眼科学

眼科学 · ML-30

涙道の病気

Diseases of the lacrimal pathway

前提:正常
頭部:眼窩と眼

🧠 全体像:は「 → → → → → 」という一本の排水管で、のたびにがポンプとして涙を送り込む。=ではないので、まず眼瞼の位置とを見て、次に通水試験で「どこで詰まっているか」を決める。詰まる高さで病名と治療が決まる(・なら開大や再建、なら先天性はマッサージと、後天性は)。そこに感染が乗ると・になり、は抗菌薬でまず鎮め、手術は後。硬く痛む腫脹と血性の逆流は腫瘍を疑う。

涙道の解剖

はで作られ、眼表面を潤したあと内眼角のにたまり、次の経路で鼻腔へ流れる。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal lake'>涙湖</span><br>内眼角にたまった<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tear fluid (lacrimal fluid)'>涙液</span>"] --> B["上・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior lacrimal punctum'>下涙点</span><br>眼瞼縁の内側端の小孔"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span><br>垂直部(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ampulla'>膨大部</span>約2 mm)→ 水平部 8〜10 mm"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='common canaliculus'>総涙小管</span><br>上下の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span>が合流"]
    D --> E["Rosenmüller弁<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>への入口"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span> 12〜15 mm<br>前<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>稜の後ろの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>窩"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct'>鼻涙管</span> 12〜18 mm<br>骨性の管を下行"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='valve of Hasner'>Hasner弁</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct'>鼻涙管</span>の下端"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior meatus'>下鼻道</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='inferior nasal concha'>下鼻甲介</span>の下に開口"]
部位 長さ・位置 臨床で問題になること
上下の眼瞼縁の内側端。正常ではに浸っている でから離れる、狭窄・閉鎖
垂直部の約2 mm、水平部8〜10 mm 外傷(裂傷)、狭窄、
・Rosenmüller弁 のに開く の狭窄
12〜15 mm。前稜の後方 、、先天ヘルニア
12〜18 mm。下端に 先天閉塞(の膜の残存)、後天閉塞
周囲の鼻腔構造 の外側に(副鼻腔の開口)がある ・ポリープ・嚢胞は手術の前に確認する

💡 Rosenmüller弁と という2か所の「弁」は、閉塞や逆流を理解する目印になる。先天は に膜が残るのが典型で、上下両方の弁が閉じるとが風船のように膨らむ(先天ヘルニア)。

涙のポンプ機能

涙はだけで流れるのではなく、で能動的に送られる。

flowchart TD
    A["開瞼して力を抜いた状態<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal lake'>涙湖</span>に浸っている"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid closure'>閉瞼</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbicularis oculi'>眼輪筋</span>が収縮"]
    B --> C["瞼板前部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbicularis oculi'>眼輪筋</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>を押しつぶして閉じる"]
    B --> D["隔膜前部の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbicularis oculi'>眼輪筋</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>を外へ引いて広げる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>内が陰圧になり<br>涙を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>へ吸い込む"]
    C --> F["開瞼:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbicularis oculi'>眼輪筋</span>が弛緩"]
    E --> F
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>が開き、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>がつぶれる"]
    G --> H["涙が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct'>鼻涙管</span>を下へ押し出される"]

💡 このため、や加齢でが弱ると、が開通していても涙があふれる。通水試験で通るのにが続く場合は、ポンプの不全や眼瞼の位置異常によるを考える。

流涙の原因を探す

⭐ はと同じではない。 涙の分泌が増える(刺激・異物・睫毛の接触・の)場合、がから離れている場合、ポンプが弱い場合にも涙はあふれる。したがって診察は外から順に進める。

視診と触診

見るもの 所見の例 意味
眼瞼の位置 下眼瞼が外に反り返ってが赤く露出する()、内に反る() がから離れる、睫毛の刺激で反射性に涙が増える
の位置と形 が眼球から離れて外を向く、狭い・閉じている 涙の入口の問題
炎症の場所 充血・腫脹・分泌物が眼瞼縁の付近か、内眼角の下のか かかの区別
のしこり 内眼角の下の限局性の隆起。圧迫して逆流するか、硬いか ・の拡張・腫瘍

