Internal Medicine

Internal Medicine · N-01

糸球体疾患

Glomerular diseases

前提:病態
糸球体疾患の発症機序腎炎症候群(ネフリティック)ネフローゼ症候群
前提:正常
腎循環。糸球体濾過
疾患
ANCA関連血管炎IgA腎症アルポート症候群ネフリティック症候群ネフローゼ症候群抗糸球体基底膜病(グッドパスチャー症候群)巣状分節性糸球体硬化症糖尿病性腎症膜性腎症膜性増殖性糸球体腎炎溶連菌感染後糸球体腎炎
検査値
アルブミンクレアチニン尿沈渣
スコア
IgA腎症Oxford分類

🧠 全体像:糸球体疾患は、血尿・蛋白尿・腎機能低下・高血圧・浮腫の組み合わせから腎炎性かネフローゼ性かを見極め、尿沈渣、補体、自己抗体、感染・の検索と腎生検を組み合わせて診断する。は数日から数週で不可逆的腎障害へ進むため、血清学と生検を急ぎ、必要な治療を遅らせない。

糸球体症候群の見分け方

所見
糸球体炎症と係蹄壁破綻 糸球体透過性亢進と障害
尿所見 赤血球、、血尿 大量蛋白尿、
蛋白尿 通常は非だが、混合型では高度となる 成人では一般に3.5 g/日以上
腎機能 急速または緩徐に低下し得る 初期は保たれることも多いが、病型により低下
血圧・体液 Na・による高血圧、乏尿、浮腫 とNa貯留による全身浮腫
血清 Cr上昇、病型により 、脂質異常
主な合併症 、肺水腫 血栓塞栓症、感染、

腎炎性とネフローゼ性は排他的ではない。IgA腎症、などは血尿とを同時に示す。

診断の進め方

flowchart TD
    A["血尿、蛋白尿、浮腫、腎機能低下"] --> B["尿沈渣と蛋白定量を確認"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dysmorphic RBCs'>変形赤血球</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='RBC casts'>赤血球円柱</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='glomerular hematuria'>糸球体性血尿</span>"]
    B --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heavy proteinuria'>高度蛋白尿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoalbuminemia'>低アルブミン血症</span>:ネフローゼ"]
    C --> E["Crの速度、尿量、肺胞出血を評価"]
    D --> F["糖尿病、薬剤、感染、悪性腫瘍、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='monoclonal protein'>単クローン性蛋白</span>を検索"]
    E --> G["C3・C4、ANCA、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-GBM antibody'>抗GBM抗体</span>、ANA・抗dsDNA、感染血清学"]
    F --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-PLA2R antibody'>抗PLA2R抗体</span>、血清・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='urine immunofixation'>尿免疫固定</span>、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='free light chain (FLC)'>遊離軽鎖</span>など"]
    G --> I["RPGNなら緊急腎生検と治療開始"]
    H --> J["適応を判断して腎生検"]
    I --> K["病因別免疫治療と支持療法"]
    J --> K

基本検査

  • だけでなく、尿蛋白/Cr比または24時間尿で蛋白量を定量する。
  • 尿沈渣で赤血球、を確認する。
  • Cr、eGFR、K、、アルブミン、血算、脂質、HbA1cを測定し、過去値から進行速度をみる。
  • C3・C4、ANA、抗dsDNA抗体、ANCAのPR3・MPO、を病像に応じて測定する。
  • HBV、HCV、HIV、などを評価し、が疑われれば血清・を調べる。
  • 腹部超音波で腎サイズ、閉塞、などを評価する。

腎生検はを組み合わせる。重い出血リスク、著明な萎縮腎などでは利益と危険を個別化する。

急速進行性糸球体腎炎

RPGNはであり、数日から数週で腎機能が低下し、組織では内に2層以上の細胞が増殖するを認める。は重症の所見で、単一疾患名ではない。

機序 代表疾患 IF所見 補体の傾向
GBMに沿うIgGの 通常正常
、IgA腎症、感染関連糸球体腎炎 原疾患により低下
ANCA関連血管炎 沈着がほとんどない 通常正常

抗GBM病

肺胞出血とRPGNを同時に来すと呼ぶ。腎もあり、喀血がないことでは除外できない。

  • 血清を測定し、腎生検ではとGBMに沿う線状IgG沈着を認める。
  • 疑いが強ければ生検結果を待たず、副腎皮質ステロイド、を開始する。
  • 肺胞出血では酸素化と気道を管理する。透析依存で回復可能性が極めて低い腎限局例などは免疫治療の利益を個別化する。
  • 治療後にが陰性となるまで追跡し、腎移植は抗体陰性期間を確保して計画する。

