いを一文にする<br>例:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone metastasis'>骨転移</span>はあるか"]
  B --> C["問いに合う<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiopharmaceutical'>放射性医薬品</span>と撮像法を選ぶ<br>全身平面像・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='single-photon emission computed tomography'>SPECT</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='single-photon emission computed tomography'>SPECT</span>-<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positron emission tomography–computed tomography'>PET-CT</span>"]
  C --> D["向きを確かめる<br>前面像か後面像か、断面の左右"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physiologic uptake'>生理的集積</span>を差し引く<br>尿路・肝・脾・脳・心筋・腸管など"]
  E --> F["残った集積を記述する<br>部位・数・強さ・形・左右差"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>などの形態と照らす<br>骨折・変性・血管腫・嚢胞などの良性原因を除く"]
  G --> H["解釈と次の一手<br>手術・局所治療・全身治療・生検・経過観察"]
  • ⭐ 前面像と後面像では左右の見え方が逆になる。 後面像は患者を背中側から見た像なので、患者の右側が画面の右に来る。動態は後面から撮るのが基本で、右腎は画面の右に写る。
  • 💡 は検査ごとに決まっている。 とは尿へ排泄されるので腎・膀胱が写り、シンチでは肝・脾・腎が写る。では脳が最も強く、心筋・腸管の集積は食事の状態などで大きく変わる。これを知らないと正常を病変と読み違える(ごとの全身分布は 核医学 の表を参照)。

2. 骨シンチグラフィの症例

は感度が高く特異度が低い。転移だけでなく骨折の治癒、、血管腫に伴うなども骨芽細胞を働かせて集積する()。そのため症例では「集積があるか」より「その集積の分布と形が転移らしいか」「で良性の原因が説明できるか」を問う。

症例1:前立腺癌の病期診断で骨転移がない例

  • 臨床像:54歳男性。で前立腺が腫大し、硬く、表面が不整。は21.489 ng/mL(約21 ng/mL)。で前立腺癌(腺癌)と診断された。
  • 選ぶ検査と理由: が20 ng/mL を超えるので、触知できる局所の癌でも、従来から広く使われてきたD’Amicoのリスク分類では高リスク群に入り、転移の検索が要る。1 欧州ガイドラインは2026年版で新しい5段階のリスク分類を導入している(リスク分類は前立腺癌)。2を決めるためのとして、肺・リンパ節を見る胸部CT、局所の広がりを見る骨盤、を探すを組み合わせる。前立腺癌はのを起こしやすく、の感度が高い癌である。
  • ⚠️ 現在の標準との違い:この組み合わせ(・・)は従来のである。欧州の現行ガイドライン(-EANM-ESTRO--ISUP-SIOG 2026年版)は、転移の広がりを見つける最も感度の高い方法を としている。2 の原理と製剤は 核医学 を参照。
  • 所見:99mTcによる全身の前面像・後面像で、骨格はほぼ左右対称に写る。脊椎、両、にわずかな限局性の集積増加があるが、形と場所は関節や椎体の変性に一致する。前面像で骨盤の中央に最も強い集積があるのは、尿へ排泄されて膀胱にたまったである。
  • 解釈:による集積で、の所見はない(陰性分布)。
  • 次の一手:遠隔転移がない局所の癌として、と両側の拡リンパ節郭清を行い、その後は経過観察に入った。

💡 高齢者のでは、肩・・脊椎・膝などの関節周囲に左右対称ぎみの淡い集積がよく見られ、これは変性である。転移を疑うのは、関節から離れたに、大小不ぞろいの集積が非対称に散らばるときである。

症例2:多発骨転移

  • 臨床像:前立腺癌の既往があり、現在 が上昇している(同じ全身像が下の EI-06-02 である)。
  • 所見:全身前面像・後面像で、〜の複数の椎体、肋骨(後面像で細長い帯状の集積)、両肩の周囲、骨盤、両大腿骨近位のに、強い集積が多数、大きさも形も不ぞろいに散らばる。変性の集積と違って関節に限られず、左右対称でもない。
  • 解釈:多発。肋骨に沿った細長い集積は骨折でも起こるが、多数の椎体・骨盤・に同時に出る分布は転移の典型である。
  • 次の一手:があれば遠隔転移のある病期として全身治療が中心になる。骨折しやすいの病変や脊椎の病変は、症状と・で骨折や脊髄圧迫の危険を評価する。

