臨床薬理学

臨床薬理学 · 32

喘息の薬物療法

Asthma

前提:病態
選択的β2刺激薬およびその他の気管支拡張薬気管支抗炎症薬・鎮咳薬・去痰薬

🧠 全体像:喘息の薬物療法の幹は「気道の炎症を抑えるのICSを、どの段階でも必ず含める」ことである。症状コントロールと将来リスクの2軸で評価し、5段階のステップを上下させて最小の有効治療を探す。現行のは、発作治療薬()そのものをICS-にする「トラック1」を優先する。増悪時はの反復吸入と短期ので立て直し、その後のを強化する。

診断の要点と治療目標

喘息を疑うのは、呼吸困難・喘鳴・・咳が次のようなパターンで現れるときである。

  • 夜間に悪化しやすい
  • 時間とともに有無・強さが変動する
  • ウイルス感染、アレルゲン、運動などの誘因で出る

診断のな柱はのである。の吸入後に肺機能が改善する、運動やの後に低下する、という形で示す(閾値はを参照)。

💡 は治療を始める前に記録する。 ICSで気道炎症が収まるとの変動は小さくなるので、治療後に検査すると「変動なし」となり診断の裏づけが取れなくなる。

治療の目標は2つである。

目標 中身
1. 症状のコントロール 日中・夜間の症状、発作治療薬の使用、を減らす
2. 将来の有害転帰の危険を減らす 増悪、の進行、薬の副作用

「薬の副作用」が将来リスクに入っていることが臨床薬理の出発点になる。効かせる量と害の出る量の両方を見て、最小の有効治療を探す。

評価

症状コントロール(過去4週間)

過去4週間に次があったか 良好 部分的 不良
日中の喘息症状が週2回を超える 4項目とも無し 1〜2項目 3〜4項目
喘息による夜間覚醒がある ↑ ↑ ↑
症状に対する発作治療薬の使用が週2回を超える ↑ ↑ ↑
喘息によるがある ↑ ↑ ↑

現行では、3項目目はをとする場合の回数で数え、必要時ICS-の使用や運動前の予防吸入は含めない1。

喘息コントロールテストのACT

症状コントロールの評価にはも使え、成人・思春期ではACT、小児では小児版のc-ACTがある。ACTは過去4週間について5問を1〜5点で答え、合計5〜25点になる。

質問(過去4週間) 1点 2点 3点 4点 5点
1. 喘息のために職場・学校・家庭で思うように物事ができなかった時間 いつも ほとんど ときどき 少し まったく無い
2. の頻度 1日に2回以上 1日1回 週3〜6回 週1〜2回 まったく無い
3. 喘息症状(喘鳴・咳・・胸の締めつけや痛み)で夜間や早朝に目が覚めた頻度 週4晩以上 週2〜3晩 週1回 1〜2回 まったく無い
4. 発作治療用の吸入薬や(など)の使用 1日3回以上 1日1〜2回 週2〜3回 週1回以下 まったく無い
5. 自分の喘息コントロールの自己評価 まったくできていない あまりできていない まあまあ よくできている 完全にできている
合計点 判定
20点以上 コントロール良好
16〜19点 コントロール不十分
15点以下 コントロールが非常に不良

💡 4問目は「を何回使ったか」を数える設計である。 ICS-を発作治療薬にしている患者では、頓用のたびにICSも入るため、回数の意味がとは違う。現行も、ACTはICS-やICS-のでは検証されていないと注記し、臨床的に意味のある変化を3点としている1。

将来リスク

危険因子を診断時と定期的に(増悪の後にも)確認する。肺機能は将来リスクの指標で、を診断時または治療開始時、治療3〜6か月後(自己最良値の記録)、その後は定期的に測る1。

何の危険か 主な危険因子(現行)
増悪 コントロール不良の症状、の過量使用(200回用の吸入器を年3本以上。月1本以上なら死亡も増える)、ICSの不足(未処方・服薬不良・の誤り)、肥満・・・・妊娠、喫煙・・感作アレルゲン・、心理社会的問題、低(とくに予測値の60%未満)、やFeNOの高値、挿管・の既往、過去1年の重症増悪
早産・、ICSを使わずに重症増悪を起こした既往、喫煙・有害物質の曝露、初回の低値、喀痰・増多
薬の副作用 全身性:の頻用、長期・高用量・高力価のICS、・・などの阻害薬。局所:高用量・高力価のICS、の不良