内眼角に黄色いがたまる、下眼瞼がしてが浮く、の周囲が赤く腫れる、内眼角の下が丸く盛り上がる、といった所見を順に拾っていく。を指で圧迫してから涙や膿が逆流すれば、より下流が閉じている証拠になる。

色素消失試験

をに点眼し、数分後の残り具合を見る簡便なふるい分け検査である。器具を入れずにでき、特に通水試験が難しい乳幼児で役に立つ。色素が片眼だけ長く残れば、その眼の排出障害を疑う。判定の段階と限界はを参照。

通水試験とプロービング:どこで詰まっているか

⭐ があれば通水試験を行う。 を拡張してから細いを入れ、を注入して、液がどこへ抜けるか、どこから逆流するかを見る。閉塞の高さは次のように読む(詳しい判定は)。

型 所見 閉塞の高さ
1 液が抵抗なく鼻・喉へ抜ける は開通している
2 入れたからそのまま逆流する 下の狭窄・閉塞
3 反対側の上から逆流する(は膨らまない) の狭窄・閉塞
4 上から逆流し、が膨らんでから戻る。膿や粘液が混じることがある またはの狭窄・閉塞

さらに「完全な閉塞か、狭窄か」を区別する。圧を少し加えると一部は鼻へ抜ける場合は狭窄、まったく抜けない場合は閉塞で、治療の選び方(拡張で済むか、バイパス手術が要るか)が変わる。

💡 型2〜3はより上流(側)、型4は下流(側)の障害である。上流が閉じているとと鼻腔をつなぐだけの手術では治らないので、手術の前に必ずこの区別をつける。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimation'>流涙</span>を訴える"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inspection'>視診</span>・触診<br>眼瞼の位置・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>・炎症の場所"]
    B --> C{"眼瞼や<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>の<br>位置異常があるか"}
    C -->|"ある"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ectropion'>眼瞼外反</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='varus / inversion'>内反</span>などを先に治す"]
    C -->|"ない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dye disappearance test'>色素消失試験</span>・通水試験"]
    E --> F{"通水試験で液が抜けるか"}
    F -->|"抵抗なく抜ける"| G["分泌過多・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pump failure'>ポンプ不全</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='functional epiphora'>機能性流涙</span>を考える"]
    F -->|"抜けない・一部だけ抜ける"| H{"どこから逆流したか"}
    H -->|"入れた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>から"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal canaliculus'>涙小管</span>の障害"]
    H -->|"反対側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>から<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>は膨らまない"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='common canaliculus'>総涙小管</span>の障害"]
    H -->|"反対側の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal punctum'>涙点</span>から<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>が膨らむ・膿が混じる"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct'>鼻涙管</span>の障害"]
    I --> L["必要に応じて追加検査<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='otorhinolaryngology (ENT)'>耳鼻咽喉科</span>診察・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryocystography'>涙道造影</span>・CT/MRI・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryoendoscopy'>涙道内視鏡</span>"]
    J --> L
    K --> L

追加の検査

検査 分かること
の診察() 、ポリープ、嚢胞、腫瘍など鼻腔側の原因。手術の前に必ず行う
造影剤をから注入し、狭窄・閉塞の部位との大きさを写す。でに造影剤がたまる像を認める
デジタルサブトラクション 骨の影を差し引いてだけを描出する。の途中で造影剤が途切れる部位や、左右の開通の違いが分かる
CT・MRI 骨折後の変形、副鼻腔の病変、の腫瘤。MRI ので内眼角のに腫瘤を認めることがある
の内腔を直接見て、閉塞の性状や長さを確かめる