症例3:乳癌術後の経過観察で見つかった4つの集積を SPECT-CT で分ける

  • 臨床像:64歳女性。2013年の乳癌検診ので右乳房に疑わしい病変が見つかり、組織は。右とのあと、化学療法6コースと放射線照射のを受け、で経過をみている(乳癌)。
  • 1回目(2017年)の平面像と :右側の集積だけで、変性病変と判断された。
  • 2回目(2019年)の平面像と -:前回なかった集積が複数出現した。前面像では左下部胸郭と左腸骨に、後面像では頭蓋骨とに新しい集積がある。3次元の 再構成像では左腸骨の細長い強い集積が最も目立ち、に中等度、肋骨の高さに小さな円形の集積が見える。

平面像だけでは4つとも「新しい集積」でしかない。同じ体位で撮った と重ねる(-)と、集積ごとに原因が分かれる。

部位 の集積 の所見 解釈 転移か
頭蓋骨 限局性の集積 (平面像での指摘) 転移の疑い 疑い(追加評価が要る)
左の肋骨(側胸部) 強い限局性の集積 を伴う治癒した骨折 治癒過程の骨折 いいえ
第3 中等度の集積 椎体血管腫の所見と圧迫 椎体血管腫による いいえ
左腸骨 強い集積 と硬化性が混在する病変 はい
  • 💡 集積の強さでは良悪性を決められない。 最も強く光ったのは治癒中のと転移の両方だった。骨芽細胞は骨折の修復でも転移でも働くからである。肋骨の集積は、でを伴うが見えれば良性と判断できる。
  • 💡 乳癌のは・・のいずれにもなる(、)。の集積は、病変の周りで反応した骨芽細胞を写している。
  • ⭐ や - を追加すると、の感度と特異度が上がる。 全身像で見つけた異常の位置を断層像で確かめ、の形態で変性・骨折・血管腫を除外する。3
  • 次の一手:(左腸骨)があるので、遠隔転移のある乳癌として全身治療を見直す。頭蓋骨の疑い病変は追加の画像で確かめる。椎体のは、転移ではなく血管腫によるものと記載しておく()。

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3. 甲状腺シンチグラフィ:4つの基本パターン

99mTc-過酸はヨウ素と同じ輸送体で甲状腺に取り込まれるので、結節や腺全体が「働いているか」が分かる(原理は 核医学、パターンの詳細は )。

パターン 見え方 解釈 次の一手
正常 大きさ正常の左右の葉が、蝶のような形に均一に写る。限局性の病変はない 正常な甲状腺 —
びまん性甲状腺腫 両葉がびまん性に腫大し、集積が全体に強い。葉の中に限局性の病変はない ・・手術から選ぶ
結節(熱結節) 一方の葉(この例では左葉)に強い限局性の集積があり、残りの甲状腺はほとんど写らない 自律的に働く結節がを抑え、正常の腺が休んでいる()。ほとんどが良性 や手術を検討する
一方の葉(この例では右葉)に周囲より集積の低い部分がある 機能のない結節。嚢胞、炎症、のいずれもあり得る 超音波で性状をみて、必要なら(、)

⚠️ の多くは良性だが、だけでは癌を否定できない。逆に熱結節は癌であることがまれなので、機能している結節を細胞診へ回さずに済む。熱結節では抑制された正常部分がほとんど写らないことが、単なる「濃い部分」と区別する手がかりになる。

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4. 動態腎シンチグラフィ

3つの相とレノグラム

動態は、を静注した直後から後面像を連続して撮り、腎と膀胱にを置いての時間変化を曲線にする。このがレノグラムである。

相 見ているもの 正常の目安
第1相:血流相 腎への血流(灌流) 静注直後に左右の腎がほぼ同時に写る
第2相:実質相 腎実質への取り込み(実質機能) 実質のは2〜3分ほどで頂点に達し、左右の曲線はほぼ重なる
第3相: 腎盂・尿管から膀胱への尿の流れ 頂点後になだらかに下がり、30分までに腎はほぼ空になる。膀胱の曲線はその分上がり続ける

症例1:反復性腎盂腎炎の7歳女児(正常例)

