微生物学

微生物学 · 1/36

敗血症(定義・病態機序・微生物学的診断)

Sepsis (definition, pathomechanism, microbiological diagnosis)

応用トピック
敗血症・敗血症性ショック
疾患
菌血症全身性炎症反応症候群(SIRS)多臓器機能障害症候群敗血症
スコア
NEWS2(早期警告スコア)

🧠 敗血症は「感染」そのものではなく「感染に対するの暴走」で人が死ぬ病態である。 菌血症(血液中に細菌がいるだけ)は敗血症の引き金にはなるが、実際に患者を殺すのは細菌そのものではなく、による・微小循環不全・という「行き過ぎた炎症反応」である。だからこそ治療の柱は「原因菌を叩く抗菌薬」と「暴走した炎症反応を支える」の両輪になる。

敗血症の定義

敗血症とは、感染に対するなによって引き起こされる、生命を脅かす臓器機能不全と定義される。病原体の存在と、それに対する免疫応答の両方が関与する、感染に対する体の反応が自分自身の組織・臓器を傷害してしまう、生命を脅かす病態である。

敗血症の入口としてまず挙がるのが、細菌・真菌が血流に入る菌血症(血液中に細菌が存在すること)である。菌血症はという形で免疫系を刺激し、敗血症、さらには死に至ることがある。

⚠️ ただし菌血症は敗血症の必要条件ではない。 上の定義に「血液中に菌がいること」は入っておらず、実際、像を呈した成人でも抗菌薬投与前の血液培養が陽性になったのは31.4%にとどまる1。は肺・尿路・腹腔・皮膚軟部組織などさまざまで、血流に菌が出ないままなだけが全身に及ぶ経路もある。「菌血症の延長線上にだけ敗血症がある」と覚えると、培養陰性例を敗血症から外す方向に倒れる。

トリガーとなるのは多くの場合グラム陰性菌の内毒素や、グラム陽性・陰性菌の外毒素(など)である。宿主側の要因(免疫不全・基礎疾患など)は、敗血症の起こりやすさ・重症度にも直結する。

SIRSと重症度のスペクトラム

()とは、感染に限らず・熱傷・・自己免疫疾患などさまざまな侵襲に対する急性の全身反応である。以下の4項目のうち2項目以上を満たすと定義される2。

項目 基準
体温 36℃未満 または 38℃超
呼吸数 頻呼吸 20回/分超 または 32 mmHg未満(4.3 kPa)
心拍数 90回/分超
4,000/mm³未満 または 12,000/mm³超、あるいは()10%超

💡 呼吸数の項目は「20回/分超 または 32 mmHg未満」で1項目である2。が続くと呼吸数そのものが目立たなくなっても動脈血分圧は下がるため、原著は両者を同一項目の代替として並べている。別々の項目として数えると4項目が5項目になり、「2項目以上」という閾値の意味が変わってしまう。

flowchart TD
  A["無症候性菌血症"] --> B["菌血症"]
  B --> C["敗血症<br>感染が原因の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic inflammatory response syndrome'>SIRS</span>"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='severe sepsis'>重症敗血症</span><br>敗血症+臓器機能不全"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='septic shock'>敗血症性ショック</span><br>敗血症+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intensive care unit'>ICU</span>治療下でも制御不能な低血圧"]
  • 敗血症=感染が原因の
  • /=敗血症+臓器機能不全
  • =敗血症+での治療下でも制御できない低血圧

⚠️ この「→敗血症→→」というは、2016年のでには置き換えられている。 は①敗血症が連続体をなすという従来のモデルは誤解を招く、②基準は感度・特異度が不十分、という2点を挙げて、敗血症=感染+の2点以上の急性増加(10%超に相当)という定義へ移行し、「」という区分そのものを冗長として廃止した。も「制御できない低血圧」という記述的な定義から、後もMAP 65 mmHg以上を保つのにを要し、かつ血中乳酸値が2 mmol/L超という測定可能な基準へ改められた(40%超)2。上のはとして試験・教科書に残っているので両方を対応づけて覚える。

