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Drug Atlas · B8 Antianginal drugs / 抗狭心症薬

ラノラジン

ranolazine

分類
Antianginal drugs / 抗狭心症薬
商品名(EU)
Ranexa
科目
PharmacologyClinical Pharmacology
トピック
B8: Drugs influencing the oxygen demand and oxygen supply of the heart. Drugs improving microcirculation18: Ischemic heart disease
承認適応
慢性冠症候群
禁忌疾患
肝硬変
副作用
めまい頭痛便秘悪心
監視検査値
クレアチニン
影響検査値
QT延長
相互作用
インジナビルクラリスロマイシンケトコナゾールジルチアゼムシンバスタチンベラパミルリファンピシンロバスタチン

🧠 全体像:は心拍数も血圧もほとんど動かさずに狭心症の症状を減らす、追加薬として使うである。機序は「の阻害」と教わるが、添付文書は機序を「決定されていない」と書き出し、阻害と症状の関係は不確実とする。覚えるのは3点——QT延長(IKr遮断)、CYP3AとP糖蛋白を介した相互作用が非常に多いこと(とは禁忌)、では有益性が示せなかったことである。日本の電子添文は確認できなかったので、本ノートの適応・用量・禁忌は米国の添付文書による。

薬効群の中での位置づけ

系統 代表薬 血行動態への影響
前負荷を下げ、血圧が下がる
β遮断薬・ ・ 心拍数・血圧・収縮力が下がる
阻害薬 心拍数だけが下がる
代謝・イオンチャネルに作用する薬 ・ 心拍数・血圧はほとんど変わらない

の試験では心拍数の変化は2 bpm未満、は3 mmHg未満で、心不全(NYHA I〜II)、糖尿病、、高齢者でも同様だった1。だから血圧や心拍数がすでに低くて他の薬を増やせない患者にしやすい。米国の適応は、β遮断薬・・・・・ACE阻害薬・ARBとの併用を明記している1。ESC 2024年版のの指針は、追加薬としてかをクラスIIaで挙げる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ranolazine'>ラノラジン</span>"] --> B["治療濃度で心臓の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='late sodium current (late INa)'>後期ナトリウム電流</span>を阻害しうる"]
    B -.->|"症状との関係は不確実"| C["抗狭心作用"]
    A --> D["心拍数・血圧・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac workload'>心仕事量</span>はほとんど変えない"]
    A --> E["IKrを遮断"]
    E --> F["心室の活動電位が延長し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corrected QT prolongation'>QTc延長</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dose-dependent'>用量依存</span>)"]

添付文書は抗狭心作用の機序は決定されていないと述べる。の抗虚血・抗狭心作用は心拍数や血圧の低下に依存せず、最大運動時のの指標(心拍数と血圧の積)を変えない。治療濃度では心臓の(I_Na)を阻害しうるが、この阻害と狭心症症状との関係は不確実とされる1。教科書の「後期Na電流を阻害して細胞内カルシウムを減らす」という説明を、確定した機序として覚えない。

薬物動態

項目 内容1
吸収 まで2〜5時間。のは溶液の76%。食事の影響はなく、食事に関係なく服用できる。P糖蛋白の基質で、阻害薬で吸収が増える
吸収のが大きい。1000 mg 1日2回の定常状態のは平均2600 ng/mL(95%範囲400〜6100)
分布 蛋白結合約62%。では除去されにくい
代謝 腸と肝で急速かつ広範に代謝される。主にCYP3A、一部CYP2D6。未変化体で排泄されるのは尿と糞を合わせて5%未満
排泄 溶液の単回投与で尿に約75%、糞に約25%
半減期 約7時間。1日2回の投与で3日以内に定常状態になる。はピークの0.3〜0.6
用量との関係 500〜1000 mg 1日2回の範囲で、CmaxとAUCは用量よりわずかに大きく増える

適応

米国の適応は慢性狭心症である1。ここでは米国の添付文書で確認した範囲を書く。

主な臨床試験

試験 対象と用量 結果
CARISA ・・の標準量でも症状がある重症の慢性狭心症823例。750 mgまたは1000 mgを1日2回、12週 時の運動時間は群で115.6秒、プラセボ群で91.7秒増加(P=.01)。狭心症発作との使用が週に約1回減少。1000 mgは750 mgより効果が増えなかった21
ERICA 10 mgでも症状が残る565例。1000 mgを1日2回、6週 狭心症発作が週あたり平均3.3回(4.3回)、使用が2.7回(3.6回)1
MERLIN-TIMI 36 非6560例。静注後に1000 mgを1日2回、中央値348日 (心血管死・心筋梗塞・)に有意差なし(0.92)。のみ減少(0.87)。0.99、も差がなかった3
  • 耐性や:12週の治療で耐性は生じず、急に中止しても狭心症の的な増加は観察されなかった1。
  • 性差:女性ではと発作頻度の改善が男性より小さかった。CARISAでは1000 mgで運動試験の改善が男性の約33%、ERICAでは週あたりの発作の減少が女性0.3回に対し男性1.3回だった1。
  • ⚠️ では有益性が示せなかった。MERLIN-TIMI 36では、の標準治療へので主要な心血管イベントを減らせなかった。一方で、は群で少なく、に差もなかったので、安全性への懸念は和らいだ31。