出典:1

⚠️ 阻害薬はICSのを増やす。 などを併用すると、など一部のICSやの全身濃度が上がり、医原性やの原因になる(全身性ステロイドの副作用の全体像は医原性)。

重症度は治療から後方視的に決める

重症度は、数か月治療を行ったあと、症状と増悪を抑えるのに必要だった最小の治療段階からに判定する。固定した性質ではなく、時間とともに変わりうる。

区分 従来の整理 現行(2026年版)
軽症 ステップ1〜2で良好 低強度の治療(必要時の低用量ICS-、または低用量ICS+必要時)で良好
中等症 ステップ3で良好 ステップ3〜4(どちらのトラックでも低〜中用量ICS-)で良好
重症 ステップ4〜5を要する、または治療してもコントロール不良 最適化した高用量ICS-でもコントロールできない、または減量すると悪化する

現行は、「軽症」という言葉が「危険が低い・ICSは要らない」と誤解されやすいため、臨床ではなるべく使わないよう提案している。症状がまれでも、単独なら重症・致死的な増悪は起こりうる1。

治療困難な喘息は、中〜高用量のICS-を処方してもコントロールできない、または良好なコントロールを保つのに高用量ICS-を要する喘息で、その多くはの誤り・服薬不良・喫煙・併存症など修正できる要因による。重症喘息はその一部にすぎない。オランダの成人喘息患者のデータでは、次のように絞り込まれる1。

flowchart TD
  A["成人の喘息患者 100%"] --> B["ステップ4〜5の治療を受けている<br>24%"]
  B --> C["そのうえ症状コントロールが不良<br>=治療困難な喘息 17%"]
  C --> D["さらに<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medication adherence'>服薬遵守</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhalation technique'>吸入手技</span>が良好<br>=重症喘息 3.7%"]
  C --> E["残りの多くは修正できる要因<br>手技・遵守・喫煙・併存症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='misdiagnosis'>誤診</span>"]

💡 17%と3.7%の差が、「強い薬を足す前に手技と遵守を確かめる」理由を数字で示している。

治療の原則

  • 診断したら、できるだけ早くICSを含む治療を始める。
  • 症状コントロールと将来リスクを評価し、必要なら治療を強化する。
  • 強化の前に、の誤り、服薬不良、アレルゲン曝露、併存症、を除外する。
  • 喫煙、肥満など増悪の危険因子と併存症も治療する。
調整の種類 期間 内容
持続的ステップアップ 少なくとも2〜3か月 試行と考える。反応が無ければ元の段階へ戻し、別の選択肢を試す
短期ステップアップ 1〜2週間 ウイルス感染や季節性アレルゲン曝露の時期に維持ICSを増やす。行動計画に沿って患者自身が始めてもよい
日々の調整 その日ごと ICS-を維持と頓用の両方に使う場合、は続けたまま、頓用の回数を症状に合わせて増減する
良好なコントロールが2〜3か月続いたら 最小の有効治療を探す。現行は肺機能が頭打ちになっていることも条件に挙げる

受診間隔は、従来の整理では3〜12か月ごとの見直しとされ、現行は治療開始1〜3か月後、その後3〜12か月ごと、増悪の後は1週以内の受診を勧める1。

flowchart TD
  A["評価<br>症状コントロール・危険因子<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhalation technique'>吸入手技</span>・遵守・患者の希望"] --> B["調整<br>危険因子と併存症の治療<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='Non-pharmacological'>非薬物療法</span>・ICSを含む薬<br>教育と行動計画"]
  B --> C["見直し<br>症状・増悪・副作用<br>肺機能・満足度"]
  C --> D{"良好なコントロールが<br>2〜3か月続いた?"}
  D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='step-down (therapy)'>ステップダウン</span>を検討"]
  D -->|"いいえ"| F{"手技・遵守・曝露・<br>併存症・診断に問題?"}
  F -->|"あり"| G["まずそれを是正"]
  F -->|"なし"| H["ステップアップ<br>2〜3か月の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='therapeutic'>治療的</span>試行"]
  E --> A
  G --> A
  H --> A