  • 臨床像:腎盂腎炎を繰り返す7歳女児。尿の流れにがないか、左右の腎が働いているかを確かめたい。
  • 所見:後面像の後半では、両腎はうっすら写るだけで、膀胱に強い集積が集まっている。レノグラムでは左右の腎の曲線がほぼ重なって約2〜3分で頂点に達し、その後なだらかに下がって30分でかなり低くなる。膀胱の曲線は腎の頂点を少し過ぎてから上がり始め、30分まで上がり続ける。
  • 解釈:実質機能・排泄とも左右差のない正常な動態。の原因として尿路のは考えにくい。
  • 💡 反復性腎盂腎炎の小児では、感染の後に残るを皮質に留まる製剤()ので評価し、はで調べる。動態腎シンチは「流れ」を見る検査なので、瘢痕や逆流の評価とは目的が違う。

症例2:右腎盂尿管移行部の閉塞

  • 臨床像:24歳女性。腎盂腎炎を繰り返し、2019年5月に右痛・・発熱で入院した。超音波で右腎盂がグレードIIIに拡張し、腎実質の厚さは約10 mm(水腎症)。
  • 選ぶ検査と理由:腎盂の拡張が「本当に尿の流れを妨げている閉塞」なのか、「広がっているが流れている」のかは、超音波の形だけでは分からない。尿の流れと左右別の腎機能をで見るために動態を行う。
  • 所見:後面像では、画面右(患者の右)の腎盂にがたまったまま残り、左腎は薄くなっている。レノグラムでは次のように左右が分かれる。
xychart-beta
    title "閉塞側と健側のレノグラム(実際の曲線から読み取った概数)"
    x-axis "静注後の時間(分)" [0, 2.5, 5, 10, 15, 20, 25, 30]
    y-axis "計数率(cps)" 0 --> 1700
    line [500, 1600, 1200, 700, 470, 320, 230, 190]
    line [150, 870, 930, 1040, 1180, 1280, 1270, 1080]
    line [100, 130, 230, 480, 720, 930, 1300, 1600]
曲線 形 意味
1本目:左腎() 約2.5分で鋭く頂点に達し、その後なだらかに下がる 正常な取り込みと排泄
2本目:右腎(閉塞側) 頂点がなくゆっくり上がり続け、20分過ぎに横ばいになって30分でもわずかしか下がらない が腎盂に停滞し、腎内の通過が遅れている
3本目:膀胱 30分まで上がり続ける から尿が膀胱へ流れている
flowchart TD
  A["反復する腎盂腎炎・右<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lumbar (region)'>腰部</span>痛"] --> B["超音波<br>右腎盂のグレードIII拡張"]
  B --> C{"拡張は閉塞によるものか"}
  C --> D["動態<span class='jp-term jp-term-diagram' title='renal scintigraphy'>腎シンチグラフィ</span><br>右腎盂に停滞・右の曲線が下がらない"]
  D --> E["右の高度な尿路閉塞"]
  E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiography'>血管造影</span><br>交差血管による外因性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Ureteropelvic junction obstruction'>腎盂尿管移行部閉塞</span>"]
  F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='laparoscopic'>腹腔鏡下</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pyeloplasty'>腎盂形成術</span>"]

💡 拡張しているだけで閉塞のない腎盂でも、がゆっくりたまって曲線が下がりにくいことがある。この区別のために、利尿薬を投与して流れが出るかを確かめるを行う。閉塞なら利尿薬を入れても排泄が進まない。

5. 心筋血流シンチグラフィ

何を見る検査か

冠動脈の動脈硬化性狭窄があると、安静時には保たれていた血流が負荷時に低下する(虚血)。心筋へのの取り込みは血流に比例するので、負荷時と安静時の2回撮って分布を比べる。どちらも心筋全体に対する相対的な血流分布である。

画像の読み方

  1. 3方向の断面:左室を短軸断(ドーナツ状の輪)、垂直長軸断・水平長軸断(の断面)に切り直して並べる。上段に負荷時、下段に安静時を同じ断面で並べ、欠けている部分が回復するかを見る。負荷時に輪やの一部が欠け、安静時には欠けずに写っていれば、負荷でだけ血流が落ちる部分である。
  2. 極座標表示(ブルズアイ表示):短軸断をからまでに並べた1枚の円の図。中心が、外周がで、上が、下が、左が中隔、右が側壁になる。
  3. AHAの17分画:極座標表示を17の区域に分けて、区域ごとに採点する。
環 分画番号 位置
(外側の輪) 1〜6 、中隔、中隔、、下側壁、前側壁
中部(中間の輪) 7〜12 と同じ並び
(内側の輪) 13〜16 、中隔、、側壁
(中心) 17

