眼科学

眼科学 · ML-38

網膜循環障害

Circulatory disorders of the retina

前提:正常
感覚器:眼

🧠 全体像:網膜はという1本にを養われ、()はから栄養を受ける。この「逃げ道のない血管系」が詰まると、朝、痛みなく突然見えなくなる。詰まるのが静脈なら「出血と浮腫」(。治療の中心はへのと、への)、動脈なら「白く濁る網膜と桜実紅斑」(症。眼の脳卒中としてすぐに脳卒中センターへ送る)。慢性に頸動脈から血流が足りなくなるとになる。どの型でも、眼の所見は全身の血管病の窓である。

網膜の層構造と血行の解剖の詳細は網膜の解剖と血液循環、OCT との原理は眼球の解剖 II:と・OCT・眼底造影にある。疾患としての整理はとを参照。

外傷によらない突然の視力低下の鑑別

突然の片眼のは、原因の層で分けると整理しやすい。

分類 疾患 特徴
灌流の障害(の虚血) 、症、 AION 早朝に気づくことが多く、たいてい痛みがない
視神経の炎症 (、) を伴うことが多い(腫脹)
など ・・カーテン状の()
、 眼底が透見しにくい

💡 循環障害が朝に見つかりやすいのは、睡眠中の血圧低下と血流の停滞が重なるためと考えられている。痛みがないので、起床時に「片目がかすむ」と気づいて受診する。

網膜の循環:なぜ閉塞に弱いのか

動脈系

項目 内容
起始 はの最初の枝。視神経の下方から硬膜鞘・を貫いて視神経内に入り、視神経の中を前方へ走る
性質 。がないので、詰まった先は虚血になる
分岐 から出る前に上下の枝に分かれ、乳頭から出たところで鼻側・耳側の枝に分かれる
水平線 枝は原則として水平線(を通る水平の線)を越えない。上下の半分は別々の枝が養う
には網膜の毛細血管がない()。の後期に黒く抜けて見える
  • :(系)から出て、乳頭の耳側縁から網膜に入り、黄斑を養う。15〜50%の眼にあり、黄斑にとって第2の動脈の供給源になる。
  • 静脈系は動脈系に沿って走り、のを通って網膜として眼外へ出る。
  • の周囲はの枝(Zinn-Haller 動脈輪)との血管網が養う。

毛細血管網の層

部位
乳頭周囲 放射状乳頭周囲()
網膜の表層 :
網膜の :(その間に中間層のがある)
層 。から栄養を受ける

OCTA でに層ごとに切り出すと、では太い血管と毛細血管の、では細かく均一なが見え、どちらもで血管のない暗い領域が抜ける。層の断面では血流信号がほとんどなく、では全体に密な粒状の信号になる。OCT の断層像では、・、、、、、、エリプソイド帯、・Bruch 膜、が層として区別され、血流信号はの血管網とに重なる。

蛍光眼底造影の時相

見えるもの
期 のまだらな背景蛍光。はまだ暗い
動脈期 が乳頭から末梢へ白く造影される
静脈期 静脈が造影され、動脈と静脈の両方が白くなる。上下の血管が水平線で分かれるのが見える
後期 蛍光が薄れ、が黒く残る

💡 網膜の内側2/3は、外側1/3はが養う。だからではだけが白くに濁り、との赤みが透けて見えるだけが赤く残る(桜実紅斑)。この「二重の血流」を押さえると、動脈閉塞との所見の違いが理屈で分かる。

網膜静脈閉塞症

概要

  • 網膜またはその枝の循環障害。
  • 網膜の血管疾患の中で2番目に多い(最多は)。
  • 症状は型による:突然の痛みのない、、重い視力障害。
  • 型は2つの軸で分ける。
軸 型
灌流 虚血型/非虚血型
部位 分枝( BRVO)/中心( CRVO)/半側
  • 反対眼にも起こるのは患者の5〜6%で、両眼性はまれ。
  • 65歳未満の男性のは、心筋梗塞の危険の上昇と関連する。

危険因子

頻度 危険因子 内容
多い 年齢 最も重要。症例の50%超が65歳以上
多い 高血圧 50歳以上の患者の少なくとも2/3、若年患者の25%。で特に多い
多い 年齢によらず患者の1/3以上
多い 糖尿病 50歳以上の患者の最大15%。アジア系・黒人に多く、若年ではまれ
多い 喫煙 動脈硬化を通じて
多い 経口避妊薬 若い女性で最も多い背景因子。発症後はおそらく服用すべきでない
多い 緑内障・ (おそらく分枝閉塞も)の危険を上げる
多い ・短い 乳頭部が混み合う
まれ 脱水 血液の粘稠化
まれ 骨髄腫、
まれ 、、 Leiden 変異
まれ 閉塞性静脈周囲炎を伴う炎症性疾患 、、(旧称 Wegener 肉芽腫症)
まれ その他 眼窩疾患、