5段階の薬物療法

2つのトラック

の治療ステップは、発作治療薬の違いで2本の道筋を並べる。 2024年版までの治療図では次のとおりであった。

ステップ トラック1:と優先する トラック2:と代替の どちらのトラックでも使える他の選択肢(適応が限られるか根拠が弱い)
1 必要時の低用量ICS- を使うたびにICSも吸入する —
2 (ステップ1と同じ) 低用量ICSの維持 のたびに低用量ICS、毎日の、ダニのの追加
3 低用量ICS-の維持 低用量ICS-の維持 中用量ICS、の追加、ダニのの追加
4 中用量ICS-の維持 中〜高用量ICS-の維持 かかダニのの追加、または高用量ICSへの切り替え
5 を追加し、表現型の評価へ紹介。高用量ICS-の維持を考慮。必要に応じて抗IgE・抗IL-5/5受容体・抗受容体・抗TSLP抗体 を追加し、表現型の評価へ紹介。高用量ICS-の維持を考慮。必要に応じて同じ生物学的製剤 アジスロマイシン(成人)かの追加。最後の手段として低用量(副作用を考慮)
必要時の低用量ICS- 必要時の —
  • トラック1の根拠:ICS-をにすると、をにするより増悪の危険が減る。
  • トラック2を選ぶ前に:の処方では、毎日のを患者が守れるかを確かめる。守れなければ実質的に単独治療になるからである。

現行の 2026年版では、骨格は同じだが次の点が変わっている1。

論点 2024年版までの治療図 2026年版
トラック2の 必要時 必要時の低用量ICS-配合薬(入手できなければ)
トラック2のステップ1 のたびにICSも吸入 配合薬でも別々の吸入器でもよい、必要時の低用量ICS+による単独療法
トラック1のステップ3・4 低用量・中用量ICS-の維持 低用量・中用量ICS-による、すなわちと明記
トラック2のステップ4 中〜高用量ICS-の維持 中用量ICS-の維持(高用量はステップ5で試行として考慮)
他の選択肢の行 治療図の下段に並ぶ 治療図から外れ、本文で扱う。クロモン製剤は世界的に販売が終了した
ステップ4の追加 他の選択肢として並ぶ 根拠が不十分とし、先にへ切り替えるかICS-を中用量以上へ増やす。追加はステップ5の選択肢

初期治療の目安

症状 従来の整理 現行:成人・思春期、トラック1/トラック2
まれな症状 月2回未満 → ステップ1 週2日以下 → 必要時低用量ICS-/必要時低用量ICS+
ときどきの症状 月2回以上だが毎日ではない → ステップ2 週3〜5日未満で肺機能が正常か軽度低下 → 必要時ICS-/低用量ICSの維持+必要時ICS-か
ほぼ毎日の症状 ほぼ毎日、または夜間覚醒が週1回以上(とくに危険因子あり) → ステップ3 ほぼ毎日(週4日以上)、夜間覚醒が週1回以上、または低肺機能 → 低用量/低用量ICS-+必要時ICS-、または中用量ICS+必要時
強い症状 上記に加え危険因子や低肺機能 → ステップ4 毎日の症状か週1回以上の夜間覚醒があり、かつ低肺機能か最近の増悪 → 中用量/中用量ICS-+必要時ICS-か
著しいコントロール不良、または増悪で初診 短期のを使い、高用量ICSか中用量ICS+を開始する。6〜11歳には勧めない 増悪として治療し、重症なら短期の。中用量を開始する。トラック2では中用量ICS-+必要時

出典:現行欄は1

ステップ別の薬と注意

ステップ1

  • 優先:必要時の低用量ICS-。代替:必要時の低用量ICS+。従来の整理ではどちらも多くの国でとされた。
  • ⚠️ 単独治療は、もう誰にも推奨されない。 死亡や緊急受診の危険が増えるためである。短期間でもを定期使用すると、と気道炎症が増し、気管支拡張効果が落ちる1。このは喘息に固有のもので、では維持薬とは別に渡す発作治療薬としてを単独で使う(の薬物療法)。
  • 単独も推奨されない。従来の整理では「としては有効だが増悪の危険を増やす」とまとめられてきた。現行は、はとしてと同等に効き、必要時より重症増悪を15〜45%減らすとしつつ、ICSなしでを定期的・頻回に使うことは増悪の危険から強く勧めないとしている1。