一般的な冠動脈の割り当て(がある)は、・中隔・が、・中隔が、側壁が左である。

  1. 半定量スコア:各分画を 0=正常、1=境界、2=中等度低下、3=高度低下、4=欠損 で採点し、17分画を合計する。
スコア 求め方 意味
負荷時合計スコア 負荷時の17分画の合計 負荷時の血流異常の広さと程度(虚血と梗塞の両方を含む)
安静時合計スコア 安静時の17分画の合計 安静時にも残る異常(主に梗塞・瘢痕)
差分合計スコア 負荷時合計 − 安静時合計 負荷で誘発される虚血の広さ

例として、負荷時合計17・安静時合計7なら差分合計は10であり、異常の大部分が負荷でだけ現れる可逆性の虚血で、一部に安静時にも残る異常がある、と読む。

症例:下壁の血流低下

⚠️ は横隔膜による減弱で見かけ上集積が低く写りやすい。心電図同期の壁運動や、による減弱補正と合わせて、本当の血流低下かを判断する。

6. ソマトスタチン受容体シンチグラフィ:神経内分泌腫瘍の2症例

の多くは細胞膜にを持つ。受容体に結合する類似体を核種で標識すると、受容体を持つ腫瘍だけが光る()。正常でも肝・脾・腎にがあり、尿へ排泄されて膀胱も写る。2つの症例は、同じ「グレード3」でも受容体が写るかどうかで検査も治療も変わることを示している。

症例1:精巣の高悪性度神経内分泌癌(受容体陰性)

  • 臨床像:69歳男性。2019年8月、超音波で右精巣に31×23 mmの腫瘍があり摘出した。組織はの(グレード3)で、一部に高分化な領域があり、脈管内への浸潤もあった。内科でのは倦怠感と体重減少で、食欲は保たれ便通は正常。上部・は陰性だった。
  • 選ぶ検査と理由:遠隔転移と、精巣以外にがあるかを探すためにを行った。
  • 所見:腹部の前面像・後面像で、肝・脾・腎にだけがあり、それ以外に集積の増加はない。
  • 解釈:病的なの発現はない。ただし、これは「病変がない」ことを意味しない。のは受容体の発現が乏しく、シンチの感度が低い。
  • 次の一手:低分化のでは が必要になる。分化の悪い腫瘍ほどブドウ糖代謝が盛んになり、受容体を失うからである。4

症例2:小腸の神経内分泌腫瘍と肝転移(受容体陽性)

  • 臨床像:70歳男性。2018年8月から体重減少と下痢。腹部超音波で肝に多発する腫瘤があり、ので(グレード3、 30%)。組織の形と免疫形質からは転移で、原発は消化管にある可能性が高い。上部・は陰性だった。
  • さらに調べる:2018年9月ので、腸間膜に病的な軟部組織腫瘤(リンパ節か)があり、が疑われた。多職種の腫瘍カンファレンスでが必要と判断された。
  • 所見:全身前面像では、肝全体に強い集積が不均一に広がる。脾・腎にも集積があり(生理的)、肝の下方の腹部中央寄りに小さな集積が2か所ある。- のでは、小腸に接する腸間膜の腫瘍と、その隣の所属リンパ節に一致する限局性の集積がある。上腹部の - では肝の広い範囲にまだらな強い集積が広がり、同じ断面のだけでは目立たないが受容体の分布としてはっきり分かる。
部位 解釈
小腸に接する腸間膜の腫瘍 小腸の()
その周囲の小さな軟部組織腫瘤
肝に多発する集積
  • 解釈:を過剰に発現する高分化型のグレード3。受容体が豊富なので、()がよく効くと期待できる()。
  • 次の一手:小腸と軟部組織の腫瘤の外科的切除、による治療、の検討。のの成績は 核医学 のの節を参照。

2症例を比べる

項目 症例1(精巣) 症例2(小腸)
病理の表現 の(グレード3) (グレード3、 30%)
シンチ 陰性(だけ) ・リンパ節・がすべて陽性
の読み 低分化(受容体を失っている) 高分化型のグレード3(受容体を保っている)
次の画像検査 受容体の分布を治療前の基準にする
受容体を標的にした治療 見込みにくい ・の候補

