眼科学

眼科学 · S-01

主な失明原因・急な視力低下・眼外傷

Main causes of blindness, sudden visual loss and ocular trauma

🧠 全体像:このセミナーは、眼科で学んだ個々の病気を「患者がどう訴えて来るか」から逆にたどる復習である。幹は3本ある。①ゆっくり失明する病気(・緑内障・・)は、症状が出る前に見つけて進行を止める。②急に見えなくなる病気は、「痛み・充血があるか」「眼底が見えるか」「眼底に何があるか」の3つの問いで数分のうちに絞り込み、・・のような時間との勝負の病気を落とさない。③外傷は、閉鎖性かか、かをまず分け、⭐ はただちに大量の水で洗う、は押さずに保護して送る。個々の病気の詳細は各回のノートに任せ、ここでは鑑別と初期対応の判断、症例の経過、覚えておくべき要点を横断的にまとめる。

このセミナーの見取り図

部 扱う病気 身につける判断 詳しい正本
主な失明原因 、、、緑内障 失明の定義、進行を止めるための検診と治療の選び方 失明の原因(世界とハンガリー)とスクリーニング・予防、、糖尿病の、の治療
外傷によらない急な ・症、、、、、、、の出血 症候から鑑別し、どこへ・どれだけ急いで送るか 障害、腫脹と視機能、緑内障 II、、
、閉鎖性(異物・びらん・・吹き抜け骨折)、(破裂・裂傷・)と合併症 外傷の分類、現場での応急処置、紹介の判断 眼の、鋭的な物による機械的、・熱傷・、眼窩外傷・視神経外傷・

第1部 主な失明原因

失明と視覚障害の定義

「失明」という言葉は、場面によって指す範囲が違う。このセミナーでは次の3つを区別する。

用語 基準 意味
真の失明 光も感じない。
0.1以下 手当・福祉の対象を決める基準。数値は国によって違う
0.5未満 日常生活に支障が出始める段階

視力はの上で1.0→0.5→0.1と下がり、最大の視標(0.1)も読めなくなると、遠くの → 近くの → → のみ → と段階を下りて記録する。では0.5の段に赤い線が引かれ、それより上の段しか読めなければに入ることが一目で分かる。

💡 WHO の区分は「良いほうの眼の日常視力」で重症度を分け、失明は3/60未満(小数視力0.05未満)とする。の基準とは数値も測り方も違うので、統計を読むときはどの定義かを確かめる。区分の詳細は・補助具と・失明の法的側面と失明の原因(世界とハンガリー)とスクリーニング・予防で扱う。

先進国で失明・の主な原因になるのは、、緑内障、(の原因として)、である。

世界の規模

WHO の視覚に関する世界報告(2019年)は、を起こしうる主な眼の病気のを次のように推計している。

病気 推計 対象・年
26億人 全年齢、2020年
うち19歳未満の 3億1,200万人 2015年
18億人 全年齢、2015年
1億9,600万人 —
1億4,600万人 18歳以上の糖尿病の成人(2014年)にの34.6%を掛けた推計
緑内障 7,600万人 40〜80歳、2020年
による睫毛乱生 250万人 全年齢、2019年

💡 ではとが桁違いに多いが、これらはで矯正できる。矯正できずに失明へ進むのは、網膜・視神経を壊す・・緑内障と、の合併症である。

強度近視の合併症

は「で見える」だけの問題ではない。眼軸が長く伸びたの眼では、引き伸ばされた網膜・・視神経に合併症が起こる。

部位 合併症と所見
形の異常な乳頭、乳頭ピット
網膜・ 限局性の網膜萎縮(黄白色のの萎縮巣)、と Fuchs 斑(黄斑の黒い)、(眼球が袋状に突出する)
黄斑 、黄斑円孔(OCT で網膜が層の間で裂け、中心に全層の穴が開く)
網膜周辺部 (裂孔と胞状の剥離)
、若い年齢で始まる核
隅角・視神経
(の約10%)

⚠️ の人が急にゆがみ・中心のを訴えたら()を、・・視野の欠けを訴えたらを考える。予防はの進行抑制で扱う。

加齢黄斑変性

項目 内容
定義 黄斑の慢性・進行性の変性疾患
位置づけ 欧米の高齢者での最も多い原因
年齢 50歳より上
左右 両眼性
主な症状 の低下、の乱れ、のゆっくりした低下、(・)

見ているものの中央だけがぼやけて黒ずむ。周辺は見えるので歩けるが、顔や文字が分からない。はアムで調べ、の中心部の線がゆがんで引き込まれるように見える。

病型

病型 割合 本体 所見
(非滲出型) 約80% の分解と脂質に富む物質の蓄積 (の下の黄白色の沈着物)、
滲出型 約20% 網膜下の 網膜下の出血・滲出物、

網膜の断面の模式では、正常なの下に隆起(・)が現れ、その上の層が薄くなって失われ、最後は瘢痕に置き換わる経過を I〜VI の段階として追える。

危険因子

区分 内容
疫学 加齢、青い、白人
生活・全身 喫煙、強い日光への曝露、心血管疾患、代謝の異常(高血圧・肥満・)、食事(脂肪の多い食事、果物・野菜・ナッツ・魚の不足)
遺伝 の遺伝子との関連

💡 喫煙と肥満は、変えられる危険因子として特に強調される。との関連は、補体が病態に関わることを示し、による治療の根拠になった。

治療の選択肢

  • 栄養補助:、、・(黄斑色素)。
  • エイド(など)。
  • 滲出型:の。
  • ():の(、。承認の有無は国で違う)。

分類・検査・治療の詳細はで扱う。

糖尿病網膜症と糖尿病の眼疾患

定義と自然経過

⭐ は、慢性の高血糖によるの進行性の機能障害(眼の)である。要点は3つ:

  • いずれほぼ全員に起こる。最もよい予測因子は糖尿病のである。
  • 長い間、症状がない。見えにくくなったときには進んでいる。
  • だから定期的な検診で早く見つけることが目標になる。

との割合をたどると、何らかのは罹病5年で約3割、10年で約7割に増え、15年を過ぎるとほぼ100%に達する。は10年を過ぎてから増え始め、20〜35年で約5〜6割(最も高いところで約65%)に達し、その後は下がる。

Wisconsin 疫学研究の要約

型 何らかの
1型 5年 25% —
1型 10年 60% —
1型 15年 80% —
1型 25年 83% 42%
2型 5年未満 インスリン非使用24%、インスリン使用40% 2%
2型 19年まで インスリン非使用53%、インスリン使用84% 25%