ステップ2

ステップ3

  • 低用量ICS++必要時、または低用量ICS-の。
  • 従来の整理では、は6〜11歳の小児には承認されていないとされた。現行は、低用量の-によるを6〜11歳のステップ3〜4の選択肢に含めている1。
  • 代替:中用量ICS+必要時、低用量ICS+、低用量ICS+。いずれもの追加より効果が劣る。

ステップ4(どちらを選ぶかはステップ3で何を選んだかにもよる)

  • 中用量ICS++必要時、または低用量(か中用量)ICS-の。
  • は、同じ用量のICS-維持+必要時より増悪を減らす。現行では、同用量のICS-に比べ重症増悪を32%、より高用量のICS-に比べ23%減らす1。
  • 代替:の追加。とは、ICSとの併用相手としてより効果が劣る。

ステップ5(表現型の評価と治療のため専門医へ紹介する)

選択肢 従来の整理 現行での補足
高用量ICS+ 副作用のため3〜6か月の試行としてのみ 増量のは小さく、などの副作用が増える。中用量の、または中用量ICS+に第3のを加えても届かないときの3〜6か月の試行
の追加 (他のでは根拠が無い) 中〜高用量ICS-でコントロール不良なら追加できる。の別吸入器(6歳以上)のほか、・などを含む三剤配合吸入器も使える(多くは18歳以上、を含むものは12歳以上)。肺機能はわずかに改善し、を要する重症増悪は16〜17%減る
アジスロマイシン 週3回、適応外、耐性化の危険 専門医紹介の後に成人で。開始前に喀痰で非定型抗酸菌を調べ、心電図で延長を確認し(1か月後にも再確認)、少なくとも6か月続ける
生物学的製剤 抗IgE、抗IL-5、抗受容体α 下表。抗TSLP抗体とデペモキマブが加わった
気管支熱形成術 根拠は限定的 一部の成人重症例の選択肢だが、長期効果の根拠が乏しく、生物学的製剤との比較も無い
低用量の 副作用が大きく、骨粗鬆症の危険を監視 生物学的製剤が使えない場合の最後の手段として、換算7.5 mg/日以下

出典:現行欄は1

標的 薬(・対象年齢) 主な対象
IgE (皮下注、6歳以上) 重症アレルギー性喘息
IL-5 (皮下注、6歳以上)、(静注、18歳以上)、デペモキマブ(皮下注、12歳以上) 重症
IL-5受容体α (皮下注、12歳以上) 重症
受容体α (皮下注、6歳以上) 重症の好酸球性・2型喘息、維持を要する喘息
TSLP テゼペルマブ(皮下注、12歳以上) 重症喘息

出典:1。選び方の詳細はを参照。

⚠️ 維持のは、肥満・糖尿病・骨粗鬆症と・・高血圧・・抑うつなどを的に起こす1。生物学的製剤は「を減らすための薬」でもある。

ICS-ホルモテロールの使い方(トラック1)

年齢 製剤(1吸入あたり) ステップ1〜2(単独) ステップ3の ステップ4〜5の 1日の総吸入回数がこれを超えたら受診
成人・12〜17歳 -160/4.5 µg、または-100/6 µg 必要時1吸入 1日2回(または1回)1吸入+必要時1吸入 1日2回2吸入+必要時1吸入 12回
6〜11歳 -80/4.5 µg など 必要時1吸入 1日1回1吸入+必要時1吸入 1日2回1吸入+必要時1吸入(ステップ5では勧めない) 8回

出典:1

💡 なぜでなければならないか。 は効き始めが並みに速く、しかも長時間作用する。1日の上限(成人12吸入)までは頓用を重ねられるので、1本の吸入器で「維持」と「頓用」を兼ねられ、症状が出た時点でICSも自動的に追加される。効き始めの遅いを含む配合薬はにできない。

参考として、ICSの「低・中・高用量」の目安(成人・思春期の1日量)を示す。力価の等価換算表ではないので、製剤を切り替えたら安定性を確かめる1。

ICS 低用量 中用量 高用量
(標準粒子の) 200〜500 µg 500超〜1,000 µg 1,000 µg超
200〜400 µg 400超〜800 µg 800 µg超
80〜160 µg 160超〜320 µg 320 µg超
プロピオン酸エステル 100〜250 µg 250超〜500 µg 500 µg超