⭐ 消化管膵のはで分類し、がG1で3%未満、G2で3〜20%、G3で20%を超える。G3のなかには、受容体を保つ高分化型のG3と、受容体の乏しい低分化のが含まれる。前者は受容体イメージングが陽性になり得ての候補を選ぶのに役立ち、後者は の方がよく写る。4 症例2のように病理で「」と書かれていても、受容体イメージングの結果がの判断とを動かす。

⚠️ ここで使った 111In や 99mTc 標識のによるは、現在では 68Ga などで標識したに置き換えるべきとされ、例の検索や の適応判定もで行うのが標準になっている。4 は が使えない施設での選択肢である。

画像で確かめる

7. FDG PET-CT の症例

の症例は、検査の目的ごとに分けて考えると整理しやすい。

目的 症例 が答えたこと
正常像を知る 乳癌術後の経過観察 だけで病的集積なし
() 左肺下葉の肺癌 リンパ節転移と多発 → 手術の対象ではない
良性か悪性か 右肺下葉の 限局性の集積 → 悪性を疑う
転移の広がり 術後の肝病変 孤立性でなし → 局所治療
治療効果判定 乳癌の多発転移、2例 形が残っていても代謝が消えた

症例1:正常像(乳癌術後10年の経過観察)

  • 臨床像:55歳女性。2010年に左乳房のでと左を受け、2015年までと化学療法を行った。2019年に経過観察の を撮った。
  • 所見:全身の像で、脳(の高さの横断融合像では小脳に強い集積)、咽頭、心筋、肝、両腎の腎盂、尿管、膀胱に集積がある。尿管は途切れ途切れの細い線として写る。
  • 解釈:すべてで、病的集積はない。
  • 💡 尿中に排泄された は腎盂・尿管・膀胱を強く光らせる。尿管の集積は途切れ途切れの線になるので、骨盤内のリンパ節と見誤らないよう、 で尿管の走行に一致するかを確かめる。心筋の 集積は人によって、また同じ人でも撮影ごとに大きく変わる(別の症例では心筋が最も強く光っている)。

症例2:肺癌の病期診断

  • 臨床像:74歳女性。肺癌検診で左肺に腫瘤が見つかり、ので左肺の軟部組織腫瘤を確認した。病変の広がりを知るために を行った(肺癌)。
  • 所見:
    • の横断・・で、左肺下葉の背側に不整な腫瘤があり、融合像で強い集積がある。
    • と、の下()のに限局性の集積がある。
    • 全身の最大値投影像で、脊椎・肋骨・骨盤・両・に無数の集積が散らばる。肩の高さの横断融合像でも、椎体とその周囲、片側のの近位に限局性の集積がある。
  • 解釈:左肺下葉の悪性腫瘍、リンパ節転移と縦隔のリンパ節転移、多発。同側のはN1、リンパ節はN2、骨への遠隔転移はM1にあたり、遠隔転移のあるIV期になる(分類)。
  • 次の一手:手術ではなく全身治療が中心になる。
  • ⭐ の主な適応の一つが で、特にリンパ節転移と遠隔転移の評価に強い。で腫瘤が一つに見えても、 でが見つかればがまったく変わる。

症例3:小さな肺結節の良悪性

  • 臨床像:75歳女性。COPDがあり、2019年1月に呼吸困難でを疑われて調べた。肺の で右肺下葉に8×9 mm の辺縁不整な結節があった。3か月後の確認で結節は変わらなかったが、 が勧められた(結節)。
  • 所見:全身の最大値投影像では、右下胸部にごく小さな点状の集積が1つだけ見える。横断の融合像で、右肺下葉の背側のに一致して限局性の集積があり、同じ断面ので小さな結節が確認できる。
  • 解釈:右肺の限局性の病的集積で、悪性を疑う。
  • 次の一手:組織診断へ進める。
  • 💡 3か月で大きさが変わらないことは、結節の良性の証明にならない。増大速度の遅い腺癌もあるからである。
  • ⚠️ 1 cm未満の結節では、の分解能の限界()で集積が実際より低く測られ、悪性でも偽陰性になり得る。逆に炎症や肉芽腫でも集積する。 の結果は「悪性の確率を上げ下げする」情報として使い、最終的には組織で確かめる(FDG-PET)。

