臨床薬理学

臨床薬理学 · 21

心房細動の薬物療法

Atrial fibrillation

前提:病態
血液凝固に作用する薬II:抗凝固薬心臓電気生理に作用する薬(抗不整脈薬)

🧠 全体像:心房細動の薬物療法は「塞栓を防ぐ」と「症状を取る」の2本柱に、併存症の管理が土台として加わる。はで2点以上なら抗凝固薬(ではない)、第一選択は。症状の軽減は、まずを抑えて心拍数を落とす()、必要ならに戻して保つ()。リズムを戻す前には抗凝固を3週間以上続けるか、での血栓を否定する。

疫学

  • 心房細動は最も多い不整脈で、は着実に増えている。
  • 増加の理由は3つある:人口の高齢化、併存症(高血圧・肥満など)の増加、心房細動を見つける技術(スマートウォッチなど)の発達。
  • 症状は患者によってさまざまで、無症状から軽い、はっきりした胸部不快感まで幅がある。
  • 一方、長期の結果は重い:脳卒中、血管性認知症、心不全。

💡 症状が軽いことと予後が軽いことは別である。無症状の心房細動でも脳卒中のリスクは同じように評価し、必要なら抗凝固を始める。

分類

時間経過による分類

分類 定義( 2024年版)
初発 これまで診断されたことがない。症状やは問わない
発作性 7日以内に自然に、または介入(薬・機器)で止まる。自然に止まる発作の多くは48時間未満
持続性 自然には止まらない。多くの試験は7日を区切りにしてきた
12か月以上続いているが、選ばれた患者ではがなお選択肢になる
に戻す試みをもう行わない。患者とが共同で決める臨床判断であり、心電図の所見そのものではない

1

「持続性」を「1年以内に自然には止まらないが、薬や機器でに戻す余地が残るもの」と説明する整理もある。これは 2024年版の区分ではにあたり、単なる持続性は7日を超えて続く段階からを指す。

flowchart TD
  A["初発の心房細動"] --> B["発作性<br>7日以内に止まる"]
  B --> C["持続性<br>自然には止まらない"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='long-standing persistent'>長期持続性</span><br>12か月以上続く<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhythm control'>リズムコントロール</span>はまだ選択肢"]
  D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='permanent'>永続性</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='restoration of sinus rhythm'>洞調律化</span>をもう試みないと<br>患者と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='medical doctor'>医師</span>が決める"]
  C --> E
  B -.->|"介入や併存症の管理で"| A2["進行を遅らせる・戻る例もある"]

💡 心房細動は時間とともに心房の構造的・電気的な変化(リモデリング)を進め、止まりにくくなる。に分類されるのは、この変化のためにが無益になった場合か、患者とがを選んだ場合である1。

臨床像による分類

分類 内容
臨床的心房細動 症状の有無にかかわらず、心電図で記録された心房細動
機器で検出された心房細動 スマートウォッチやなどの監視機器が記録した心房の高頻度エピソード。心房細動であることがあり、心電図(または心内電位)での確認が必要
誘因による心房細動 発熱、手術、などの誘因の直後に起こるもの
する心房細動 自然に止まる発作
しない心房細動 止めるには介入が必要なもの
心房心筋症 心房の構造的・学的・機能的な変化で、臨床的な結果(心房細動の再発・進行、心不全など)をもたらしうるもの

1

治療の目的

目的 手段 ポイント
脳卒中(と他の)の予防 ではない!
症状の軽減 との一方または両方 多くは両方を組み合わせる
併存症とリスク因子の管理 高血圧・糖尿病・心不全()の治療、肥満の適切な管理、飲酒を減らす、を増やす 心房細動そのものの再発・進行も減らす

2024年版は、これをAF-CAREとしてまとめている。Cは併存症とリスク因子の管理、Aは脳卒中と血栓塞栓症の回避、Rはレートとリズムのコントロールによる症状の軽減、Eは評価と継続的な見直しである1。以下では、薬物療法の中心である脳卒中の予防と症状の軽減を扱う。

flowchart TD
  A["心房細動と診断"] --> B["併存症とリスク因子の管理<br>高血圧・糖尿病・心不全・肥満・飲酒・運動"]
  A --> C["塞栓リスクの評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='CHA2DS2-VA score'>CHA2DS2-VA</span>"]
  C --> C1{"2点以上?"}
  C1 -->|"はい"| C2["経口抗凝固薬<br>第一選択は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='direct oral anticoagulant (DOAC)'>直接経口抗凝固薬</span>"]
  C1 -->|"1点"| C3["抗凝固を考慮<br>患者と相談して決める"]
  A --> D["症状と心拍数の評価"]
  D --> D1["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rate control'>レートコントロール</span><br>安静時110/分未満"]
  D --> D2["必要なら<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhythm control'>リズムコントロール</span><br>抗凝固3週間以上か<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transesophageal echocardiography (TEE)'>経食道心エコー</span>の後"]
  B --> E["定期的に見直す"]
  C2 --> E
  D1 --> E
  D2 --> E