⭐ 「合併症は必ず来る」と考え、・血糖の管理・その他の危険因子(高血圧・脂質異常・喫煙)を問う。

血糖値の分布との関係を見ると、・食後2時間血糖・HbA1c のどれで区切っても、低い範囲でははほとんどなく(数%以下で横ばい)、が約6.4〜7.5 mmol/L、食後2時間血糖が約10.2〜13.4 mmol/L、HbA1c が約6.0〜6.7%を超えるあたりから急に増え、最も高い群では15%を超える。

💡 が急に増える境目は、糖尿病のの閾値を決める根拠の一つになった。「糖尿病」という診断そのものが、の危険が始まる血糖値で定義されている。

糖尿病の眼疾患の全体像

糖尿病は網膜だけでなく、眼のほぼすべての部分を侵す。

群 病気
非増殖・、(眼底のと、OCT での網膜の肥厚・嚢胞)
核、、、雪片状
緑内障 、
神経障害 角膜症、、の麻痺
炎症・感染 、、、ぶどう膜炎
その他

糖尿病の眼疾患は1型・2型糖尿病の最も多い合併症で、重いを起こして仕事の生産性と生活の質を下げる。は失明の主な原因の一つだが、早く見つければ多くの患者で進行を防げる。

患者が語る生活の質への影響は多方面に及ぶ。

  • 仕事を見つけ続けること、家族・仕事・自立への影響への不安
  • 抑うつ(を含む)、悲しみ・怒り・恐れといった否定的な感情
  • 人間関係の緊張、・自己像・自信の喪失
  • 家の内外での安全への不安、な孤立
  • 治療(痛み・副作用)への不安

糖尿病で失明に至る主な原因は、(が網膜を引きはがす)、、の3つである。

検診

⭐ 目標はと定期検診である。

対象 このセミナーの推奨 現行の米国糖尿病学会の推奨
1型糖尿病 発症5年後から年1回。思春期は進行が速いので厳重に経過を見る 発症5年後に初回の1
2型糖尿病 診断時にすぐ検査し、以後少なくとも年1回 診断時に初回検査、があれば少なくとも年1回1
妊娠 と糖尿病のある女性は、妊娠成立後すぐに検査し厳重に経過を見る 妊娠前からの1型・2型糖尿病は妊娠前と妊娠初期に検査する。は妊娠中の眼科検査を要しない1

⚠️ についてはこのセミナーの整理と現行の米国糖尿病学会の推奨が食い違う。検査が要るのは妊娠前から糖尿病のある女性である。

2型糖尿病は「氷山」にたとえられる。診断されている患者とほぼ同じ数(例示された推計ではどちらも約800万人)が、診断されないまま水面下にいる。しかも2型糖尿病と診断された時点で、すでに約20%に、9%に神経障害、8%に腎症があり、最大50%に心疾患が隠れている。だから2型では診断時にすぐ眼底を診る。

スクリーニングの方法と間隔の詳細は糖尿病ので扱う。

中心を含む糖尿病黄斑浮腫の治療

を含むでは、OCT で網膜が厚くなり、内部に大きなの空洞が並ぶ。OCTA では造影剤を使わずに黄斑のとを描き出せる。

治療 位置づけ 選ぶときの手がかり
の 第一選択 視力で分ける(下表)
ステロイドの 第二選択 眼か(の副作用を気にしなくてよい)、最近の重い心血管イベントがあるか(を避けたい)。副作用はと緑内障
レーザー から離れた浮腫 従来のか、見える凝固斑を残さない閾値下のマイクロパルスか、との併用か
前後方向の牽引がある浮腫 が黄斑を引っぱっている

視力によるの選び方(Protocol T・Protocol V 試験)

視力 方針
20/20〜20/25 経過観察も
20/32〜20/40 ・・で視力の改善は同等
20/50以下 が優れる

各試験の数値と現行の薬の選択はの治療で扱う。

増殖糖尿病網膜症の治療

  • 目標:増殖糖尿病症(のがと網膜を引っぱる段階)への進行を防ぐこと。
  • が、は有用な。
  • の適応では、早めの手術を考える。
  • をよく管理する。
  • ⚠️ GLP-1 受容体作動薬に注意:胃内容の排出を遅らせて糖の吸収を減らし、HbA1c を急に下げる。急速な HbA1c の低下はの一過性の悪化と関連する1。

症例から学ぶ:増殖糖尿病網膜症の2例

症例1:23歳女性

時期 視力 経過と所見
2005年4月 1.0 インスリンを開始し、を行った
同年10月 0.6 で乳頭の周りに強い蛍光の漏れ、OCT で
同年12月 1 m 黄斑を覆う大きな暗赤色の出血。手術を行った
2013年5月 0.9 OCT での陥凹が戻り、黄斑の形が正常に近づく

💡 教訓:は数か月でから視力を奪う出血へ進みうるが、適切な時期の手術で視力は回復しうる。

症例2:25歳・1型糖尿病・両眼の重い乳頭上・不良

時期 経過 治療
2016年8月 乳頭上と網膜の。HbA1c 9.1% 、糖尿病の管理
その後 が悪くが進行。は拒否し、通院も不規則 —
2017年11月 右眼のとの。HbA1c 8.6%
2018年2月 左眼の 、
2019年4月 HbA1c はゆっくり下がり7.5%。視力は両眼1.0 —
2019年5〜8月 両眼の網膜からを繰り返す
2020年1月以降 受診が途絶えた —

💡 教訓:若い1型糖尿病でと通院が不安定だと、両眼に次々と出血が起こる。治療で視力1.0まで戻せても、通院が途絶えることが最大の危険である。

第2部 外傷によらない急な視力低下

原因の全体図

急なは、光の通り道のどこが急に壊れたかで整理する。

群 病気 特徴
、、症 の障害。朝、目覚めたときに気づくことが多く、ふつう痛みがない
激しい眼痛・充血・頭痛・悪心
視神経の炎症 、 と眼球運動時の痛み
網膜 「4つのF」:・・・視力の低下
、 眼底が見えなくなる。は痛みと
の出血 下・下・網膜下・の出血 黄斑に出血がかかると急に見えなくなる