💡 はで起こる。そこでは動脈と静脈が共通の外膜に包まれており、高血圧・動脈硬化で硬くなった動脈が静脈を押しつぶし、から血栓ができる。はの狭い出口で同じことが起こる。緑内障で危険が上がるのも、の部分で静脈が圧迫されやすいためである。

flowchart TD
    A["高血圧・動脈硬化・加齢"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arteriovenous crossing'>動静脈交叉部</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lamina cribrosa'>篩状板</span>で<br>硬い動脈が静脈を圧迫"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='turbulent flow'>乱流</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial injury'>内皮障害</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombus formation'>血栓形成</span>"]
    C --> D["静脈圧上昇・うっ血"]
    D --> E["出血・浮腫<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>)"]
    D --> F["毛細血管の無灌流<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal ischemia'>網膜虚血</span>)"]
    F --> G["VEGF の産生"]
    G --> E
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span><br>(乳頭・網膜・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>・隅角)"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous hemorrhage'>硝子体出血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tractional retinal detachment'>牽引性網膜剥離</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascular glaucoma'>血管新生緑内障</span>"]

網膜静脈分枝閉塞症

最も多い型である。

急性期の症状

閉塞の部位 症状
黄斑にかかる 、
周辺部 、または無症状(特に鼻側の網膜)

急性期の所見

  • 拡張・した静脈と、閉塞した静脈の領域に限った:炎状()、しみ状・斑状()、点状。
  • を伴うことがある。
  • を伴うことがある。
  • 典型例では、の静脈の領域に扇形に炎状出血が広がる。では、出血による蛍光の遮断と、造影されない毛細血管のが同じ扇形の範囲に広がり、閉塞の手前の静脈は拡張して見える。

部位

  • (最も多いのは)。乳頭に近いほど広い範囲が障害される。
  • 黄斑の枝(黄斑だけを流れる小枝)。
  • いずれもで起こる。

💡 が多いのは、このに動静脈交叉が最も多いからである。鼻側の閉塞は黄斑にかからないので、無症状のまま化して見つかることがある。

  • 50%の症例は自然に改善する(視力0.5程度)。
  • 25%の患者では視力が0.1以下にとどまる。

慢性期の所見

  • (水平線をまたいで閉塞部を迂回する血管)、静脈の白鞘化。
  • 出血は残ることも消えることもある。
  • 持続するが視力障害の主な原因。

合併症

  • (乳頭・網膜):8%。
  • 繰り返す、。
  • 、黄斑円孔の形成。
  • 。

慢性期のでは、閉塞部位の周りにした側副血管が造影され、OCT ではや円孔の形成を認めることがある。

網膜中心静脈閉塞症

急性期

  • 網膜がの部分で閉塞する。
  • ()。
  • 4すべての。
  • を伴うことがある。
  • 拡張・した静脈。
  • 虚血型と非虚血型に分ける。で10乳頭面積を超える無灌流が境界である。

典型的な眼底は「血の嵐(雷雨)」と呼ばれ、腫れた乳頭から4方向の全に炎状出血が広がり、静脈は太くする。では、出血による遮断と広いが黒く抜ける。

💡 分枝閉塞は「扇形」、中心閉塞は「全周」。出血の分布を見れば閉塞の部位が分かる。

慢性期(6〜12か月)

  • (乳頭上のシャントなど)。
  • 持続する。
  • 網膜前の、網膜の萎縮。
  • 虚血型ではと出血性(血管新生)緑内障:隅角とのルベオーシス。でから表面に広がる細い不規則なを、で隅角を横切ってへ伸びる枝分かれしたを認める。

⚠️ 虚血型のは、数か月のうちにからになり、痛みを伴って失明しうる。前のでを、で隅角を必ず見る。の治療は緑内障 IIで扱う。

半側閉塞

型 閉塞の部位 似ている型
半中心閉塞 の中(網膜が上下の2幹で乳頭内を走る眼) に似る
半網膜閉塞 乳頭の出口またはその先 に似る

眼底では上下どちらか半分に出血が限られ、境界は水平線に一致する。

症例から学ぶ

:起床時にに気づき(視力0.05)、痛みはなかった。急性期は「血の嵐」の眼底で、乳頭が腫れ、静脈が拡張し、出血と乳頭周囲の虚血斑()を認めた。OCT ではが大きく盛り上がる強いがあった。9か月後、出血はほぼ吸収されたが、OCT ではが残り、最高は0.2にとどまった。視力を最後に決めるのは持続するであるという教訓になる。

