画像診断学

画像診断学 · 11

頭頸部の画像診断

Head and neck imaging

前提:正常
頭部:耳頭部:鼻腔と副鼻腔頭部:口腔・咀嚼・側頭下窩頸部:頸部内臓

🧠 全体像:頭頸部は骨・空気・軟部・腺・リンパ節が数cmの中に詰まった領域で、「何を見たいか」でが決まる。骨と(副鼻腔・・顔面骨)は、軟部の広がりと神経(腫瘍の境界・・)は、表在の腫瘤(甲状腺・唾液腺・リンパ節)はまず超音波で、そのまま針も刺せる。病期と治療効果は、嚥下の動きはで見る。単純X線の出番は歯・気管などごく一部に限られ、副鼻腔X線は使わない。そして画像の前に、病歴・診察・簡単な検査がある。

1. 頭頸部画像診断の守備範囲

頭頸部の画像診断は、上は神経放射線、下は体幹部の画像診断と境を接する。で見ると、頭蓋底の上が神経放射線、より下が体幹部で、その間が頭頸部の担当になる。

領域 隣の分野との関係
眼窩 神経放射線との
頭蓋底 神経放射線との
副鼻腔 頭頸部の中心
口腔・舌・唾液腺 頭頸部の中心
咽頭・喉頭 頭頸部の中心
聴覚・系(・内耳) 頭頸部の中心
頸部のその他の軟部(甲状腺・副甲状腺・表在構造) 頭頸部の中心
筋骨格放射線との

2. 部位ごとのモダリティの選び方

⭐ 基本の考え方は「骨は、軟部は、表在は超音波」である。部位ごとに第一に選ぶ検査と、補助的に使う検査を並べると次のようになる。

部位 主に使う検査 補助的に使う検査
頭蓋底 骨は、軟部は ―
眼窩 、 超音波、X線
、 X線
顔面骨() 骨は、軟部は X線、頬間隙の超音波
超音波、、 X線
歯 歯科のX線撮影(次の表の単純X線を参照) ―
頸部 超音波、、 ―
脊椎 、の評価にはX線、骨の評価には ―

検査法の側から整理すると、それぞれが得意な問いがはっきりする。

検査 得意な問い 頭頸部での主な使い道
単純X線 骨・空気の大まかな形 歯の撮影、気管の偏位・狭窄。外傷()にも使われてきたが、現在はの評価に単純X線を勧めない立場がある1
超音波 表在構造の性状と血流、針の誘導 頸部の表在構造、唾液腺、甲状腺、副甲状腺、リンパ節、生検
骨、石灰化、空気、造影される壁 腫瘍、感染(主に合併症を伴うもの)、外傷、、異物、唾石、頸部深部の評価
微細な骨構造 ・(耳小骨・)、合併症を伴う中耳炎、の
軟部の、神経 腫瘍、感染(主に合併症を伴うもの)、感音(神経性)難聴、
(形態と代謝を同時に) 腫瘍のと経過観察。の大部分はを強く取り込む
() 動き(機能) 嚥下障害
flowchart TD
    A["頭頸部の症状・所見"] --> B["まず病歴・診察・簡単な検査"]
    B --> C{"何を見たいか"}
    C -->|"骨・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aeration (pneumatization)'>含気</span>・石灰化"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='temporal bone'>側頭骨</span>の微細構造は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-resolution computed tomography'>HRCT</span>"]
    C -->|"軟部の広がり・神経"| E["MRI"]
    C -->|"表在の腫瘤・腺・リンパ節"| F["超音波<br>必要ならそのまま<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cytology'>穿刺吸引</span>"]
    C -->|"腫瘍の病期・治療効果・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>"| G["PET-CT"]
    C -->|"嚥下の動き"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='barium swallow'>バリウム嚥下造影</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fluoroscopy'>透視</span>)"]
    C -->|"気管の偏位"| I["単純X線"]

3. 副鼻腔

3.1 副鼻腔X線は治療方針を決められない

副鼻腔X線で左が一様に白く曇っていても、その原因は区別できない。

  • 換気障害
  • 感染(真菌感染を含む)
  • ポリープ
  • 腫瘍
  • 出血

⚠️ 副鼻腔X線は特異性が足りず、の決定に役立たない。どの場面でも適切な検査ではない。 現行の指針でも、副鼻腔X線は急性・慢性いずれの副鼻腔疾患でも勧められていない。21