ICSの局所副作用(口腔カンジダ症、嗄声)と吸入デバイスの選び方はを参照。

薬以外の治療と注意すべき併用薬

介入 従来の整理 現行での補足
アレルギーが大きな役割を持つときに。アレルギー反応の危険と長期治療の費用を考慮 皮下免疫療法は通常3〜5年続け、重篤なアレルギー反応は0.5〜0.7%未満。注射後少なくとも30分は観察する。ダニ感作の成人では、が予測値の70%を超える場合にの追加を考慮
ワクチン インフルエンザは中等症〜重症に推奨、肺炎球菌は根拠不十分 中等症〜重症では毎年の。喘息だけではの特別な適応にならないが、肺炎球菌・百日咳・インフルエンザ・RSウイルス・は地域の予定に従って接種を勧める
気管支熱形成術 気管支鏡で気道壁に局所的なの熱を加え、平滑筋を減らす。ステップ5で、根拠は限定的 上のステップ5の表のとおり
ビタミンD 根拠不十分 血中25(OH)Dが約25〜30 nmol/L未満の患者では、全身ステロイドを要する増悪を減らしうる。全体としての改善を示す質の高い根拠は無い
生活・環境 禁煙、、呼吸訓練、健康的な食事、ストレス対処、アレルゲン回避、の訓練 —

出典:現行欄は1

併用薬 扱い
アスピリン・ 過去に反応が無ければ一般に禁忌ではない。処方前に喘息と過去の反応を尋ね、喘息が悪化したら中止するよう伝える(では避ける)
β遮断薬(経口・点眼) 禁忌ではないが、利益と危険を比べ、厳重な監視下で始める。現行は専門医の監督下での開始を求め、でのβ遮断薬は喘息をとみなさないとする
上記2剤に共通 症状がコントロールされていないときや増悪中は避ける

出典:現行の記述は1

💡 β遮断薬が問題になるのは、のβ₂受容体を遮断すると、内因性カテコールアミンによる気管支拡張が失われ、も効きにくくなるからである。点眼薬でも全身に吸収されるので、併用薬の確認には点眼薬を含める。

増悪の管理

増悪(急性重症喘息、発作とも呼ばれる)は、さまざまな誘因で症状が進行性に悪化し、治療の変更を要する状態である。増悪で初めて受診する患者もいる。軽症やコントロール良好の喘息でも重症増悪は起こる。

すべての患者に書面の喘息行動計画を渡し、悪化時に「をどう増やすか、をどう増やすか、をいつ始めるか」を決めておく。

一次医療での初期対応(従来のGINAの流れ)

区分 所見
軽症〜中等症 句で話し、臥位より座位を好むがはない。呼吸数は増加、は使っていない。脈拍100〜120/分、での 90〜95%、は予測値または自己最良値の50%超
重症 単語でしか話せず、前かがみに座り、。呼吸数30/分超、を使用。脈拍120/分超、での 90%未満、は50%以下
生命の危機 傾眠、、または無音の胸(呼吸音が聞こえない)
flowchart TD
  A["増悪の評価"] --> B{"重症度"}
  B -->|"軽症〜中等症"| C["治療開始<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='short-acting β2-agonist'>SABA</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='metered-dose'>定量噴霧式</span>吸入器+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='spacer'>スペーサー</span>で4〜10吸入<br>1時間は20分ごとに反復<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='prednisolone'>プレドニゾロン</span>:成人1 mg/kg・最大50 mg<br>小児1〜2 mg/kg・最大40 mg<br>酸素があれば目標<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral oxygen saturation'>SpO2</span> 93〜95%<br>小児は94〜98%"]
  B -->|"重症・生命の危機"| D["急性期施設へ緊急搬送<br>待つ間は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short-acting β2-agonist'>SABA</span>・酸素・全身ステロイド"]
  C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short-acting β2-agonist'>SABA</span>を必要時に続け<br>1時間(またはそれ以前)で反応を評価"]
  C -->|"悪化"| D
  E -->|"悪化"| D
  E -->|"改善"| F["退院の評価<br>症状が改善し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='short-acting β2-agonist'>SABA</span>が不要<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='peak expiratory flow'>PEF</span>が改善し自己最良値か予測値の60〜80%超<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='room air'>室内気</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral oxygen saturation'>SpO2</span> 94%超<br>自宅の支援が十分"]
  F --> G["退院時の手配<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='reliever (rescue medication)'>リリーバー</span>は必要時に継続<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='controller (medication/device)'>コントローラー</span>を開始か強化し手技と遵守を確認<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='prednisolone'>プレドニゾロン</span>は通常5〜7日(小児3〜5日)<br>2〜7日以内に再診"]
  G --> H["再診<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='reliever (rescue medication)'>リリーバー</span>は必要時へ戻す<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='controller (medication/device)'>コントローラー</span>の増量は短期1〜2週か長期3か月<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inhalation technique'>吸入手技</span>・遵守など危険因子を是正<br>行動計画を理解し使えたか・修正が要るか"]