症候から絞る

⭐ 急なの鑑別は、医学生の必須能力である。問うことは3つ:眼が赤く痛むか、眼底が見えるか、眼底に何があるか。

flowchart TD
    A["急な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>"] --> B{"眼が赤く、強く痛むか"}
    B -->|"はい"| C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior segment'>前眼部</span>に何が見えるか"}
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal edema'>角膜浮腫</span>・浅い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior chamber'>前房</span><br>中等度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mydriasis'>散瞳</span>で固定"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute angle-closure glaucoma'>急性閉塞隅角緑内障</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular pressure'>眼圧</span>下降をただちに並行して開始"]
    C -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypopyon'>前房蓄膿</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous opacity'>硝子体混濁</span><br>手術・注射・外傷の後"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endophthalmitis'>眼内炎</span><br>その日のうちに眼科へ"]
    B -->|"いいえ"| F{"眼底が透見できるか"}
    F -->|"できない"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreous hemorrhage'>硝子体出血</span><br>超音波<span class='jp-term jp-term-diagram' title='B-mode ultrasonography'>Bモード</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span>を確認"]
    F -->|"できる"| H{"眼底に何が見えるか"}
    H -->|"白く濁った網膜・桜実紅斑"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central retinal artery occlusion'>網膜中心動脈閉塞症</span><br>眼の脳卒中として救急へ"]
    H -->|"4<span class='jp-term jp-term-diagram' title='quadrant (breast quadrant)'>象限</span>の出血・静脈の拡張<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tortuosity'>蛇行</span>"| J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central retinal vein occlusion'>網膜中心静脈閉塞症</span>"]
    H -->|"乳頭の腫脹"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic optic neuropathy'>虚血性視神経症</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='papillitis'>乳頭炎</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='giant cell arteritis (GCA)'>巨細胞性動脈炎</span>をまず除外"]
    H -->|"網膜の隆起と裂孔"| L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='rhegmatogenous retinal detachment'>裂孔原性網膜剥離</span>"]
    H -->|"黄斑を覆う出血"| M["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior pole'>後極部</span>の出血<br>出血の層をOCTで見る"]
    H -->|"眼底は正常"| N["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retrobulbar optic neuritis'>球後視神経炎</span><br>RAPD・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pain on eye movement'>眼球運動時痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central scotoma'>中心暗点</span>"]

鑑別の

病気 痛み 充血 始まり方・前触れ 決め手になる所見 初期対応
ない ない 秒単位の突然。が前触れ 白く濁った網膜と桜実紅斑、RAPD、ときに動脈内の栓子 ⚠️ として救急・脳卒中センターへ
ない ない 突然の視野の欠け 閉塞した動脈の領域だけが白く濁る 同上(全身のを調べる)
ない ない 突然〜数日のかすみ 4の、、状、静脈の拡張・ 眼科でと虚血型の判定
ない ない かすみ・ から扇形に広がる出血 同上
ない ない 朝に気づく 、水平性の ⚠️ 50歳以上はを・CRP で除外
眼球運動時の痛み ない 数日で進む 、RAPD、では・では正常 眼科・神経内科でを調べる
激しい眼痛・頭痛 強い 暗い所・の後 、浅い、中等度で固定、の著明な上昇 ⚠️ 点眼・などを並行してただちに
ない ない ・が先行 網膜の隆起、裂孔、下から迫る壁・上から下りる幕 当日〜翌日に網膜の専門医へ
ない ない 急な飛蚊・墨を流したような影 眼底が見えない 超音波でを除外
強い 強い 手術・注射・外傷の数日後 、 ⚠️ ただちに眼科へ

💡 痛みのない急なの多くは血管か網膜、痛みがあれば・炎症・感染と覚える。ただしのでは、眼は痛まなくても頭痛・などの全身症状を伴う。

灌流障害:網膜静脈閉塞症

項目 内容
定義 網膜またはその分枝の循環障害
頻度 網膜の血管疾患でに次いで2番目に多い
危険因子 加齢(65歳前後)、高血圧、糖尿病、喫煙
全身との関係 65歳未満の男性のは心筋梗塞の危険が高い
両眼性 反対眼にも起こるのは5〜6%で、両眼性はまれ
症状 型によって、突然の痛みのないかすみ、、重い視力障害
型 灌流で虚血型・非虚血型、部位で分枝・中心・半側

は、の部分で網膜が詰まる。眼底では、4すべてに広がる、状、拡張・した静脈を認め、出血は乳頭から放射状に炎が燃え広がるように見える。で10乳頭面積を超える無があれば虚血型とする。

経過を追うと、初診時は OCT で黄斑が大きく盛り上がり、内部に嚢胞様の空洞を認める。では静脈が拡張・し、黄斑を中心に暗いの領域が広がる。9か月後には出血はほぼ吸収されても、OCT では嚢胞様の変化が残る。

は、で動脈が静脈を圧迫して起こる。交叉部から先の静脈のに扇形の出血が広がり、OCT でを認める。9か月後には眼底の出血は吸収されても、OCT で嚢胞様の変化が残り、でも黄斑の周りの異常な蛍光が続く。

💡 は「出血が消えたら治った」ではない。視力を決めるのは残ったと、虚血型での・である。への・ステロイドと、虚血へのは障害で扱う()。

灌流障害:前部虚血性視神経症

は、を養うの血流が途絶えることで起こる。

型 所見
() 腫れた乳頭。の後期に乳頭が強いになる
。OCT で乳頭周囲のが厚くなり、ごとの厚みのグラフでは下方の山が高く突出する

⚠️ 50歳以上の急な片眼のでを見たら、まずを考え、頭痛・・の圧痛を問い、と CRP を測る。は数日で反対眼も失明しうるので、疑った時点で高用量ステロイドを始める。詳細は腫脹と視機能(、)。

灌流障害:網膜動脈閉塞症

  • 症状:突然の視力消失。前触れとしてがある。
  • 所見:の網膜が白く濁り、だけがの赤みを透かして桜実紅斑に見える(桜実紅斑)。の中に栓子が見えることがある。
  • OCT:急性期にが厚く、高反射になる。
  • :の充盈が遅れ、一部の枝にしか色素が入らない。
  • 背景:頸動脈疾患、高血圧。
  • 予後:悪い。このセミナーでは、網膜は約120分で不可逆的な障害を受けるとする(に基づく目安で、ヒトに固有の時間枠は定まっていない)。