半側閉塞:網膜の半側に出血と浮腫があり、OCT ではを認めた。1年後には出血が消えたが、OCT では網膜内の嚢胞が残っていた。

新生血管と主な合併症

の頻度(%)は型によって違う。

型 乳頭 網膜 ・
1.1 1.6 13 8.3〜25
半中心閉塞 9.3 13.4 3.2 1
半網膜閉塞 11 9 9 3
10.6 20.7 1.6 0.8

💡 中心閉塞は(・隅角)に、分枝閉塞は(乳頭・網膜)にが出る。網膜全体が虚血になる中心閉塞では VEGF が眼内全体に大量に拡散してに届く。分枝閉塞では虚血が一部に限られ、VEGF はその近くの網膜・乳頭にを作る。これを覚えると、中心閉塞では、分枝閉塞では眼底の周辺部、と見る場所が決まる。

そのほかの主な合併症は、持続する、黄斑または周辺部の円孔形成()、である。

診断

虚血型を疑う所見

所見 意味
視力0.1以下 虚血が強いほど視力は悪い
RAPD 網膜の広い範囲の機能低下
小動脈輪の拡張 の前段階
・隅角のルベオーシス を必ず行う
多数の、癒合した出血 広い無灌流
検査 見るもの
OCT・OCTA 界面、、毛細血管の密度
。ただし出血がその下の領域の蛍光を遮るので、急性期は無灌流の広さを過小評価しやすい

で、隅角に細くした血管が見えればを疑う。

RCOphth の指針は、で毛細血管の無灌流が10乳頭面積を超えれば画像の種類を問わずの危険が高いとし、非虚血型の30%が3年のうちに虚血型へ移行しうるとしている1。

全身の検査(終末臓器障害と予防)

は全身の血管病の表れである。眼を治すだけでなく、背景の病気を探して次のを防ぐ。

全例に行う検査

検査 目的
詳しい病歴と 危険因子の
眼科の完全な診察 OCT、、では(・隅角の)
血圧 高血圧
血算 ・
生化学 腎機能など
糖尿病
脂質
電気泳動 骨髄腫などの
甲状腺機能 の患者にが多い
心電図 高血圧に伴う
頸動脈の超音波() よく似たを除外する
凝固因子

若年者や所見に応じて追加する検査

検査 目的
胸部X線 、結核
CRP 炎症の鋭敏な指標
自己抗体(、ANA、、ANCA) 血管炎
(の危険を上げる根拠がそれなりにある)
のスクリーニング トロンビン時間、、、、、、抵抗性、 Leiden 変異、 G20210A 変異、、(IgG・IgM。この中で最も重要かもしれない)
血清 ACE
血清検査 梅毒

RCOphth の指針が全例に挙げる最低限は、病歴、血圧、血糖、血算とである1。EURETINA の指針も眼科医が基本的な全身検査を行うよう勧めている2。

治療

治療の柱は3つ:背景疾患の治療、(・ステロイド)、網膜。

現行の指針では、の治療はのが第一選択である。EURETINA の指針は、漏出をすぐに抑える(・・)を治療の第一選択とし、ステロイドは全身の心血管リスクがある患者で考慮し、破壊的なは確実な経過観察ができない場合の選択肢としている2。RCOphth の指針は、承認されたのかを勧める1。

網膜静脈分枝閉塞症の治療の流れ

まず全例で次を行う。

  1. 寄与因子(高血圧、心血管疾患、糖尿病)を見つける。
  2. 閉塞の部位を確かめる。
  3. 周辺部と黄斑の虚血の広さを評価する()。
  4. 視力を脅かす合併症(、乳頭・網膜・・隅角の)を見つける。
  5. 最高、眼底の、OCT で経過を追う。
周辺部の灌流 状況 対応
灌流あり 視力正常 1・2・3か月後、その後1年間は2か月ごとに診る。視力・・OCT、必要ならで浮腫を監視
灌流あり 症状のある があれば(3か月を待たずに)かを考慮。経過中に反応が不十分ならレーザーが代替
灌流なし 黄斑は灌流あり があればか。周辺の虚血領域へのレーザー
灌流なし 黄斑虚血 があればか。周辺の虚血領域へのレーザー(根拠は限られる)
灌流なし 虚血領域への凝固。(3か月を待たずに)かを考慮(試験の根拠は限られる)
  • の後は、・などの経過観察が要る。
  • やステロイドを何回か注射しても浮腫が続くときは、レーザーがまだ代替になる。
  • RCOphth の指針では、のにを考えるなら、3か月以上続き視力6/12以下の眼に行う1。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='branch retinal vein occlusion (BRVO)'>網膜静脈分枝閉塞症</span>"] --> B["寄与因子・閉塞部位・<br>虚血の広さ・合併症を評価"]
    B --> C{"周辺部は灌流されているか"}
    C -->|"灌流あり"| D{"視力は低下しているか"}
    D -->|"していない"| E["1・2・3か月後、<br>その後2か月ごとに監視"]
    D -->|"している"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-VEGF agent'>抗VEGF薬</span><br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravitreal corticosteroid'>硝子体内ステロイド</span>"]
    C -->|"灌流なし"| G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span>はあるか"}
    G -->|"なし"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>に注射<br>周辺の虚血領域へのレーザー"]
    G -->|"あり"| I["虚血領域への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scattered light'>散乱光</span>凝固<br>+注射を考慮"]