涙点と涙小管の病気

原因

分類 原因
先天性 ・の閉鎖、の形の異常や裂け目
後天性の狭窄・閉塞 感染(などの VZV 感染、)、慢性の眼瞼炎、長期の点眼(緑内障治療薬など)、炎症性疾患(、、)、外傷・異物、化学療法・放射線治療
特発性症性疾患 原因不明で進行するの炎症

が小さな点状に狭まっている、あるいは眼瞼縁にがいくつか並んで見える(重複した)といった形の異常をで確かめる。

涙点の狭窄・閉塞

治療はを再び開けるか広げることである。

方法 内容
孔あき 中央に穴のあいたを専用の挿入器でに差し込み、を広げたまま保つ
切開術 の後壁()を切除して入口を広げる

処置の前後で比べると、点状だったが大きく開いた形に変わる。

涙小管閉鎖

とが生まれつき無い状態で、ほかのを伴うことがある。下または上下両方のが無いときは、を行う。内眼角からへ直接トンネルを作って細い管(ガラス管)を留置し、涙をを経ずに鼻へ流す方法で、患者の受け入れは良好である。内眼角の涙丘の位置に、糸で固定された透明な管の開口を認める。

涙小管狭窄

片方のだけを通す単管型、または上下のを輪状に通す双管型のを留置して再建する。狭い部分を広げたあと、治癒するまでで内腔を保つことが必要である。のには単管型と双管型の数種類があり、単管型はに固定する栓の部分が付いている。留置中は内眼角に細いの輪が見え、にの端が収まっているのを認める。

涙小管の外傷

⚠️ 下のは再建が必要である。 眼瞼の内側端の裂傷では、も切れていないかを必ず確かめる()。

  • 先が豚の尾のように曲がったプローブで、のからを回して断端を見つける。
  • 断端同士をでつなぎ、を留置したまま眼瞼とを縫合する。
  • 処置の流れは、プローブでを確認 → を通す → 断端を合わせる → 縫合してを残す、となる。

💡 したをそのまま閉じると断端が瘢痕でふさがり、が残る。腫れが強くなる前、傷が新しいうちに再建するのが原則である。

涙小管炎

⭐ 再発する・抗菌点眼に反応しない片眼の結膜炎を見たら、を疑う。

項目 急性 慢性・再発性
所見 が腫れて赤い(やにも及ぶことがある)、 が赤く膨らみ、から膿や黄色い粒がにじむ
患者 — 50歳以上、女性が男性より多い、ふつう片眼
原因 細菌 Actinomyces israelii が典型(まれに他の細菌、HSV、VZV、真菌)。を参照
病態 — の憩室と、硫黄を含む(黄色の小さな塊)ができる
通水試験 — ザラザラした抵抗感があるが、ふつう閉塞はない
治療 の点眼と内服、 を切開して中身()をかき出し、抗菌薬(例:アモキシシリン・アジスロマイシンの内服)を併用

💡 がの中に残る限り菌がすみ続けるので、点眼だけでは再発を繰り返す。かき出して取り除くことが治療の中心になる。下眼瞼を引くとが赤く盛り上がり、圧迫で黄色のが出てくるのが典型である()。

鼻涙管閉塞

は、先天性と後天性でまったく別の病気として考える。

項目 後天性 先天性
原因 の転位・顔面の手術、長期の点眼、炎症・(・など)、眼周囲の放射線治療・化学療法。原因の分からない原発性も多い の膜が残ること(最多)
好発 高齢者、女性に多い 乳児
症状 、の反復 、睫毛に付く、は白い(充血しない)
自然には治りにくい 1歳までに90%以上が保存療法で治る
治療 が中心 (結膜炎があれば抗菌点眼)→ 治らなければ

先天鼻涙管閉塞

乳児のの主な原因である。特徴は、+睫毛に付く+白いの組み合わせで、生後早くから片眼または両眼のと涙が続く。

💡 が白いことが感染性結膜炎との違いで、充血が強い場合や、に・角膜のを伴う場合はを必ず除外する(小児と成人の緑内障手術)。

時期 対応
1歳まで 保存療法。(内眼角のを指で押し下げる)、結膜炎を伴えば抗菌点眼
1歳を過ぎても治らない、または先天ヘルニア (細い金属棒で の膜を突き破る)、治らなければ手術