⚠️ はの一型であり、として早く気づき、救急医療へ振り分ける2。従来行われてきた・・下降点眼などの保存的治療は、より有効とは示されていない2。経静脈的 tPA の有用性は、十分な試験の結果が出るまで均衡状態にある2。を疑えばと CRP を測る2。現行の対応の流れは障害()。

は、閉塞した枝のだけが白く濁り、でその領域の充盈が欠ける。の閉塞より予後がよいが、対応するが残る。

視神経の炎症:乳頭炎と球後視神経炎

項目
炎症の場所 眼球より後ろの視神経
眼底 乳頭が軽く腫れて境界がぼける 正常(「患者もも何も見えない」)
原因 炎症、自己免疫疾患()、中毒 同左
症状 急な・消失、、眼球運動時の痛み 同左

に伴うでは、頭部 MRI の FLAIR 像で脳室周囲の白質に高信号の病変を認めることがある。治療と予後は腫脹と視機能(、)。

急性閉塞隅角緑内障

でと、浮腫で曇った角膜、中等度にした瞳孔を認める。 UBM では、が前に膨らんで隅角が閉じている。レーザー切開の後は、前に膨らんでいたの輪郭が平らになり、隅角が開く。

⚠️ 急性発作は数時間で視神経を壊す。診断したら、を抑える点眼・ステロイド点眼・(が高ければ)を順番に試すのではなくただちに並行して始め、角膜が澄んだらレーザー周辺切開を発作眼と反対眼に行う。薬の使い方との注意点は緑内障 II、赤目としての見分け方は赤目の鑑別で扱う。

網膜剥離

定義:がから離れること。

型 原因
網膜の円孔・裂孔
漿液性() 腫瘍、異常な血管
網膜上・網膜下の膜、(など)

では、の液が網膜の全層の欠損(裂孔)を通って網膜下に入り、がから離れる。眼底では、灰白色に隆起して波打つ網膜と、縁に色素を伴うの裂孔を認める。

  • 要点:網膜の隆起とからの分離、1つ以上の網膜の裂け目(円孔・裂孔・)。
  • 症状:小さな黒い物()、、の欠損(幕がかかるような見え方)。
  • 伴う所見:の、、中の細胞(色素・出血)、と、。

⭐ 4つのF:・・・視力の低下。上方の剥離は視野の下から、下方の剥離は上から、暗い幕が視野にかかるように広がる。

💡 治療は型で決まる。は裂孔を閉じる手術(・・)、は膜を取り除く、漿液性は原因の病気の治療である。詳細は()。

は、に伴って血管のない性の膜が増殖する合併症である。網膜の上に星形のひだと固定したひだができ、剥離した網膜が縮んで動かなくなる()。

硝子体手術

()は、手術顕微鏡の下で眼内を照らしながら、広角観察系で眼底の広い範囲を一度に見て行う。濁った・出血したを取り除き、網膜を引っぱる膜を剥がし、網膜を元に戻す。

網膜上膜の除去では、で膜の縁をつかみ、ピックで膜を網膜からすくい上げるようにして剥がす。

の適応と合併症はの疾患とで扱う。

硝子体出血と眼内炎

では、眼底の赤い反射が暗くなり、眼底が透見できない。出血の向こうに乳頭とがかすかに見えることもある。原因は、の、に伴うなどである()。

⚠️ 眼底が見えないときは、超音波でと腫瘍を除外する。出血の奥のを見逃すと、治療が遅れる。

の徴候

  • 痛む眼、視力の低下、充血
  • (の下方に白い膿が水平面をつくってたまる)
  • の、、眼瞼の浮腫、角膜の浮腫

の細い光を角膜からへ通すと、正常では角膜との間()の光の通り道は暗く澄んでいるが、炎症では細胞と蛋白で灰色に濁って見える(の細胞とフレア)。超音波では、の中の点状・膜状のエコーが時間とともに増え、進行を追える。

⭐ 「膿のあるところは排出せよ(ラテン語の格言)」がの原則である。眼内の膿は薬だけでは除きにくく、の採取と抗菌薬の、必要ならで膿そのものを取り除く。術後のを対象とした試験では、即時のが有利だったのは視力がのみの例だった。詳細は()。

後極部の出血

黄斑にかかる出血は、どの層にあるかで見え方・原因・治療が変わる。層は OCT で見分ける。

出血の層 眼底での見え方 OCT での位置
下(網膜前)出血 境界の明瞭な、上が平らで下にたまる出血(舟状) 網膜の前、後部の下
下出血 黄斑を覆う、丸くドーム状に盛り上がった出血 との間
暗赤色で、がその上を走る との間
出血 暗く黒っぽい、境界の明瞭な隆起 の下(ドーム状の)

💡 網膜の前の出血は、やバルサルバで起こり、網膜そのものは傷んでいないことが多い。網膜下・の出血はやを疑い、とで原因のを探す。

第3部 眼外傷

眼外傷の位置づけ

  • 片眼の失明の最も多い原因である。
  • 眼科外来の20人に1人が外傷の患者である。
  • 典型的な患者像は30歳前後の男性、の短い人。
  • 約90%は予防できる(・安全な作業・の管理)。
  • 命が視力に優先する。では、まず全身のを行う。
  • ⚠️ 眼に直接当たらなくても、全身の外傷が視力を脅かす眼の障害を起こしうる(胸部・頭部の圧迫による Purtscher 、の外傷など)。

眼外傷の分類

大分類 小分類
1. 機械的外傷:閉鎖性 眼瞼・の外傷、の表層の外傷・・異物、(眼球)、吹き抜け骨折
1. 機械的外傷: 破裂、裂傷(穿・穿孔性・)
2. アルカリ、酸
3. —
4. 熱傷 —
5. 放射線障害 —
6. 全身の外傷に伴う眼の障害 —
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span>"] --> B{"何による外傷か"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical substance'>化学物質</span>"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical injury'>化学外傷</span><br>診察より先にただちに洗浄"]
    B -->|"物理的な力"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='globe wall'>眼球壁</span>に全層の創があるか"}
    D -->|"ない"| E["閉鎖性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ocular trauma'>眼外傷</span><br>異物・びらん・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='contusion (blunt injury)'>打撲</span>・吹き抜け骨折"]
    D -->|"ある、または疑われる"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open globe injury'>開放性眼外傷</span><br>押さずに保護して眼科へ"]
    F --> G{"創はどうできたか"}
    G -->|"大きな鈍的な力で<br>壁が内側から裂けた"| H["破裂"]
    G -->|"鋭い物が刺さった"| I["裂傷"]
    I --> J["穿<span class='jp-term jp-term-diagram' title='facultative'>通性</span>:入口だけ"]
    I --> K["穿孔性:入口と出口"]
    I --> L["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intraocular foreign body'>眼内異物</span>"]
    B -->|"熱・電気・放射線"| M["熱傷・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrical injury'>電撃傷</span>・放射線障害"]