⚠️ このは成人のものである。 は小児を定義の対象外としており3、小児の敗血症定義がから離れたのは2024年である。SCCMの小児敗血症定義タスクフォースは、感染を疑う小児でPhoenix Sepsis Score(呼吸・循環・凝固・神経の4)2点以上を敗血症、うち1点以上をと定めた。同タスクフォースは、置き換えられた2005年の小児基準について「予測性能に乏しい基準を用い、冗長な『』という用語を含んでいた」と述べている3。「2016年では終わった」は成人の話で、小児ではその8年後まで続いていた。

⚠️ は「単独のスクリーニング」ではない。 では外でも使える簡便な指標としてqSOFA(呼吸数22回/分以上、意識変容、100 mmHg以下のうち2項目以上)が提案された2が、その後の検証で 2項目より特異度は高いが感度が低いことが繰り返し示された。Surviving Sepsis Campaign は2021年版でを・NEWS・に代わる単独スクリーニング手段として用いないことを「強い推奨」とし4、これを置き換えた2026年版でも「院内の急性期患者では、単独のスクリーニング手段としてよりNEWS・NEWS2・・を用いることを推奨する(強い推奨・エビデンスの確実性は中等度)」と、同じ向きの推奨が維持されている(原文の表記は NEWS, NEW2, MEWS, or SIRS)5。陽性は「敗血症を疑え」という警報であって、陰性でも敗血症は否定できない。⭐ 皮肉なことに、が退けたはずのは、いまも「スクリーニングに使ってよい」の側に残っている——退けられたのは「 2項目=敗血症」という定義であって、を警報として使うことではない。

病態機序

  • 微生物およびその産生物が反応の引き金となる
  • マクロファージ・単球・上皮細胞によるの産生亢進
  • 複数のメディエーター間の複雑な相互作用・相互活性化
  • 転帰はとメディエーターのバランスによって決まる
flowchart TD
  A["微生物学的刺激<br>細菌・真菌・寄生虫・ウイルス"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue factor'>組織因子</span>の発現<br>マクロファージ・好中球・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dendritic cell'>樹状細胞</span>・T細胞の活性化"]
  B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coagulation cascade'>凝固カスケード</span>の活性化"]
  B --> D["活性化顆粒球による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive oxygen species (ROS)'>活性酸素種</span>の放出<br>シグナル増幅"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperinflammation'>過剰炎症</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tumour necrosis factor'>TNF</span>α・IL-1β・IL-6・IL-8・PAF・C5a・MIF・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high mobility group box 1'>HMGB1</span>"]
  D --> F["低<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reactive inflammation'>反応性炎症</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-inflammatory cytokine'>抗炎症性サイトカイン</span>・アポトーシス・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immune cell'>免疫細胞</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anergy'>アネルギー</span>"]
  C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated intravascular coagulation, DIC'>播種性血管内凝固</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated intravascular coagulation'>DIC</span>)"]
  E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular endothelial injury'>血管内皮傷害</span>"]
  G --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='microcirculatory dysfunction'>微小循環障害</span>"]
  H --> I
  I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue hypoxia'>組織低酸素</span>・心血管機能不全・アポトーシス"]
  J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tissue injury'>組織傷害</span>→臓器機能不全→死"]

💡 図中の略語:α=α(tumor necrosis factor alpha)、IL=、PAF=、C5a=5a(complement component 5a)、MIF=、=高群タンパク質1(high mobility group box 1)。これらはいずれも側のメディエーターであり、・アポトーシス・の(化)といった低側の反応とバランスを取り合う。

診断

⚠️ 敗血症は臨床診断であり、単一のや検査で確定も除外もできない。 Surviving Sepsis Campaign 2026 はこれを good practice statement として明記している5。以下のは「敗血症らしさ」を支えたり原因菌を突き止めたりするためのものであって、どれ一つとして敗血症の可否を決める検査ではない。