1歳以上でという区切りは従来からの整理である。生後6か月から10か月未満の乳児をで6か月追ったでは、66%が手術なしで治った1。つまり、1歳に近づくまで待つあいだにも多くが自然に開通する。1歳までに最大90%が自然に治り、保存療法で治らずに進んだ例では約70%で成功するとされる2。

flowchart TD
    A["乳児の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimation'>流涙</span>と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular discharge'>眼脂</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctiva'>結膜</span>は白い"] --> B{"内眼角の下に<br>青い腫瘤があるか"}
    B -->|"ある"| C["先天<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac'>涙嚢</span>ヘルニア<br>抗菌薬全身投与・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='probing'>プロービング</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='otorhinolaryngology (ENT)'>耳鼻咽喉科</span>で鼻内嚢胞を確認"]
    B -->|"ない"| D["先天<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nasolacrimal duct obstruction'>鼻涙管閉塞</span>として<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='lacrimal sac massage'>涙嚢マッサージ</span>"]
    D --> E{"結膜炎を伴うか"}
    E -->|"伴う"| F["抗菌点眼を追加"]
    E -->|"伴わない"| G["マッサージのみで経過観察"]
    F --> H{"1歳までに治ったか"}
    G --> H
    H -->|"治った"| I["終了"]
    H -->|"治らない"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='probing'>プロービング</span> → 必要に応じて手術"]

先天涙嚢ヘルニア

新生児の内眼角のすぐ下に青みがかった腫瘤が見える。の閉塞に加えて上流側への逆流も閉じるため、が羊水や粘液をためて膨らむ。

⚠️ 危険が二つある。

危険 理由 結果
鼻内の嚢胞 の下端がに膨らみ、に突出する。でに丸い嚢胞を認める 新生児はに頼るので、呼吸困難・になる
感染 新生児は免疫が未熟 から・敗血症

治療は抗菌薬の全身投与とで、で鼻内の嚢胞を診察して切除する。するマッサージの対象ではない。

涙嚢炎

は、でに涙がたまり、そこに細菌が増えて起こる。

好発年齢

の年齢分布は二峰性で、出生後まもない乳児(先天に伴う先天性)と、40歳を超える成人に多く、成人では女性に多い2。320例の報告では平均年齢37歳・女性対男性2対13、成人だけの43例では平均63歳・女性65%で、40%にの狭窄・閉塞の既往があった4。先天性は出生約3,900人に1人とまれである2。

急性と慢性

項目
所見 (内眼角の下)が腫れて痛み、赤い。腫脹は眼瞼や頬へ広がる (軽い充血)。を圧迫すると涙や膿がから逆流する。が軟らかく腫れていることもある
合併症 、まれに。膿瘍、による皮膚瘻孔 急性化、眼の手術時の感染源
治療 抗菌薬の局所と全身投与+(膿瘍には切開)。炎症が治まってから通水試験と DCR DCR

では、内眼角の下に限局した赤く光沢のある腫れを認め、眼瞼は腫れて開きにくくなる。膿瘍を切開すると黄色の膿と壊死組織が出てくる。

⭐ 急性のの炎症の初期治療は保存的(抗菌薬)で、手術ではない。 急性期のは、脆くなった組織に偽の通り道を作るので避ける2。まずグラム陽性菌をカバーするで治療し、で悪化する例やを伴う例は培養に基づくに切り替える2。炎症が治まってから原因の閉塞を治す。