外傷の型ごとの詳細は眼の、鋭的な物による機械的、・熱傷・、眼窩外傷・視神経外傷・で扱う。

化学外傷

⭐ の応急処置は、医学生の必須能力である。()

原因物質と壊死の型

物質 壊死の型 例
アルカリ セメント、アンモニア、(排水管の洗浄剤)、石灰、水酸化カリウム、
酸 硫酸、亜硫酸、、酢酸、クロム酸、

💡 強いアルカリほど速く深く浸透するので、アンモニアやのような pH の高い物質は最も重い眼の障害を起こす。酸は凝固した蛋白が障壁になって浅くとどまるのがふつうだが、非常に強い酸はアルカリと同じくらい速く浸透し、重い酸の外傷と重いアルカリの外傷とで経過・予後に臨床的な差はないとする研究もある。は酸の中の例外で、深く浸透する3。

予後を決めるもの

  • 溶液の濃度と pH
  • 眼表面が曝露した範囲
  • 治療を始めるまでの曝露時間
  • 異物(自動車のの爆発、花火の爆発)が一緒に入ったか

応急処置

⭐ 現場で、ただちに、大量の水で洗う。

  • 洗浄の目的:がに入り込むのを最小限にし、障害を続ける「たまり場」(に残った物質)を取り除くこと。
  • 水道水でよい。両性の緩衝液に利点がある可能性はあるが、急ぐことが優先なので、手に入る中性の洗浄液を何でも使う。
  • 異物を取り除き、上眼瞼をする。石灰やセメントの粒子がに残ると溶け出し続ける。
  • 現行の目安:洗浄は少なくとも30分、またはの pH が7.0〜7.2に戻るまで続け、洗浄を止めてから少なくとも5分おいて pH を測り直す。酸やアルカリの溶液で中和しようとしてはならない3。
flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chemical substance'>化学物質</span>が眼に入った"] --> B["その場でただちに洗浄<br>水道水でよい"]
    B --> C["瞼を開けたまま洗い続け<br>上眼瞼を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eversion'>翻転</span>して粒子を除く"]
    C --> D["洗いながら眼科・救急へ"]
    D --> E["到着後も洗浄を続ける<br>少なくとも30分"]
    E --> F["洗浄後5分以上おいて<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='conjunctival sac'>結膜嚢</span>の pH を測る"]
    F --> G{"pH は7.0〜7.2に戻ったか"}
    G -->|"戻っていない"| E
    G -->|"戻った"| H["視力・角膜・輪部を診て<br>Roper-Hall で重症度を判定"]

⚠️ ・視力測定・は、すべて洗浄の後に回す。は診断より先に治療を始めるである。手順の詳細は・熱傷・。

重症度分類:Roper-Hall 分類

角膜のと輪部の虚血の範囲で4段階に分ける。

grade 予後 角膜の所見
I 良い の障害 なし
II 良い があるがの細部が見える 1/3未満
III 慎重(要注意) 上皮の全欠損と、の細部を隠す 1/3〜1/2
IV 不良 角膜がし、と瞳孔が見えない 1/2超

急性期の所見は段階ごとに次のように見える。

grade 急性期の所見
1 角膜は透明でがはっきり見え、上皮の欠損がで緑色に染まる。の充血と出血
2 角膜が灰白色に曇るが、と瞳孔の輪郭は見える
3 角膜全体が青白くし、の細部が見えない
4 角膜が陶器のように白く不透明になり、輪部周囲のが白く血流を失っている

💡 なぜ輪部の虚血が予後を決めるのか:の幹細胞は(と角膜の境目の柵状の構造)にあり、ここから角膜の中心へ向かって上皮が移動して補充される。輪部が虚血で壊れると、上皮を再生する源がなくなり、が角膜の上に侵入して血管が入り、角膜は濁ったまま治らない(欠乏)。

後遺症

部位
眼瞼 睫毛乱生、、、
眼表面 、、眼内の炎症、感染(の膿瘍)、角膜の血管新生、(瞼との癒着)
眼内 の虚血として動かない瞳孔、の虚血によると、、

重い例では、にの膿瘍(黄白色の浸潤)が重なり、睫毛乱生を伴う。の虚血で瞳孔がして固定し、も加わる。下眼瞼のと眼球のが帯状につながるが残る()。

治療

段階 治療
救急 洗浄、異物の除去、上眼瞼の
薬物治療 を含まない、ステロイド、、クエン酸、、を含まない、、テトラサイクリン系(ドキシサイクリン)、
早期の手術 Tenon 嚢の前進術(虚血に陥った輪部に血流のある組織を寄せる)
中期の手術 、Tenon 嚢形成・弁、口腔粘膜上皮細胞の移植
晩期の手術 、

💡 はコラーゲンの合成を助け、クエン酸とテトラサイクリン系は角膜を溶かす酵素を抑えてを防ぐ。ステロイドは炎症を抑えるが、長く使うとコラーゲンの分解が進むので、使う期間に注意する。用量と使う時期は・熱傷・で扱う。

症例から学ぶ:石灰による化学外傷

53歳男性、右眼の石灰外傷

時期 所見
受傷2か月 角膜全体が青白く濁り、周囲から血管が入り込み始めている
受傷12か月 角膜はに覆われて白く濁り、表面を血管が走る(欠乏)
から14か月 輪部の環境を作り直したが、角膜の実質のは残る
受傷3年(後) は透明で、と瞳孔がはっきり見える

💡 教訓:輪部が壊れた眼にいきなりをしても、上皮の源がないのでは濁る。まずで上皮を再生する土台を作り、その後にで透明な角膜を取り戻す。石灰のようなアルカリの粒子は、して取り除かないと溶け続ける。

閉鎖性眼外傷:結膜・角膜の表層の外傷

外傷 所見 対応の要点
異物 上眼瞼をすると、瞼に小さな黒い点が付いている してなどで除く
角膜の表面に黒〜茶色の小さな点があり、その周りを茶色の錆の輪が囲む。が充血する で除去し、錆の輪も取る
が剥がれ、めくれた上皮の縁が見える。光の反射がゆがむ 抗菌薬のなどで上皮化を待つ