より詳しい検体採取・培養法については菌血症・心内膜炎・敗血症の微生物学的診断も参照。

臨床所見

低体温または、頻呼吸、頻脈、アルカローシス、筋痛、皮疹、黄疸、消化管症状、点状出血など。

検査所見

検査項目 所見
増加または減少、幼若白血球の出現
好酸球
血小板 血小板減少
()、PCT()——抗菌薬を「始める」判断には足さず、「やめる」判断の補助に使う5
血清鉄 低下
その他 代謝性アシドーシス、、血糖恒常性の異常
血液サンプルの多重 の検出
血液培養 原因菌診断の核——敗血症そのものを確定・除外する検査ではない。下記参照

治療

治療の柱は、・(輸液、、酸素投与、ステロイドなど)・感染源のコントロールの3つである。授業で経験的レジメンの例として挙がるのはバンコマイシン+/アミノグリコシド、必要に応じて併用という組み合わせである。

⚠️ この「全部盛り」を既定値にしない。 Surviving Sepsis Campaign 2026 は、をどこまで広げるかをリスク因子の有無で切っている5。

する範囲 2026年版の推奨(すべて条件付き)
特定の(MDR)へのカバー その菌に感染するリスクが高い成人には経験的にカバーすることを提案(確実性きわめて低い)。リスクが低い成人にはカバーしないことを提案(同)。リスク因子として当該MDR菌の保菌、同菌による、の長期使用、当該菌の頻度が高い病棟への長期入院を挙げる
敗血症・の成人には行わないことを提案(確実性は低い)。免疫抑制、抗菌薬の長期使用、長期入院、腹腔内の感染源といった真菌感染のリスク因子がある症例で個別に検討する、という付記が付く
嫌気性菌へのカバー 嫌気性菌感染のリスク因子(腹腔内または深部の的感染源、、頭頸部感染、中枢神経系の膿瘍・)が無い成人には、嫌気性カバーを含まないレジメンを提案(確実性きわめて低い)

💡 広げたら必ず狭める。 2026年版は、微生物学的診断と感受性が判明した時点での(不要な薬の中止・スペクトラムの縮小)を強い推奨として置いている(確実性はきわめて低い)。培養で病原体が同定されなかった場合のも条件付きで提案されている5。⭐ の広さは「初手をどこまで広げるか」と「いつ狭めるか」の対で覚える。

抗菌薬を「いつ打つか」は、「疑ったら全例1時間以内」ではなく、敗血症の確からしさとショックの有無という2つの軸で分かれる5。

病像 抗菌薬 推奨の強さ(確実性)
の可能性がある/高い/確定 直ちに、理想的には認識から1時間以内 強い(きわめて低い)
ショックが無く、敗血症の可能性が高いか確定 直ちに、理想的には認識から1時間以内 強い(きわめて低い)
ショックが無く、敗血症の可能性があるにとどまる 時間を区切った迅速な検索を行い、感染の懸念が残れば最初に疑った時点から3時間以内 条件付き(きわめて低い)
ショックが無く、感染の可能性が低い 厳重に監視しながら差し控える 条件付き(きわめて低い)

上の4行は「確からしさ×ショックの有無」で切った主要な分岐であって、Antibiotic initiation に属する推奨のすべてではない。院内での診療開始まで60分を超えると見込まれる(確定または可能性が高い敗血症+低血圧)では、救急車内・搬送機内での抗菌薬投与が提案されている(条件付き・きわめて低い。ただし車内・機内で敗血症をスクリーニングするが整っていることが前提)5。また、ショックが無く敗血症の可能性がある例では感染性かかの迅速な評価を行うこと自体が good practice statement として置かれている5。

⚠️ いちばん落ちやすいのは表の最後の行である。「敗血症かもしれない」から「感染らしくない」までを一括りに1時間ルールへ流し込むと、抗菌薬の乱用側へ倒れる。2026年版はこの分岐を置いて、を推奨の中に組み込んでいる5。