3.2 副鼻腔の低線量CTと通常線量CT

の 通常線量
目的 と骨の輪郭を確認する 骨と軟部を詳しく見る
線量の例 0.43 mSv(胸部X線およそ4枚分) より多い
見えるもの 洞が空気で満ちているか、・液体で埋まっているか、骨の輪郭 で骨壁の細部、軟部条件で洞の内容の性状
主な適応 長引く・繰り返す換気障害や副鼻腔炎 真菌症や腫瘍が疑われるなど、内容の性状まで知りたいとき

は骨と空気の差のように大きなは保てるが、軟部の情報は乏しくなる。通常線量でと軟部条件の両方を見ると(提示例は両側のが埋まった症例で、軟部条件の・で洞の内容の濃度の違いまで見え、では洞壁の骨の輪郭が見える)、読みは「洞が埋まっている」→「副鼻腔炎」→「亜急性副鼻腔炎」→「亜急性の真菌性副鼻腔炎」→「亜急性のアレルギー性真菌性副鼻腔炎」と段階的に絞り込める。

⚠️ 合併症のない(4週未満)は臨床診断であり、も含めて画像検査は原則不要である。が役立つのは再発・慢性の副鼻腔炎、手術計画、眼窩・の疑い(この場合は造影CT・造影MRI)である。2 画像の選び方の全体はX線撮影の基礎の「X線撮影が適さない場面」にもまとめてある。

3.3 副鼻腔CTの正常解剖

とで、次の構造を確認する。

  • 、、(は・で)
  • (で鼻腔の側壁から張り出す)
  • 眼窩(のすぐ外側)
  • 上咽頭(の高さので鼻腔の後方)
  • (の高さので後外側)

💡 副鼻腔はが特に役に立つ。・・鼻腔・眼窩の上下左右の関係と、の底と上顎の歯根の近さが一度に分かる。

3.4 歯性上顎洞炎:CTが原因まで示す

左の痛みが数週間続く患者で、(、・)を撮ると、左のとが埋まり、さらに左の根尖の周りに透亮域()が見つかる。が副鼻腔炎の原因(歯)まで明らかにした例で、診断はである。

💡 片側だけの炎では、の底に接する歯を必ず見る。原因の歯を治療しなければ副鼻腔炎は治らない()。

3.5 副鼻腔腫瘍:MRIで境界を決める

右のとにを行い、組織が筋上皮癌だった患者の再切除を計画する場面では、が役立つ。強調像()の・で、

  • 炎症によるは高信号(水分が多い)
  • 腫瘍組織は相対的に低信号

と分かれ、腫瘍の境界を正確に評価できる。ではどちらも同じような軟部濃度で、洞が埋まっているとしか分からない。

画像で確かめる

  • EI-12-01 :の(、・)。で左のとがと液体(0〜20 )で埋まり、右は空気(−1000 )で黒いまま残る左右差を見る。次にの底の下へ目を移し、左の根尖を囲む透亮域を探す。これが原因の歯である。

4. 口腔・舌・唾液腺・咀嚼筋間隙

4.1 正常解剖

撮影 確認する構造
(、) 、、、耳下腺、脊髄
造影CT(、下顎体の高さ) 下顎体、の筋群、、、リンパ節、、、

💡 造影CTでは、とが強く造影されて白く見え、その周りに小さな楕円形のリンパ節が並ぶ。血管とリンパ節の位置関係を知っておくと、腫大したリンパ節を見つけやすい。

4.2 唾石:CTと超音波

食事のたびに悪化する右耳下腺の痛みと腫れは、唾石による導管の閉塞を示唆する。

検査 所見
造影CT(軟部条件・) 右耳下腺内のの石と、その手前(腺側)の唾液管の拡張
超音波 唾液管の中のの構造と、その後ろの、の拡張

診断は閉塞性の唾石である(・)。

💡 「食事で悪化する」のは、唾液の分泌が増えても出口が塞がっているためである。石は石灰化しているので、では、超音波では強い反射と後方のとして写る。

4.3 咀嚼筋間隙の膿瘍

歴のある患者の左耳下腺部の腫れと()では、造影CTで左に沿ったの領域に、辺縁がに造影され中心が低吸収の病変が見つかる。診断はの膿瘍である。

4.4 耳下腺腫瘍:ダイナミック造影MRIで性状を絞る

境界明瞭で辺縁の滑らかなは良性を示唆する。との(Dixon法)で形を見たうえで、で時間とともに造影の強さがどう変わるか(時間-信号強度曲線)を描くと、腫瘍の種類ごとに特徴的な曲線が得られる。