脳卒中の予防

基本の考え方

  • 血栓塞栓(脳卒中など)のリスク評価は、発作性・持続性・のどれであっても必須である。
  • リスク評価にはスコアを使う。
  • リスクが高ければ( 2点以上)が必要である。現行の 2024年版は、2点以上で経口抗凝固薬を推奨し、1点でも考慮すべきとしている1。
  • 抗凝固薬はではない。
  • 禁忌が無ければ、望ましい薬の系統はである。

💡 なぜではだめなのか。 心房細動の血栓は、血流がよどんだの中で凝固系が主役になってできるフィブリンに富む血栓である。動脈硬化の上で血小板が主役になる冠動脈の血栓とは成り立ちが違う。実際、アスピリンとの2剤はワルファリンより脳卒中・症・心筋梗塞・血管死を防げず(年5.6%対3.9%)、大出血は同程度だった。 2024年版は、は経口抗凝固薬の代わりにならず、に使うべきでないとする1。

CHA2DS2-VAスコア

記号 項目 定義と補足 点数
C 心不全の症状と徴候(を問わず、・が軽度低下した心不全・を含む)、または無症候性の 40%以下 1
H 高血圧 安静時血圧140/90 mmHg超を2回以上、または治療中。のリスクが最も低い血圧目標は120〜129/70〜79 mmHg(または合理的に達成できる限り低く) 1
A 75歳以上 年齢はの独立した。年齢によるリスクは連続的だが、実用上75歳以上に2点を与える 2
D 糖尿病 現在認められた基準による1型または2型糖尿病、または血糖降下療法を受けている 1
S 脳卒中・・の既往 血栓塞栓症の既往は再発リスクが非常に高いため2点の重みを付ける 2
V 血管疾患 冠動脈疾患(心筋梗塞・狭心症の既往、外科的または経皮的な冠の既往、や心臓イメージングで確認された有意な冠動脈疾患)
または
(、に対するの既往、への経皮的・外科的介入、イメージングで見つかった複雑な〈可動性・潰瘍・、または厚さ4 mm以上〉)
1
A 65〜74歳 65〜74歳に1点 1

合計は0〜8点である1。例えば、高血圧の治療中の78歳は、年齢2点+高血圧1点で3点となり、経口抗凝固薬の適応になる。

論点 旧: 現行: 2024年版の
性別 女性に1点を加える(最大9点) 性別の項目を除く(最大8点)
抗凝固の閾値 の旧版は、実際には男女で異なる点数の閾値を使っていた 男女を問わず2点以上で推奨、1点で考慮
性別を外した理由 — 女性であることは年齢に依存するリスクであり、それ自体の危険因子ではない。性別を入れると臨床が複雑になり、ノンバイナリーやトランスジェンダー、性ホルモン療法中の人を扱えない

1

以外の地域の指針では従来のが使われていることがあり、どちらの点数系か確かめて読む(スコア)。

経口抗凝固薬の2つの系統

項目
作用機序 Glaタンパク質(凝固因子II・VII・IX・X、・S)の合成に必要なビタミンKの還元を阻害する。そのため効果が出るまで数日かかる 凝固因子IIであるトロンビン、または凝固因子Xを直接阻害する
効果の監視 抗凝固効果を見るため、を定期的に測る 抗凝固効果の監視には測らない
目標 INR 2.0〜3.0 —
用量の決め方 を見て調整 主に3つの因子(薬によって異なる)で決める:腎機能・年齢・体重
薬 アセノクマロール、ワルファリン 、、(以上Xa阻害)、(トロンビン阻害)
使えない場合 — どの薬も使えない:ごく重度の腎疾患( 15未満)、中等度〜重度の、、特殊な状況(、の使用中、など)
  • ごく重度の腎疾患の基準を 15「mL/時」と書いた整理があるが、の単位はmL/min/1.73 m²である。
  • 腎機能の線引きは薬で違う。 2024年版では、はへの依存が大きく 30未満で禁忌、・・は15〜29 mL/分で減量用量が承認されている1。
  • と中等度〜重度のでは、が唯一の選択肢である。ではで血栓塞栓と大出血が増えて試験が中止され、機械的大動脈弁でのの試験も血栓塞栓の増加で中止された。一方、(を含む)や経カテーテル大動脈弁留置術の後にはを使える1。
  • は、が2.0〜3.0に入っている時間の割合(治療域内時間)が長期に70%を超えるように保てば、有効で安全に使える1。