⭐ で縦に走る何本もの線状の傷が染まったら、上眼瞼の裏に異物が残っていると考える。瞬きのたびに瞼の異物が角膜を上下に引っかくためで、上眼瞼をして異物を探す。

💡 金属片のは鉄が酸化して錆の輪を作る。錆が残ると炎症と感染が続くので、異物だけでなく錆の輪も取り除く。は治った後に、朝の目覚めに痛みとともに上皮が剥がれるを起こすことがある。

閉鎖性眼外傷:眼球打撲

は、が保たれれば閉鎖性の、壁が裂ければの破裂(壁が裂けて開いたもの、に覆われて見えないもの)になる。原因は暴力()、テニスやスカッシュのボール、シャンパンの栓などである。

💡 ボールや栓が危ないのは、眼窩の縁より小さく、骨に止められずに眼球へ直接当たるからである。

閉鎖性の区域と予後

zone 障害される範囲 予後
I 眼球の外壁の表層だけ(・・角膜) よい
II (・・など) 中等度
III (網膜・・視神経) 悪いことがある

打撲の力学

前後方向から圧迫された眼球は、前後に縮み、で横に広がる。この変形で、眼の中のさまざまな組織が引き伸ばされて裂ける。

部位 障害
表層の障害(大きな力では破裂)
角膜 上皮の障害(びらん)、実質の瘢痕、内皮の障害と Descemet 膜の破裂による(Descemet 膜のひだと裂け目)
、角膜のすり傷
前房出血
、の(の切れ込み)、のを伴う
隅角 (隅角の組織が裂ける)
(で放射状に広がる花弁形の)、(瞳孔の中にの縁が見える)
(瞳孔の奥に赤いが見える)
網膜 (黄斑の Berlin 浮腫)、・
破裂(乳頭とのの白い線と)、のちの網膜下と瘢痕

前房出血では、の下方に血液がたまって水平な液面をつくる。の光の断面で、角膜の後ろに赤い血液の層が見える。出血が多いと液面が高くなり、瞳孔まで覆って視力が落ちる。

⚠️ 前房出血の再出血:このセミナーでは受傷後3〜5日に多いとする。現行の整理でも、再出血の多くは受傷後5日以内に起こる。再出血はとの危険を高めるので、安静・・の管理を行う(前房出血、詳細は眼の)。

と Purtscher

病態 原因 所見 経過
Berlin 浮腫 眼球への直接の 黄斑の網膜が白っぽく浮腫を起こし、が赤く目立つ 多くは自然に回復する
Purtscher 胸部の圧迫と(眼への直接の外傷ではない) 大きな状(Purtscher 斑。の梗塞)、、出血 突然の両眼の。眼底の所見は自然に消えるが、視力の予後は悪い

💡 Purtscher は「眼に当たっていない外傷で眼が見えなくなる」代表である。胸部が急に圧迫されると、塞栓や血管の攣縮で網膜の毛細血管が詰まる。

破裂は、眼球が変形するときに伸びにくい Bruch 膜とが裂けて起こり、乳頭を中心とする弧に沿った白い線として見える。後に破裂部から網膜下のが生じ、出血と瘢痕で視力を失うことがあるので、長く経過を見る。

覚えておくべき要点(外傷の Pearls)

  • 予防()。
  • 記録(受傷の状況・視力・所見。法的な問題にもなる)。
  • 眼科専門医へ紹介する。
  • 前房出血は受傷後3〜5日の再出血が多い(現行の整理では5日以内)。
  • 慢性のは予後が悪い(へ進む)。
  • 合併症は何年も後にも起こる:、片眼の緑内障、。

💡 外傷の既往がある片眼だけの緑内障は、隅角が裂けた後のを考える。受傷から何年もたってからが上がるので、外傷の後は長く経過を見る。

閉鎖性眼外傷:眼瞼・涙道の外傷と吹き抜け骨折

眼瞼の外傷

  • 眼瞼の裂傷・剥離
  • (の、の障害)()
  • (内眼角の近くの裂傷)

眼の周りの皮下出血(いわゆる黒い眼)は、受傷直後は赤〜紫色で、日がたつにつれて・黄色へ変わりながら薄れていく。

の再建は、からプローブを入れて断端を探し、を通しての形を保ったまま縫合する。内眼角に近い眼瞼の裂傷は、のを疑って調べる。眼瞼の複雑な裂傷も、層ごとに縫い合わせれば形と機能を取り戻せる。

吹き抜け骨折

⭐ 吹き抜け骨折の症状は、医学生が知っておくべき必須の内容である。

眼窩の底(の天井)または内壁が折れる骨折である。眼窩の縁より大きな物がぶつかったときに起こる。

機序 内容
眼球が壁を押す機序(水圧説) 眼球が後ろへ押し込まれて眼窩の内圧が上がり、薄いが下へ吹き抜ける
骨がする機序 眼窩の縁に加わった力が骨を伝わり、が折れ曲がる

どちらの機序でも、眼窩の内容(脂肪・)が骨折部からへ落ち込む。

症状

  • かすみ・・()
  • 眼の周りの皮下出血
  • 額や頬の腫れ、下眼瞼の皮膚の腫れ
  • 受傷側の顔(頬・上唇)の(の障害)
  • 白目の出血()
  • 眼を左右・上下に動かしにくい(特に上下。が骨折部に挟まる)
  • 頬が平らになる、口を開けると頬が強く痛む(の骨折を伴うとき)
  • 眼球の突出、または陥凹

受傷側の眼では、下眼瞼の皮下出血との出血を伴い、左右の眼の位置がずれて見えることがある。

⚠️ 小児で、見た目の腫れが軽いのに上下の眼球運動が強く制限され、悪心・嘔吐・徐脈を伴うときは、筋が骨折部に絞扼されている(白眼吹き抜け骨折)。緊急の手術が要る。鼻をかまないよう指示する。適応と時期は眼窩外傷・視神経外傷・()。

開放性眼外傷

(角膜・)の全層に創がある外傷である。破裂と裂傷に分け、裂傷はさらに穿・穿孔性・に分ける。

⭐ の症状と初期対応は、医学生の必須能力である。(、)