頻度 耳下腺の良性腫瘍で2番目に多い 耳下腺の良性腫瘍で最も多い
曲線の形 造影剤到達後にに立ち上がる早期ピーク、その後ゆるやかだがはっきり低下する() 最初ののあともゆるやかに上昇し続け、ピークが遅い
提示例の曲線(目盛りから読んだおおよその値) 約40秒まで、約55〜70秒で相対値約40%のピーク、約170秒で約29%まで低下 腫瘍は約20秒で相対値約170%、90〜100秒で約240%まで上昇し続ける。対照の正常耳下腺は約20秒で約145%に達したあと約150%で横ばい

💡 曲線の形は腫瘍の血管の多さ(ピークの早さ)と細胞・間質の割合()を反映する。の研究では、ピーク到達時間120秒で悪性腫瘍とを分けられたが、悪性腫瘍とはどちらもピークが早く、区別には(30%が境目)が必要だった。3 どちら向きかは、と悪性を比べた別の研究が示している。の上皮性間質とリンパ組織の部分は30%以上と大きく洗い出され、平均のはが約44%、悪性腫瘍が約12%だった。ただしの中でも、複雑な嚢胞が集まる部分はが30%未満になる。4 つまり「早期ピーク」だけでは良性と言えず、ピーク後にどれだけ下がるかまで見て判断する。3 Tの別の研究では、6例はすべてピーク到達が43秒以内で、180秒でのが22%を超え、以外の良性腫瘍(ほぼすべて4.6%未満)より明らかに大きく下がった。5 提示例の曲線は約40%のピークから約170秒で約29%まで、ピークのおよそ4分の1(約27%)下がっており、3 Tの研究の22%は超える。観察が約3分と短く、5分間撮像した研究の30%という境目とはそのまま比べられないので、数字の境目は研究ごとの目安と考える。⚠️ の曲線を「早期ピークでが少ない」と説明することもあるが、上の研究ではが少ないのはむしろ悪性腫瘍の側で、は悪性腫瘍よりも大きく下がる。の特徴は「早く上がって、はっきり下がる」と覚え、早期ピークのあと下がりが小さい曲線は悪性腫瘍を疑う。

4.5 舌癌の術前と術後

造影CTで舌の左縁に、強く造影される潰瘍状(えぐれた)病変がある。切除後の経過観察では、手術部位に一致する組織の欠損があり、局所再発の所見はない。術後の画像は「欠損の形が手術どおりか」「欠損の縁に新たに造影されるがないか」を見る(口腔・舌・の悪性腫瘍)。

画像で確かめる

  • EI-01-04 :6日前に右下の親知らずを抜いた患者の、右の部の痛みを伴う腫れ。ヨード造影CTので、右部に厚く造影される壁に囲まれた低吸収の液体貯留を見る。内部の液体は0〜10 で造影されない。を合わせて上下の広がりをつかむ。のあとに生じた深頸部の膿瘍という点で、上の膿瘍と共通する。

5. 咽頭・喉頭

5.1 嚥下障害にはまずバリウム嚥下造影

嚥下障害の患者にを撮ると、の・での高さに椎体前方の楕円形の病変が見え、に上咽頭のTornwaldt嚢胞(上咽頭正中の嚢胞)も写る。しかし⚠️ 嚥下障害はの適応ではない。 静止画では「飲み込むときに何が起きるか」が分からないからである。

この患者に適切な検査はで、側面像での後壁から突出する袋(憩室)が見える。診断はである。

の適応 何が分かるか
嚥下障害 嚥下の動き、憩室、狭窄
食道下端のと上流の拡張
異物 食道内の停滞部位
胃から食道への逆流

⚠️ 穿孔が疑われる場面では、ではなく水溶性や造影CTを選ぶ。造影剤の使い分けはX線撮影の基礎、食道の病態は食道の診察と疾患と嚥下障害で扱う。

5.2 中咽頭癌の治療効果判定:造影CTとPET-CT

症例 画像 所見
の腫瘍 治療前の造影CTと、後の再検 治療前はを強く取り込む腫瘍。治療後は形も代謝も消え、形態・代謝ともに
舌根癌 の前後の 治療前は舌根に大きな集積。治療後は集積が消失
  • 進行癌や手術できない例でも、でに至ることがある。とくに関連の扁平上皮癌(p16陽性)は治療への反応がよい(と)。
  • 💡 治療後の組織は瘢痕や浮腫で上の形がすぐには正常に戻らない。は「残っている塊が生きた腫瘍か」を代謝で判断できるので、治療効果の判定に向く(FDG-PET)。