💡 の効果が数日遅れるのは、すでに血中にある凝固因子が半減期に従って減るのを待つからである。半減期の短い・Sが先に減るため、開始直後はかえって凝固に傾く時期がある。

直接経口抗凝固薬の用量(ESC 2024年版)

薬 標準用量 減量の基準 減量用量
5 mg 1日2回 次の3つのうち2つ:80歳以上、体重60 kg以下、133 µmol/L(約1.5 mg/dL)以上 2.5 mg 1日2回
150 mg 1日2回 推奨:80歳以上、併用
個別に考慮:75〜80歳、中等度腎障害(30〜50 mL/分)、胃炎・食道炎・、その他の出血高リスク
110 mg 1日2回
60 mg 1日1回 いずれか:中等度〜重度腎障害(15〜50 mL/分)、体重60 kg以下、・ドロネダロン・・の併用 30 mg 1日1回
20 mg 1日1回 15〜49 mL/分 15 mg 1日1回

1

⚠️ に当てはまらないのに少ない用量を使うと、塞栓の予防が不十分になる。原則は標準用量である。経口抗凝固薬を始めたら、多くの患者では止める1。

ビタミンK拮抗薬と直接経口抗凝固薬の比較

特徴
半減期 長い 短い
用量 患者ごとに変わる 固定
食事の影響 ある ない
⭐ 薬物相互作用 非常に多い 少ない
検査での監視 必要(を測る) 不要
拮抗薬 ビタミンK 、凝固因子の補充

現行の 2024年版での拮抗の方法を補うと次のようになる1。

抗凝固薬 重い出血のときの拮抗
ビタミンK。より速く止血するにはがより速く合併症も少ない
が抗凝固作用を完全に打ち消す。透析でも血中濃度を下げられる
Xa阻害薬(・・) が速やかに打ち消す。特異的な拮抗薬が無い施設ではがよく使われる

💡 ワルファリンの相互作用が多いのは、主にCYP2C9などで代謝され、食事のビタミンKとも競合するからである。も相互作用がゼロではなく、やを介して効きが変わる。用量表で()やドロネダロン・()がに入っているのはこのためである。

心房細動に冠動脈疾患やが重なったときの抗凝固薬との併用期間は、の薬物療法の「と抗凝固薬の併用」にまとめてある。の全体像はと適応も参照。

症状の軽減:レートコントロールとリズムコントロール

基本の考え方

  • 心房細動の患者の大多数は、適切なと、場合によってはを必要とする。個別に判断し、両方を組み合わせることが多い。
  • 頻脈を避ける・治すことは全員に必要で、それだけで症状が軽くなることもある。目標心拍数は110/分未満。

💡 110/分という緩やかな目標の根拠はRACE II試験である。心房細動で、安静時110/分未満を目指す緩やかなは、安静時80/分未満を目指す厳格なに劣らず(主要複合評価項目12.9%対14.9%)、目標の達成率は97.7%対67.0%とはるかに高かった2。 2024年版も緩やかなを初期の方針として認め、症状が続く場合やが疑われる場合はより厳しい目標にする1()。

目的 を遅らせ、心室の心拍数を下げる に戻し、保つ
位置づけ 急性期の最初の一手。では唯一の選択肢 抗凝固を十分に行ってから。では行わない
主な薬 β遮断薬、、ジゴキシン、 、、