創の区域と予後

正面から見た区域は、zone I=より内側の角膜、zone II=輪部から後ろへ5 mm まで、zone III=それより後ろである。区域は、全層の創の最も後ろの点で決める4。

zone 範囲 このセミナーの整理 現行の研究
I 角膜(輪部まで) 中等度(角膜の中央が傷つくと視力が落ちるため) zone I・II に限られた外傷は良好な転帰の予測因子4
II 輪部から5 mm まで 予後が最もよい 同上
III 5 mm より後ろ 最も重い(の障害) 網膜・視神経が障害された眼は術後視力が有意に悪い4

💡 zone が後ろほど予後が悪いことは、どの整理でも共通している。このセミナーは zone II を最もよいとするが、現行の研究が良い転帰の予測因子として示すのは「zone I・II に限られること」であり、I と II の優劣までは示していない4。zone I を中等度とする理由は、角膜の中央()に瘢痕が残れば視力が落ちるためである。

眼球破裂

項目 内容
病歴 大きな鈍的な物による外傷、以前の眼の手術(が弱い)、(壁が薄い)
裂けやすい場所 、、(壁が薄い、またはの付着部の後ろ)
視力 著明に低下し、がなくなることもある
ふつう低い
、、膨隆
瞳孔 涙滴状(尖った)瞳孔(創の方向を指す)
眼内 ・の脱出・消失、と、・剥離

高齢者のでは、全体が暗赤色の出血で盛り上がり、瞼の間から膨れ出している例がある。超音波では、眼球のの壁の不整(破裂部)と、そこへ向かうのを認める。角膜とにわたる破裂では、眼内容が血液と一緒に創から出て、眼球全体が血液で満たされる(眼球内の大出血)。

裂傷

  • 鋭い物による全層の創である。
  • 組織の脱出がよく起こる()。
  • ⚠️ の除外が必須である。
  • 合併症:、。
型 定義
穿 入口の創だけがある。異物が眼内に残ることがある
穿孔性 入口と出口の両方の創がある

⚠️ 小さな角膜の創の奥にの裂け目があり、瞳孔が尖っていたら、を疑う。高速の小さな破片は、小さな入口から入って眼の奥まで届く。角膜の裂傷では、創からが脱出して黒っぽい組織が角膜の表面に出ている。

眼内異物の診断

異物は、入った経路のどこにでも見つかりうる。

位置 所見
角膜を貫いている 針金がに刺さったまま残り、を伴う
隅角 で隅角に小さな黒い異物を認める
の中に異物の通り道と()
網膜 眼底で網膜の上に光る金属の異物を認める

CTでは、異物は眼球の後方にの小さな塊として写り、・・横断で位置を決められる。の画像検査は CT が第一である。

⚠️ 金属のが疑われる眼に MRI を撮ってはならない。強い磁場で異物が動き、眼の中の組織をさらに裂く。詳細は鋭的な物による機械的。

どうするか:初期対応

⭐ 刺さっている異物は決して抜かない。患者を眼科へ送る。異物は手術室で取り出す。

や上眼瞼に金属片が刺さったまま周りに皮下出血がある例、釣り針のように曲がった針金が角膜の周辺部に刺さった例でも、その場では抜かない。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open globe injury'>開放性眼外傷</span>を疑う<br>全層の創・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='iris prolapse'>虹彩脱出</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='teardrop pupil'>涙滴状瞳孔</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hypotony'>低眼圧</span>・著明な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subconjunctival hemorrhage'>結膜下出血</span>"] --> B["眼球を押さない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='tonometry'>眼圧測定</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='eyelid eversion'>眼瞼翻転</span>・点眼をしない"]
    B --> C["硬い保護カップで覆う<br>刺さった物は抜かない"]
    C --> D["破傷風の予防・全身の抗菌薬<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='analgesic'>鎮痛薬</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antiemetics'>制吐薬</span>・絶食"]
    D --> E["CT で異物と眼窩を評価<br>金属の疑いがあれば MRI は禁忌"]
    E --> F["緊急で眼科へ<br>手術室で創を閉じ異物を取り出す"]

💡 眼球は内圧で形を保つ風船のようなものである。穴が開いた風船を外から押せば、中身が穴から出ていく。初期対応の詳細と Ocular Trauma Score は鋭的な物による機械的で扱う。

症例から学ぶ:眼内異物の摘出

症例1:網膜の上の異物

眼底の周辺部に黒い異物が刺さり、その周りに白い網膜の変化とを認める。で眼内にを入れ、金属の異物を吸い付けて取り出す。また、の下方に血液に囲まれた大きなを認めた例では、摘出後6か月で異物のあった場所は色素を伴う網膜の瘢痕になり、右眼の視力は1.0に回復した。

症例2:37歳男性、ハンマーで叩く作業中の外傷

項目 内容
受傷時の所見 角膜から輪部のに及ぶ裂傷、、、、眼球後壁の耳下側に異物
手術 創の縫合、吸引との挿入、(で異物を摘出)
術後1年 右眼の視力1.0。角膜に縫合の瘢痕が残り、眼底では異物のあった場所が網膜の瘢痕になっている

💡 教訓:金属どうしを叩く作業はの典型的な原因である。の縫合・・を組み合わせた複合的な治療で、重いでも良い視力を取り戻せることがある。予防はである。

開放性眼外傷の合併症

合併症 内容
角膜の創を縫合した眼で、角膜が全体に灰白色に濁り、強い充血を伴う。外傷後のは視力予後が悪い()
が複雑になり、網膜の全層のひだ、網膜上・網膜下の膜ができる。3回のの後も重いが残り、右眼の視力は2 m にとどまった例がある
外傷を受けていない反対眼に起こる自己免疫性のぶどう膜炎。まれ

⚠️ は、受傷した眼の眼内の抗原が露出し、免疫がそれを異物と認識して両眼を攻撃することで起こる。受傷からしばらくたって反対眼に起こるので、の後は反対眼の見えにくさにも注意するよう説明する。詳細は鋭的な物による機械的。

症状から診断を考える:練習問題

問題1 どの眼の病気を考えるか

患者はふつう65歳を超えている。視力はゆっくり、痛みなく落ちる。中心の視野が欠け、かすみ、・を伴うことがある。

選択肢:///

答え:

選択肢 合う点・合わない点
ゆっくり痛みなく進むが、欠けるのは周辺の視野から。中心は末期まで保たれる
高齢・ゆっくり・痛みなし・・(・)がすべて合う
ゆっくり痛みなくかすむが、視野の欠けやゆがみは起こさない(まぶしさ・かすみ)
痛みはないが、突然の高度な視力消失