⚠️ 敗血症・はであり、治療と蘇生は直ちに開始する。 Surviving Sepsis Campaign 2026 はこれを good practice statement として掲げている5。ただし「直ちに」がそのまま抗菌薬の話になるのは上の表の上2段までである。同じガイドラインは、ショックが無く敗血症の可能性があるにとどまる例には時間を区切った検索を、感染の可能性が低くショックも無い例には差し控えを置いているので、「疑った全例で抗菌薬までの時間を最小化する」とは読まない。緊急性は蘇生と評価(を要するの探索、感染らしさの迅速な見極め)の側に掛かっており、抗菌薬を打つ時間枠のほうは上の表のとおり確からしさとショックの有無で分かれる。

感染源のコントロール(膿瘍のドレナージ、感染デバイスのなど)については、緊急のを要する解剖学的ながないかを速やかに評価し(good practice statement)、要すると判断したら遅いより早いほうがよく、理想的には診断から6時間以内に行う(条件付き推奨・確実性はきわめて低い)5。

💡 は「始める」ためではなく「やめる」ために測る。 Surviving Sepsis Campaign 2026 は、抗菌薬開始の判断では臨床評価単独を併用より優先し(条件付き推奨・きわめて低い)、が十分で最適な投与期間が不明な症例では中止の判断にと臨床評価の併用を臨床評価単独より優先する(条件付き推奨・低い)としている5。2021年版が挙げていた根拠は、開始側が3件のRCT・1,769例ので短期死亡率・/入院日数に差なし、中止側が14件のRCT・4,499例で死亡率 RR 0.89(95%CI 0.80〜0.99)であった4。「上がっているから抗菌薬を始める」という使い方が支持されていない点が要点である。

血液培養ボトル

血液培養は輸送用培地を兼ねた培養ボトルを用いる。密閉系で血液を直接ボトル内の液体培地へ採取し、自動血液培養装置で培養する。

  • 一度に2本(好気性1本+嫌気性1本)を接種する
  • 3セットを20分間隔で採取する。ただしのでは、2023年のDuke-ISCVID基準が採血の時間間隔と「別々の」という要件そのものを撤廃し、成人の菌血症疑いでは最低2セットを採ることとした——別々の部位から採ること自体は M47などのbest practiceとして引き続き推奨されるが、基準としては要求されない6
  • 1セットあたりの採血量が、を検出できるかどうかを左右する最も重要な因子である(血中の菌量がもともと極めて少ないため)。ボトルの充填不足が見逃しの主因になる7
  • の原則(、手袋の使用)を守る
  • 可能であれば発熱の上昇期に、抗菌薬投与前に採取するのが望ましい。Surviving Sepsis Campaign 2026 の推奨文は「可能な限り速やかに、理想的には抗菌薬投与前に採取する」(強い推奨・確実性は低い)で、推奨文そのものに時間の数値は置かれていない5。2021年版は「採取のために抗菌薬開始を実質的に遅らせない(45分未満を目安)」という書き方をしていた4——どちらも「培養のために抗菌薬を待たせない」という同じ趣旨で、数値の有無だけが違う
  • 陽性化しなければ通常5日間培養して陰性と報告する(施設によって上限を5〜7日に置く)。連続モニタリング式のでは5〜7日目に陽性化する微生物はごくわずかで、総説が引くMarginsonらの検討では陽性血液培養の2.7%(臨床的に意味のあるものは0.5%)にとどまった7
  • 装置はボトル底部のインジケーターディスクの色調変化を光度計で測定し、発育陽性のボトルを自動的にフラグする——ここからの過程が始まる

⭐ 血液培養は「2本×3セット×20分間隔」で覚える。 好気性・嫌気性の2本を1セットとし、これを20分間隔で3セット、抗菌薬投与前・発熱の上昇期に採取するのが原則である。⚠️ ただし20分間隔と別穿刺は、の(2023年Duke-ISCVID)では要件から外れている6——覚え方として有用だが、「守らなければ診断できない」規則ではない。