⚠️ の2.8%はを伴って受診し、膿瘍が自然に破れると皮膚に瘻孔が残りやすい3。眼球運動の制限・・があれば眼窩への波及を考え、画像検査と入院治療に進む()。

flowchart TD
    A["内眼角の下が赤く腫れて痛む"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute dacryocystitis'>急性涙嚢炎</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oral antibiotic'>経口抗菌薬</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='warm compress therapy'>温罨法</span><br>膿瘍があれば切開"]
    C --> D{"悪化するか<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='orbital cellulitis'>眼窩蜂窩織炎</span>の徴候があるか"}
    D -->|"ある"| E["入院・画像検査<br>培養に基づく<span class='jp-term jp-term-diagram' title='IV antibiotics'>静注抗菌薬</span>"]
    D -->|"ない"| F["炎症が治まるのを待つ"]
    E --> F
    F --> G["通水試験で閉塞を確認"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dacryocystorhinostomy, DCR'>涙嚢鼻腔吻合術</span> DCR"]

鼻涙管閉塞の侵襲的治療

方法 内容 向く場合
細い金属棒をからに通して膜を破る 先天閉塞
拡張 (の先のバルーンを内で圧計を見ながら膨らませる)、留置、両者の組み合わせ 狭窄、が無効な例
DCR と鼻腔を直接つなぐバイパス 後天性の、

⚠️ DCR の前にはの診察を行う。鼻内の嚢胞、ポリープ()、などがあると、作った吻合口がふさがったり手術が難しくなったりする。

涙嚢鼻腔吻合術

DCR は、閉じたを迂回してと鼻腔を直接つなぐ手術である。を治めたあとに行う例では、解剖学的成功94.5%・機能的成功93.5%と成績は良好である3。

術式の種類

術式 特徴
鼻外法 内眼角と鼻の間の皮膚を切開し、骨に窓を開けてとを縫い合わせる 全身麻酔。ほぼ誰にでも行える
鼻内法 で鼻腔側から骨窓を開ける 医が行う
経法 からを通したレーザーのプローブで骨と粘膜に穴を開け、で確かめる が保たれていることが必要

鼻外法では、皮膚を切開して開創鉤で広げ、と骨を露出して骨窓を作る。経法では、で見ると、から入れたプローブの先端の光が鼻腔のに透けて見え、そこに吻合口を開けたあとが鼻腔に出ているのを確認する。

経涙小管法と鼻外法の比較

項目 経法 鼻外法
皮膚の傷 皮膚の傷や血腫がない 皮膚に傷が残る
麻酔 全身麻酔
時間 短い 長い(止血・縫合)
出血 ほとんどない ある
鼻腔の観察 で鼻腔を見られる 鼻腔は見えない
短所 吻合口が小さい 皮膚切開と出血
適応 が保たれている例に限る ほぼすべての例で行える

経法が向かず、鼻外法を選ぶ例は次のとおりである。

  • が閉じている・壊れている
  • 外傷後
  • 皮膚瘻孔がある
  • ある種の
  • が極端に拡張している
  • 腫瘍が疑われる(組織を取って調べる必要がある)

鼻外法の術中にから黄色のを取り出すことがあり、CT のでの骨の状態や副鼻腔を確かめてから手術を計画する。

手術の前に確かめること

  1. 通水試験でが開通しているかを確かめる(が閉じていれば DCR だけでは治らない)。
  2. の診察を受ける。
  3. 疑わしい例(外傷後、腫瘍の疑い)では画像検査を行う。

涙道の腫瘍

分類 内容
原発性 まれだが命に関わる。72%が悪性
上皮性(約70%) 乳頭腫(を含む)、扁平上皮癌、
、リンパ系腫瘍(リンパ腫)、悪性黒色腫
炎症性 など、腫瘍に似た炎症
続発性 周囲の組織(副鼻腔、眼窩、眼瞼、鼻など)からの浸潤
転移性 非常にまれ

涙嚢腫瘍の手がかり

  • 腫瘤がにとどまらず、内眼角の上まで広がることが多い(は内眼角より下に限られやすい)。
  • 皮膚の、硬く痛むしこり。
  • 通水試験で血の混じった逆流が出ることがある。
  • 内眼角から鼻の側面にかけての硬い隆起として見える。
段階 対応
診断 CT・MRI・超音波・などの画像検査、の診察、生検
治療 外科的切除、必要に応じて化学療法・放射線治療
その後 腫瘍科と連携した長期の管理