用法・用量

項目 内容1
開始 500 mgを1日2回
増量 症状に応じて1000 mgを1日2回へ。最大は1000 mgを1日2回
服用 食事の有無を問わない。丸ごと飲み、砕く・割る・噛むをしない()
飲み忘れ 次の予定時刻に飲む。2回分をまとめない
中等度のCYP3A阻害薬 、、、、など併用中は最大500 mgを1日2回
P糖蛋白の阻害薬(など) 曝露が増える。臨床反応を見て調整

1000 mgを1日2回を超える用量はが悪い。

禁忌・注意

禁忌 内容1
強いCYP3A阻害薬 、、、ネファゾドン、、、、など
CYP3A リファンピシン、、、、フェニトイン、カルバマゼピン、(効果が下がる)
肝硬変 軽度〜中等度の肝硬変でも、血中濃度に対するQTcの延長が大きくなる
  • ⚠️ QT延長:はIKrを遮断し、QTcをに延長する。1000 mg 1日2回のTmaxで平均約6 msだが、血中濃度が5%の人では15 ms以上延びる。年齢、体重、性別、人種、心拍数、、糖尿病、はQTcと血中濃度の関係を変えなかった。の集団ではや突然死の増加は示されなかった。一方、高用量(1000 mg 1日2回超)、他のQT延長薬との併用、変異による長いQT、の家族歴、の既往がある患者では経験が乏しい。
  • 腎障害:重度の腎障害(30 mL/分未満)での報告がある。60 mL/分未満では開始後と定期的にとBUNを調べ、が出たら中止する。
  • :腎機能にかかわらず約0.1 mg/dL上がる。の阻害によるとみられ、速やかに起こり、進行せず、中止で戻り、BUNは変わらない。進行性の上昇やBUNの上昇を伴う場合は腎不全を疑う。
  • 高齢:75歳以上では、と比べて有害事象、重篤な有害事象、有害事象による中止が多かった。用量範囲の下限から始める。
  • 小児・妊娠・授乳:小児の安全性と有効性は確立していない。妊婦のデータはない。動物では、人の最大量と同等の曝露で胎児への悪影響はなく、4倍の曝露(母体の体重減少を伴う用量)で胎児体重の低下と骨化の遅れが見られた。ヒトの乳汁中への移行も不明。

相互作用

相手 影響・指示1
強いCYP3A阻害薬(、、など) 禁忌
CYP3A(リファンピシン、フェニトイン、カルバマゼピン、など) 禁忌。の曝露が下がる
中等度のCYP3A阻害薬(、など) は最大500 mgを1日2回
はのどの用量でも1日20 mgまで
などのCYP3A基質、・・ で血中濃度が上がりうるので減量が要りうる
ジゴキシン ジゴキシンの曝露が増える。が要りうる
CYP2D6の基質(、抗精神病薬) 曝露が増える。低用量が要りうる
1000 mg 1日2回との併用ではは1日1700 mgまで(500 mg 1日2回では有意な増加なし)

副作用

頻度 内容1
4%超 めまい6.2%、頭痛5.5%、便秘4.5%、悪心4.4%(いずれもより多い)。めまいはの可能性がある
中止 慢性狭心症の対照試験で約6%(約3%)。中止につながったのはめまい(1.3%、0.1%)、悪心(1%)など
0.5〜4% 徐脈、、、回転性めまい、、腹痛、口渇、嘔吐、、無力症、、、失神、、血尿、呼吸困難、多汗、低血圧、
まれ(0.5%未満) 、腎不全、好酸球増多、振戦、、血小板減少、、

では、低血圧、QT延長、徐脈、、高度の振戦、、めまい、嘔吐、が見られ、極端な過量で死亡例の報告もある。対処は支持療法との監視で、蛋白結合が約62%なのでは効きにくい。

まとめ

  • は心拍数・血圧をほとんど変えずに狭心症の症状を減らす薬で、他のにして使う。機序は決定されておらず、の阻害は症状との関係が不確実とされる。
  • 開始は500 mgを1日2回、最大1000 mgを1日2回。なので砕かず、食事に関係なく服用できる。
  • IKr遮断によるQT延長(1000 mg 1日2回で平均約6 ms、5%で15 ms以上)。肝硬変では血中濃度とQTcの関係が急になるため禁忌。
  • 主にCYP3Aで代謝され、P糖蛋白の基質。強いCYP3A阻害薬とは禁忌、では最大500 mgを1日2回。自体も(20 mgまで)、ジゴキシン、(1700 mgまで)の曝露を増やす。
  • が約0.1 mg/dL上がるのはの阻害で、進行性の上昇やBUNの上昇を伴う場合は腎不全を疑う。
  • の予後を改善しなかった(MERLIN-TIMI 36)。症状を取る薬であって、イベントを減らす薬ではない。女性では効果が男性より小さかった。日本の電子添文は確認できなかったので、国内での承認や用量は本ノートで断定しない。