症例4:直腸癌術後の肝病変——孤立性か、播種か

  • 臨床像:53歳女性。直腸腺癌でとを受けた。2019年7月の再で肝に新しい病変があり、超音波でも転移が疑われ、も疑われた(大腸癌)。
  • 選ぶ検査と理由:播種を除外するために を行う。が一つだけなら局所治療、播種があれば全身治療と方針が分かれるからである。
  • 所見:全身の最大値投影像で、心筋が最も強く光り、腸管(結腸)に沿った帯状の集積、腎、膀胱がある(いずれも生理的)。これとは別に、の外側に小さな円形の強い集積が1つある。横断の融合像ではその集積がの辺縁にあり、同じ断面のでは病変をはっきり指摘できない。右腎の集積は尿中へ出た である。
  • 解釈:集積の強いの孤立性で、を示す集積はない()。
  • 次の一手:肝臓外科医と、画像下治療を行う放射線科医に相談し、を検討する。

💡 腸管のは結腸の走行に沿った帯状・連続的な形をとり、播種や転移は腸管の走行から外れた限局性の塊になる。形と位置をと照らし合わせることが、「播種なし」と言い切るための条件である。

症例5:乳癌の多発転移の治療効果——CTは変わらず、PETは消えた

  • 臨床像:71歳女性。2014年に左乳癌。2018年9月の で多発・多発、肺転移の疑い、横隔膜より上のリンパ節転移。で治療したが、その後の で肝・骨、さらにリンパ節転移が進行した。(を標的とする抗体薬)に切り替え、治療後に で効果を判定した。
  • 問い:で見た治療効果と、で見た治療効果は同じか。
部位 治療前後の 治療前後の (融合像・最大値投影像)
治療後も肝に低吸収の腫瘤が残る 治療前は肝に多数の強い集積があったが、治療後は限局性の集積がなくなった
脊椎ので硬化性病変が残る 治療前は〜の多数の椎体に集積があったが、治療後は完全に代謝が消えた
全身 — 治療前の最大値投影像では肝・脊椎・骨盤・リンパ節に無数の集積、治療後は脳・腎・膀胱のだけ
  • 解釈:・のほぼ完全な代謝的退縮。の形態では「病変が残っている」としか言えないが、では腫瘍の活動がほぼ止まったと判断できる。
  • ⭐ 治療効果の判定は の主な適応の一つである。腫瘍が小さくなるより先に代謝が下がる。
  • 💡 の効果は では判定しにくい。 効いたは修復の過程で硬化性に変わり、治療後もとして残る(かえって目立つこともある)。代謝の消失を見る の方が、の活動性を直接示す。固形腫瘍の代謝反応の評価基準として PERCIST がある。

症例6・7:ホジキンリンパ腫の治療効果判定

リンパ腫はを強く取り込む病型が多く、がと治療効果判定の中心になる()。

症例6:完全な代謝的・形態的寛解

  • 臨床像:32歳女性。2019年1月から痛みを伴う頸部リンパ節腫大、貧血、。2019年2月に診断目的の 、同年8月に治療効果判定の 。診断は。
  • 治療前の所見:全身の最大値投影像で、頸部・縦隔から腹部・骨盤まで、体の正中に沿って横隔膜の上下に多数の強い集積が連なる。腹部のでは、の椎体の前に塊を作るリンパ節病変に強い集積がある。
  • 治療後の所見:同じで椎体の前の塊は消え、集積もない。最大値投影像には脳・心筋・腎・膀胱のだけが残る。
  • 解釈:横隔膜の上下に広がっていたリンパ節病変の、完全な代謝的かつ形態的な寛解。横隔膜の両側のリンパ節病変は、病期ではIII期以上のにあたる()。

症例7:代謝は完全寛解、形は部分反応

  • 臨床像:15歳男性。鉄欠乏ではない慢性の貧血以外に症状はない。定期の超音波で脾が中等度に腫大し、内部に多数の病変があった。頸部・胸部・腹部ので横隔膜の上下に病的リンパ節があり、2019年6月に 、8月に治療効果判定の 。診断は。
  • 治療前の所見:肩の高さので、気管の右()と左腋窩のリンパ節が腫大し、融合像で強い集積がある。全身の最大値投影像では、縦隔・左腋窩と腹部に集積が多発し、(脾の位置)にも集積がある。
  • 治療後の所見:同じ高さので、これらのリンパ節は小さくなったがまだ見える。融合像ではそのリンパ節に集積がない。
  • 解釈:リンパ節病変の完全な代謝的寛解と、部分的な形態的反応。