5.3 原発不明癌:PET-CTで原発巣を探す

はあるがが分からない(癌)とき、造影CTでは転移リンパ節しか見えないことがある。は、を取り込むと、同じくを取り込む病的リンパ節の両方を示せる。提示例では、造影CTで見えなかったが、気道のすぐ前に接する強い集積として現れ、頸部の病的リンパ節にも集積があった。

画像で確かめる

6. 聴覚・平衡覚系(側頭骨)

6.1 HRCTとMRIの役割分担

⭐ は外耳・中耳の骨構造を高いで描き、は内耳の液体と神経、、を描く。

() (強いの3D撮像など)
撮影条件 薄いスライス(0.2〜1 mm)、造影剤なし、 内耳・の液体を明るく描く撮像、必要に応じ像
よく見える構造 耳小骨(・・)、蝸牛・の、、外耳道 、、蝸牛・の液体、
主な適応 ・、合併症を伴う中耳炎、の疑い、のと術後評価 感音(神経性)難聴、

耳小骨はきわめて小さい(3つ合わせても指先に載る大きさ)。だからこそ薄いスライスの再構成が必要になり、立体表示では蝸牛のきと周囲のを立体的に確認できる。のでは、の後外側にがあり、その中に耳小骨、蝸牛、、外側にが並ぶ。

flowchart TD
    A["難聴・めまい"] --> B["病歴・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Otoscope'>耳鏡</span>・聴力検査で種類を決める"]
    B --> C{"難聴の種類"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='conductive hearing loss'>伝音難聴</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mixed hearing loss'>混合性難聴</span>"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='temporal bone'>側頭骨</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-resolution computed tomography'>HRCT</span>(単純)<br>耳小骨・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osseous labyrinth'>骨迷路</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mastoid air cells'>乳突蜂巣</span>"]
    C -->|"感音(神経性)難聴"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='internal auditory canal (IAC)'>内耳道</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebellopontine angle'>小脳橋角部</span>)<br>必要に応じ造影"]
    B --> F{"めまい"}
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='peripheral vertigo'>末梢性めまい</span>"| E
    D --> G["中耳炎の合併症・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cholesteatoma'>真珠腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='otosclerosis'>耳硬化症</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='aural atresia (atresia of the external auditory canal)'>外耳道閉鎖</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cochlear implant'>人工内耳</span>の術前"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vestibular schwannoma'>前庭神経鞘腫</span>など"]

6.2 中耳炎:画像が必要になるのはどんなときか

⚠️ に画像検査は要らない。 病歴と診察で診断できる。画像が必要になるのは、

  • 長引く(合併症を伴う)中耳炎
  • 治療に反応しない中耳炎
  • の疑い

のときで、を撮る。反復性中耳炎の例では、でとが埋まってが消え、で外耳道の粘膜(壁)が厚くなっている(中耳炎、の合併症)。

6.3 感音難聴:前庭神経鞘腫

感音難聴ではとをで見る。

撮像 見え方
強いの3D撮像(造影なし) 脳脊髄液が白く、その中に左の腫瘤が暗い塊として浮かぶ
像 同じ腫瘤が境界明瞭に強く造影される

診断はである。💡 強いは脳脊髄液と神経ので小さな腫瘤も拾えるので、造影なしのスクリーニングにも使われる。

6.4 人工内耳とHRCT・MRI

  • はのと術後評価に欠かせない。術後のでは、両側の蝸牛の中にき状の電極が収まり、そこからの本体へ導線がのびる様子が見える。
  • ⚠️ は機種によってMR UnsafeのこともMR Conditionalのこともある。MR Conditionalの機器でも、撮れるのは製造元が定めたごく限られた条件の下だけで、条件を外れて撮ると重い損傷や機器の故障を起こしうる。患者が持つカードで機種を確かめ、添付文書の安全情報で撮像条件を確認し、と両立しない可能性のある機器に注意する。の安全表示はの基礎の「植込み型の機械・電子機器」、そのものはとで扱う。