現行の 2026年版は、この流れを新しい一次医療のフローチャートに置き換えた。主な違いは次のとおりである1。

論点 従来の流れ 2026年版
重症度の区分 軽症〜中等症/重症/生命の危機 軽症(すべてを満たす)/中等症/重症または生命の危機(いずれか1つで該当)
の基準() 90〜95%/90%未満 軽症94%以上、中等症92%以上、重症92%未満
50%超/50%以下 軽症70%超、中等症50〜70%、重症50%未満
脈拍 100〜120/分/120/分超 基準に含まれない
の量 4〜10吸入を20分ごとに1時間 軽症4吸入(必要なら30〜60分後に1回反復)、中等症4〜6吸入を20〜30分間隔で3回まで、重症6〜10吸入(なら5 mg)を20〜30分ごと。中等症以上で4吸入を併用できる
軽症での代替 — -160/4.5 µgを2吸入
酸素 目標93〜95%(小児94〜98%) 92%未満のときだけ投与し、目標92〜95%
アナフィラキシー — 伴うなら先にエピネフリン
成人1 mg/kg・最大50 mg 退院時の処方表(一次医療・救急とも)と自己管理の記述では、成人の/は40〜50 mg/日を5〜7日。一次医療の本文には1 mg/kg/日・最大50 mg/日の記載も残る。小児1〜2 mg/kg/日・最大40 mg/日を3〜5日
退院基準 94%超、 60〜80%超 最後のから1〜2時間、軽症の基準を満たす。 92%以上、 70%超
退院後 を開始・強化 ICS含有治療を開始・強化し、12歳以上では望ましくはICS-の。過去1年にが2コース以上なら専門医へ

💡 の推奨量が控えめになった理由。 増悪時の過剰投与が増えており、高用量のはを起こしうる。代償性のが「喘息の悪化」に見え、さらにを足すという悪循環になる1。救急での詳しい対応はのの節を参照。

増悪時に使わない薬

薬 理由と例外
抗菌薬 肺感染の強い証拠(発熱、、胸部X線での肺炎)が無ければ使わない
・の静注 効果が乏しく副作用が多い。を服用中の患者では重篤・致死的な副作用の危険が特に高い
の定型投与 には使わないが、一部の患者で入院を減らす。現行では、初期治療に反応せず低酸素血症が続く例に2 gを20分かけて単回静注する
急性期の根拠は限られる
鎮静薬 呼吸抑制を起こす。避けられた喘息死との関連が報告されており、厳格に避ける

出典:1

まとめ

  • 目標は症状のコントロールと将来リスク(増悪・・薬の副作用)の低減。症状は4項目かACT(20点以上で良好、16〜19点で不十分、15点以下で非常に不良)で、将来リスクは危険因子とで評価する。
  • 重症度は必要だった治療段階からに決める。治療困難な喘息の多くは手技・遵守などの修正できる要因によるもので、真の重症喘息は成人喘息の約4%。
  • ICSを含む治療を早く始め、単独もICSなしのの頻回使用も避ける。ステップアップの前に手技・遵守・曝露・併存症・診断を確かめ、良好な状態が2〜3か月続けばする。
  • トラック1はICS-を維持と頓用の両方に使うで、より増悪が少ない。はがあるから頓用にできる。
  • ステップ5では専門医で表現型を評価し、、生物学的製剤、アジスロマイシンを検討する。の維持は最後の手段。
  • とβ遮断薬は一般に禁忌ではないが、過去の反応とコントロール状態を確認してから使う。
  • 増悪にはの反復吸入、短期の、低酸素なら制御酸素。現行は酸素を 92%未満で始め、の量を控えめにした。抗菌薬・静注・鎮静薬は使わない。