⚠️ 「培養期間を延ばせば発育の遅い菌が拾える」を一般則にしない。 連続モニタリング式のを用いた研究では、培養期間の延長は血液培養の感度を有意には改善せず、古典的に「」の代表とされた群でさえ標準の5日間で分離できている7。5〜7日目に出てくるのはCO2産生の乏しい菌や発育の遅い菌・真菌(Candida属・・Brucella属など)が主体である7。は全例に掛けるものではなく、Bartonella属・Brucella属・Cutibacterium acnes・真菌など特定の菌を疑ったときに検査室へ依頼するものだと理解しておく(→5/15:菌血症・心内膜炎・敗血症の微生物学的診断)。

⚠️ 血液培養は陰性でも敗血症を否定しない——そして抗菌薬を1回打っただけで感度が落ちる。 像を呈した成人325例の前向き研究では、抗菌薬投与前の血液培養が陽性になったのは31.4%(102/325)にとどまった。さらに抗菌薬開始から中央値70分後に採り直した血液培養の陽性は19.4%(63/325)へ下がり、投与後培養の感度は52.9%(95%CI 42.8〜62.9)だった1。「培養が陰性だから敗血症ではない」とは言えず、逆に「後で採ればよい」も成立しない。

まとめ

  • 敗血症は感染に対するなによる生命を脅かす臓器機能不全である。無症候性菌血症→菌血症→敗血症(感染による)→(+臓器機能不全)→(+制御不能な低血圧)という重症度のはSepsis-1/2の旧定義による段階づけで、現行の定義ではない。菌血症は敗血症の必要条件でもなく、抗菌薬投与前でも血液培養が陽性になるのは約31%にとどまる1。
  • は体温異常・呼吸(頻呼吸20回/分超または 32 mmHg未満)・頻脈・異常の4項目のうち2項目以上で診断される、感染に限らないである2。
  • 病態機序の中核は、微生物刺激によるとの活性化がとを引き起こし、→→臓器機能不全→死へ至る過程であり、と低のバランスが転帰を左右する。
  • 敗血症そのものは臨床診断であり、単一の検査で確定も除外もできない(2026年版の good practice statement)5。に・などの、血小板減少、多重を合わせて判断する。一方原因菌の同定は血液培養が中心で、抗菌薬投与前・発熱上昇期に好気性+嫌気性ボトルを3セット採取する(培養期間は通常5日間で、は狙う菌があるときに依頼する7)。ただし抗菌薬投与前でも陽性率は約31%にとどまり、投与後は感度が約53%へ落ちる1——培養が陰性でも敗血症は否定されない。
  • 定義は2016年ので更新され、基準による段階づけと「」という区分は廃止、敗血症=感染+SOFA 2点以上の増加、=を要する低血圧+乳酸2 mmol/L超となった2。は単独のスクリーニング手段としては推奨されず、2026年版でもNEWS・NEWS2・・を優先する(強い推奨)5。⚠️ このは成人のもので、小児の敗血症定義がから離れたのは2024年のPhoenix基準による3。
  • 治療は・(輸液・・酸素・ステロイド)・の3本柱からなる。敗血症・はであり治療と蘇生は直ちに開始する(good practice statement)が、抗菌薬の開始時期はSurviving Sepsis Campaign 2026 で確からしさとショックの有無によって分かれる——とショックのない「可能性が高い/確定」の敗血症は1時間以内(強い推奨)、「可能性がある」にとどまる例は迅速な検索のうえ3時間以内(条件付き)、感染の可能性が低くショックが無ければ監視しつつ差し控える(条件付き)。は理想的に診断から6時間以内5。の「広さ」もリスク因子で切られ、2026年版はを行わないことを提案し(条件付き)、・嫌気性菌のカバーもリスク因子が無ければしないことを提案する。感受性が判明したらする(強い推奨)5。