網膜中心静脈閉塞症の治療の流れ

まず全例で次を行う。

  1. (高血圧、心血管疾患、糖尿病、、)を探す。
  2. 虚血の程度を評価する(RAPD、、)。
  3. 視力を脅かす合併症(・網膜の、緑内障、浮腫)を見つける。
  4. 視力、による網膜の検査、OCT で経過を追う。
型 状況 対応
非虚血型 視力 20/40(0.5)超 1・2・3か月後、その後1年間は2か月ごとに診る。虚血型への移行を視力・・OCT、必要ならで探す
非虚血型 視力 20/40 未満 を評価し、あればかを考慮
虚血型 黄斑は灌流あり があればか
虚血型 黄斑虚血 があればか。試験の根拠は限られるが周辺の虚血領域へのレーザーが勧められる
虚血型 かを考慮し、その後に

この流れは2011年のの整理に基づく。RCOphth の2022年の指針では、・隅角のの最初の徴候でを始め、十分なを続けるとし、虚血型は最初の6か月は毎月、その後1年は3か月ごとに診る1。

⚠️ 虚血型のにを使っていても、の危険は消えない。注射をやめた後こそ、と隅角を繰り返し見る。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central retinal vein occlusion'>網膜中心静脈閉塞症</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='systemic disease'>全身疾患</span>・虚血の程度・<br>合併症を評価"]
    B --> C{"虚血型か非虚血型か"}
    C -->|"非虚血型"| D{"視力は 0.5 を超えるか"}
    D -->|"超える"| E["定期的に監視<br>虚血型への移行を探す"]
    D -->|"下回る"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>があれば<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-VEGF agent'>抗VEGF薬</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intravitreal corticosteroid'>硝子体内ステロイド</span>"]
    C -->|"虚血型"| G{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span>はあるか"}
    G -->|"なし"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>に注射<br>頻回に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>・隅角を観察"]
    G -->|"あり"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anti-VEGF agent'>抗VEGF薬</span>を始め<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='panretinal photocoagulation'>汎網膜光凝固</span>を続ける"]

抗VEGF薬とステロイドの作用点

低酸素・・栄養が上流で mTOR を介して HIF-1 を動かし、VEGF の産生を増やす。VEGF は下流で内皮細胞の VEGF 受容体1・2に結合してリン酸化を起こし、血管新生との亢進をもたらす。PDGF とその受容体、も同じ過程に関わる。薬はこの連鎖のいろいろな段階を狙う。

薬(開発品を含む)
上流の mTOR
VEGF そのもの 、、、VEGF トラップ()
VEGF の産生を止める siRNA ベバシラニブ
受容体のチロシンキナーゼ(VEGF 受容体・PDGF 受容体) 、バタラニブなど
ボロシキシマブなど

眼科で実際に使われているのは VEGF そのものを捕まえる薬である。

薬 構造 の主な試験
マウスのから作ったの Fab 断片(約48 kD)。親和性を高める変異を入れてある :CRUISE、:BRAVO
同じ抗体から作った完全(約149 kD) 全身用の抗がん薬で、眼科では適応外で使われる
VEGF 受容体1と2の一部を Fc につないだ。VEGF-A・VEGF-B と PlGF を捕まえる :COPERNICUS と GALILEO、:VIBRANT

試験の結果の読み方(視力は ETDRS の文字数の平均変化)

  • CRUISE/BRAVO:最初の6か月は毎月の注射、その後は。群は6か月で必要時のへ切り替えた。延長試験 HORIZON の12か月の時点で、では 0.5 mg 群 +12.0、0.3/0.5 mg 群 +8.2、から切り替えた群 +7.6 文字と、注射の回数が減ると改善がやや目減りした。では +17.5、+14.9、+15.6 文字と改善が保たれた。
  • GALILEO():群(103眼)は24週で +18.0、52週で +16.9 文字、群(68眼)は +3.3、+3.8 文字。
  • COPERNICUS():群は24週で +17.3 文字、群は −4.0 文字。24週以降は全例をにしたが、52週で群 +16.2、から始めた群 +3.8 文字と、12.4文字の差が残った。
  • VIBRANT():群は24週で +17.0、52週で +17.1 文字、レーザー群は24週で +6.9 文字、途中からを加えた群は52週で +12.2 文字。

💡 COPERNICUS でから遅れて治療を始めた群が追いつけなかったことは、のは早く治療するほどよいことを示す。浮腫が長く続くとが戻らない傷を受けるからである。