6.5 HRCTで分かる難聴の原因

症例 病歴 の所見 診断と意味
骨化性 脳炎の既往、でを計画 8年後ので、き状の空間として見えていた蝸牛の内腔が骨で埋まる(硬化) 中枢神経感染(典型は、この例では脳炎)の遅発性合併症。⚠️ 蝸牛の内腔が骨で埋まると電極を通常どおり挿入できず、この例ではは不可能と判断された()
(外耳の無形成) 外耳道とが発達していないが、中耳・内耳の骨構造はほぼ正常 蝸牛が保たれているので、植込み型の機器による聴覚の再建ができると判断された。💡 は本来、蝸牛の感覚細胞が働かない感音難聴のための機器で、内耳が正常なでは、音を骨や耳小骨の振動として蝸牛へ届ける・人工中耳や、が選択肢になる。どの機器でも「蝸牛が使えるか」をで確かめる(耳介と外耳道の疾患)
()のすぐ前()に(透亮)病変 (耳海綿化症)に特徴的な像。が固定されてになる()

💡 骨化性は蝸牛そのものの病変なので、難聴には必ずが含まれる(この例も)。炎症のあと蝸牛の内腔は線維化を経て骨化していくので、を考えるなら骨化で内腔が閉じる前に評価して手術することが大切で、の経時比較がその判断材料になる。骨化がどこまで進むと挿入できないかは程度と施設の手技によって変わる。

画像で確かめる

  • EI-07-02 反復性中耳炎():とに対する単純の(・)。で本来黒く抜ける中耳とが液体で埋まり、の骨に侵食がある。では外耳道の壁が厚い。造影せず、の薄いスライスで骨とを見る検査である。
  • EI-11-01 :数か月かけて進んだ神経性難聴に対する。造影なしの強いで白い脳脊髄液の中に左の腫瘤が暗く見え、静注後ので同じ腫瘤が境界明瞭に造影される。感音難聴だからではなくを選ぶ、という選択そのものが問われる。

7. 頸部の軟部:甲状腺・リンパ節・頸部腫瘤

7.1 正常解剖(CTと超音波)

甲状腺の高さのでは、でも超音波でも同じ配置が見える。

  • 中央に気管(超音波では空気のため後方が見えない)
  • 気管の両側に甲状腺の右葉・左葉、前方で両葉をつなぐ
  • 甲状腺の外側に、さらに外側に

7.2 リンパ節の超音波

正常リンパ節 病的(転移)リンパ節
形 扁平な楕円形 腫大して丸い
内部 の脂肪性リンパ門と、の皮質が区別できる で、リンパ門と皮質の区別が消える
提示例 無症状の頸部の小さなリンパ節 膵腺癌の転移(約3.3 cm × 2.3 cm の塊)

超音波で疑わしいリンパ節は、そのままのに進める。診断と組織の採取を一度の手技で行えるのが超音波の強みである。リンパ節の超音波所見の詳細はで扱う。

7.3 頸部の嚢胞:鰓裂嚢胞

25歳の患者の触れる。で、

撮像 見え方
低信号
高信号(液体の内容)
(Dixon法) 壁の中のももない

壁にがなく造影もされない単純な嚢胞で、診断はである。

⚠️ 30歳を超える患者の嚢胞性は、最も多いのはリンパ節転移である。 成人のは否定されるまで悪性と考え、や画像で嚢胞性と分かっても良性と決めつけず、診断がつくまで評価を続ける。6 転移リンパ節は中身が壊死・嚢胞化して、単純な嚢胞のように見えることがある(頸部の奇形と炎症性疾患)。

7.4 頸部腫瘤の原因は年齢で変わる

小児・若年成人 成人
1. 感染に伴うリンパ節炎(最多) 1. 転移リンパ節(最多。扁平上皮癌が最も多い)
2. 先天性病変(、、血管腫など) 2. 感染
3. 悪性腫瘍(リンパ腫、肉腫など) 3.
flowchart TD
    A["触れる<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck mass'>頸部腫瘤</span>"] --> B["病歴・診察<br>(年齢、感染の有無、持続期間)"]
    B --> C["超音波(表在腫瘤の第一選択)"]
    C --> D{"性状"}
    D -->|"疑わしいリンパ節・結節"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ultrasound-guided'>超音波ガイド下</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fine-needle aspiration cytology (FNAC)'>穿刺吸引細胞診</span>"]
    D -->|"嚢胞性"| F{"成人か"}
    F -->|"若年で単純な嚢胞"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='branchial cleft cyst'>鰓裂嚢胞</span>などの先天性病変を考える<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='solid component'>充実成分</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contrast enhancement'>造影効果</span>がないか確認"]
    F -->|"成人"| H["転移リンパ節を否定するまで評価を続ける"]
    B -->|"成人で悪性リスクが高い"| I["造影の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck CT'>頸部CT</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>"]
    E --> J{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>が見つからない"}
    J -->|"はい"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positron emission tomography–computed tomography'>PET-CT</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='primary tumor'>原発巣</span>を探す"]