出典

  1. 1.Blood Culture Results Before and After Antimicrobial Administration in Patients With Severe Manifestations of Sepsis: A Diagnostic Study(Annals of Internal Medicine・2019)重症敗血症像を呈する成人325例で、抗菌薬投与前の血液培養が陽性となったのは102例(31.4%)にとどまった。抗菌薬開始から中央値70分後に再採取した血液培養の陽性は63例(19.4%)で、投与後培養の感度は52.9%(95%CI 42.8〜62.9)へ低下した(陽性割合の絶対差12.0%、95%CI 5.4〜18.6)閲覧 2026-08-26
  2. 2.The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3)(Society of Critical Care Medicine / European Society of Intensive Care Medicine / JAMA・2016)2016年のSepsis-3で敗血症は「感染に対する調節不全な宿主反応による生命を脅かす臓器機能不全」と再定義され、臨床的にはSOFAスコアの2点以上の急性増加(院内死亡率10%超に相当)で操作的に判定する。SIRS基準は感度・特異度が不十分として退けられ、「重症敗血症(severe sepsis)」という用語は冗長として廃止された。敗血症性ショックは輸液後もMAP 65 mmHg以上の維持に昇圧薬を要し血中乳酸値が2 mmol/L超の病態と定義され、院内死亡率は40%を超える。あわせてBox 1がBoneら1992(ACCP/SCCMコンセンサス会議)からSIRS基準を逐語で再掲しており、4項目は体温38℃超または36℃未満、心拍数90/分超、呼吸数20/分超「または」PaCO2 32 mmHg未満(4.3 kPa)、白血球数12,000/mm³超または4,000/mm³未満または幼若球10%超で、呼吸数とPaCO2は独立した項目ではなく同一項目内の代替である(本文HTML全文で確認。Bone 1992原著そのものはchestnet・ScienceDirectとも403で取得できていない)閲覧 2026-08-26
  3. 3.International Consensus Criteria for Pediatric Sepsis and Septic Shock(Society of Critical Care Medicine / JAMA・2024)Europe PMC(PMID 38245889、PMC10900966)で抄録全文を取得して確認した。2016年のSepsis-3は敗血症を「感染に対する調節不全な宿主反応による生命を脅かす臓器機能不全」と定義したが小児を対象から除外していたこと(but it excluded children)、従来の小児基準は2005年に専門家の合意として公表されSIRS基準を用いていたが予測性能に乏しく「重症敗血症」という冗長な用語を含んでいたこと(prior pediatric sepsis criteria that used systemic inflammatory response syndrome (SIRS) criteria, which have poor predictive properties, and included the redundant term, severe sepsis)、SCCMの小児敗血症定義タスクフォース(6大陸35名)が感染を疑う小児でPhoenix Sepsis Score 2点以上を敗血症と定め、これが呼吸・循環・凝固・神経の臓器障害を示すこと、Phoenix 2点以上の小児の院内死亡率が高資源環境7.1%・低資源環境28.5%であったこと、敗血症性ショックを循環器系1点以上(年齢別の高度低血圧・血中乳酸5 mmol/L超・血管作動薬の必要性のいずれか)と定義したことを確認した閲覧 2026-09-08
  4. 4.Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021(Intensive Care Medicine・2021)qSOFAを敗血症・敗血症性ショックの単独スクリーニング手段として用いないことを強く推奨(推奨2、moderate-quality)。抗菌薬は敗血症性ショックまたは敗血症の可能性が高い成人では認識から1時間以内に、ショックのない敗血症疑いでは3時間以内に投与する。プロカルシトニンは抗菌薬開始の判断に加えることを推奨しない(推奨16)一方、感染源制御ができた症例で中止時期を決める補助としては使用を提案する(推奨31)。血液培養を含む培養は抗菌薬開始を実質的に遅らせない範囲(45分未満)で投与前に採取する閲覧 2026-08-26