は多くのを抑える

生理的な役割 による抑制
ICAM-1 の亢進 あり
MCP-1 の亢進、の変化、細胞の動員 あり
VEGF の亢進 あり
IL-6 を高める可能性 あり
IL-8 の亢進、炎症性蛋白の刺激 あり
TNF-α の亢進 あり

💡 が VEGF だけを狙うのに対し、ステロイドは浮腫を起こす複数の経路をまとめて抑える。その代わりにとという副作用がある。数か月効くは注射の回数を減らせるので、通院が難しい患者や、心血管イベントの直後でを避けたい患者で選ばれる。

網膜動脈閉塞症

型と危険因子

型
CRAO
BRAO
閉塞症
毛細血管の閉塞(、傍急性中間層)

典型的なの眼底では、の網膜が全体に黄白色に濁り、だけが赤い点として残る(桜実紅斑)。はの分岐部に引っかかった、黄色く光る小さな塊として見える。

原因

多数:動脈硬化に関連する塞栓

塞栓 見え方と由来
コレステロール() 黄白色で光る。頸動脈の
フィブリン・血小板の 灰色で細長い
石灰化した粒子 光らない白色。心臓弁の石灰化
その他 の疣贅、心臓のの組織、脂肪など

少数

原因 内容
若年患者の1/3
炎症 GCA、、、
血管れん縮 片頭痛など
全身の低血圧

網膜動脈閉塞症は脳卒中である

  • 拡散強調 MRI で、最大24%の患者に同時のが見つかる(DWI で脳の複数の領域に高信号を認める)。
  • 症状のあるの最大70%に臨床的に意味のあるが見つかる。
  • ⭐ すぐに脳卒中センターへ紹介する。

AHA の2021年の科学的声明は、をの一型とし、以後の脳血管・心血管イベントの前触れであると位置づけ、急性期はとして早期の認識と救急医療への振り分けを優先するよう診療を変えるべきだとしている3。AHA は、院内の脳卒中の対応手順にと動脈炎のスクリーニングを加えるよう勧めている4。

💡 眼の動脈は脳の動脈()の枝である。網膜に塞栓が飛んだということは、同じ源から脳にも飛びうるということである。ある研究ではの13%がその後に脳卒中を起こし、その半数近くは発症から4週以内だった4。

一過性黒内障

項目 内容
定義 片眼の一過性の視力消失。痛みはない
症状 眼の前にカーテンが降りてくる
原因(研究グループの分類) 塞栓性、、眼性、神経性、特発性。臨床的に最も重要なのは塞栓性
回復 消えたときと同じ順に戻る。持続は数分
随伴 同側の大脳の TIA を伴い、反対側の神経症状が出ることがある
対応 脳卒中と同じ

⚠️ 視力が戻っていても「治った」ではない。は網膜の TIA であり、脳卒中の前触れとして同じ日のうちに評価する。

網膜中心動脈閉塞症

⭐ 臨床像と急性期治療は必須能力である。

項目 内容
症状 突然の高度な視力消失。ただしが黄斑を養っていればが残る
痛み ない。痛みがあればを考える
急性期の所見 黄斑の典型的な桜実紅斑、の白い浮腫、の
慢性期の所見 との萎縮
との合併 まれ。その場合、動脈閉塞は二次的
予後 不良
治療 効果が証明された治療はない
  • では動脈のを認める。乳頭から出た動脈は途中までしか造影されず、時間がたっても末梢の動脈は暗いまま残る。
  • OCT では急性期にが厚く不整になり、より高反射に見える3。の周りの網膜が盛り上がる。この浮腫を「の浮腫」と表現することもあるが、が養うのはであり、浮腫の主座はで、層はに養われて相対的に保たれる。

網膜動脈分枝閉塞症

  • 予後は中心閉塞よりよい。
  • 症状:が保たれていると気づかれないことがある。は状または扇形。
  • 眼底の所見はわずか:の停滞と、閉塞した枝の領域の白く濁ったの網膜、塞栓。

では、閉塞した枝の領域だけが造影されずに暗く残り、その境界ははっきりしている。

毛様網膜動脈閉塞症

  • は眼の15〜50%にあり、後毛様動脈の系統から出て、黄斑中心の第2の動脈の供給源になる。
型 特徴 予後
単独 まれ。全身の血管炎のある若年患者 下の合併型の中間
との合併 まれではない。閉塞は一過性 単独の閉塞よりよい
との合併 典型的にはの患者 非常に悪い

💡 は系(後毛様動脈)から来るので、が詰まっても黄斑の一部が生き残る。逆には後毛様動脈そのものを侵すので、とが同時にやられ、最も予後が悪い。

毛細血管の閉塞

項目 内容
本態 網膜細動脈の閉塞によるの(の停滞)
症状 にかからなければはまれ
所見 や乳頭周囲の網膜表層に、わずかに盛り上がった小さな黄〜灰白色の、縁がほつれた雲のような病変
通常6〜12週で消える
原因 最も多いのは糖尿病と高血圧
精査 と同様