残った腫瘤をどう判定するか:5段階スケール

リンパ腫の効果判定では、残った病変の集積を縦隔と肝の集積を基準にして5段階で評価する(Deauvilleスコア)。5

スコア 残存病変の集積
1 背景を超える集積なし
2 縦隔以下
3 縦隔を超えるが肝以下
4 肝を中等度に超える
5 肝を著しく超える、または新病変

⭐ スコア1〜3は、残った腫瘤があってもなくても「完全代謝反応」であり、とみなす。5 症例7のように治療後にリンパ節の形が残っていても、集積が消えていればと判定できる。残った塊の多くは線維化などの治療後変化で、生きた腫瘍ではないからである。が中心だった旧来の基準では、治療後に残る腫瘤を「未確定の」という別の区分で扱っていた。を組み込んだ現行の基準ではこの区分は使わず、が無ければ、縮小して残る腫瘤は生検で腫瘍が無いと確かめない限り部分反応止まりとされる。5

⚠️ スコア3の扱いには注意が要る。標準治療では多くの場合に予後良好を示すが、治療を減らすでは、治療不足を避けるためにスコア3を不十分な反応とみなす方がよいとされる。5

💡 では、がも高感度に写すため、のためのはもはやルーチンには必要ない。5

flowchart TD
  A["リンパ腫の治療後 <span class='jp-term jp-term-diagram' title='positron emission tomography–computed tomography'>PET-CT</span>"] --> B{"残存病変の集積は肝以下か<br>(5段階スケールの1〜3)"}
  B -->|"はい"| C["完全代謝反応<br>腫瘤が残っていても<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complete remission'>完全寛解</span>とみなす"]
  B -->|"いいえ(4〜5)"| D{"治療前より集積が下がったか"}
  D -->|"下がった"| E["部分代謝反応<br>治療終了時なら残存病変あり"]
  D -->|"下がらない・新病変"| F["治療効果なし・進行"]

画像で確かめる

  • EI-01-02 大腸癌の( ):上腹部の横断融合像で辺縁に限局性の強い集積があり、右ので同じ場所を見比べる。右腎の強い集積は生理的なである。症例4と同じ読み方で、「病的集積」と「」を分ける。
  • EI-02-02 乳癌の多発転移(肝・恥骨):乳癌のの融合像。肝の病変は周囲がに光り中心に集積がなく()、膀胱の下の恥骨にも集積がある。膀胱の強い集積は正常所見である。
  • EI-03-02 と肺:右の腫瘤に の強い集積があり、のでその腫瘤からを行っている。症例3と同じく、で悪性を疑った病変を組織で確定する流れを確かめる。
  • EI-12-02 集積を示す転移疑いリンパ節:大腸癌の経過観察。静脈相の造影CTで右傍腸骨領域に短径16 mmの病的リンパ節があり、10日後の で同じ位置に集積増加がある。経口造影剤の入った腸管(で白く写る)を病変と取り違えないことも確かめる。

8. まとめ

症例 検査 決め手になった所見 次の一手
前立腺癌の 関節周囲の淡い集積だけ(変性)、膀胱は生理的
多発 に非対称に多発する強い集積 全身治療
乳癌術後の新しい集積 +- 肋骨=、L3=血管腫の圧迫、左腸骨=溶骨・硬化の混在 転移は左腸骨だけ、頭蓋骨は追加評価
甲状腺の4パターン 99mTc-過酸 びまん性増加・抑制を伴う熱結節・ は超音波と細胞診
反復性腎盂腎炎の小児 動態腎シンチ 2〜3分で頂点、30分で排泄 なし
右 動態腎シンチ 右腎盂の停滞、下がらない曲線 で交差血管 →
の血流低下 心筋血流シンチ 極座標表示のの低下 負荷と安静の比較で虚血か梗塞か
精巣の シンチ だけ(低分化で受容体なし)
小腸の シンチ・- 原発・リンパ節・がすべて陽性 切除・・
肺癌の ・リンパ節、多発 IV期として全身治療
小さな 限局性の集積 組織診断
の肝病変 孤立性、播種なし などの局所治療
乳癌の治療効果 の病変は残るが代謝はほぼ消失 治療継続
5段階スケール1〜3なら腫瘤が残っても 治療終了・経過観察
  • 核医学の症例は、臨床の問い → → の除外 → 残った集積の解釈 → 方針、の順に読む。
  • は感度が高いが特異度が低い。- で骨折・変性・血管腫を除いて初めて「転移」と言える。集積の強さは良悪性を決めない。
  • 甲状腺の熱結節は抑制された正常部分が写らないのが特徴で、ほぼ良性。は癌を否定できない。
  • 動態腎シンチでは、下がらずに上がり続ける腎の曲線が閉塞を示す。拡張だけか閉塞かはで分ける。
  • 心筋血流シンチは負荷時と安静時を比べ、極座標表示と17分画のスコアで虚血の広さを数える。
  • は、受容体が写れば高分化型での候補、写らなければ低分化を考えて へ進む。現在は受容体イメージングもが標準。
  • は・良悪性の鑑別・転移の広がり・治療効果判定に使う。効果判定では形より先に代謝が変わり、リンパ腫では5段階スケール1〜3が完全代謝反応である。