ANCA関連血管炎

と関連するが、抗体型だけで疾患を決めない。上気道病変、・肺胞出血、喘息・好酸球増多、紫斑、末梢神経障害などを統合する。

  • 重症腎炎の寛解導入は、副腎皮質ステロイドとリツキシマブまたはを組み合わせる。感染予防と骨保護も行う。
  • は全例へ行わず、重症腎障害のみを理由とした一律の追加による利益は確立していない。1 重症肺胞出血や重複などでは個別に検討する。
  • 寛解後はリツキシマブまたはなどで維持し、リスクと感染リスクを監視する。

主な腎炎性疾患

IgA腎症

を含む免疫複合体がへ沈着する。と同時または数日以内のが典型で、の数週の潜伏期と対照的である。

  • 持続性、蛋白尿、高血圧、eGFR低下を幅広く呈する。
  • 血清IgA高値は非特異的で、正常でも除外できない。確定には原則として腎生検が必要である。
  • IFでIgA優位または共優位のを認め、は予後評価を補助する。
  • すべてのリスク例で生活・食塩・血圧を管理し、蛋白尿があれば最大量のACE阻害薬またはARBを用いる。
  • 持続蛋白尿・進行リスクに応じてSGLT2阻害薬やを支持療法として、標的放出型として検討する。はACE阻害薬・ARBにせず、代替として用いる。2
  • 十分な支持療法後も高リスクならを慎重に検討する。があるだけで免疫抑制せず、急速なeGFR低下を伴うRPGN型ではとステロイドを用いる。

溶連菌感染後糸球体腎炎

の咽頭炎から約1~3週、皮膚感染から約3~6週後に、、浮腫、高血圧、乏尿を呈する。

  • 尿で、蛋白尿を認める。
  • C3は通常低下し、多くは6~8週で正常化する。持続低値ならC3糸球体症やなどを再検討する。
  • 咽頭感染ではASO、皮膚感染では抗体が感染の証拠となる。
  • 治療は食塩制限、に応じた、高血圧・高K血症・腎不全への支持療法が中心である。
  • は抗菌薬で治療し、伝播を防ぐが、成立した糸球体腎炎を抗菌薬だけで逆転させることはできない。

アルポート症候群

をコードするCOL4A3COL4A4COL4A5による遺伝性基底膜疾患である。最多はCOL4A5によるX連鎖型だが、常染色体優性型・劣性型もある。

  • 幼少期からの持続性血尿、進行性蛋白尿・感音難聴などを認める。
  • EMではGBMの菲薄化と肥厚、層状分裂によるを示す。
  • 遺伝学的検査を優先し、家族へのと遺伝を行う。
  • 蛋白尿出現前を含む早期からACE阻害薬またはARBを用い、腎機能低下を遅らせる。が必要となれば腎移植が有効だが、唯一の治療ではない。

IgA血管炎

IgA血管炎は、血小板減少を伴わない、関節痛、腹痛・消化管出血、糸球体腎炎を組み合わせる小血管炎である。旧称のに相当する。

小児に多いが、成人は腎予後が悪いことがある。腎組織はIgA腎症と区別できないため、全身症状で診断する。尿・血圧・eGFRを追跡し、持続蛋白尿や腎機能低下では腎生検とIgA腎症に準じた腎保護治療を検討する。

ネフローゼ症候群の共通管理

flowchart TD
    A["糸球体透過性亢進"] --> B["大量蛋白尿"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypoalbuminemia'>低アルブミン血症</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased oncotic pressure'>膠質浸透圧低下</span>と腎での<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sodium retention'>Na保持</span>"]
    D --> E["全身浮腫"]
    B --> F["抗凝固<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein loss'>蛋白喪失</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypercoagulability'>凝固亢進</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='venous thromboembolism, VTE'>静脈血栓塞栓症</span>"]
    B --> H["免疫グロブリン・栄養素喪失"]
    H --> I["感染・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='malnutrition'>栄養障害</span>"]
    B --> J["肝での脂蛋白合成亢進"]
    J --> K["脂質異常・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Lipiduria'>脂肪尿</span>"]
  • 食塩を制限し、浮腫にはを用いる。急激な除水による循環血液量低下とを避ける。
  • ACE阻害薬またはARBで蛋白尿と血圧を下げ、病型・eGFRに応じSGLT2阻害薬を加える。
  • 極端な高蛋白食は蛋白尿を増やすため避け、栄養不良にならない適正蛋白量を保つ。
  • リスクは、特に低値、既往、不動、肥満、悪性腫瘍で上がる。予防的抗凝固は出血リスクと病型を含め個別化し、アルブミン20 g/L未満だけを根拠に全例へアスピリンや低分子ヘパリンを投与しない。
  • ワクチン、感染スクリーニング、脂質・心血管リスク、骨・ビタミンDを評価する。