レートコントロール

薬の群 薬 使えない・注意する状況 静注( 2024年版) 経口の( 2024年版)
β遮断薬 、、、 、で禁忌( 2024年版の表では重いの既往。喘息では非選択性を避ける) 2.5〜5 mgを2分で静注、最大15 mg。500 µg/kgを1分で静注後50〜300 µg/kg/分。も使える 25〜100 mg 1日2回(のは50〜200 mg 1日1回)、1.25〜20 mg 1日1回、2.5〜10 mg 1日1回、3.125〜50 mg 1日2回
、 40%未満で禁忌( 2024年版の表では 40%以下)。肝・腎障害で用量を調整 2.5〜10 mgを5分で静注。0.25 mg/kgを5分で静注後5〜15 mg/時 40 mg 1日2回〜480 mg 1日1回、60 mg 1日3回〜360 mg 1日1回
ジゴキシン 血中濃度の測定が必要。高い血中濃度は有害事象と関連する。開始前に腎機能を確認し、では用量を調整 0.5 mg静注(24時間で0.75〜1.5 mgを分割) 0.0625〜0.25 mg 1日1回
その他 副作用と薬物相互作用が多い。ヨード過敏の患者に使わない 300 mgを30〜60分で静注後、24時間で900〜1,200 mg(が望ましい) 200 mg 1日3回を4週間の負荷の後、200 mg 1日1回以下(心拍数に応じて他の薬を減らす)

1

ジゴキシンについて「の測定が必要」とする記載を見かけることがあるが、これは誤りで、測るのは血中ジゴキシン濃度(と腎機能・電解質)である1。

💡 で薬を分ける理由。 β遮断薬は低下型の心不全でも長期的に有益なので、を問わず使える。・はが強く、が低い心臓ではさらに収縮を落として心不全を悪化させるので禁忌になる。ジゴキシンはをもつので心不全でも使えるが、効き始めが遅く、安静時の心拍数は下げても運動時の頻脈は抑えにくい。

  • 急性期のには、効き始めが速くがあるため、β遮断薬(を問わず)と・( 40%超)をジゴキシンより優先する。血行動態が不安定な例や高度にが低い例では、静注の・・ジゴキシンを使える1。
  • 目標に届かないときは併用するが、β遮断薬と・の併用は、24時間心電図で徐脈を確認できる専門的な管理下に限る1。

⚠️ (症候群)の心房細動では、すべての薬(静注を含む)が禁忌である1。だけを抑えると、を通る伝導が優位になり、に移りうる。

⚠️ ドロネダロンは心房細動で心不全・脳卒中・心血管死を増やしたため、には使わない。やにも心拍数を下げる作用はあるが、原則としてのための薬である1。

リズムコントロール

始める前の条件

  • 目的はの回復(とその維持)である。
  • 原則として、十分な期間(最低3週間)抗凝固を行った後か、での血栓を否定した後にだけ始める。
  • 心房細動、の病気、、QT延長のいずれかがあれば行わない。
論点 従来 現行( 2024年版)
抗凝固やを省いてできる 48時間未満 24時間を超える心房細動では、3週間以上の治療域の抗凝固かでの血栓除外なしにしない
後の抗凝固 — 多くの患者で少なくとも4週間続ける。塞栓のリスク因子があれば、に戻ったかどうかにかかわらず長期に続ける

1

💡 の前に抗凝固が要るのは、に戻った直後に心房が再び収縮を始めると、にできていた血栓が押し出されるからである。さらに戻った直後の心房は「気絶」していて収縮が弱く、数週間は新たな血栓ができやすい。これが後も抗凝固を続ける理由である。詳しくは電気的およびを参照。

flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhythm control'>リズムコントロール</span>を検討"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='permanent'>永続性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinoatrial (SA) node'>洞結節</span>の病気・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='AV conduction disturbance'>房室伝導障害</span>・QT延長がある?"}
  B -->|"ある"| X["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhythm control'>リズムコントロール</span>は行わない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='rate control'>レートコントロール</span>を続ける"]
  B -->|"ない"| C{"心房細動は24時間を超える<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='duration'>持続時間</span>が不明?"}
  C -->|"いいえ"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defibrillation'>除細動</span>を検討"]
  C -->|"はい"| D{"3週間以上の治療域の抗凝固<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transesophageal echocardiography (TEE)'>経食道心エコー</span>で血栓なし?"}
  D -->|"いいえ"| D1["まず抗凝固を3週間以上"]
  D1 --> D
  D -->|"はい"| E
  E --> F{"心臓の構造と冠動脈は正常?"}
  F -->|"正常"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='propafenone'>プロパフェノン</span><br>(同じIC群の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flecainide'>フレカイニド</span>も)"]
  F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic heart disease (IHD)'>虚血性心疾患</span>あり"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amiodarone'>アミオダロン</span><br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sotalol'>ソタロール</span>(厳重な監視)"]
  F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='left ventricular systolic function'>左室収縮能</span>が低下"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='amiodarone'>アミオダロン</span>"]
  G --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defibrillation'>除細動</span>後も抗凝固を少なくとも4週間<br>リスク因子があれば長期に"]
  H --> J
  I --> J