出典

  1. 1.Biochemical outcome after radical prostatectomy, external beam radiation therapy, or interstitial radiation therapy for clinically localized prostate cancer(JAMA(D'Amico AV, et al.)・1998)PubMed抄録(PMID 9749478)で確認した。低リスクは病期T1c・T2aかつPSA 10 ng/mL以下かつグリーソンスコア6以下、中間リスクは病期T2bまたはグリーソンスコア7またはPSA 10超20 ng/mL以下、高リスクは病期T2cまたはPSA 20 ng/mL超またはグリーソンスコア8以上と定義されていること。閲覧 2026-09-26
  2. 2.EAU-EANM-ESTRO-ESUR-ISUP-SIOG Guidelines on Prostate Cancer-2026 Update. Part I: Screening, Diagnosis, and Local Treatment with Curative Intent(European Urology・2026)PubMed抄録(PMID 42457454、Eur Urol 90(3):254-269)で、"Prostate-specific membrane antigen positron emission tomography imaging is the most sensitive technique for identifying metastatic spread." の一文と、新しい5段階のEAUリスク分類を導入したこと("A new five-tier EAU classification has been introduced.")を確認した。閲覧 2026-09-26
  3. 3.The EANM practice guidelines for bone scintigraphy(European Association of Nuclear Medicine (EANM)・2016)PMC全文で確認した。SPECTを、可能ならSPECT/CTを追加すると骨シンチグラフィの診断感度と特異度を有意に高められ、全身像で見つかった異常の位置決めに断層像を用いること。閲覧 2026-09-25
  4. 4.Appropriate Use Criteria for Somatostatin Receptor PET Imaging in Neuroendocrine Tumors(Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging(Journal of Nuclear Medicine、Hope TA, et al.)・2018)PMC全文で確認した。ソマトスタチン受容体PETは111In-ペンテトレオチドシンチグラフィを、後者が使われているすべての適応で置き換えるべきとされること。消化管膵神経内分泌腫瘍の表2で、高分化型のG1はKi-67 3%未満、G2は3〜20%、低分化の高悪性度G3は20%超とされ、G3ではソマトスタチン受容体の陽性率がまちまちで18F-FDG PETの方が優れることが多いこと。高分化型G3神経内分泌腫瘍はソマトスタチン受容体PETが陽性になり得て、PRRTの候補選びに役立つこと。低分化の神経内分泌癌は受容体発現が低く、18F-FDG PETの方がよく描出されること。閲覧 2026-09-25
  5. 5.Recommendations for initial evaluation, staging, and response assessment of Hodgkin and non-Hodgkin lymphoma: the Lugano classification(2014)PMC全文(PMC4979083)で確認した。PET 5段階スケールが1=背景を超える集積なし、2=縦隔以下、3=縦隔を超え肝以下、4=肝を中等度に超える、5=肝を著しく超える集積または新病変であること。表3で完全代謝反応はリンパ節・節外病変のスコア1〜3で、残存腫瘤の有無を問わないこと。FDG集積性の病型ではPET-CTと5段階スケールで反応を評価し、完全代謝反応は腫瘤が残っていても完全寛解とみなすこと。ホジキンリンパ腫の病期診断では骨髄生検はもはやルーチンには必要ないこと。2026-09-26に再確認し、スコア3は標準治療では多くの場合に予後良好を示すが、治療を減らす試験では不十分な反応とみなす方がよい場合があること、旧来の未確定の完全寛解(CRu)の区分はPETの導入で廃止され、PET-CTが無ければ残存腫瘤は生検なしでは部分反応止まりとされることも確認した。閲覧 2026-09-25