傍急性中間層

項目 内容
定義 中間層との障害による、それらの層の虚血
症状 急性の見え方の障害(傍中心の)
所見 OCT での高反射の帯。眼底ではの近くに淡い灰白色の病変、赤外画像で暗い斑として見える
原因の候補 ウイルス感染、の静注、ショック、、亜急性、外傷、特発性(片頭痛と重なる)
他疾患への合併 、、症などに合併しうる
精査 症と同様

網膜動脈閉塞症の全身評価

主な目標:を除外し、脳卒中の精査を始めること。

全例に行う

項目 内容
脈の触診(不整脈、特に心房細動)、血圧、の。頸動脈のは価値が限られる(雑音がなくても有意な狭窄は否定できない)
循環器 心電図、心エコー、Holter 心電図:不整脈とその他の心疾患
頸動脈の超音波()
頭部 MRI 同時の
血液検査 (または)と CRP でを探す。血算(では血小板が増えることがある)、血糖、脂質、尿素・電解質(脱水の除外)

選んだ例に行う

検査 目的
胸部X線 、結核、高血圧による
空腹時
のスクリーニング 若年者
電気泳動
甲状腺機能 心房細動があるとき。脂質異常とも関連
自己抗体(、、ANA、抗抗体) 主に若年者の血管炎
血液培養

⚠️ 50歳以上で、頭痛・・頭皮の圧痛・体重減少を伴う症は、を疑い、その日のうちに・CRP を測り、ステロイドを始める。放置すると数日で反対眼も失明しうる。

急性期治療

なぜ難しいか

  • 多くの選択肢があるが、で効果が証明されたものはない。
  • 時間の枠:のの実験モデルでは、閉塞後97分までは網膜に障害がなく、4時間を過ぎるとで不可逆な障害が起こる4。
  • ヒトではと違ってはまれなので、従来は発症24時間以内の治療が勧められてきた。

従来の保存的治療:塞栓を動かす、を下げる、網膜血流を増やす。

狙い 方法
を広げる 、、(、、、のトラゾリン)
を下げてを改善する 静注、静注またはグリセロール内服、

その他の薬

  • 副腎皮質ステロイドはの()だけに使う。
  • 抗凝固薬は、脳と眼の梗塞の(心房細動、急性の、)に限る。
  • 血栓溶解:EAGLE 試験(2010年)は、の t-PA と保存的治療を比べた。両群の効果が同程度に見え、群でなどの有害事象が多かったため、早期に中止された。

現行の考え方

  • ・・などの保存的治療は、単独でも組み合わせても転帰を変えない。AHA の科学的声明は、これらの保存的治療がより有効とは示されておらず、組み合わせた治療の視力回復率7.4%はの17.7%を上回らないとするを引き、は1880年代から使われてきたが説得力のある効果を示した研究はないとしている3。これらを76%に行った施設と26%に行った施設で視力の転帰に差がなく(p=0.114)、現行の標準的な保存的治療には効果が乏しいと考えられている4。もでは最終視力を改善せず、やのけいれんの危険がある4。
  • :AHA の科学的声明は、既存の文献から経静脈的 tPA のが有効でありうると示唆され、質の高いが必要であるとする。十分な検出力の試験が終わるまでは有用性は均衡状態にあり、使うかどうかは担当の専門医が文献の限界を含めて患者と十分に話し合って決める、という立場である3。に固有の時間枠はまだ決まっていないが、の血栓溶解と同じ発症4.5時間以内なら、脳卒中チームと相談して経静脈的 tPA を考慮しうる。考慮するのはで、では考慮しない4。
  • 最初の経静脈的 tPA のでは、6時間以内に治療した例だけが3段階以上改善したが、6か月後には維持されなかった。の血栓溶解は有害事象が多い4。経静脈的 tPA との(THEIA、TenCRAOS、REVISION)が進められており、有効性はまだ確立していない4。
  • :抗凝固や手術(頸動脈内膜術など)の適応がなければを行う。禁忌がなければ最初の21日間は2剤併用、その後は単剤を続ける4。