出典

  1. 1.RANOLAZINE extended-release tablets, for oral use — Prescribing Information(DailyMed (NLM) / labeler Zydus Lifesciences Limited(一般名製剤。先発Ranexaの現行版は同サイトで確認できなかった)・2026)DailyMedのSPL全文(SPL版5、2026年9月公開)を取得して確認した。適応は慢性狭心症で、β遮断薬・硝酸薬・カルシウム拮抗薬・抗血小板療法・脂質低下療法・ACE阻害薬・ARBと併用してよいこと、開始は500 mg 1日2回で必要に応じ1000 mg 1日2回へ増量し最大1000 mg 1日2回、食事と無関係に服用し丸ごと飲むこと、中等度のCYP3A阻害薬(ジルチアゼム・ベラパミル・エリスロマイシン・フルコナゾール・グレープフルーツ)では最大500 mg 1日2回、強いCYP3A阻害薬(ケトコナゾール・イトラコナゾール・クラリスロマイシン・ネファゾドン・ネルフィナビル・リトナビルなど)とCYP3A誘導薬(リファンピシン・フェノバルビタール・フェニトイン・カルバマゼピン・セイヨウオトギリソウ)と肝硬変は禁忌であること、IKrを遮断しQTcを用量依存的に延長する(1000 mg 1日2回のTmaxで平均約6 ms、血中濃度が上位5%では15 ms以上)こと、重度の腎障害(クレアチニンクリアランス30 mL/分未満)で急性腎不全の報告があり60 mL/分未満では腎機能を監視すること、抗狭心作用の機序は決定されておらず後期ナトリウム電流を阻害しうるが症状との関係は不確実であること、心拍数の変化は2 bpm未満・収縮期血圧は3 mmHg未満であること、半減期約7時間・Tmax 2〜5時間・徐放錠の生物学的利用率は溶液の76%・食事の影響なし・蛋白結合約62%・主にCYP3A(一部CYP2D6)で代謝され未変化体は尿と糞に5%未満・P糖蛋白の基質であること、血清クレアチニンが約0.1 mg/dL上がる(尿細管分泌の阻害による)こと、シンバスタチンは20 mgまで・ロバスタチンなどCYP3A基質と免疫抑制薬は減量が要りうる・ジゴキシンの曝露が増える・メトホルミンは1日1700 mgまで、有害事象(めまい6.2%・頭痛5.5%・便秘4.5%・悪心4.4%、中止は約6%でプラセボ約3%)、CARISA・ERICA・MERLIN-TIMI 36(急性冠症候群の6560例で有益性を示せず死亡率に差なし)、女性では運動耐容能と発作頻度の改善が男性より小さかったこと、75歳以上で有害事象が多いこと、過量投与の症状を確認した。閲覧 2026-10-31
  2. 2.Effects of ranolazine with atenolol, amlodipine, or diltiazem on exercise tolerance and angina frequency in patients with severe chronic angina: a randomized controlled trial(JAMA・2004)PubMed収載の抄録で確認した。アテノロール・アムロジピン・ジルチアゼムの標準量を使っても症状がある重症の慢性狭心症823例を、ラノラジン750 mg・1000 mg(1日2回)とプラセボに割り付けた二重盲検試験(CARISA)で、トラフ時の運動時間が両ラノラジン群で115.6秒、プラセボ群で91.7秒増え(P=.01)、狭心症発作とニトログリセリン使用が週に約1回減ったこと、増加は血圧・心拍数の変化に依存せず12週間持続したこと。抄録のみで確認した。閲覧 2026-10-31
  3. 3.Effects of ranolazine on recurrent cardiovascular events in patients with non-ST-elevation acute coronary syndromes: the MERLIN-TIMI 36 randomized trial(JAMA・2007)PubMed収載の抄録で確認した。非ST上昇型急性冠症候群6560例(ラノラジン3279例、プラセボ3281例)、中央値348日の追跡で、主要評価項目(心血管死・心筋梗塞・再発性虚血)は21.8%対23.5%でハザード比0.92(0.83〜1.02、P=.11)と有意でなく、再発性虚血のみ減少(0.87)、全死亡は0.99、症候性不整脈は3.0%対3.1%で差がなく、点滴量の減量を要するQTc延長が0.9%対0.3%だったこと。抄録のみで確認した。閲覧 2026-10-31