出典

  1. 1.Global Strategy for Asthma Management and Prevention(Global Initiative for Asthma (GINA)・2026)2026年版報告書の全文(図はページを画像として取得して確認)で次を確認した。Box 2-2の症状コントロール4項目と判定、FEV1を治療開始時・ICS含有治療3〜6か月後・以後定期的に測ること、増悪・持続性気流制限・薬の副作用の危険因子(SABAの年3本以上の使用、ICS不足、低FEV1、2型炎症マーカー、挿管歴、全身性ステロイドの頻用・高用量ICS・CYP阻害薬など)、ACTの区分(20〜25点が良好、16〜19点が不十分、5〜15点が非常に不良、ICS-ホルモテロールやICS-SABAのリリーバーでは未検証)、重症度の後方視的定義(中等症はステップ3〜4、重症は最適化した高用量ICS-LABAでも制御できないか、それを要する喘息)と「軽症喘息」の語を避ける提案、Box 8-1のオランダの成人データ(ステップ4〜5の治療24%、治療困難17%、重症3.7%)、Box 4-4と4-5の初期治療の目安、Box 4-6の2トラック(トラック2のリリーバーはICS-SABA、無ければSABA)、Box 4-2のICS用量、Box 4-8BのAIRとMARTの用量と1日の吸入上限、MARTが同用量のICS-LABAより重症増悪を32%減らすこと、持続的ステップアップ2〜3か月・短期ステップアップ1〜2週・良好なコントロールが2〜3か月続けばステップダウン・開始1〜3か月後と以後3〜12か月ごとの受診・増悪後1週以内の受診、ステップ4ではLAMA追加の根拠が不十分でステップ5の選択肢であること、高用量ICS-LABAは3〜6か月の試行、アジスロマイシン週3回(専門医紹介後、非定型抗酸菌とQTcを確認し6か月以上)、生物学的製剤の標的と対象年齢、気管支熱形成術、最後の手段としての低用量経口ステロイド(プレドニゾン換算7.5 mg/日以下)、徐放性テオフィリンの効果が弱いこととクロモン製剤の世界的な販売終了、ICSなしでのLABAの定期・頻回使用を強く勧めないこと、NSAIDsとβ遮断薬の扱い、ワクチンとビタミンDとアレルゲン免疫療法の記述、Box 9-4(一次医療での増悪の重症度基準、SABAの投与量、SpO2の閾値と目標92〜95%、軽症でのICS-ホルモテロール、退院基準、成人2〜7日以内の再診)、経口ステロイドの用量と期間、救急での抗菌薬・静注アミノフィリン・鎮静薬を用いないこと、硫酸マグネシウムの位置づけ。2026-09-27の監査で同じPDFを再取得し、ホルモテロール単独がSABAと同等のリリーバーで必要時SABAより重症増悪を15〜45%減らす一方ICSなしのLABAの定期・頻回使用を強く勧めないこと、SABAの定期使用が1〜2週でも気道過敏性・気道炎症を増し気管支拡張効果を落とすこと、治療困難な喘息の定義(中〜高用量ICS-LABAでもコントロール不良、または高用量ICS-LABAを要する)、Box 4-6でトラック2のステップ4が中用量ICS-LABAであること、経口ステロイドが退院時の表(Box 9-5・9-7)と自己管理の記述では成人40〜50 mg/日を5〜7日、一次医療の本文では1 mg/kg/日・最大50 mg/日であること、Box 9-4の専門医紹介が過去1年に経口ステロイド2コース以上であることを確認した。閲覧 2026-09-26
  2. 2.SINGULAIR (montelukast sodium) tablets, chewable tablets, oral granules — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration(DailyMed、製造販売元 Organon LLC)・2025)openFDAのラベルAPIで同じSPL(effective_time 20250430)を取得し、枠組み警告が重篤な神経精神系事象(興奮、攻撃性、抑うつ、睡眠障害、自殺念慮・自殺行動を含む)を挙げ、喘息と運動誘発性気管支収縮では処方前に利益と危険を比較するよう求めていること、5.1の事象一覧に夢の異常が含まれること、急性発作の治療に処方しないこと(5.2)を確認した。閲覧 2026-09-26