⚠️ 「とを行う」は従来の治療であり、効果は示されていない。それに時間を使って脳卒中センターへの搬送と血栓溶解の判断を遅らせてはならない。

flowchart TD
    A["突然の痛みのない片眼の高度な視力消失<br>桜実紅斑・白く濁った網膜"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central retinal artery occlusion'>網膜中心動脈閉塞症</span>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute ischemic stroke'>急性虚血性脳卒中</span><br>直ちに脳卒中センターへ"]
    B --> C["脳卒中の初期評価:頭部の画像で出血を除外<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant cell arteritis (GCA)'>巨細胞性動脈炎</span>を疑えば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erythrocyte sedimentation rate, ESR'>赤沈</span>・CRP を至急"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant cell arteritis (GCA)'>巨細胞性動脈炎</span>が疑われるか"}
    D -->|"疑われる"| E["直ちに高用量ステロイド"]
    D -->|"疑われない"| F{"発症4.5時間以内で<br>血栓溶解の禁忌はないか"}
    F -->|"はい"| G["脳卒中チームと相談し<br>経静脈的 tPA を考慮"]
    F -->|"いいえ"| H["血栓溶解は行わない"]
    G --> I["入院で速やかに精査:頭部 MRI・<br>頸動脈と心臓の評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='secondary prevention'>二次予防</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiplatelet drugs'>抗血小板薬</span>・危険因子の治療"]
    H --> I
    I --> J["数週〜数か月、<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris'>虹彩</span>・隅角・網膜の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='neovascularization (new vessels)'>新生血管</span>を観察"]

眼虚血症候群

は、同側の重い(90%を超える)動脈硬化性のによる、眼の慢性の低灌流である。

  • 高齢者に多く、糖尿病・高血圧・心血管疾患・を伴うことがある。
  • 男女比は約2:1。
  • 5年死亡率は約40%で、死因は心疾患が最も多い。

症状

症状 内容
緩徐な 数週〜数か月
突然のこともある
光に関連した症状 残像が長く続く、急に明るい光を浴びると見えにくくなる(「明るい光による」)
視力の予後 不良。1年後に25%がのみになる

所見

部位 所見
びまん性の上強膜充血と
細胞の少ないフレア(虚血性の偽)
と、中等度して反応の鈍い瞳孔
が最大90%に出て、しばしばへ進む。ただし眼の灌流が悪いためは低いままのこともある
進行例の
眼底 静脈の拡張、細動脈の、の円形出血と炎状出血。ときにと
眼底 乳頭(ときに網膜)を伴う
眼底 自発的な動脈の拍動、または眼球を軽く押すと容易に起こる拍動(指による圧測定)
眼底 が起こりうる
眼底 糖尿病患者では、の側のがより重いことがある

💡 ルベオーシスがあるのにが上がらないのは、も虚血でをあまり作れないからである。頸動脈を治療して血流が戻ると、が回復して急にが上がることがある。

との見分け方

特徴
静脈 拡張するがは少ない 拡張・
出血 の点状・しみ状、少ない 4の炎状、多い
乳頭 腫れないことが多い 腫れる
動脈 細い、押すと拍動 正常
頸動脈 通常は正常

の精査で頸動脈の超音波を行うのは、この見まちがいを避けるためである。

管理

項目 内容
全身の精査 の検査と管理(症と同様)
眼局所の治療 抗炎症点眼、の治療(点眼・レーザー・手術)
頸動脈の手術 の治療

まとめ

  • 突然の痛みのないの多くは(、症、)で、早朝に気づかれやすい。ほかに、、・を鑑別する。
  • はの最初の枝で。枝は水平線を越えず、には毛細血管がない。はが養う。(15〜50%)は黄斑の第2の供給源。
  • は網膜の血管疾患で2番目に多い。危険因子の筆頭は年齢で、高血圧・・糖尿病・経口避妊薬・緑内障・が続く。分枝閉塞は(が最多)、中心閉塞はで起こる。
  • 分枝閉塞は扇形の出血、中心閉塞は4の「血の嵐」。虚血型の境界は無灌流10乳頭面積。視力を最後に決めるのは持続する。
  • は中心閉塞で・隅角( 8.3〜25%)、分枝閉塞で乳頭・網膜(網膜 20.7%)。中心閉塞ではを必ず行う。
  • の第一選択は(・・)、代替は(・に注意)。にはと。早く治療するほどよい。
  • 症は眼の脳卒中。DWI で最大24%に、最大70%に。すぐに脳卒中センターへ送り、を・CRP で除外する。
  • は突然の高度な視力消失と桜実紅斑。痛みがあれば。効果の証明された治療はない。・・は従来の治療で転帰を変えない。発症4.5時間以内なら脳卒中チームと経静脈的 tPA を考慮しうる(試験進行中)。ステロイドはだけ。
  • はカーテンが降りる数分の片眼の視力消失で、脳卒中と同じに扱う。分枝閉塞は状ので予後がよい。はの、傍急性中間層は OCT での高反射帯。
  • は90%超のによる慢性低灌流。ルベオーシス最大90%でもは低いことがある。5年死亡率約40%で心疾患死が多い。