  5. 5.Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2026(Society of Critical Care Medicine / European Society of Intensive Care Medicine・2026)2021年版を置き換えた成人ガイドライン。DOI本体(Springer)はbot判定で取得できなかったため、発行元SCCMが公開している推奨一覧のページ(Intensive Care Medicine 52巻5号863〜936頁)で推奨文と格付けを逐語で確認した。院内の急性期患者ではqSOFAを単独スクリーニング手段とするよりNEWS・NEW2・MEWS・SIRSを用いる(強い推奨・中等度)。敗血症は臨床診断であり、単一のバイオマーカーや検査で確定も除外もしない(good practice statement)。敗血症と敗血症性ショックは医学的緊急事態であり、治療と蘇生は直ちに開始すべきである(good practice statement。原文は Sepsis and septic shock are medical emergencies; treatment and resuscitation should begin immediately で、抗菌薬までの時間を全例で最小化せよとは述べていない)。抗菌薬は、敗血症性ショックの可能性がある/可能性が高い/確定した成人と、ショックのない「可能性が高いか確定した」敗血症のいずれでも直ちに、理想的には認識から1時間以内(どちらも強い推奨・きわめて低い)。ショックのない「可能性のある」敗血症では時間を区切った迅速な検索を行い、感染の懸念が残るなら敗血症を最初に疑った時点から3時間以内(条件付き・きわめて低い)。感染の可能性が低くショックが無ければ、厳重に監視しながら抗菌薬を差し控える(条件付き・きわめて低い)。Antibiotic initiation にはこの4件のほかに、院内での診療開始までの見込み時間が60分を超える確定または可能性の高い敗血症+低血圧(すなわち敗血症性ショック)の成人に対し救急車内または搬送機内での抗菌薬投与を提案する推奨(条件付き・きわめて低い。付記として、車内・機内で敗血症をスクリーニングする構造化された手順を整えたうえでのみ実施すべきとする)と、ショックのない可能性のある敗血症では急性疾患の原因が感染性か非感染性かを迅速に評価すべきとする good practice statement がある。血液培養は可能な限り速やかに、理想的には抗菌薬投与前に採取する(強い推奨・低い)——推奨一覧の本文に時間の数値は置かれていない。プロカルシトニンは開始の判断では臨床評価単独をプロカルシトニン併用より優先し(条件付き・きわめて低い)、感染源制御が十分で最適な投与期間が不明な例の中止判断では臨床評価単独よりプロカルシトニンと臨床評価の併用を優先する(条件付き・低い)。感染源制御は遅いより早いほうがよく、理想的には適応と診断してから6時間以内(条件付き・きわめて低い)閲覧 2026-09-07
  6. 6.The 2023 Duke-International Society for Cardiovascular Infectious Diseases Criteria for Infective Endocarditis: Updating the Modified Duke Criteria(Duke University / International Society for Cardiovascular Infectious Diseases (ISCVID)・2023)感染性心内膜炎の診断基準について、原文は血液培養の採血の時間間隔と別々の静脈穿刺を求める複雑な要件を廃止すべきだとする作業部会の合意を述べ(complex requirements for blood cultures specifying the timing and the need for separate venipunctures should be discontinued)、成人の菌血症疑いでは最低2セットの血液培養を採ることとした。別々の静脈穿刺はCLSI M47第2版などのbest practiceとしては引き続き推奨されるが、Duke基準としてはもはや要求されない(it is no longer required by the Duke Criteria)。1セットは好気性ボトルと嫌気性ボトルを同時に採った1対と定義される閲覧 2026-09-07
  7. 7.How to Optimize the Use of Blood Cultures for the Diagnosis of Bloodstream Infections? A State-of-the Art(Frontiers in Microbiology・2016)血液培養ボトルの培養期間は通常5〜7日を上限とし、5〜7日目に陽性化する微生物はごくわずかである(総説が引くMarginsonらの検討では陽性血液培養の2.7%、うち臨床的に意味のあるものは0.5%)。5〜7日目に出るのは低CO2産生菌や発育の遅い菌・真菌(Candida属・偏性嫌気性菌・Brucella属など)が主体である。連続モニタリング式の自動培養装置を用いた研究では培養期間の延長が血液培養の感度を有意には改善せず、HACEK群による感染性心内膜炎でも標準の5日間の培養で分離できたとまとめている。また採取した血液量が血流感染の検出を左右する最も重要な因子であり、ボトルの充填不足が見逃しの主因になる閲覧 2026-09-07