💡 決め手は「中心が欠ける」と「ゆがむ」である。ゆがみ(・)は、黄斑のの並びが乱れるときに起こる。

問題2 診断は何か

患者は影が見えると訴える(下から迫る壁、または上から下りてくる幕)。

選択肢://結膜炎/ヒステリー

答え:

選択肢 合う点・合わない点
全体がかすむが、視野の一部に影が広がることはない
剥離した網膜の部分が見えなくなり、幕・壁のような影として広がる。上方の剥離は下から、下方の剥離は上から影が迫る
結膜炎 視力・視野はほぼ正常
ヒステリー(の) な病気を除外してから考える。幕のように広がる影はの典型的な訴え

⚠️ ・の後に幕のような影が広がったら、黄斑が剥がれる前に手術すれば視力を保てる可能性が高い。その日のうちに眼科へ送る。

まとめ

  • 失明の定義:=真の失明、0.1以下=、0.5未満=。先進国の主な原因は・緑内障・・。
  • WHO の推計(2019年):26億人、18億人、1億9,600万人、1億4,600万人、緑内障7,600万人。
  • は・(約10%)・黄斑円孔・・・・緑内障を起こす。
  • :50歳超、両眼性、のゆっくりした低下と。80%・滲出型20%。喫煙・肥満・。滲出型には、には(承認は国で違う)、栄養補助とエイド。
  • はとともにほぼ全員に起こり、長く無症状。失明の原因は・・。1型は発症5年後、2型は診断時に検査。は現行の米国糖尿病学会の指針では妊娠中の眼科検査を要しない。
  • 中心を含むはが第一選択(20/50以下ならが優れる)、ステロイドは第二選択。はが標準では補助。急な HbA1c の低下(GLP-1 受容体作動薬など)はを一過性に悪化させうる。
  • ⭐ 急なは「赤く痛むか・眼底が見えるか・眼底に何があるか」で絞る。痛みがなければ血管か網膜、痛みがあれば・炎症・感染。
  • は桜実紅斑と白い網膜。として救急へ。・は従来の治療で有効性は示されていない。
  • は網膜の血管疾患で2番目に多く、出血が消えてもが残る。65歳未満の男性では心筋梗塞の危険。
  • はの虚血。50歳以上はをまず除外する。はとで、を調べる。
  • は下降の処置を並行してただちに始め、角膜が澄んだらレーザー周辺切開。
  • は「4つのF」=・・・と幕のような影。はの重い合併症。
  • は痛み・充血・・。「膿のあるところは排出せよ」。眼底が見えないは超音波でを除外する。
  • 外傷は片眼の失明の最多の原因で、約90%は予防できる。命が視力に優先する。
  • ⭐ :アルカリはで深く、酸はで浅い(強い酸とは例外)。その場で水道水で大量に洗い、上眼瞼をして粒子を除く。少なくとも30分、pH が7.0〜7.2に戻るまで。Roper-Hall は角膜のとで I〜IV、1/2超は予後不良。晩期はのあとに。
  • 閉鎖性:縦の線状の角膜の傷は上眼瞼裏の異物。前房出血の再出血は受傷後数日(多くは5日以内)。合併症(・片眼の緑内障・)は何年も後に起こりうる。Purtscher は胸部圧迫・による両眼の。
  • ⭐ 吹き抜け骨折:・内壁の骨折。(の絞扼で上下の)、領域の、、皮下出血・。
  • ⭐ :押さない・抜かない・覆う・送る。の除外は必須で、画像は CT。では MRI 禁忌。合併症は・・。
  • 練習問題:高齢・ゆっくり・痛みなし・・は。下から迫る壁・上から下りる幕は。

出典

  1. 1.12. Retinopathy, Neuropathy, and Foot Care: Standards of Care in Diabetes—2026(American Diabetes Association・2026)1型糖尿病は発症から5年後、2型糖尿病は診断時に初回の散瞳眼底検査を行い、網膜症があれば少なくとも年1回とすること、妊娠前から1型・2型糖尿病のある人は妊娠前と妊娠初期に眼科検査を受け、妊娠糖尿病は妊娠中の眼科検査を要しないこと、急速な HbA1c の低下が網膜症の一過性の悪化と関連することを確認した(同じ id の既存ノートの確認範囲の一部)閲覧 2026-09-29
  2. 2.Management of Central Retinal Artery Occlusion: A Scientific Statement From the American Heart Association(American Heart Association / Stroke(Mac Grory B ほか)・2021)網膜中心動脈閉塞症は急性虚血性脳卒中の一型で、医学的緊急事態として早期の認識と救急医療への振り分けを優先すべきこと、前房穿刺・眼球マッサージ・眼圧下降点眼などの保存的治療はプラセボより有効とは示されていないこと、経静脈的 tPA の有用性は十分な試験が終わるまで均衡状態にあること、巨細胞性動脈炎の疑いが強ければ赤沈と CRP を測ることを確認した(同じ id の既存ノートの確認範囲の一部)閲覧 2026-09-29
  3. 3.Chemical (Alkali and Acid) Injury of the Conjunctiva and Cornea(American Academy of Ophthalmology (EyeWiki)・2026)アルカリは速く深く浸透し、酸は凝固層が障壁になるがフッ化水素酸は例外的に深く浸透すること、洗浄は手に入る無毒の液体(水道水でよい)ですぐに始め、少なくとも30分または結膜嚢の pH が7.0〜7.2に戻るまで続け、洗浄後少なくとも5分おいて pH を測り直すこと、酸やアルカリで中和しようとしないこと、円蓋部を掃引すること、Roper-Hall 分類が角膜所見と輪部虚血の程度に基づくことを確認した(同じ id の既存ノートの確認範囲の一部)閲覧 2026-09-29
  4. 4.Open Globe Injuries: Classifications and Prognostic Factors for Functional Outcome(Diagnostics(Mayer CS, Reznicek L, Baur ID, Khoramnia R)・2021)開放性眼外傷の zone を創の最も後ろの点で I(角膜と輪部)・II(輪部から強膜へ5 mm まで)・III(それより後ろ)に分けること、147眼の解析で網膜・視神経が障害された眼の術後視力が有意に悪く、良好な転帰の予測因子が良い初診時視力と zone I・II に限られた外傷だったこと、眼内異物が147眼中38眼(25.9%)で84.2%が金属だったことを確認した(同じ id の既存ノートの確認範囲の一部)閲覧 2026-09-29