出典

  1. 1.Retinal vein occlusion (RVO) guideline: executive summary(Eye (London)(Nicholson L, Talks SJ, Amoaku W, Talks K, Sivaprasad S。The Royal College of Ophthalmologists)・2022)PMC全文(PMC9046155)で、網膜中心静脈閉塞症・網膜静脈分枝閉塞症の黄斑浮腫には承認された抗VEGF薬の硝子体内注射かデキサメタゾンインプラントを勧め、デキサメタゾンでは眼圧上昇と白内障への対応を考慮すること、網膜静脈分枝閉塞症の黄斑浮腫にレーザー光凝固を考えるなら3か月以上続き視力6/12以下の眼に行うこと、虹彩・隅角の新生血管の最初の徴候で抗VEGF療法を始め十分な汎網膜光凝固を続けること、虚血型の網膜中心静脈閉塞症は最初の6か月は毎月、その後1年は3か月ごとに診ること、非虚血型の30%が3年で虚血型へ移行しうること、後極の毛細血管無灌流が10乳頭面積を超えれば新生血管の危険が高いこと、全身検査として病歴・血圧・血糖・血算・赤沈を挙げていることを確認した閲覧 2026-09-29
  2. 2.Guidelines for the Management of Retinal Vein Occlusion by the European Society of Retina Specialists (EURETINA)(Ophthalmologica(Schmidt-Erfurth U ほか、EURETINA)・2019)抄録(Europe PMC、PMID 31412332)で、網膜静脈閉塞症では無灌流の持続期間が重要な予後因子で時機を逸しない治療が要ること、血管からの漏出をすぐに抑える抗VEGF薬(アフリベルセプト・ラニビズマブ・ベバシズマブ)が治療の第一選択であること、慢性疾患として長期の経過観察を個別化すること、ステロイドは全身の心血管リスクのある患者で考慮しうること、破壊的なレーザー治療は確実な経過観察ができない場合の選択肢であること、眼科医が基本的な全身検査を行うよう勧めていることを確認した閲覧 2026-09-29
  3. 3.Management of Central Retinal Artery Occlusion: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association / Stroke(Mac Grory B ほか)・2021)Wayback Machineに保存された発行元の全文(2023年7月の保存版)で確認した。網膜中心動脈閉塞症は急性虚血性脳卒中の一型で以後の脳血管・心血管イベントの前触れでもあり、医学的緊急事態として早期の認識と救急医療への振り分けを優先するよう診療体制を変えるべきこと。経静脈的組織プラスミノゲンアクチベータが有効でありうると既存の文献が示唆し、質の高いランダム化比較試験が必要であること。十分な検出力の試験が終わるまで経静脈的tPAの有用性は均衡状態にあり、使うかどうかは担当の専門医と患者の十分な話し合いで決めること。前房穿刺・眼球マッサージ・眼圧下降点眼などの保存的治療はプラセボより有効とは示されておらず、組み合わせた治療の視力回復率7.4%は自然経過の17.7%を上回らないとするメタ解析があり、眼球マッサージは説得力のある効果を示した研究がないこと。急性期のOCTで網膜内層が厚く不整になり高反射に見えること。GCAの疑いが強ければtPAの最終判断の前に赤沈とCRPを測ることが妥当で、判断の後に速やかな入院精査を行うこと。閲覧 2026-09-29
  4. 4.Central retinal artery occlusion: a stroke of the eye(Eye (London)(Chen C, Singh G, Madike R, Cugati S)・2024)Europe PMC全文(PMC11306586)で、動物モデルでは97分以内に閉塞が解除されれば網膜虚血は完全に可逆でありうり、240分が広範な不可逆的虚血の境界とされること、脳卒中の血栓溶解と同じ4.5時間以内の枠で脳卒中チームと相談して経静脈的tPAを考慮しうること、血栓溶解は網膜中心動脈閉塞症では考慮しうるが網膜動脈分枝閉塞症では考慮しないこと、最初の経静脈的tPAのランダム化比較試験では6時間以内の治療例だけが3段階以上改善し6か月後には維持されなかったこと、動注の血栓溶解の最初のランダム化比較試験は保存的治療と差がなく有害事象が37.1%と多かったこと、前房穿刺・眼球マッサージ・眼圧下降薬の施行率が76%と26%の施設で視力転帰に差がなく(p=0.114)現行の標準治療の効果が乏しいこと、高圧酸素療法はメタ解析で最終視力を改善しないこと、THEIA・TenCRAOS・REVISIONのランダム化比較試験が進行中であったこと、網膜中心動脈閉塞症に固有の時間枠は定まっていないこと、ある研究で13%がその後脳卒中を起こしその半数近くが4週以内だったこと、AHAが脳卒中の院内プロトコルに眼底検査と動脈炎のスクリーニングを加えるよう勧めていること、抗凝固や手術の適応がなければ抗血小板療法(禁忌がなければ21日間の2剤併用の後に単剤)を行うことを確認した閲覧 2026-09-29