⚠️ 痛みを伴う硬いの腫れと、血の混じった涙を見たら、と決めつけず腫瘍を考える。

まとめ

  • は → (8〜10 mm)→ → Rosenmüller弁 → (12〜15 mm)→ (12〜18 mm)→ → 。時ののポンプで涙が送られる。
  • はと同じではない。 眼瞼の位置・・炎症の場所を見てから、通水試験で閉塞の高さ(・・/)と、狭窄かかを決める。
  • の狭窄は孔あきや切開、狭窄は、閉鎖は。下のは再建する。
  • 再発する・治らない片眼の結膜炎はを疑う。 と硫黄を含むが原因で、切開してかき出す。
  • 先天は の膜が原因で、++白い。1歳までに90%以上が治るのでマッサージで待ち、治らなければ。先天ヘルニアはと感染の危険があり早期に治療する。
  • は乳児と40歳を超える成人(特に女性)の二峰性。急性は抗菌薬で治めてから DCR、急性期にはしない。
  • DCR には鼻外法・鼻内法・経法があり、術前にの開通、の診察、必要なら画像検査を確かめる。経法はが保たれている例に限る。
  • 硬く痛むの腫れと血性の涙は腫瘍を疑う(原発性の72%が悪性)。

出典

  1. 1.Resolution of congenital nasolacrimal duct obstruction with nonsurgical management(Pediatric Eye Disease Investigator Group (Archives of Ophthalmology)・2012)抄録(PubMed 22801833)で、生後6か月から10か月未満の先天鼻涙管閉塞の乳児107人に涙嚢マッサージと必要時の抗菌点眼による非手術的管理を6か月続けたところ、追跡できた117眼中77眼(66%)が手術なしで治癒し、年齢・性別・片眼か両眼か・前治療は治癒と関連しなかったことを確認した閲覧 2026-09-29
  2. 2.Dacryocystitis(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)涙嚢炎の年齢分布が二峰性で、出生後まもなく(先天性涙嚢炎)と40歳を超える成人に多いこと、成人では女性に多いこと、先天鼻涙管閉塞が新生児の約6%、先天性涙嚢炎が出生3,884人に1人であること、急性涙嚢炎はまずグラム陽性菌をカバーする経口抗菌薬で治療し、小児では温罨法とマッサージを併用できること、急性期は脆い組織に偽道を作るのでプロービングを避けること、経口薬で悪化する例や眼窩蜂窩織炎を伴う例は培養に基づく静注抗菌薬へ切り替え、炎症が治まってから原因の閉塞に対処すること、先天鼻涙管閉塞は1歳までに最大90%が治り、保存療法が無効でプロービングを受けた例の成功は約70%であることを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.Clinical Profile and Management Outcome of Acute Dacryocystitis: Two Decades of Experience in a Tertiary Eye Care Center(Seminars in Ophthalmology・2015)抄録(PubMed 24171807)で、急性涙嚢炎320例347眼の後ろ向き研究において、受診時の平均年齢37歳、女性対男性2対1、23%が涙嚢膿瘍、2.8%が眼窩蜂窩織炎で受診し、5.6%に瘻孔が生じてその83%が膿瘍の自然破裂に続いたこと、82.5%に涙嚢鼻腔吻合術を行い解剖学的成功94.5%・機能的成功93.5%であったことを確認した閲覧 2026-09-29
  4. 4.Microbiology of acute bacterial dacryocystitis: a tertiary institutional experience in South Australia(International Ophthalmology・2024)成人の急性細菌性涙嚢炎43例の後ろ向き研究で、平均年齢63歳(22〜90歳)、女性28例(65%)、鼻涙管の狭窄・閉塞の既往が40%に記録されていたことを確認した閲覧 2026-09-29