主なネフローゼ性疾患

微小変化型ネフローゼ症

小児ネフローゼの代表で、成人にも起こる。、NSAIDなどに続発することがある。

方法 所見
LM 糸球体はほぼ正常
IF 通常陰性
EM のびまん性消失

副腎皮質ステロイドへの反応が良い。成人では寛解まで時間がかかることがあり、頻回再発・ステロイド依存ではリツキシマブ、などを個別化する。

巣状分節性糸球体硬化症

は組織パターンであり、一次性、遺伝性、ウイルス・薬剤・肥満・減少などに対する二次性を区別する。

  • LMで一部の糸球体の一部分に硬化と癒着を認める。IFのIgM・C3は非特異的な捕捉であることが多い。
  • 一次性FSGSは急なとEMでのびまん性を示し、高用量ステロイドを第一選択とする。
  • 一次性FSGSではを用いる。
  • 遺伝性・二次性FSGSでは原因治療とRAAS阻害などの支持療法を行い、免疫抑制をルーチン使用しない。若年、家族歴、では遺伝学的検査を検討する。

膜性腎症

糸球体上皮下免疫沈着により、GBMがびまん性に肥厚する。一次性ではが代表的で、抗THSD7A抗体などもある。HBV、自己免疫疾患、悪性腫瘍、薬剤など二次性原因を年齢・症状に応じ検索する。

方法 所見
LM のびまん性肥厚、
IF に沿うIgG・C3の
EM 上皮下沈着物とGBM反応による

典型的ネフローゼと血清陽性がそろえば、生検なしに診断できる場合があるが、腎機能低下や非では生検する。価は診断補助だけでなく、治療反応と免疫学的活動性の経時評価にも用いる。3 低リスクはRAAS阻害、血圧・浮腫・管理で経過観察し、持続蛋白尿、eGFR低下、抗体高値など中高リスクではリツキシマブ、とステロイド、をリスク別に選ぶ。ステロイド単独は標準ではない。標的抗原による分類やKDIGO 2021のの詳細はを参照。

膜性増殖性パターン

は単一疾患ではなく、・内皮増殖とGBM二重化を示す組織パターンである。

  • ではHCV・HBV、、自己免疫疾患、単クローン性免疫グロブリンなどを検索する。
  • C3優位型では代替補体経路異常を調べ、C3糸球体症を評価する。
  • LMで分葉化と、EMで主に内皮下・を認める。
  • 治療は感染、自己免疫、クローン性疾患、補体異常など原因に向ける。病因不明の重症では専門的に免疫抑制を検討する。

全身疾患に伴う糸球体障害

糖尿病性腎臓病

長期の糖尿病により、GBM肥厚、びまん性、結節性硬化であるが進む。は支持所見だが、不在でもを否定できない。

  • 尿アルブミン/Cr比とeGFRを定期測定する。
  • 急な腎機能低下、、短い糖尿病歴、急速な蛋白尿増加などでは他疾患と腎生検を検討する。
  • 血糖、血圧、食塩、脂質、禁煙を包括的に管理する。
  • 高血圧とがあればACE阻害薬またはARBを最大量で用いる。
  • 2型糖尿病では、適応範囲のeGFRでSGLT2阻害薬を使用する。Kが正常でが残る場合はを検討し、必要に応じGLP-1受容体作動薬を加える。

腎アミロイドーシス

誤折り畳み蛋白の・血管壁・間質へ沈着し、や腎機能低下を来す。

  • 陽性で下にを示し、EMで非分岐細線維を認める。
  • ALは慢性炎症に伴う血清A由来である。
  • 診断後は免疫染色またはで必ず型を決め、心病変など全身臓器を評価する。
  • AL型は形質細胞クローンを標的とする治療、AA型は基礎炎症疾患の十分な制御を行う。病型を定めず副腎皮質ステロイドだけを投与しない。