💡 超音波は表在のの最初の検査だが、深部の広がり(、縦隔、骨・血管への浸潤)は見えない。悪性リスクが高い成人のには、造影の(または)が強く推奨されている。6 鑑別の全体はの鑑別。

7.5 甲状腺乳頭癌:超音波が主役、CTは遠隔転移

検査 役割と所見
超音波(・) の評価の中心。提示例ではの甲状腺腫瘤で、で血流が増加し、周囲に病的リンパ節がある
の評価には向かない。遠隔転移(肺)の検索に使う。提示例はで、気管の後外側に腫瘍が、さらに外側に病的リンパ節が写っている

転移のある甲状腺は(131I)で治療する。そのため、の扱いが問題になる。

💡 なぜ問題になるのか:静注したは大量の非を体内に持ち込む。甲状腺(手術後に残った甲状腺組織やを含む)はヨウ素を放射性か非放射性かで区別せずに取り込むので、体内にヨウ素が多く残っている間に131Iを投与しても、非と取り合いになってに集まりにくい。問題は「造影したこと」ではなく、ヨウ素が体に残っている時期にを投与することである。

  • 従来の説明(古い考え方):を静注すると甲状腺の細胞がヨウ素で満たされ(「少なくとも6か月」とされた)、が効かなくなるので、甲状腺のではを避ける。現行の指針はこの考え方を採っていない。
  • 現行の考え方:造影を避けるのではなく、診断の造影と、その後のの時期を分けて考える。次の表のように、2つの場面で優先することが違う。
  • どちらの立場でも、と頸部リンパ節の評価の中心は超音波である。手術予定の全例に術前のが推奨され、疑わしいリンパ節はで確かめる。7
場面 優先すること 現行の指針
① 手術前の(診断のための造影) 腫瘍・転移と周囲の構造の位置関係を正確に知る 進行・浸潤が疑われる例(肉眼的な、大きい・浸潤性のリンパ節腫大、気道・消化管や胸部への進展)では、頸部と縦隔の造影CT・を超音波の補助として行うことが推奨される。断層画像では静注造影剤の使用が重要とされる。ヨウ素は大半の患者で4〜6週以内に排泄されるので、術前の造影でその後のやが臨床的に問題になるほど遅れるという懸念は、大半の患者で根拠がない。7
② その後の・(時期の調整) 体内のヨウ素が抜けてから131Iを投与する 投与前ので、低ヨウ素食を守れているかを確かめ、3か月以内の静注造影剤やなど大量のヨウ素源がないかを確かめて、最適な時期を決める。排泄が気になるときはのヨウ素を測って確かめる。7 「3か月」はで振り返る範囲であり、一律に3か月待つという意味ではない。直近に造影していれば、ヨウ素が抜けた時期に投与を合わせる。期間の目安(米国放射線学会は甲状腺機能亢進症で理想的には3〜4週・甲状腺機能低下症で6週、欧州核医学会は良性の治療前に6〜8週)はの原理の「の安全性」にまとめてある
flowchart TD
    A["甲状腺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papillary carcinoma (thyroid: PTC)'>乳頭癌</span>の診断"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neck ultrasonography'>頸部超音波</span>(全例)<br>疑わしいリンパ節は<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ultrasound-guided fine-needle aspiration'>超音波ガイド下FNA</span>"]
    B --> C{"進行・浸潤が疑われるか"}
    C -->|"はい"| D["頸部・縦隔の造影CT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span><br>(解剖の情報を優先)"]
    C -->|"いいえ"| E["超音波の情報で手術を計画"]
    D --> F["手術"]
    E --> F
    F --> G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radioactive iodine therapy'>放射性ヨウ素治療</span>を行うか"}
    G -->|"行う"| H["直近の造影剤などヨウ素源を確認<br>必要なら尿中ヨウ素で排泄を確かめる"]
    H --> I["ヨウ素が抜けてから131Iを投与"]