抗不整脈薬

薬 使える状況と禁忌 監視・副作用 用量( 2024年版)
心臓が構造的に正常で、冠動脈も正常な場合に限る。には使わない QRS幅とを監視する。QRS幅が25%を超えて広がるかが出たら中止 経口450〜600 mg、静注1.5〜2 mg/kgを10分。長期は150〜300 mg 1日3回
やの低下があっても使える 副作用が多い(低血圧、QT延長、など)。薬物相互作用も多い(など) 静注300 mgを30〜60分、その後24時間で900〜1,200 mg(または経口200 mg 1日3回を4週間)。長期は200 mg 1日1回
でも使える QT時間、K値、腎機能を厳重に監視する 長期は80〜160 mg 1日2回

1

💡 をに使わない理由。 IC群の薬は心房の興奮頻度を落とすため、心房細動がに変わると波の頻度が下がり、が1:1で伝導できるようになって心室の心拍数がかえってする。 2024年版は、IC群の薬(・)を使うときはを抑える薬を併用し、の停止には使わないとする。また重いや冠動脈疾患では使わない1。IC群はNaチャネルを強く抑えて伝導を遅らせるので、傷んだ心筋では致死的なを招き、その変化はQRS幅の延長として心電図に現れる。

💡 の注意点は薬理から整理できる。 分子内に大量のヨードを含むので、や甲状腺機能低下症を起こし、ヨード過敏では使えない。CYP2C9などを阻害するのでワルファリンの効きが強まりが上がる(ワルファリンの減量との頻回な確認が要る)。心筋へのが弱いので、収縮能が落ちた心臓でも使える。長期では肺・眼・肝の障害にも注意する1。

⚠️ は腎臓から排泄され、にQTを延ばす。 腎機能が落ちると蓄積し、低K血症が重なるとQT延長からトを起こしうる。開始時と増量時の心電図、血清カリウム、腎機能の確認が欠かせない。 2024年版は、の選択は有効性より安全性で決めるべきで、とには死亡増加の兆候があると述べている1。

2024年版の一覧には、ほかに急性の用の(と同じIC群)、、、長期維持用のドロネダロンが挙がる1。臨床面の詳細は心房細動と心房細動(内科学)を参照。

まとめ

  • 心房細動は最も多い不整脈で、高齢化・併存症・の進歩で増えている。症状は無症状から胸部不快感までさまざまだが、脳卒中・・心不全という重い結果を招く。
  • で初発・発作性(7日以内に停止)・持続性・(12か月以上)・(をもう試みないという臨床判断)に分ける。臨床像では臨床的・機器検出・誘因による心房細動、心房心筋症などに分ける。
  • 治療は・症状の軽減・併存症の管理の3本立て( 2024年版の-CARE)。
  • 塞栓リスクは病型を問わず評価する。 2024年版はを使う。性別の項目は無く最大8点で、2点以上で経口抗凝固薬を推奨、1点で考慮する。75歳以上と脳卒中・・血栓塞栓症の既往が2点。は代わりにならない。
  • 第一選択は(・・・)。監視は不要で、用量は腎機能・年齢・体重で決める。と中等度〜重度のでは( 2.0〜3.0、治療域内時間70%超)。は 30未満で禁忌。
  • は半減期が長く、用量が変動し、食事と相互作用の影響が大きい。拮抗はビタミンKで、速さを求めるなら。は、Xa阻害薬は。
  • 頻脈は全員で治し、目標はRACE II試験に基づき安静時110/分未満。は急性期の最初の一手で、では唯一の選択肢:β遮断薬(・で禁忌)、・( 40%以下で禁忌)、ジゴキシン(血中濃度と腎機能を監視)、(ヨード過敏で禁忌)。症候群ではすべて禁忌。
  • は3週間以上の抗凝固かでの血栓否定の後( 2024年版は24時間超で必須)、後も4週間以上抗凝固。・の病気・・QT延長では行わない。は正常な心臓・冠動脈に限りQRS幅を監視しには使わない。は・収縮能低下でも使えるが甲状腺・QT・ワルファリン相互作用に注意。はQT・K・腎機能を厳重に監視。