ループス腎炎

の免疫複合体が糸球体へ沈着する。尿所見が軽くても組織学的活動性が高いことがあるため、蛋白尿、、説明困難なeGFR低下では腎生検を検討する。

組織像 主な臨床像
I 最小 LMは正常だがIF/EMで 尿所見は正常または軽微
II 増殖型 増殖と沈着 軽度血尿・蛋白尿
III 50%未満の糸球体に活動性・慢性病変 血尿、蛋白尿、腎機能低下
IV 50%以上の糸球体に病変。によるを取り得る 重い腎炎、ネフローゼ、高血圧、腎不全
V 膜性型 が多い
VI 進行性 90%以上の糸球体が 進行した

この6クラス分類は国際腎臓学会・腎病理学会の作業部会がWHO分類を改訂したもので、(IV)は病変を有する糸球体が全体の50%未満か50%以上かで分ける。4

  • 禁忌がなければ全例でを使用し、RAAS阻害、血圧、感染・血栓・心血管リスクを管理する。
  • 活動性クラスIII/IVは副腎皮質ステロイドに製剤または低用量静注を組み合わせる。患者特性に応じ、またはなどのを加えた併用療法を選択する。56
  • 寛解後は製剤を中心に維持し、妊娠希望などではを用いる。
  • クラスVでがあれば、ステロイドと製剤、などを組み合わせる。軽い蛋白尿なら支持療法と腎外病変治療を基本とする。
  • クラスVIは不可逆的硬化が主体であり、活動性腎外病変がなければ腎免疫抑制よりを中心とする。

まとめ

  • を、はネフローゼを示すが、両者は重なり得る。
  • RPGNでは、ANCA、補体、免疫複合体疾患を急いで評価し、腎生検と病因別治療を遅らせない。
  • IgA腎症は感染と同時期の血尿、は潜伏期と低C3で区別し、確定には病態に応じ腎生検を用いる。
  • FSGS、MPGN、は組織パターンや沈着型を病因診断へ結び付け、一律の免疫抑制を避ける。
  • ネフローゼのは病型・活動性・進行リスクと治療毒性を統合して個別化する。

出典

  1. 1.Efficacy of Rituximab and Plasma Exchange in Antineutrophil Cytoplasmic Antibody-Associated Vasculitis with Severe Kidney Disease(Journal of the American Society of Nephrology・2020)重症腎障害を伴うANCA関連血管炎の後ろ向きコホートで、血漿交換追加による寛解・腎不全・生存転帰の明確な改善を認めなかったこと閲覧 2026-08-09
  2. 2.Treatment of IgA Nephropathy: A Rapidly Evolving Field(Journal of the American Society of Nephrology・2024)IgA腎症の支持療法と疾患修飾療法を区別し、SGLT2阻害薬、スパルセンタン、標的放出型ブデソニドなどの位置づけを整理した。閲覧 2026-08-09
  3. 3.Anti-PLA2R Antibody Levels and Clinical Risk Factors for Treatment Nonresponse in Membranous Nephropathy(Clinical Journal of the American Society of Nephrology・2023)膜性腎症で抗PLA2R抗体価を治療反応の指標として経時評価する臨床的有用性を示した。閲覧 2026-08-09
  4. 4.Two-Year, Randomized, Controlled Trial of Belimumab in Lupus Nephritis(New England Journal of Medicine・2020)活動性ループス腎炎で標準療法へベリムマブを追加すると、2年時の腎反応率が改善した。閲覧 2026-08-09
  5. 5.Efficacy and safety of voclosporin versus placebo for lupus nephritis (AURORA 1): a double-blind, randomised, multicentre, placebo-controlled, phase 3 trial(The Lancet・2021)活動性ループス腎炎でミコフェノール酸製剤とステロイドへボクロスポリンを追加すると、完全腎反応率が改善した。閲覧 2026-08-09
  6. 6.The classification of glomerulonephritis in systemic lupus erythematosus revisited(Journal of the American Society of Nephrology・2004)国際腎臓学会・腎病理学会の作業部会がWHO分類を改訂し、メサンギウム病変のクラスI・II、病変糸球体が50%未満の巣状型クラスIII、50%以上のびまん型クラスIV、膜性型クラスV、進行した硬化性病変のクラスVIという区分を提案した。閲覧 2026-08-13