⚠️ の原理にある「の治療・検査の前はから一定期間空ける」と、ここでの「進行例のでは造影CTを勧める」は矛盾しない。前者はを投与する時点の条件、後者は手術前の診断の話で、術前の造影から術後のまでには手術と術後の評価が挟まる。数字も同じ時間軸にある。の「ヨウ素は大半の患者で4〜6週以内に排泄される」は、米国放射線学会の6週(甲状腺機能低下症)や欧州核医学会の6〜8週という期間とほぼ重なっており、どれも「体内のヨウ素が抜けるのを待ってからを投与する」という同じ考え方を、診断の側と治療の側から述べたものである。がすでに予定されている患者や、治療が迫っている患者で造影検査を考えるときは、その必要性と時期を核医学・内分泌の担当と事前にすり合わせる。は核医学、疾患はと甲状腺の炎症・変性疾患と腫瘍。

7.6 甲状腺腫による気管の偏位:単純X線の数少ない出番

頸部から胸部の正面X線で、気管のがから右へ押しやられている。のでは、腫大した左葉側の甲状腺が気管を右へしているのが分かる(と)。

⭐ 頸部の単純X線は、気管の評価にだけ使う。 空気の柱である気管は単純X線でも輪郭がよく見えるが、甲状腺そのものの性状は分からない。

画像で確かめる

8. まとめ

  • ⭐ 病歴・診察・簡単な検査が画像より先にある。
  • ⭐ 副鼻腔X線はどの場面でも適切ではない。 画像が必要な副鼻腔疾患には(再発・慢性・手術計画、でよいことが多い)、腫瘍や合併症には造影CT・。合併症のないには画像は要らない。
  • ⭐ には()、感音(神経性)難聴には。 に画像は要らない。
  • ⭐ 表在のの最初の検査は超音波で、の生検まで一度に行える。悪性リスクが高い成人のでは造影CT・を加え、嚢胞性でも転移を否定するまで評価を続ける。
  • 甲状腺の:とリンパ節は超音波で評価する。はとの兼ね合いで避けるよう教えられてきたが、現行の指針は、進行例では造影CT・の利益が上回るとし、ヨウ素は大半の患者で4〜6週以内に排泄されるとしている。造影を避けるのではなく、その後のの投与をヨウ素が抜けた時期に合わせる(期間はの原理)。
  • 唾石はの・超音波の、膿瘍は辺縁の造影、はの曲線、の治療効果と癌のは、嚥下障害はで見る。
  • はMR UnsafeかMR Conditionalかを機種ごとに確認する。蝸牛の内腔が骨で埋まると電極を挿入できなくなるので、は骨化が進む前に評価する。