出典

  1. 1.2024 ESC Guidelines for the management of atrial fibrillation developed in collaboration with the European Association for Cardio-Thoracic Surgery (EACTS)(European Society of Cardiology / European Association for Cardio-Thoracic Surgery・2024)本文全文(Wayback Machine の id_ 付き出版社ページ、20251207234158)で確認した。Table 5が初発・発作性(7日以内に自然に、または介入で停止)・持続性(自然停止しない。多くの試験は7日を区切りに使った)・長期持続性(12か月以上続くがリズムコントロールがなお選択肢)・永続性(患者と医師の共同決定で洞調律復帰をもう試みない)と定義し、Table 6が臨床的心房細動(心電図で記録。30秒以上が目安)・機器で検出された無症候性心房細動(心電図や心内電位で確認が必要)・誘因による心房細動・自然停止する/しない心房細動・心房心筋症を定義すること。AF-CAREの4要素、CHA2DS2-VAScの性別項目は年齢依存のリスク修飾因子にすぎずESC旧版は男女で異なる閾値を使っていたためCHA2DS2-VAを用い、2点以上で経口抗凝固薬を推奨し1点で考慮すること、Table 10の各項目の定義と点数、抗血小板薬は経口抗凝固薬の代わりにならずACTIVE Wで2剤抗血小板療法がワルファリンより劣ったこと(年5.6%対3.9%、大出血は同程度)、ビタミンK拮抗薬は機械弁と中等度〜重度の僧帽弁狭窄の唯一の選択肢でTTR 70%超を目安にINR 2.0〜3.0を保つこと、生体弁では直接経口抗凝固薬を使えること、ダビガトランはeGFR 30未満で禁忌、リバーロキサバン・アピキサバン・エドキサバンはCrCl 15〜29で減量用量が承認されていること、Table 11の各直接経口抗凝固薬の標準用量と減量基準、原則は標準用量を使い多くの患者で直接経口抗凝固薬の開始時に抗血小板薬を止めること、ダビガトランにイダルシズマブ、Xa阻害薬にアンデキサネット アルファ、ビタミンK拮抗薬にはプロトロンビン複合体製剤が新鮮凍結血漿より速いこと。安静時心拍数110/分未満の緩やかなレートコントロールが初期の方針として許容されること、急性期はβ遮断薬(全LVEF)とジルチアゼム・ベラパミル(LVEF 40%超)をジゴキシンより優先し、不安定例や高度LVEF低下例では静注アミオダロン・ランジオロール・ジゴキシンを使えること、Table 12の各薬の静注・経口用量と禁忌(アミオダロンは肺・眼・肝・甲状腺の重い副作用がありうること、β遮断薬は急性心不全と重い気管支攣縮の既往、ベラパミル・ジルチアゼムはLVEF 40%以下、ジゴキシンは高い血中濃度が有害事象と関連し腎機能を確認、アミオダロンはヨード過敏、全レートコントロール薬はWPW症候群で禁忌)、β遮断薬とベラパミル・ジルチアゼムの併用は監視下に限ること、ドロネダロンをレートコントロールに使わないこと。24時間を超える心房細動では3週間以上の治療域の抗凝固か経食道心エコーでの血栓除外なしに除細動しないこと(従来は48時間)、多くは除細動後4週間以上抗凝固を続けること、Table 13の抗不整脈薬の用量と禁忌・注意(フレカイニド・プロパフェノンは重い器質的心疾患や冠動脈疾患で使わず、QRS幅が25%超広がるか脚ブロックが出たら中止し、心房粗動の停止に使わず、粗動化に備えて房室結節抑制薬を併用、アミオダロンは低血圧・徐脈・QT延長と多くの相互作用、ソタロールの長期用量80〜160 mg 1日2回)、抗不整脈薬の選択は有効性より安全性で決め、ソタロールとアミオダロンに死亡増加の兆候があることを確認した。閲覧 2026-09-26
  2. 2.Lenient versus strict rate control in patients with atrial fibrillation(The New England Journal of Medicine(RACE II試験)・2010)抄録(PMID 20231232)で、永続性心房細動614例を緩やかなレートコントロール(安静時110/分未満)と厳格なレートコントロール(安静時80/分未満かつ中等度運動時110/分未満)に割り付け、3年での主要複合評価項目が12.9%対14.9%で非劣性を示し、心拍数目標の達成は97.7%対67.0%で、症状と有害事象は同程度だったことを確認した。閲覧 2026-09-26