出典

  1. 1.Choosing Wisely Canada rhinology recommendations(Journal of Otolaryngology - Head & Neck Surgery・2020)Europe PMCの抄録(PMID 32111259)で確認した。カナダ耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の鼻科学部会による5つの推奨のうち、合併症のない急性鼻副鼻腔炎にCTを撮らないこと、副鼻腔の単純X線を撮らないこと、鼻骨骨折の評価に単純X線を撮らないことが含まれる。閲覧 2026-09-26
  2. 2.ACR Appropriateness Criteria® Sinonasal Disease: 2021 Update(American College of Radiology(J Am Coll Radiol)・2022)発行元(acsearch.acr.org)が配信する本文PDFで確認した。合併症のない急性(4週未満)鼻副鼻腔炎では副鼻腔X線・CT・MRIを含むすべての画像検査が「通常不適切」で、画像は細菌性とウイルス性を区別できず、AAO-HNSは合併症を臨床的に疑う場合を除き画像検査を行わないよう勧めていること。眼窩・頭蓋内合併症を疑う急性副鼻腔炎では頭部・眼窩の造影MRIと造影CTが「通常適切」。急性再発性・慢性副鼻腔炎、非浸潤性真菌症、鼻茸で手術を考える場合は非造影CTが「通常適切」。副鼻腔腫瘤を疑う場合は造影MRI、造影CT、非造影CTが「通常適切」で、副鼻腔X線は「通常不適切」であること。閲覧 2026-09-26
  3. 3.Salivary gland tumors: diagnostic value of gadolinium-enhanced dynamic MR imaging with histopathologic correlation(Radiology・2003)Europe PMCの抄録(PMID 12563124)で確認した。唾液腺腫瘍33病変の造影ダイナミックMRI(5分間)で時間-信号強度曲線からピーク到達時間と洗い出し率を求め、ピーク到達時間120秒で悪性腫瘍は多形腺腫と区別できたがワルチン腫瘍とは区別できず、洗い出し率30%で悪性腫瘍とワルチン腫瘍を区別できた。両者を組み合わせた曲線の分類は良悪性の鑑別で感度91%・特異度91%だった。閲覧 2026-09-26
  4. 4.Warthin tumor of the parotid gland: diagnostic value of MR imaging with histopathologic correlation(American Journal of Neuroradiology・2004)Europe PMCの抄録(PMID 15313720、PMC7976549)で確認した。ワルチン腫瘍19例と悪性耳下腺腫瘍17例の造影ダイナミックMRIで、ワルチン腫瘍の上皮性間質とリンパ組織の部分は早期造影と高い洗い出し率(30%以上)を示し、複雑な嚢胞が集まる部分は早期造影と低い洗い出し率(30%未満)を示した。平均洗い出し率はワルチン腫瘍44.0±20.4%、悪性耳下腺腫瘍11.9±11.6%で、ワルチン腫瘍の方が高かった。閲覧 2026-09-26
  5. 5.Dynamic contrast-enhanced MRI for differentiation of major salivary glands neoplasms, a 3-T MRI study(Dentomaxillofacial Radiology・2015)Europe PMCの抄録(PMID 25299931)で確認した。大唾液腺腫瘍46病変(ワルチン腫瘍以外の良性30、ワルチン腫瘍6、悪性10)の3 T造影ダイナミックMRIで、ワルチン腫瘍はすべてピーク到達時間43秒以下かつ180秒での洗い出し率22%超(曲線B型)で、ワルチン腫瘍以外の良性腫瘍の96.7%は洗い出し率4.6%未満、悪性腫瘍の80%は4.6%超だった。閲覧 2026-09-26
  6. 6.Clinical Practice Guideline: Evaluation of the Neck Mass in Adults(Otolaryngology–Head and Neck Surgery・2017)Europe PMCの抄録(PMID 28891406)で確認した。対象は18歳以上。成人の持続する頸部腫瘤の多くは腫瘍性で、悪性が他の原因をはるかに上回り、無症候の頸部腫瘤が頭頸部癌の最初または唯一の徴候となりうるため、成人の頸部腫瘤は否定されるまで悪性と考えるべきとする。悪性リスクが高い頸部腫瘤には造影の頸部CT(またはMRI)を強く推奨し、診断未確定なら切開生検ではなくFNAを行い、FNAや画像で嚢胞性と分かった腫瘤も良性と決めつけず診断がつくまで評価を続けるよう推奨している。閲覧 2026-09-26
  7. 7.2025 American Thyroid Association Management Guidelines for Adult Patients with Differentiated Thyroid Cancer(Thyroid(American Thyroid Association)・2025)PMC全文(PMC13090833)で逐語確認した。推奨7Aは悪性の細胞診・分子所見で手術するすべての患者に、中央・側頸部リンパ節と肉眼的甲状腺外進展を評価する術前頸部超音波を推奨し(強い推奨・中等度の確実性)、7Bは最小径8〜10 mmを超える超音波上疑わしいリンパ節に、管理が変わるなら超音波ガイド下FNAを行うべきとする。推奨8は、肉眼的甲状腺外進展、大きい・浸潤性のリンパ節腫大、気道・消化管や胸部への進展が疑われる進行・浸潤例に、頸部と縦隔の静注造影剤を用いたCT・MRIを診察と超音波の補助として推奨し(強い推奨・中等度の確実性)、術前のルーチンのFDG-PET/CTは推奨しない。本文は、断層画像では静注造影剤の使用が重要であり、ヨウ素は大半の患者で4〜6週以内に排泄されるため、術前画像の造影剤によってその後の全身シンチグラフィや放射性ヨウ素治療が臨床的に意味のある遅れを被るという懸念は大半の患者で根拠がなく、解剖学的画像の改善による利益はほぼ常に遅延の潜在的な危険を上回り、排泄が気になるときは随時尿中ヨウ素を測れると述べる。さらに放射性ヨウ素投与前の問診で、低ヨウ素食の遵守を確かめ、3か月以内の静注造影剤やアミオダロンなど既知の大量ヨウ素源を除外して放射性ヨウ素の画像・治療の最適な時期を決めること、尿中ヨウ素は造影剤やアミオダロンの排泄の確認に使えることを述べる。閲覧 2026-09-26